マブラヴ 未来への咆哮 episode:8 「示された可能性」 <龍崎天馬さん>
床に散らばった書類の一枚に、書かれていたある図。それにオレは、見覚えがあった。
「………」
………あれ?
「……いいから、行きなさい」
「……あの、これ、オルタネイティヴ4の資料、ですか?」
「あんたには関係ないわ」
………………そうだ。オレ、この図、見たことがある。
「……白銀、あんた――」
「――知ってる、これ」
「……え?」
「これ、この絵、オレ見たことがある!」
「………そう。『前』の世界のあたしは随分と甘かったみたいね。……あ、あたしもそうか」
「違いますよ、先生! この絵、『元』の、BETAのいない世界で見たんだっ! いきなり先生が、教室で説明し始めて、黒板に書き出して」
「えっ!? 『元の世界』!?」
「でも、先生はこの式結局ダメだって言って、バッテンつけてました」
――白陵柊3-Bの教室――物理の時間――興奮した夕呼先生が、黒板に書き出す理解不能な理論――
「……うん、やっぱりそうだ。それで、ちょうどこの辺に、何やら新しい式を書き始めたんですよ!」
「な、なんですってっ!!!?」
「なんか、ゲームをやってる時に閃いたとか言ってて、これは全然ダメだって、新しい理論がどうこう言ってて……」
そうだよ、何とかって言うクソゲーやってる時閃いたって言ってたよ! ゲームが無い『この世界』の夕呼先生が思いつかなくて当然だよっ!
「教えなさい! その式、今すぐ、教えなさいっ!」
「……いやその」
「これが否定されるって、どういうことかわかってんの!? それ、今研究中の並列処理装置の根本理論なのよ!?」
「え? ……こんな下手くそな絵が?」
「絵はどうでもいいでしょ! とにかく、何でそれが否定されるのよっ!!」
――ガシィッ!!
「うげっ! ……先生、苦しいって!!」
「シャレじゃ済まないのよっ! 間違いじゃもっと済まないのよっ!! 早く言いなさい!! 早くっっ!!」
――ブンブンブンブン!!
「ご、ごめんなさ〜〜い……覚えて、ないんです〜〜」
「――なんですってぇえっ!!!!」
「げほっげほっ……だって、全然ワケわかんないことばっかり言うから」
――ガシイッ!!
「どんなこと言ってた!?」
「あたしは天才だって」
「そんなことはわかってるのよ! 次っ!」
「『これはボツ!! こんな考え方は古い!!』……だったかな?」
「なんですって!?」
「オレじゃないオレじゃないっ! 先生が自分で言ったの!!」
「次っ!!」
「人間の脳みそなんて、所詮一個だって」
「……何言ってるの?」
「だからっ! 先生が理解できないなら、オレがわかるわけないじゃないですかあっ!」
「次は?」
「……それで、いきなり変な式書き始めて、論文にまとめるべきねって、教室出て行っちゃいました」
「……たどり着いたんだわ」
「……え?」
「あたしがそんなこと言うってことは、もう理論は完成したってことじゃないの!! その理論、あたしは完成させてるんだわ!」
「……ってことは」
「少なくとも、今より現実的な理論が、実験の1歩手前まで完成している……」
「てことは!?」
――ドンッ!
「……何とかしなさい!」
「……え?」
――ガシィッ!! ブンブンブンブン
「何とかして思い出しなさい!! 一部でもいいわっ!! 何とかしなさいよっ!!」
「無理ですって! 俺にとっちゃ、感覚的に6年以上前の話ですよ!? しかもあの時ですら全然ワケわかんなかったのに……」
「わかんなくてもいいからっ!」
「自分で考えたんでしょ〜! 『元の世界』の自分に聞いて下さいよ〜〜」
「――えっ?」
「……思い出せないモンは思い出せませんよ」
「…………そうか」
「……?」
「……そうね、そうよね。あたしとしたことが取り乱しちゃったわ」
「…………すみません、力になれなくて。………と、とりあえず、オレ、部屋に戻ります」
「………ええ」
――カタカタカタカタカタカタ
「し、失礼します」
先生が机の上の端末で、何か作業をし始めたのを尻目に、先生の執務室を後にする。
オレ、本当に頼りねぇなあ。……せっかく、オルタネイティヴ4、完成の糸口が見えたと思ったのに。
「……くそ」
――2001年11月29日(木)
純夏と遊園地に言った夢を見た。……て言うか、『武』の機動を考えりゃ、あの程度で悲鳴上げてるオレは、何とも情けねえ。まあ、『あの頃』のオレじゃ、そんなモンか。
それにしても、本格的なホームシックかな、オレ? こうも立て続けに純夏の夢見るなんて。……『元の世界』で元気にしてんのかな、純夏のヤツ。
それにしても、今日、起こしに来てくれた霞の様子が、少しおかしかった。どうしたんだろうな? ……そう言や、『ゲームガイ』のこと、聞くの忘れてた。まあ、夜にでも、霞の所に行くとするか。
今日のオレ達の実機演習には、見学者がメチャメチャ居た。て言うか、横浜基地に居る衛士の殆どが見に来てたんじゃねえか、ありゃ?
まりもの話じゃ、オレ達との演習の申し込みが殺到したらしい。だが、オレ達は訓練兵なので、現役の衛士達との演習は認められていない。だから、オレ達と言うか、オレの演習を見学してるとの事。
まあ、基地の人達に認められてるってのは、判るんだけどな。それでも、「シルバー」って声掛けられた時には、何事かと思ったぜ。
何でもオレには、『白銀の閃光』って渾名が付けられてるらしい。……何て言うか、複雑な気分だ。そんな大層な二つ名を、付けられるようなヤツじゃねんだけどな、オレは。
で、演習の時、みんなが『武』に試しに乗ってみたいって言ったんで、乗せてみた。ゲディのおっさんは顔を顰めていたが、ハキムが笑いながら、「かまわないヨ」って言ったんで、みんなが挑戦した。
結果は、惨憺たるモノだった。適性検査の時よりヒドかったな、ありゃ。壬姫なんて、よろけ過ぎて、まりも、慧、冥夜、千鶴の胸をクッションのようにしてフラフラしてた。……何かこんな光景、『元の世界』で冥夜に会う前に、見た事のあるような気がしたけど。
――プシュー
「お〜い、霞〜。いるか〜〜?」
「………」
お、いたいた。それにしても、この部屋、相変わらずだよな。……霞、また、あれ見てるし。
「霞?」
「………」
聞こえてねえのかな?
「……少し、待って下さい」
「え? あ、ああ」
聞こえてたのか。
「「………」」
なに、してんだろうな。……待ってくれって言われたけど、邪魔しちゃ悪いし、ひとまず出るか?
「ここにいてください」
「! ……お、おう」
時々、ドキッとするタイミングで返事するよな、霞って。
「………」
そして、霞が振り返る。
「…………終わったのか?」
「お待たせしました」
「なにやってたんだ?」
オレにはただボーっとしてるようにしか見えなかったけど。
「あの脳みそと話しでもしてたのか?」
「………」
「まあいいけど、あのさ、この間のスケッチブックのことなんだけど」
「何ですか?」
「あの絵、あれ、どうやって描いた?」
「………」
――かきかきかき
「あ、いや、霞」
「……変ですか?」
「オレの聞き方が悪かった。そういう意味じゃなくて。あの絵に描いたもの、自分で考えたのか?」
「………」
「あれがなんなのか、知ってるのか?」
「………」
うう、無反応ですか。とは言え、このことは、ハッキリさせときたい。根気良くいこうぜ。
「あの絵に描いたモノ、どこで本物を見た? 教えてくれ」
「……見ていません」
「本物を見てないのか。……じゃあ、元ネタは何? 本か何かで見たのか?」
「………」
……無視、ですか。どういう事だ? 教えられないようなモノなら、そもそもオレに見せなければいいのに。
「頼むよ〜、霞〜。教えてくれよ〜」
「………」
「お〜い」
「お〜い」
「お〜いお〜い」
「お〜いお〜い」
「お〜いお〜いお〜い」
――ピク
「どうした、霞?」
霞は唐突に歩き出し、部屋を出ていく。
「あ、おい! 待てよ〜、霞〜」
霞に続いて、オレも部屋を出る。そして、夕呼先生の執務室の扉前へとやって来た霞とオレ。
「どうしたんだ、霞?」
何か様子がおかしいな。
――プシュー
「あ、待てって!」
霞と一緒に、夕呼先生の執務室に入る。室内は、デスク上の卓上灯以外に灯りは無く、人の気配は――
「失礼しま〜〜、!! ……霞、オレの後ろに下がってろ」
あった。霞をオレの後ろに下がらせる。そして、室内の暗がりの中に感じる気配に声を掛ける。
「……そこにいるのは誰だ?」
「……ほう、気付くかね?」
声と共に暗がりから進み出て来る人影。コートとお揃いの帽子を被ったスーツ姿の壮年。
「はじめまして」
「………」
何者だ、この人? 軍人にしちゃ、態度が砕けてるし。……セキュリティーの厳しいここに居るのに、警報が鳴ってないって事は、ここに入る権限を持ってんのか?
「驚かせてしまったようだな。いやはやしかし、まさか、本当に君がいるとはなぁ」
そう言って男はごく自然に、間合いを詰めようとして来る。
「!!」
「……ほう」
寸での所で、距離を取る。……一体、何者だ!? 今の間合いの詰め方、ヤバかったぞ!?
「わははは、中々ヤル男だな。……シロガネタケルくん?」
「!?」
――ぎゅ
「警戒しなくても大丈夫だよ、社霞、ちゃん?」
「………」
「どうせしがみつくなら、おじさんにしないか?」
「………」
「このスーツは私の自慢でね、今となっては中々手に入らない貴重品なんだ。生地の手触りが最高で。どうだい、触ってみたくないかね? シロガネタケルくん」
「………」
「無用な警戒心を与えてしまったようだね、シロガネタケルくん」
「……無用とは思えませんけどね」
「……いいだろう、それほどまでに私の名前が知りたいのなら」
「……は?」
な、何なんだ、この人の話の展開の仕方? ……気のせいか、既視感みたいなモンを感じるんだけど。
「私は微妙に怪しい者だ」
「いや、それじゃ名前、わかんねえし」
「ふむ、確かにその通りだ。……中々ヤルな、シロガネタケルくん」
マジで、何なんだ、この人?
――パチッ
音と共に電気が灯り、室内に光が充ちる。部屋の入り口には、夕呼先生の姿。
「騒がしいわよ。人の部屋で何やってるわけ?」
「あっ、先生!」
「こんばんは、香月博士」
「……帝国情報省ってのは礼儀がなってないわね。入室の許可どころか、面会の予約をもらった覚えもないけど?」
「帝国情報省!?」
諜報機関の人間だったのか!
「いやぁ、部屋の前に立ったら、扉が開いてしまったんですよ」
「口の減らない男ね」
「ひとつしかない口が減ったら大変ですな、わはははは」
「世間話をしに来たわけじゃないんでしょ?」
「いや、彼に自己紹介を」
「じゃあ、さっさと済ませて帰ってちょうだい。こっちは今日は何もないわ」
「いけませんなぁ、香月博士。せっかくの美貌が台無しだ。おお、よく見れば、寝不足ですか? 目の下にクマができてますな」
「……うるさいわね」
「博士の美貌が損なわれるのは人類の損失ですよ? お気をつけ下さい?」
「……ふん」
「……あの〜」
「おっとそうだった。自己紹介の続きだったな。私は帝国情報省外務第二課の鎧衣だ」
「鎧衣? ……え?!」
って、まさか?
「息子がいつも世話になってるね、シロガネタケルくん」
「いや、美琴は娘だろっ!?」
「うん、そうだな。ははは、いや、済まない。私は息子が欲しかったんだよ、屈強な息子がね。だから、つい――」
「――はい、ストップ」
こ、この人が伝説の美琴のオヤジか!? どうりでマイペース! どうりで話がイマイチ噛み合わないと思ったんだ!! すげえ、何だかすげえ。遺伝だよ!
「で、本当は何しに来たわけ?」
この後、夕呼先生と美琴のオヤジさんがした話は、オレが初めて聞く事がたくさんあった。「XG-70」「戦略研究会」「日本に政治的・軍事的空白が発生」とか。……こんな話、『記憶』に無えぞ!?
そして、今日の話の本題は、オレが関係してる事だった。佐渡島からBETAが南下してきた時と、HSST落下阻止の件で、夕呼先生が出したであろう正規のルートからではない最優先命令に関する事と、唐突な『Gaia-Guardian-Project』のオルタネイティヴ4への取り込み。……確かに、ツッコミどころ満載だよな。
「……では、さらばだ。またの機会に会おう、シロガネタケルくん」
「え? あ……」
……行っちまった。何か、すげえ人だったよな。結局、大した情報も与えずに、あの人を追い返す夕呼先生もすげえけど。でも、夕呼先生、美琴のオヤジさん、ちょっとニガテなのかな? 話の主導権は、美琴のオヤジさんが握ってたぽいし。
それにしても、あの人は何処まで知ってるんだ? それに、なんであの人は、霞を疑ってたんだ? 動向を探ってる『かの娘』って誰だ? ……クソ、色んな情報が一度に入ってきて、ワケわかんねえ!
「……先生、あの人が言ってたことって」
「――ストップ。……お願いだから、今はやめてちょうだい」
「……はい。すいません」
そういや先生、徹夜してるみたいだし、今度にしよう。さっきもイライラしてたもんな。
「………」
「――ん? どうした、霞?」
何しゃがみこんでんだ? ……ん? 何か置いてある。!? こ、これは!!
「……モアイ像」
「処分しといて」
「はあ。……んで、これは?」
「お土産です」
「おみやげぇ?」
オヤジさんが持ってきたのか?
「……いるか?」
「……はい」
「よかったな」
「………」
なぜ、そこで無言?
「ところで、何しに来たの?」
「あ、いや、ちょっと霞と話したい事があって」
「……白銀。今度の攻略対象は、社ってワケ?」
「……違いますよ。とにかく、霞とあっちの部屋で話してたら、いきなり霞がこっちに部屋に向かったからついて来て、とまあ、そんな感じです」
「……なるほど」
「………」
「話は変わるけど、夢、見てるんでしょ?」
「は?」
いや、変わりすぎですよ、先生。……まあ、ある意味、夕呼先生らしいけど。
「総戦技評価演習以降、自分が元居た世界の夢を見る……そう言ってたでしょ?」
「ああ、はい、そうです」
「ちょうどいいわ。調べてあげる」
「え?」
疲れてるんじゃないのか!?
「夢のことよ。調べてあげる」
「……調べるって、そんなこと出来るんですか?」
「出来るから言ってるんでしょ? 頭弱いわね」
やっぱりイライラしてる。……踏んだり蹴ったりだな。
「そこのソファに腰掛けて」
「はあ。で、オレは何を?」
「寝て。そして、夢を見てくれればそれでいい」
「……ええっと?」
「細かい話は明日してあげるから、寝なさい」
……寝ろって命令されるのもナンだよな。それにしても。
「寝るだけで何かわかるんですか?」
「社がいれば問題ないわ」
「え?」
「いいから気にしないで。それとも添い寝させる?」
「い、いや、それはいいです」
「社には社にしか出来ないことがあるのよ。そして、それがあれば問題ない」
「……はあ」
「………」
霞にしか出来ないことねぇ〜。……喋らないとか?
「………」
……気のせいかな。怒った、のか?
「寝れないなら、薬でも出しましょうか?」
「永眠しそうですから、自力で寝ます」
「モアイ、いる?」
「要りません!」
「そう。じゃあ、おやすみ」
ソファに横になり、目を閉じる。……これで夢見なかったら、どうなるんだろうな。ここ最近ずっと見てたからって、今日もとは限らない。翌朝、先生に怒られるオレが目に浮かぶぜ。
……ま、いいや。さっさと寝よ。
――2001年11月30日(金)
夢を見た。冥夜にプレゼントされた、純夏と二人の豪華客船でのナイトクルージング。……『究極の牛丼』は、メッチャ旨かった。
しかし、今日のは、また、随分とハッキリしてたな。感覚までリアルに。……だんだんハッキリして来ている感じだな。
「おやすみなさい」
「おう、おやすみ」
何をしてたかはわからないが、どうも、霞は徹夜だったらしい。壁にぶつかっちまうくらいフラフラだ。……ちゃんと部屋まで戻れなかったりして。
がんばれ、霞。オレは応援してるぞ。……応援するだけのオレを許してくれ。
「おはよ、……ふぁ、……ぁ」
「お、おはようございます」
「……で、どうだった?」
「オレの台詞ですよ、それ。まあ、夢なら見ましたけど」
「夢、ねぇ。……本当に夢だと思ってる?」
「え?」
……何だよ? どういう意味だ?
「結論を言うわ。……あんたの見ていたモノは、夢じゃない」
「……は?」
夢じゃない? じゃあ、何なんだよ?
「あんたが夢を見ていたその瞬間、白銀、あんたは、あんたが言う『元の世界』に存在していたのよ」
「はあっ!? ――んな、バカなっ!!」
その後の先生の話は、かなり衝撃的なものだった。
オレが今までの行動で、証明する事となった『タイムスリップ』と言う事実。脳波を観測できなくなった状態で見る、『リアルな夢』。そして、夕呼先生の時空理論。その全てを考慮して導き出された、『精神だけが“元の世界”に戻った』と言う結論。
信じられない話ではあるが、そんなこと言ってたら、オレの身に起こっている現象も、同じようなもんだからな。この際、それについては納得する事にした。
だが、オレが『元の世界』に戻った原因がわからない。その事を先生に聞くと、オレが意思が揺らいだ時点で『世界』を移動してしまうかも知れない特殊な人間と言う事と、安定を求める『世界』の力を理由として挙げた。
とは言え、先生の話に実感は湧かない。納得はしたけど、オレの状態を正しく説明出来ているのかと言う疑問は尽きない。先生自身、推論って言ってるしな。
ただ。
「……帰れる、かも知れない、か」
先生の話が本当なら、オレは『元の世界』に帰れるかも知れない。……いや、帰りたいのか?
『みんなの為に未来を繋げる』。この覚悟がぶれたわけじゃない。……ただ、全てが終わった時、『この世界』に元々居場所のないオレは、『元の世界』に帰るべき、だろうな。
だが、段々とわからないことが増えてきている。オレの『記憶』にない事が起こり始めている。新しいOS、美琴のオヤジ、政治的な陰謀、オレを引き戻そうとする『元の世界』、そして、霞の描いたゲームガイの絵。
「………」
今までは、答えがわかっていたから上手く立ち回れた。でも、これから先に答えなんかない。……これからが本番だ。
今まで変えてきた『未来』、これからの展開。それがオルタネイティヴ4の完成に、ちゃんと結びつくのか。……そして、それが間に合うのか。
「そうだよな。これからが正念場だ。終わった後の事は、全てを終わらしてから考えなきゃな」
オレはそう呟いて、地上に上がる為、エレベーターに乗り込んだ。
オレが『武』の調整をしてる最中、ハキムから通信が入る。
「タケル、お呼びダヨ」
「ん? ああ、わかった。今行く」
『武』から降りると、まりもの姿があった。
「白銀、捜したぞ。お迎えだ」
「お迎え?」
まりもの後ろから姿を現したのは霞。霞がわざわざハンガーまで出てくるなんて、珍しい。
「香月博士から呼び出しが掛かっている」
「あ、はい」
それでわざわざ霞を?
「んじゃ、行くか」
「………」
「白銀」
「はい?」
霞と一緒に、夕呼先生の所に行こうとしたら、まりもに呼び止められた。
「……昨夜、消灯時間になっても、部屋に戻っていなかったそうだな」
「え、誰がそんな事を?」
「誰でも良い。……誤解するな。責めてるワケじゃない。貴様の身を案じているのだ」
「……はい」
「香月博士に呼ばれているのだな」
「そうです」
「…………ハァ」
「……何か?」
「…………仕方ないか」
「え?」
「……夕呼が関ったら、軍規も何もないから」
「……あはは、そうですね」
久し振りの『優しい』まりもだ。……心配掛けてんだなぁ、オレ。
「白銀が特別な任務に就いている事はわかっている」
「はい」
「ただ、みんなも心配してるわ」
「……はい」
「体調には充分気をつけて、頑張りなさい」
「……はい。ありがとうございます」
「以上よ。敬礼はいいわ」
……ホント、ありがとな、まりも。
「じゃ、行こうか、霞」
オレ達はハンガーを後にした。
霞と並んで廊下を歩きながら、質問する。
「今日は何するんだろう? 知ってるか?」
「………」
「昨日みたいにまた眠れ、とか言われるのかな?」
「………」
「そういや、霞は夕呼先生の何を手伝ってたんだ?」
「………」
「昨日の夢の調査の時もそうだったし、新OSの時もいただろ?」
「……いけませんか?」
「え? い、いや、そういうわけじゃないんだけど」
「………」
「い、いていいぞ。どんどんいてくれ」
「………」
「……どうしたんだ?」
「………」
なんか、機嫌、悪いのか?
「……な、なあ」
「…………怒っていません」
「……そうか。なら、いいや。ほら、行こうか」
――プシュー
「遅かったわね。こっちに来て」
「……え、あ?」
……な、何だ、ここ? いや、何なんだ、これ?
その部屋にあるのは、用途の解らない大型の機械。『記憶』に無い存在。
――この機械が、『未来』への『鍵』を掴むのために必要な物だと、この時のオレにはわからなかった。
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