「ギィヤァァァァァァァァァッ!!!」

光の届かない地の底に在る、闇に支配された領域で、身の毛もよだつ様な断末魔が上がった。

「…………これで終わりか」

その場に残っているのは一人の男。フード付きの外套を纏い、年月を感じる木の杖を携えているその男は、全ての敵を殲滅し終えた事を確認するように呟いた。

「さてと、クソ野郎どもは、きっちりブッ潰したし。後は、…………アレをどうにかしねえとな」

そう言って男が視線を向けた先には、数十もの「剣」で形作られた塊が在った。



立派な魔法使いマギステル・マギ錬剣の魔法使いサウザンド・ブレイズ・序幕 「生まれ落ちた運命」 <戯言草紙さん>



「…………ったく、ヒデェことしやがる」

最初、少年はその声を耳にした時、それを声と、いや、音と認識していなかった。何故なら、長い間、耳が機能していなかったから。

「……オイ、ガキ。もう、意識戻ってんだろ? 目ぇ、開けろや、コラ」

そんな事を言われても困る、と少年は思った。自分の目は随分昔に使い物にならなくなっていたから。いや、目だけではない。体中の器官が残らず使い物にならなくなっていた……筈だった。

「スタンの爺のとこからちょろまかし、もとい、ありがたく頂戴した「エリクサーとっておき」使ったんだ。だから、目ぇ、開けろよ、オイッ!」

ビシィッと音が出そうな強烈なチョップをかまして来る声の主。少年は久し振りに感じた「人」としての痛みに驚いて、ゆっくりと壊れていた筈の目を開ける。

「おっ、ようやくお目覚めかよ、ガキ」

長い年月の間、壊れていた目で少年が久し振りに見た映像は、確かな自信に満ちた赤毛の男の笑顔だった。

「………だ、……れ…………」

辛うじて忘れていなかった言葉と錆付いていた喉と舌を力を振り絞って何とか動かし、少年は眼前の男に問い掛ける。

「オレか? ……オレはな、正義の味方ヒーローだ!!

誇らしげに胸を張りながら、ビシィッと親指で自分を指し示し、何の迷いもなく言い切る男。「正義の味方」。その言葉が、擦り切れ朽ち果てていた少年の精神に、ほんの僅かの活力を与える。

「…………な、…ま、……え………」

「ん? オレの名前か? しょうがねぇな、特別に教えてやるよ。オレの名前は、ナギ=スプリングフィールドだ」

「……な、………ぎ…」

「そうだ、イカス名前だろ? 気軽にナギ様と呼んで良いぜ。……で、ガキ、オマエの名前は?」

分からない。名前なんて思い出せない。だから、少年は「知ってる」名前を口に出した。

「…………え、……み、…や、………し、…………ろ、……う…」

「……エミヤ、シロウ、ね。名前の響きから察するに、オマエ、日本人なのか。……なら、連れてくならあっちの方が良いだろうな。よしっ、そんじゃ行くぜ、シロウ!」

そう言って、ナギはエミヤシロウと言う白髪で褐色の肌と鈍色の瞳を持つ、自分で立つこともままならないほどにボロボロの少年を抱きかかえる。

「………ど、…………こ、……に…」

数十本の「剣」が無造作に打ち捨てられた牢獄のような部屋から出て行こうとするナギに、シロウは再び問い掛ける。そんなシロウの問いに、ナギは笑ってこう答えた。

「――――麻帆良だ」


―――そうして、この時より十一年の後、物語が始まる。立派な魔法使いマギステル・マギ錬剣の魔法使いサウザンド・ブレイズの物語が―――


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