マブラヴ 未来への咆哮 episode:6 「同時来襲! 天空からの脅威」 <龍崎天馬さん>
――2001年11月24日(土)
ガキの頃の夢を見たような気がした。そのせいで、今日も霞が起こすよりも先に目が覚めた。
その事に、昨日に引き続きショックを受けた霞を宥めた後、貝殻のお返しにある絵を貰う。……この世界に無い筈の『ゲームガイ』の絵。
『記憶』の中で霞が、オレの誕生日である12月16日に『ゲームガイ』の絵をくれた事は、夕呼先生がオレの部屋から『ゲームガイ』を回収して、それを見た霞がオレに描いた絵をくれたと思っていた。
だが、今日霞が持ってきた『ゲームガイ』の絵は、どういう事だ? 『ゲームガイ』は今、『この世界』には無いんだぞ? 霞は、一体何者なんだ? ……解らねえ。オルタネイティヴ4と何か関係が有んのか?
――タケルちゃんにはわからない!
もしかして、霞が『この世界』の純夏!? ……って、それじゃ、霞が『ゲームガイ』を知ってる理由にはならねえし、いくら何でも無理があるよな、純夏=霞説はよ。アニメやゲームじゃあるまいし。
…………ダメだ、いくら考えても解りゃしねえ。まあ、今は、霞の素性の事は置いとこう。とりあえず、ハンガーに搬入されただろう『吹雪』を見に行って、気分を変えるとするか。
――ハンガー
ハンガーには、みんなが先に来ていた。興奮してんなぁ、みんな。オレは初めてじゃねえけど、まあ、それなりに浮き立っちまうよな。
それにしても『吹雪』か。懐かしいって言うほど懐かしくもねえ気がするな。「人類軍」の時は、色んな機体に乗ったし。1日で機体変える事も結構あったし、『吹雪』にも何度も乗ったもんなぁ。
「――ん?」
みんなと話していると、まりももハンガーにやって来て、夕呼先生がシートの保護ビニールを破くのが好きとか言う話を聞いたりした後、まりもは引き上げて行った。
そして、『吹雪』を見ていたオレが、ある事実に気付いたその時、ハンガーの一番奥にある機体が搬入される。
「………」
冥夜、複雑そうな顔してんな。まあ、しょうがねえ話だけどな。
「……武御雷か」
「!!」
「おいおい、そんな怖い顔すんなよ」
「……そなた、知っていたのか」
「いや、武御雷は有名な戦術機だから、知っててもおかしくねえだろ」
「………」
訝しむ様にオレを睨む冥夜。いや、もう斯衛軍に制式配備されてんだし、知っててもおかしくないだろ? 睨む様な事か?
カンカンカン
冥夜と二人、搬入された紫の武御雷の足元に立つ。その時、オレの脳裏に何か閃光のように過ぎる物があった。
――「人類軍の紫雷」――
「!?」
「タケル、どうかしたのか?」
「いや、何でもねえ」
何だ、今のイメージは? ……オレは、紫の武御雷を乗機にしてた事がある?
「……そなたは、不思議な男だな」
「慧の方が不思議なやつだぞ」
「ばか、そういうことではない。……武御雷を目の前にしても、そなたの態度は自然だ」
「オレは無礼な奴なんだよ。それが一番の才能」
「……それには、納得できるな」
「……言ったのはオレだけどさ、それは酷くねえか?」
それにしても、オレが紫の武御雷にねぇ。確か、こいつは将軍専用機じゃなかったっけ。……流石に、それは無えだろ?
「うわぁ〜、武御雷だぁ〜。つめた〜い」
って、ゲッ!? 考え事してたせいで、壬姫が武御雷に触るのを止めんの忘れてた! チッ、間に合えっ!!
「――無礼者っ!!」
パァァァンッ!!
「きゃっ!?」
「「「「!!」」」」
「……貴様」
「フゥ、間に合った。武御雷に気安く触って、申し訳ありませんでしたっ! 以後、気を付けますので、この場は御容赦下さいっ!!」
間一髪、壬姫を後ろから包みこむように抱きかかえて庇う事ができた。その代わり、オレが月詠さんの手の甲ビンタ喰らっちまったけど。オ〜〜、イテ。
ドックン
えっ、この感じ、もしかして、オレ、月詠さんとも? だとしても、この状況で抱きついたりしたら、マズ過ぎるだろっ!?
――『人類軍 日本帝国師団』で戦友として、共に戦場を駆けた日々――
……ホッ、良かった。戦友との再会にちょっと泣きそうになったけど、とりあえず、この場で死ぬ可能性は消えたな。……まあ、ちょっと、残念だったけどな。
「月詠中尉!! どういうお積りですかっ!?」
「冥夜様、お止め下さい! 私どもにそのよう様な言葉遣いなど」
「……ならば、今一度問うぞ。どういう心算で、先程のような真似をしたのだ、月詠!」
「訓練兵風情が武御雷に気安く触れるなど、赦される事ではありません」
「……私も訓練兵だ。そのような言葉、許さぬぞ!」
「……出過ぎた真似を致しました」
「謝罪する相手が違っているぞ」
「……すまなかったな、訓練兵」
「………にゃ〜〜」
「珠瀬? ……いつまで、珠瀬を抱きかかえておる心算なのだ、タケルッ!?」
「ん? って、うわ、忘れてたっ!」
冥夜に指摘されるまで壬姫を抱きかかえたままだったオレは、慌ててたせいか、壬姫を解放しようとして動かした手で、
ふにゅん
「ふにゃぁんっ!?」
壬姫の小振りの胸を何故か揉んでしまう。あ、柔らかい。……いや、不可抗力だぜっ!?
「「「「「「「「………」」」」」」」」
ようやく解放されるも、顔を真っ赤にする壬姫。そして、青褪めるオレ。そんなオレ達に白い眼差しを向ける冥夜、千鶴、慧、美琴、月詠さん、3バカ。……絶望的な戦いを戦い抜いたオレの勘が言ってる。……オレから動けば、死ぬ、と。
「…………冥夜様、遅ればせながら、総合戦闘技術演習、合格おめでとうございます」
「「「おめでとうございます」」」
月詠さんが埒が開かないと感じたのか、話を進めてくれた。……助かった。
「……悪かったな、壬姫。ホント、ごめん」
「えっ、そ、その、いいですよ〜〜。それよりもたけるさん、痛くないですか?」
「ああ、大丈夫だ。それにほら、役得もあったし」
「あ、あうぅ〜〜〜」
って、何、墓穴掘ってますかぁ、オレはっ!?
「「「………」」」
話をしてる冥夜達を除いた千鶴、慧、美琴の視線が痛えよ。『記憶』の中じゃ、ここでのやり取りはシリアスだったのに、なんで今回だけこんななんだよ、ったく。
「……勝手にするがよい」
「御承諾感謝致します。……それでは私どもは失礼させていただきます」
冥夜達の話は終わったようだ。月詠さんと3バカが立ち去ろうとするけど、ちょっと訊きたい事があんだよな。
「あの、月詠中尉? 質問、よろしいでしょうか?」
「!! ……何だ、訓練兵?」
うわっ、怖ええ。実は『人類軍』時代に聞いたんだけど、……『この世界』の『白銀武』は既に死んでんだよな。つまり、この当時の月詠さん達にとっちゃ、オレは死人の氏素性を騙った怪しい奴でしかねえ。この態度にも頷けるってモンだ。……それでも怖ええけど。
「えっと、この武御雷は御剣訓練兵が搭乗出来ると言う事で、間違いないのでしょうか?」
「タケル?」
「……無論だ。勿論、冥夜様が望まれればだが」
「……成る程。これで納得だ」
「タケル、そなた、何を納得したのだ?」
「いや、吹雪、5体しか無いからさ。冥夜が武御雷に乗るのなら計算が合うだろ?」
「「「「「「「「「なっ!?」」」」」」」」」
そう、ハンガーには吹雪が5体しかない。う〜ん、『記憶』と違う所が出てきてんなぁ。それにしても、冥夜を武御雷に乗せるためとは言え、思い切った方法を取ったモンだなぁ、月詠さんも。
「月詠、そなたっ!」
「い、いえ、違います、冥夜様! 私どもは、そのような事しておりません!」
「では、他に誰が、この様な事をすると言うのだっ!?」
えっ、月詠さんじゃねえの? んじゃ、一体誰が……。
「な〜に、騒いでんの、あんたたち?」
「あれ、夕呼先生。珍しいですね、夕呼先生がハンガーにいるなんて」
「ちょっと、人、捜してんのよ。ところで、何の騒ぎよ?」
「実は、………と言う訳なんです」
「何だ、そんな事? 言っとくけど、白銀、無いのはあんたの機体よ」
「ヘっ、オレの?」
「まあ、でもちょうど良いわね。白銀、あんたはしばらく実機演習で、御剣用の吹雪に乗ってなさい。と言う訳よ、御剣、良いわね?」
「香月博士、ですがっ!」
「命令よ、御剣」
「……了解しました」
「香月副司令っ!」
「あら、月詠中尉、ちょうど良かった。あなたがたを捜してたのよ。……話があるから付き合って貰えないかしら?」
月詠さんの激昂を受け流して、微笑を浮かべながら用件を切り出す夕呼先生。……凄えぜ、夕呼先生。
「……承知致しました。行くぞっ!」
「「「はっ!!」」」
それにしても、夕呼先生、月詠さん達に何の用事だ? ……で、やっぱ、オレの事睨んで行くんだよな、月詠さんに3バカは。
「………」
冥夜は乗る心算、無かったんだろうな。でも、夕呼先生の命令で否応無しに乗らなきゃいけなくなった。ホントは冥夜が乗る気になるのが一番なんだろうけどな。
「……冥夜」
「……何だ、タケル?」
「戦術機の機体性能の差が、戦力の絶対的差じゃないって事、教えてやるよ」
「!? タケル、そなた、何を言って……」
「ん? いや、オレの乗る吹雪の方が、冥夜の乗る武御雷よりずっと強いって事をな」
スペック的には、武御雷と吹雪の差は歴然だ。それを覆すとなれば、よほどの腕の差でしかあり得ない。まあ実際、今の冥夜の腕なら、間違い無く勝てるしよ。
「……ほぉ、言ったな、タケル。その言葉が真か、とくと見せて貰うぞ!」
「おう、オレの実力、思い知らせてやるよ」
「……タケル、そなたに感謝を」
……ちょっとは、元気出たみてえだな。しっかし、何でオレの機体は無いんだろうな?
――11月27日(火)
――純夏の夢を見た。……別に、純夏の事を忘れてた訳じゃねえけど、夢に見るってのは主観的には何年振りだ? それに気味悪いくらい臨場感に溢れた夢だった。……何か、意味が有んのか?
「……どうした、タケル? ぼ〜っとして」
「ん? いや、何でもねえよ」
「――最後に連絡事項を一つ。急な話ではあるが、明日、国連の事務次官が横浜基地を訪問される事になった」
「!?」
な、何だってっ!? 国連の事務次官って言ったら、壬姫のオヤジさんじゃねえかっ! って事は、――HSST落下!! クソッ、明日だったのか!
「――伝達事項は以上だ。解散」
「敬礼!」
夕呼先生にこの事を急いで伝えなくちゃなっ!
――夕呼の執務室
プシュー
「先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生!」
「何よ、うるさいわね〜」
「それどころじゃないんですよ!」
HSST落下の件を話す。先生は即座にHSST落下を食い止める事を了承してくれた。……先生のことだから、面白そうだからってゴネるかも、な〜んて思ってたのは内緒だ。理由は、苦労した自分の予定が狂うかららしい。
それと、オルタネイティヴ4と5の現況、そして、
「――あたしは、オルタネイティヴ5なんか絶対に認めないわよ」
オルタネイティヴ4に賭ける先生の意志を聞かせて貰った。……オルタネイティヴ4の力になれない自分が、正直情けねえぜ、くそっ!
あと、オレが執務室を出ていく時、先生が明日を楽しみにしてろって言ってたけど、どう言う事だろうな?
――PX
「――えー、と言う訳で、『壬姫一日限定分隊長計画』を発動セヨ!」
落ち込んだ気分を切り替えて、明日の壬姫のオヤジさんの来訪に関して話して、『記憶』通り壬姫を『一日分隊長』にするよう提案する。
「……珠瀬を一日だけ分隊長にするのか?」
「あくまでフリだよ、フリ」
「……はぁ、あまりに予想通りで言葉も無いわ」
「真面目に言ってんだよ。千鶴もどうにか壬姫を助けてやろうとは思わないのかよ?」
「私が悪者みたいなノリ、止めてくれる?」
「………」
「何よ、彩峰? 言いたい事があるなら言いなさいよ」
「………」
オレを見るな。どうせ、オレを盾にして千鶴に文句言おうってんだろ? だがな、今のオレにそれができると思うな――
ガシィッ!! ガタタタタッ!!
「なっ、何ぃぃぃぃ!?」
ぐおぉぉぉぉぉっ、どうなってんだぁ!? これまで力負けしたことねえってのにっ!? どんだけ強くなろうとも、この力には抗えねのかっ!?
ガタタッンッ!!!
必死の抵抗もむなしく、慧に引っ張り寄せられちまったオレ。くそ、これがこの世界の摂理とでも言うのかっ!?
「………」
「……おい、引っ張るだけ引っ張って、何にも無しか?」
「……悪者」
「「「「!!!」」」」
「……いや、やっぱり言うな。って言うか、イイ加減放せっ!」
「……もう放さない」
「……そうかよ。この手は使いたくなかったんだがなぁ」
『記憶』の力、思い知れっ! ……ココだっ!
「ひゃあぁんっ!?」
慧の可愛らしい悲鳴共に力が抜けた隙に、戒めから脱出する。……慧、お前の弱い所は知り尽くしてんだよ、こっちはっ!
「……汚された」
「「「「………」」」」
「人聞き悪い事、言ってんじゃ」ドゴォッ!「ばっ!?」
「慧ちゃんに何してんだいっ、タケルっ!?」
「の゛おぉぉぉぉぉぉっ」
こ、このレバー・ブローの、い、威力、や、やっぱり、お、おばちゃんが、ス、スミカ?
「全く、まりもちゃんやみんなに迷惑かけないようにするんだよ、分かったかい、タケルっ!?」
「……ワ、ワカリマシタ」
この後、事情を聞いてくれたおばちゃんが、『壬姫一日限定分隊長計画』に協力してくれる事になった。まりもに、黙認を了承させてくれるそうだ。
で、何か見覚えのある衛士二人組がオレらに話しかけて来たんだが、オレらの教官がまりもって事を確認すると、怯えた表情で足早に去って行った。何だったんだ、あいつら?
――2001年11月28日(水)
――今日も純夏の夢を見た。……数年振りのホームシックか? いや、オレはもう『この世界』の人間だ。もう、その事を受け容れてるって断言できる。
じゃあ、純夏の事が気になってんのか? ……そう言や、『この世界』には、何で純夏が居ないんだろうな? ……まあ、考えて解るような事じゃねえな。ヤメだヤメ。それよりも今日、これからの事だ。HSST落下の阻止、上手く行ってくれよ。
――B4F・兵舎
オレに『記憶』がある時点で、『記憶』と食い違う所が出て来るのはしょうがねえけど、それでも変わらねえモノもある。……パパ、相変わらずだよ。
最初に会ったのが食堂になったけど、やり取り自体に変化はなかった。……オレの心の声に、同意してくれた霞が居なかったから、少し物足りなかった。……ちぇっ。
「こ、こちらが兵舎です!」
で、おばちゃんの協力により、まりもへの根回しは完璧だったらしく、壬姫が偽・分隊長としてパパの案内を務めている。
「「………」」
「壬姫、号令だ号令」
「あ、けっ、敬礼!」
「「お待ちしておりました!」」
「や、休め!」
「うんうん、君達もたまの部下かね?」
「慧、余計な事は言うんじゃ……」
「……あんたもたま」
「「!!」」
「ん?」
バカッ、言いやがった!
「……たまパパ」
まだ、言うかっ!
「……ひげ」
!? オ、オマエが未来を変えんなよっ!?
「し、私語を慎め〜〜〜っ!!」
あ〜あ、やっちまった。
「ぼけっとしてないで、場所を開けないか!」
「…………申し訳ありません、分隊長」
無表情だけど、怒ってんなぁ、慧のヤツ。……後でフォローしとくか。
「凛としたその姿。良いじゃないか、たま〜〜」
ちっとも良くねえよ。
「たまは良い子だ〜、ほ〜ら、よしよし」
このオヤジはぁ〜。
「えへへ〜〜、はっ、あ、ありがとうございます!」
「たまが命令してる姿、もっと見てみたいなあ〜、ん、どうかな?」
やっぱり、こうなんのか。
「そこのっ! 手が空いてるのなら、トイレの掃除でもしろ!」
「………」
って、何で霞がここに!? さっきまで居なかったじゃないかよっ!? あくまでも歴史の辻褄を合わせようってのか、世界はっ!?
――ピコッ
「掃除は適当で良いぞーー」
肯定の意を示して去っていく霞に、声を掛けておく。
「……ん? 君はさっきまで一緒にいた」
「榊千鶴訓練兵であります!」
「連中の相手は疲れただろう? 官僚体質の無能ばかりだからねえ。ご苦労だったね」
「い、いいえ、とんでもありません!」
「榊君もたまの部下だったんだね」
「はい! 分隊長には毎日、御迷惑をおかけしています」
「うんうん、知っているよ。父上に似て、物分りが悪くて頑固で融通が利かないらしいねぇ」
「!!」
あ〜あ。元はと言えば、この修羅場の原因は、壬姫がオヤジさんに出した手紙なんだよな。親バカのオヤジさんが、手紙の内容を大袈裟に言ってるだけなんだろうけど。……やっぱり、こうなんのな。
「たまに迷惑ばかりかけないでくれたまえ」
「…………は、はい」
――ブルブルブルブルブル
……これも後でフォローか?
「君は?」
「鎧衣美琴訓練兵です!」
「ほほぉ、……君か、たまより平坦な鎧衣君とは」
「!!」
――ふるふるふるふるふる
もう、遅いって。
「…………ボクは……ボクは……ひどいよ〜、気にしてるのに〜〜〜っ!」
ダダダダダダダダダダッ!!
「大ダッシュ、するよなあ、そりゃ」
「た、たけるさん、へるぷみ〜」
「すまん」
こればっかりは、歴史がオレ達にこうさせたいみたいなんだ。
「……ん、君は?」
「御剣冥夜訓練兵です!」
「……そうですか、あなたが」
「? 私には、何もないのですか?」
「……死活問題ですので」
「……そうですか」
ま、そりゃそうだろな。オヤジさん、冥夜の事知ってんだし。
「壬姫、安心するな。凄え内容だって事は伝わったぞ」
――ブルブルブルブルブル
「はうあう〜、たけるさんは見捨てないでください〜」
「大丈夫だ……と思う」
オヤジさんは結局、壬姫の嘘はお見通しだったんだ。その懲らしめか、壬姫が仲間に恵まれた事を喜んでなのか、ちょっと性質の悪いお茶目をしてるだけさ、……多分。
「あうあうあうあう〜〜」
それにな、安心しろ、壬姫。
「……白銀武君だね」
ここでみんなの怒りは、オレに向くから。
「先程から見ていたが、うむ、なかなかの好青年だ」
「は、ありがとうございます」
「顔も悪くない、性格も良いと聞いている」
「は」
「おまけに座学、兵科共に成績優秀、冷静で頼りがいがあると言う。今の御時世で、君ほどの男早々居まい」
……何か褒めちぎってねえか? 『記憶』よりエスカレートしてる様に思うのは、気のせいか?
「君ならば、うむ、良いだろう」
――ポン
「たまの事をよろしく頼むよ。傍で支えてやって欲しい、今までも、そしてこれからもね」
「「「!!!」」」
……ほらね。
「いやはや、楽しみだ、ワハハハハハハ」
クッ、けどな、『記憶』のあるオレは一味違うぜ! せめて一矢報いてやらぁ!
「アハハハハハ、でも良いんですか? オレに任せたら、『たま』じゃなくて、『しろ』になっちゃいますよ?」
「「「「!!!!」」」」
「……それは困るな」
うっしっ! やっと、このオヤジに一泡吹かせ――
「……ふむ、しかしだ、珠瀬武、良い名前とは思わないかね?」
「「「「!!!!!」」」」
カッ、カウンタァーーーッ!?
――ガシィッ!
「――お?」
「……ちょっと、いい?」
「いやっ、後にしてくれ」
――ガシィッ!
「んお?」
「タケル、そなたに話しがある。なに、時間はとらせん、……よいな?」
「き、君たち! 事務次官の前であるぞっ!?」
手が震えてるぞ? 怒りで震えてんのか、おい!?
――ガバァッ!
「え?」
「よし、彩峰。そのまま連れ出すのだ」
「手を放してくれ慧。とてもすごくお願いします」
「……もう放さない」
「オ、オマエら、落ち着け!」
「……諦めてね。……どうにもならないって事あるんだよ、人生には」
「美琴、戻ってきた途端それか!」
って、『いっつも』そうだったか!
「……運命って、残酷なんだよ。……ボクだって好きこのんで、うぅぅ〜〜」
「おお、歓迎のパフォーマンスかね?」
あんたなーー、今回、警報鳴らねーんだぞ! このまま連行されちまうんだぞ!!
「よし、連行するぞ!」
「了解」
「全速力!」
ぬあああぁぁぁーーーー!!
「……そこまで!」
「「「「「「!!?」」」」」」
と、オヤジさんの突然の真剣な声に、オレをどこかに連行しようとしていたみんなの動きも止まる。
「白銀武訓練兵!」
「は!」
「君は強化装備を実装して、ハンガーに向かいたまえ」
「え?」
「何をぐずぐずしている。早く行きたまえ」
「りょ、了解!」
オヤジさんの真剣な言葉に、オレは強化装備を実装してハンガーに向かうため走り出す。……この時のオレは知らなかった。ハンガーで一つの『再会』がオレを待っている事を。
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