マブラヴ 未来への咆哮 episode:4 「鬼札JOKERに記される物」 <龍崎天馬さん>



――2001年10月24日(水)

朝、霞が起こしに来るようになった。起床ラッパ前の絶妙な時間。……流石だぜ、霞。
この日の訓練内容は、座学と小銃の分解組み立て実習。今のオレの実力を隠す心算は無い。案の定、訓練兵ではあり得ない実力に、みんなだけでなく、まりもにも驚きの視線を向けられた。
冥夜、千鶴、慧は負けずキライだし、壬姫は能動的に周りのレベルに合わせるタイプだから、オレの実力を見せる事で、みんなの実力の向上を促すのが目的だ。
訓練終了後のPXで、オレと冥夜が今夜、自主訓練をするって話が出ると、千鶴、慧、壬姫も自主訓練に参加する事になった。
この日の自主訓練は、トラックを走るだけじゃなく、組み手もした。結果はオレの全勝。まあ、年季?が違うし、全員の癖、知り尽くしてるし。当然の結果だ。
結局、207訓練分隊自主訓練は、毎日行う事が決定した。冥夜、千鶴、慧、壬姫は、オレに追いつく又は、追い越してみせると意欲満々だ。まあ、オレもそう易々と追いつかせねえけどな。
訓練課程にいる内に出来るだけ、みんなの実力を引き上げよう。そんな事を考えながら、この日は眠りに就いた。


――2001年10月25日(木)

この日の訓練は射撃実習。戦術機での射撃と生身での射撃との差異を指摘。みんな納得して、オレの指摘を反映させて訓練に勤しんだ。
夜の自主訓練。いくらなんでも、一日二日で、劇的な進歩がある訳も無く、みんなはかなり疲れて、オレはそれなりに余裕を持って部屋に戻った。と、

「……? 霞、どうした?」

「……呼んでいます」

オレの部屋の前に立っていた霞が、そう言ってオレの手を引いて歩き始める。

「夕呼先生がオレを読んでるのか?」

――コクリ

で、霞がオレを連れて行き着いたのは、更衣室。霞に促され、室内に入ると、新品の強化装備が置いてあった。

「強化装備? って事は、先生の用事は、一昨日言ってたオレの操縦試験って訳か」

強化装備に着替え、霞と一緒にシミュレータールームに行く。

「――へえ、サマになってるじゃない」

「どうも。で、今から、オレの試験をやるって事で良いんですか?」

「ええ。あんたの操縦技術と機動概念、見させて貰うわ」

「了解」

シミュレーターに入り、操縦席に座る。シミュレーターが起動する。そして、オレは戦いの為に、意識を感覚を、研ぎ澄ます。

「――行こうか」

オレの試験が始まる。


――戦術機シミュレーターモニタールーム

モニターに映る武の試験内容を見守る二人の女性。香月夕呼博士と、彼女の直属部隊であるA-01部隊隊長、伊隅みちる大尉である。

「……今、シミュレーターに入っているのは、何者ですか、副司令?」

「今は秘密よ。そうね、便宜上、『JOKER』と呼ぶ事にしましょう」

「『JOKER』、ですか?」

「深い意味は無いわよ? で、伊隅、あんたの目から見て、JOKERの実力はどう?」

「凄まじい、の一言ですね。……私見ですが、この基地、いえ、国連軍において、JOKER以上の実力を持った衛士は居ないと思われます」

「へえ。まあ、あんたがそう言うのなら、間違いなさそうね」

もとより、夕呼には衛士の実力云々は良く分からないし、みちるの判断には信を置いている。

「で、伊隅。JOKERの機動概念、あんたはどう思う?」

「……今、存在する戦術機の機動概念を、根本から覆すものですね」

「JOKERの機動概念で、全ての戦術機を動かせるようになったら、どうなるかしら?」

「これも私見ですが、衛士の生存率が飛躍的に向上すると思います」

「そう。……なら、迷う事は無いわね」

「? どういう事ですか?」

「JOKERの発案で、戦術機の新OSを開発するのよ。概念構築はJOKERに、概念実証はA-01にまかせるわ」

「!! 了解しました。新OSの完成、楽しみにしています」

「ええ、期待しててちょうだい。……それと、伊隅、まだJOKERと会わせる訳にはいかないのよ」

「……解りました。それでは失礼します。ところで副司令、先程、まだと仰っていましたが……」

「そうよ。しばらくしたら、A-01に回すから。しっかり、こき使いなさいよ?」

「勿論です。しっかり、こき使わせて頂きます」
――ニヤリ×2

武の運命が本人の預かり知らぬ所で、決定していた。

――ゾクリ
「うおっ!? な、何だぁ!? もっ、ものスゲエ、背筋が寒くなったぞっ!?」

シミュレーター内部で、武は物凄い悪寒に襲われた。……君の未来に幸あれ。
この日から六日間、武は夜の自主訓練を終わらせた後、新OSの概念構築に勤しんだ。


――2001年11月1日(木)

新OSの概念構築を終わらせたのが昨日。一仕事終えたせいか目覚めが良くて、起こしに来た霞にショックを与えちまったが。
この日の訓練は、目隠しをしての狙撃銃の分解組み立て実習。壬姫が調整した狙撃銃で長射程狙撃したら、スゲエ驚かれた。まあ、教えてくれた先生が凄腕の狙撃手だったからなぁ。……何気にスパルタだったし。

「――よし、今日はここまで。解散!」

「敬礼!」

今日の訓練が終わった。あ〜〜、腹減った。

「さて、昼飯行こうぜ」

「うん、お腹すいたねー」

「「「………」」」

PXに向かい始めるオレと壬姫。で、何故かそんなオレを無言で見つめる冥夜、千鶴、慧の三人。

「どうした? 昼飯行かないのか?」

「……そなたが今更どのような実力を発揮しようと、驚きはしないと思っていたが」

何だ、まだ狙撃の話か?

「おいおい、冥夜。別に、壬姫よりも凄い事した訳じゃねえだろ」

「……わたし達よりは、すごかった」

「慧、それはいけない事なのか?」

「……うん」

「おい。狙撃でも負けたからって、そういう事言うか、普通?」

「……白銀、兵役の経験、あるんじゃないの?」

あるよ。って危うく言いかけた。ふぅ、セーフ。ヤベェヤベェ、気を付けなきゃな。まあ、厳密に言えば、『今』の『この世界』での兵役の経験は無いんだけどな。

「あのな、千鶴。人手不足のこの御時世に、兵役の経験のある人間に訓練兵をやらせるかぁ?」

「それは、そうだけど……」

「ハァ、とにかく、昼飯に行こうぜ?」

オレの言葉に、ようやくみんなの足がPXに向かう。まあ、明らかに納得してねえみたいだけど。それでも、オレの言葉を嘘と言える根拠は、みんなには無いんだし。……シラ、切り通すか。
そんな事考えていたせいか、PXに向かう道すがら、廊下の角でオレは誰かとぶつかった。

「きゃっ!」

「うおっと」

「あ、ごめん、大丈夫?」

「あ、ああ、こっちこそ」

「ケガ無いかなー? 大丈夫かなー?」

「ああ、オレの方は、大丈……夫…」

オレがぶつかった相手は、美琴だった。そして、美琴を認識した瞬間、オレの中で、記憶が、想いが、怒涛のように噴出する/溢れる/爆発する。

――総戦技演習の夜――触れ合いによって知る「尊人」ではなく「美琴」であること――プレゼントだった、オレの足のサイズにピッタリの「87式軍靴」――ハンガーで繋がった心と体――そして、残された地球での日々/未来への希望を持った別れ――

「美琴っ!!」

オレの中で湧き上がる愛しい想いのままに、美琴を抱き締める。

「わわっ!?」
「「「「!?」」」」

突然、美琴を抱き締めた武に、美琴に声をかけようとしていた冥夜、千鶴、慧、壬姫が固まる。

「……美琴ぉ、美琴ぉぉ」

「わわっ、えっ、えっと、え、えい!!」
――キュ
「「「「!!?」」」」

見ず知らずの男にいきなり抱き締められて混乱していたのか、美琴は何故か武を抱き締め返していた。この美琴の行動に、場の空気が更に混乱する。そして、しばらく抱き合ってから、美琴が口を開く。

「……あ、あの、そろそろ、離してくれないかな? ボ、ボク、教官に、呼ばれてるからっ」

「……お、おぅ、わ、悪りいな」

美琴の言葉に体を離す。抱き締めてしばらくしたら、落ち着きを取り戻してたんだが、美琴に抱き返されて、体を離すタイミングを掴めなかったからなぁ。正直、美琴から言い出してくれて助かったぜ。
それにしても、この『記憶』は、性質悪りいぜ。『想い』が強い分、どうあっても流されちまう。オレが結ばれた誰かと出会う度に、コレじゃあヤバくねえか?

「そ、それじゃっ!」

「あっ」

顔を赤くしたまま、大ダッシュで行っちまった。自己紹介する暇も無く。……まあ、それは後で良いか。それよりも、だ。

「「「「………」」」」

キツイ眼差しでオレを睨んでくる冥夜、千鶴、慧、壬姫にどう言い訳するか、考えねえとなぁ。


「ボクのことは美琴でいいよ。その代わり、キミはタケルね」

「ああ、わかった」

夕刻のPX。無事に美琴と自己紹介をした。相変わらずのマイペースっぷりに頬が緩む。他のみんなからの視線がキツイが。……何か、オレの評価って、上がったり下がったりと、忙しないよなぁ。
それにしても、オレ、知ってる人間とそう言う関係になってるっぽいよな。……今度から、知ってる奴と会う時は注意しとくか?

この日の夜の自主訓練から、美琴も参加することになった。美琴も何気に負けずキライだし、一週間程度の遅れ、すぐに追いつくだろう。
これで、207訓練分隊が勢揃いした。……まずは任官スタートライン目指して、頑張るかっ!!


――2001年11月2日(金)

午前は模擬ナイフを使った近接戦闘訓練。それも終わって、昼食を摂ってる時、美琴が病院で見た放送の話から、純夏を思い出して、場をしんみりさせちまった。
そんで、場の雰囲気を変えようと、オレがあの「チョップ君」に似てるって言われたことが有るって言ったら、みんな、納得しやがった。……クソ、どんなに能力が高くなっても、オレは「チョップ君」なのか、そうなのかっ!?
午後は、救急医療講習。照れとかは今更なので、問題無く終了。で、夕方のPXで京塚のおばちゃんと再会。……『記憶』の再生は無し。おばちゃんには悪いが、流石にそれはありえねえよな。
そんなオレの安堵?を余所に、おばちゃんに、「変なちょっかいかけてこの娘たちを泣かせたら、あたしが承知しないよっ!」って、どつかれながら言われた。オレの周囲からの評価はそんなモノらしい。……ヘコむね、マジで。
更に、壬姫が「大きくなりたい」と言ったことに、「背が?」と先回りしたせいで、カタブツ・冥夜の同類扱いされた。……未来を知ってるって、良い事ばかりじゃねえなぁと、しみじみと実感させられた。
で、夕食を食いながら、美琴の入院に纏わる話を聞いたりしていたら、

「みんな、ちょっと聞いて」

「「「「「?」」」」」

不意に、千鶴がみんなの注意を集める。

「とうとう11月に入ったわ。総合戦闘技術評価演習までもう1ヵ月もない。……準備は、間に合う?」

「ああ、オレはいつでも行ける」
「全然問題ないよ」
「うん」
「……うん」
「わたしも!」

そして、総戦技演習の内容や、涼宮の話を挟んで、

「とにかくっ! 私たちはもう失敗するわけにはいかないの! それ、肝に銘じておいて」

「大丈夫だよ! 今回はタケルがいるじゃない?」

「そうだな、油断は禁物だが、不安材料が確実に減っているのもまた確かだ」

「………」

「千鶴、浮かない顔してるよな」

「別に……」

……総戦技演習か。今回はちゃんと水着持って行かなきゃなぁ。しかし、何で強化装備じゃ恥ずかしくて、水着はO.Kなんだろうな?

「……どうした、タケル?」

「ん? いや、何でもない」

まったく、何考えてんだ、オレは? もし、考えてること読まれでもしたら、またオレの評価が下がっちまうってーの。

「当てて見せましょうか、考えていたこと」

なぬ!? ま、まさか、千鶴の眼鏡には、人の精神を読み取る能力が有んのか!?

「どうして前回、私たちが合格しなかったかってことじゃないの?」

いや、違う。

「いや、ちが」
「仲間としては気にならない?」

「いや、そりゃ、気にはなるけどさ」

てか、今、オレの台詞、遮られなかったか?

「……部下をまとめられない無能な分隊長と、指示に従わない部下、見切りをつけて独断した部下……、主にこれが理由」

「さ、榊さん……」

「ど、どうしてそんなことわざわざ言い出すの?」

「……違うね。最後はアンタの指示に従って、地雷原の餌食になったんだ」

「彩峰さんまで!?」

「……鎧衣は迂回するべきだと言っていた。鎧衣の勘は尊重されるべきだと、事前に了解済みだと思っていたのだがな……」

「冥夜さんっ!」

「「「………」」」

「あわわ、ど、どうしよう」

「どうしようって言われてもー」

……何で、オレを見る、壬姫、美琴。……ハァ、ったく、しょうがねえなぁ。

「あのさ、言っても良いか?」

「……ええ、何?」

「おまえら、ホントに先に進みたいのか?」

「「「「「!?」」」」」

「不合格は不合格だろ。出ちまった結果は、もうどうにもならねえ。けど、チャンスはまだある。なら、する事は一つ、そのチャンスをモノにするってことだ、違うか?」

「「「「「………」」」」」

「だってのに、過去の失敗、いつまでも引き摺ってよ。自分と仲間を卑下したり、挑発に乗って責め立てたり、自分の考えの正しさを主張したり、……良かったよな、おまえら。失敗したのが、演習で」

「「「「「!!」」」」」

「失敗しても、こうして生きて前に進めるんなら、失敗に囚わねえでそれを次に活かせば良いだけだろ? それなのに、さっきの話、おまえらがどんな心算でも、オレには足踏みしてるようにしか見えなかったぞ?」

「「「「「………」」」」」

「おまえらが何の為に、ここに居るかは知らねえ(知ってるけどな)。けど、今のおまえらは、ここに居る理由を充たせる自分でいるか?」

「「「「「………」」」」」

「オレには守りたいものがある。叶えたい目的がある。そう言う個人的な要求と、BETAを倒し地球を取り戻すって言う大儀を、高いレベルで両立させることが、BETAと戦う上で必要だとオレは思ってる」

「「「「「………」」」」」

「それでも、守りたいものも、叶えたい目的も、自分一人の力じゃどうにもならない。だからオレ達は、ここに居るんじゃないのか? そして、何かあった時、失うのはそいつだけのものじゃない。……それ、解ってるか?」

「「「「「!!」」」」」

「自分の努力は報わせろよ。それとも何か? おまえらがここに居る理由も、おまえらの努力も、そんな風にフイにしても良いくらいの、そんな軽いモノなのか? ……違うってんなら、しっかり前を見て進めよ!」

「「「「「………」」」」」

みんな、俯いちまってる。……少し、言い過ぎたか?

「……まあ、色々言ったけど、要は、総戦技演習、合格するために頑張ろうぜって事だ。今日の自主訓練は、お休みだ。……おまえらがここに居る理由、もう一度じっくり考えてみろよ。それじゃ、お先」

言って、みんなを残して席を立つ。オレの言ったこと、みんななら解るはずだ。オレは信じてるぜ、みんな。


――2001年11月8日(木)

結局、オレの柄にもねえ説教?は効を奏したらしく、みんなの意気と連帯感がスゲエ高くなった。この分なら、総戦技演習の合格は間違いなしだな。
ただ、みんなの意気と連帯感が、いつかオレに吠え面を掻かせるって事で成り立ってるのが、微妙に悲し過ぎるぜ。……まあ、みんなが成長してくれるんなら、それでも良いけどよぉ。
そして、この日の自主訓練が終わった後、霞を訪ねた。霞と総戦技演習の話していると、不意に総戦技演習に受ける前に、佐渡島からBETAが侵攻してきて、オレが気絶しちまったことがあった事を思い出した。あん時のオレ、情けなかったよなぁ。
総戦技演習に行ったら、霞にお土産を持って帰る事を約束してから、自室に戻った。が、すぐに夕呼先生からお呼びがかかった。
ちなみに、呼びに来たのは、まりも。『第二の狂犬事件』以来、オレの接近を極端に警戒してる。……傷付くぞぉ、その態度は。自業自得なんだけどさぁ。
先生の用件は、『前』の話を聞くことだった。随分いきなりな話だが、まあ、夕呼先生だし。

「……はあ、良いですよ」

しかし、何かタイミングを計ったみたいにタイムリーだな。……まあ、いくらなんでも偶然だろ。

「確か、今度の休日、佐渡島から旅団規模のBETAが、横浜基地に向けて本土に上陸します」

「!! 今度の休日って言ったら、11日ね。日にちは確か?」

「ええ、まあ。印象深い出来事でしたから」

気絶しちまったことは、内緒にしとかねえと、何言われるか分かったもんじゃねえ。

「新潟から上陸したBETAに第一次、第二次防衛線を突破されて、北関東絶対防衛線までBETAの侵攻を許してしまい、横浜基地も第2種戦闘配備が発令されたんです。結局、帝国軍がBETAを何とか殲滅して、絶対防衛圏への侵攻は阻止しました」

「そう。……で、白銀、どうする?」

「どうするって、何の事です?」

「今、あんたが話した件に介入するかどうか、訊いてんのよ」

先生は、笑いながら、そんな事を言ってくる。……もしかして、オレを試してんのか?

「……どうするかは先生に任せますよ。オルタネイティヴ4を取り巻く状況が判らない以上、オレから先生に介入を頼むことは出来ませんよ」

「へえ、結構考えてんのねぇ、白銀?」

「未来を繋げる為には、オルタネイティヴ4の成功が必須ですからね。そりゃ、考えもしますよ」

「それでも、あたし達が動けば、少しでも犠牲を減らせるでしょうね」

「……そうですね」

「……見捨てる?」

「……はい」

「――へえ」

「……目的のぞみを叶える為に、踏み躙らなきゃならないものなら、オレは踏み躙って往きます。それが、オレの覚悟です

「……そう。それじゃ、今日はもういいわよ」

「……はい」

そうして、オレは部屋を出ようと扉へ向かう。が、扉の手前で足を、止めて、口を、開いちまった。

「……それでも、踏み躙らなくていいなら、オレは踏み躙りたくねえんだ」

「………」

クソッ、何で、こんな弱音、吐いちまってるんだ。……情けねえ。オレよりも、先生の方がよっぽどキツイってえのに。

「……失礼します」

オレは逃げるように、先生の執務室を後にした。


――2001年11月11日(日)

この日、帝国軍はBETAの襲来を予測していたかのような戦力展開をして、BETAの侵攻を阻止した。
結局、先生は介入したみたいだ。先生には、先生なりの考えがあって、介入したんだと思う。それでも、先生に感謝した。
そんなシリアスに決めてたオレを余所に、美琴は、こけて崩した『踊る蝶々』をいつまでも惜しんでいた。……そんなにすげえ物だったのか? もう見れないと思うと、ちょっと残念になってくるのが不思議だ。


――総合戦闘技術評価演習

結論から言えば、オレ達207訓練分隊は、五日で合格した。これで、任官スタートラインに一歩前進だ。取り合えず、今は合格を喜ぼう。
今回は、蛇に噛まれたりしなかったし、体調もバッチリだったんで、美琴との素肌の触れ合いはなかった。
今、思えばアレが、美琴がオレを意識し出したキッカケだったと思う。つまり今回、美琴はオレが積極的にそう言う方向に動かない限り、オレに戦友以上の感情は持たねえだろう。
これは、他のみんなにも言える事だと思う。冥夜は天元山の救助活動、千鶴と慧は実機演習中の合宿、壬姫はHSST事件と言ったキッカケが無ければ、オレとみんなが結ばれる可能性は、限りなく低くなる筈だ。
みんなの隣には、みんなを護り切れる奴が立てば良い。……オレに、みんなの隣に立つ資格は、もう無えんだから。
オレに出来る事は、未来を繋ぐ事と、未来に生きてもらう為に、みんなを強くする事だ。……オレは、それだけで良い。それで良いんだ。

演習の翌日、南国のバカンスをオレ達は堪能した。……眼福眼福。
あと、霞のお土産も忘れねえようにしねえとな。つっても、店とかがあるわけじゃねえんで、綺麗な貝殻を浜辺で拾った。……言っとくが、手抜きじゃねえぞ。ちゃんと綺麗な物を選んだぞ。

そして、オレ達は横浜基地に帰還した。明日から、戦術機訓練だ。さて、任官スタートライン、目指して、頑張って往こうかっ!


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