マブラヴ 未来への咆哮 Last episode 「輝ける明日に向かって」 <Tシローさん>
『桜花作戦』から数日、武は自室で目を覚ます。ただしB4Fの部屋ではなく、急遽移されたB19Fの部屋なのだが。これは、横浜基地の人間が武の部屋に殺到したため取られた対応策だ。『桜花作戦』の成功に沸く横浜基地で、武が常に中心だった事を考えれば当然の措置と言える。……特に夜這い関係。その中には男も混ざっており、武を戦慄させたが。 ――それは、とてもおおきな、とてもちいさな、とてもたいせつな、あいとゆうきのおとぎばなし――
――立ち上がるための希望の源は、ただ愛する人に未来を希う意志だった。 「―――冥夜」
――トサッ――大切に、大切に―― 「―――悠陽」 ――これまで、幾万回も口にした名前を―― 「――― 千鶴」 ――これから、幾億回でも口にしたい名前を―― 「―――慧」 ――愛しむように、口にする―― 「――― 壬姫」 ――消えてしまうと解っている―― 「――― 美琴」 ――悲しませると解っている―― 「―――晴子」 ――それでも、どうしても伝えたい想いがある―― 「―――まりも」 ――今まで 砂の鳴る渇いた音が幾つか重なる。この上もない別れの言葉は、みんなから立つ力を奪い去った。力無く海岸に腰を落とし、涙に滲む視界の中、弱まっていく白光の輝きを虚ろな瞳で見詰める。けれどその心の内で、ただひたすら武を想う。運命などに、この想いを奪わせてなるものかと。 ……しかし、運命は無情だった。パラポジトロニウム光の輝きは急速に弱まっていき、そして、その輝きの消失と共に、白銀武も消え去って―――――― ――――――いなかった。 「…………………………え?」 その声は誰の物だったか。だが重要なのは、誰が上げたのかではなく、何を見て上げた声であったかだった。 涙に滲む視界に映る、頭部が白く黒い服を着ている誰か。涙を拭って見れば、そこに居たのは――― 「…………白銀ぇ〜、いつまで間抜け面、晒してるつもり?」 「――――ッ!!?」 夕呼の言葉に、それまで満たされた表情で立っていた武は、ビクンッとしてから目を開け、何度も瞬きする。そして、混乱した表情を浮かべた武は、おもむろに頬を引っ張った。 「ひてててててててっ!? ……痛え。夢、じゃない 『武/タケル/たけるさん/白銀/白銀大尉/白銀さん/タケルちゃんっ!!!』 こんな状況で真面目にあんな事をするのは、武しかいない! そう思った瞬間、さっきまでの状態が嘘の様に力が湧き上がり、翔ぶが如く武の許へ駆けて行き、その勢いのままに身を預けた。……純夏、冥夜、悠陽、千鶴、慧、壬姫、美琴、晴子、霞、水月、遙、祷子、茜、ピアティフの計14人が。――そうなれば当然、 「―――ぷれすっっっ!!!?」 受け止めることなど出来ずに、武は圧し潰された。その結果、武の口から魂的なものが押し出されたが、みんなが泣き止むまでその状態から解放される事はなかった。 だが、解放されたらされたで、武は地獄を味わう事となった。――何故なら、武が消えなかった事で、みんなの昂ぶった感情がとんでもなく物騒な共同攻撃 フォーメーションV、GO!!! 「―――武のバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカッ!!!」 「べっべっべっべっべっべっべっべっべっべっべっべっべっべっべっ!!?」 先陣は、千鶴の高速往復ビンタだ! 「―――武の……バカッ!!!」 「どわあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!?」 ビンタでピヨピヨ状態になった所を、慧のS 「―――たけるさんのぉ、ばかぁっ!!!」 「ぎゃへえっ!? ずわっはぁっ!!?」 上昇の途中、壬姫ブゥメラァンが武を切り裂き! 「―――タケルの、バカ―――――――――――――――ッ!!!」 「うばぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!?」 投げ飛ばれた頂点で晴子に捕まり、ダンクシュートで武は地上に叩きつけられる! 「「白銀のぉ、馬鹿っっっ!!!」」 「がはぁっっ!!! ………な、何で、二人が………?」 起き上がった所に、水月と茜のクロスアックスボンバーが炸裂! 「―――タケルのバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカッ!!!」 「しべあっ!? ぶでひっ!? ばわたっ!?」 度重なるダメージでフラフラの武に、美琴が左近から教えられたどこかの一族秘伝っぽい秘孔の百烈突きを放つ! 「「「―――白銀大尉の、バカッッッ!!!」」」 「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ、マジで、普通に痛いっ!?」 遙と、祷子、ピアティフは普通に、けれど本気で抓ってます! 「――光風霽月、輪をもって成す……『月の輪』 「――祓正無道 ―――タケル/武の、馬鹿者っっっ!!!」」 「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」 皆琉神威 「―――タ・ケ・ル・ちゃ・ん・のぉ〜〜〜〜〜〜、ばかぁ―――――――――っ!!!」 「グッバイ、アァ―――――――――スッ!!!」 そして、どりるみるきぱんち&ふぁんとむによって、武は星になったのだった!! 「…………んっ」 沈んでいた意識が浮上していく感覚。……ああ、オレは目覚めるんだなと解る。 「――目覚めたか、白銀?」 「――ッ!?」 こ、この声はっ!! 「…………さ、沙霧さん」 「……久しいな、白銀」 目を開けるとすぐそこに、オレがこの手で討った沙霧さんの姿が。 「何て顔をしているのだ、白銀」 「沙霧さん……オレは、オレはっ!」 「もういい、白銀。――もう、己を赦してやれ」 「………っ…」 沙霧さんの言葉に、視界が滲んでいくのを止められない。 「……貴様は我らの託した想いに見事応え、念願を果たしてくれた。人類の未来を切り拓いてくれた。……この身に余る話と解ってはいるが、数多の英霊に成り代わり、礼を言わせてくれ」 そう言って、沙霧さんは深々と頭を下げた。そして、沙霧さんはオレ達の頭上高くにある光を指し示す。 「――さあ、白銀。貴様はまだ此方に来るのは早過ぎる。還るのだ。貴様を待っている者達がいるのだから」 「……はいっ! …………けど、どうやって戻れば?」 「――それは、この一文字鷹嘴がまかせもらおう!」 「タ、タカハシさん!?」 声をする方を見れば、そこにはポーズを決めたタカハシさんの姿が。……も、もしかして、夕凪の艦長の一文字さんって、タカハシさんだったのかっ!? 声しか聞いてないから解んなかった。 「我が送迎最速理論を以って、貴様を送り還そうではないか! その為に沙霧大尉、あなたの力を貸して欲しい!」 「心得た、鷹嘴殿!」 そう言って、タカハシさんが取り出し沙霧さんに渡したのは、金髪アフロのかつらとゴーグルっぽいサングラス――― 「――それはヤバイですって!!?」 「!!?」 そんな叫びと共に上半身を勢いよく起こしたオレは、その直後クラッと来て、上半身を再び後ろに倒す。と、後頭部に柔らかい感触を感じる。目の前にはオレの顔を逆さに覗きこむような霞の顔。……どうもオレ、霞に膝枕されてるっぽい。 「……大丈夫ですか?」 「ああ、大丈夫だ、霞」 「……ビックリしました」 「そっか、悪りいな。……何か、途中までは凄え良かったけど、最後がとんでもない悪夢を見たような気がして……」 「……よくわかりません」 「まあ、オレもよく覚えてないから気にすんな」 確かに、もう夢の内容は殆ど思い出せない。……けれど、オレにとってとても大事な夢だった。そんな気がする。 「――起きたの、白銀?」 霞の膝枕されてる所に夕呼先生がやって来る。 「夕呼先生!? オレは――」 「ストップ。説明はまとめてするから、あっちのを呼んでからね」 「あっち? …………うわっ」 夕呼先生の指差す方を見れば、フォーメションVに参加したみんなを残らず正座させその前に立ち、烈火の如く説教する憤怒のオーラ迸るまりも、月詠さん、真耶さんの姿が。……3人の放つオーラが混ざって、もうなんかケルベロス降臨って感じで、怖過ぎた。 「まりも。白銀が目を覚ましたわよ〜」 「――武っ!」 夕呼先生がそう言うと、まりもは弾かれたようにこっちに走って来て、オレは優しく抱き締めてくれる。そして耳許で小さく、 「――バカ」 って言われた。 「……ごめん」 そう答えて、オレもまりもを抱き締める。……周りの視線が凄え痛かったけど。 「――ところで、夕呼先生。…………オレは何で」 「消えていないのか、でしょ?」 「……はい」 オレを含めた全員がひとまず落ち着いた所で、オレは夕呼先生に尋ねる。 「あんたが「この世界」に存在するには、3つの力が必要。それは解るわね?」 「はい。世界の力、周囲の認識、オレの意志ですよね?」 「そう。「因果導体」じゃなくなったあんたは世界の力と、自分の状態を知ったために意志を失った。残ったのは周囲の認識だけな訳なんだけど。白銀、今世界であんたの事を知らない人間なんて、殆どいないのよ?」 「……ま、まさかっ!? そ、そのために、オレを「英雄」に祭り上げたんですかっ!?」 「そうとも言えるわね。まあ、主目的は広告宣伝であって、あくまで副次的なものよ。成功の保証も無かったし」 「けど周囲の認識だけで、オレは「この世界」に存在できるものなんですか?」 何だかんだ言っても世界の力、即ち「因果導体」である事が、オレと言う存在の根幹に関っていると実感して理解できていただけに、納得できない。……もちろん、こうしてオレが存在できてる事は嬉しいに決まってんだが。 「……これは推論なんだけど、あんたを世界の中心として起こった『繰り返し ……知ってた? 世界ってね、閉じてるけど巨大なのよ。人間一人分くらいの因果情報を賄うなんて余裕に決まってんじゃない」 「…………そんなもんなんですか?」 「まあ、所詮推論よ。実証は、ほぼ不可能と見ていいわね。……ただ、今現実にあんたは「この世界」に存在してる。――それが全てよ」 「……はあ」 「実感できてないって顔してるわね。……それじゃ、あたしが実感させてあげる」 そう言った夕呼先生がいきなり唇を重ねてきた。つーか唇を重ねるどころか、すっげえディープなキスだった。 「!!!!?」 『――――――ッ!!?』 オレも激驚いたが、みんなも烈驚いてる。 「ん〜〜〜、ジュゥスィ〜〜〜」 オレの口内を思う存分堪能したって感じを醸し出す夕呼先生は、愉しそうに笑う。 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆ夕呼先生っ!!?」 年下は対象範囲外だって、いっつも言ってたじゃん!? けど、今のは間違い無くマジキスだった!! 何でっ、どうしてっ!!? 「いや〜〜、計算外だったわ。……鑑の行動が」 「ええっ!? わ、わたしっ!!?」 「ずっと鑑がプロジェクションしてたせいで、この場に居た全員が、白銀の気持ちをダイレクトに感じた事になったでしょ? 例え自分に向けられたものじゃなくても、あんな気持ちに触れちゃったら、コロッとイッちゃうわよ。……まあ、それなりの下地が必要だとは思うけどね」 「…………冗談ですよね?」 「何よ、白銀、その言い草は。大体ね、あたしが落ち込んでたからって、本当に何とも思ってない奴に自分から体を許すと思う?」 ……いかん、もの凄い説得力だ。 「そもそも、「嫌い」に理由は在るけど、「好き」に理由なんて必要無いのよ」 「……夕呼先生とは思えない、乙女チックな言葉ですね」 「……悪かったわね。乙女チックってヤツが似合わなくて」 ……ヤバイ。拗ねる夕呼先生の表情が可愛いとマジに思えた。 「……で、でも、本気なんですか?」 「……しょうがないじゃない。流石のあたしもあんたの力には抵抗できなかったんだから」 「は? オレの力?」 「「向こう」のあたしの提唱した「恋愛原子核論」によれば、白銀、あんたは「人を好きになる」と言う「恋愛原子核」の力が最も強い因果情報のみで構成された、――――正に「究極 「究極 「……究極 「「ほ、本気、遙/お姉ちゃん……?」」 夕呼先生のその言葉に、もの凄い敗北感がオレを打ちのめす。…………何に敗北したのか全然解んねえけど。 「……フフッ、夕呼ったら、照れちゃってる」 「…………コホン。とにかく白銀、そう言う事だから。まあ、一人二人 じゃないだろうけど 今更増えたってもう大差無いんだから、気にしないでおきなさい」 「……ふ、二人って?」 「あら、社は仲間外れなの?」 「えーーっ、タケルちゃん、ひど〜〜いっ!!」 「だ、誰も、そんな事言って無いだろ!?」 「だって。良かったわね、社」 「……はい」 ――んがっ!? やられたっ!! 地面に手と膝を付き、項垂れるオレ。……まるで負け犬のようだ。…………もちろん、何に負けたのかは全然解んねえけど。 「で、そっちの話は関係者全員で追々詰めていくとして」 「……もう、好きにしてください」 「ええ、好きにさせてもらうわ。とにかく白銀、あんたにはまだまだ働いてもらうわよ。 ―――人類の勝利の為にね」 「―――了解っ!!!」 ―――そして、地球を奪還するための戦いが始まる……… ………その前に。 翌日、PXで朝食を食べている時の事だった。……ちなみに、昨日の晩はまりもと一緒でした。 「――速瀬中尉と涼宮中尉、髪切ったんですか?」 二人ともかなりばっさり切ってるから、最初誰か判んなかった。 「……まあ、切り時が来ちゃったからね」 「切り時?」 「ところで、白銀君。……どうかな?」 「どうかなって、………………ああっ、似合ってますよ」 「えらく間が空いたわね。で、白銀? どんな風に似合ってるわけ?」 「ど、どんな風って……」 「キリキリ答える!」 「り、了解! えっと、速瀬中尉は今までより大人っぽいって言うか落ち着いた感じになってますね」 「……つまり、今までは子供っぽくて落ち着きがないと思ってたわけね」 「……………ノ、ノーコメント」 「し〜ろ〜が〜ね〜」 ヤベッ!! 正直に言い過ぎた!! ここは緊急避難だ!! 「でっ! す、涼宮中尉は………」 「……私は?」 「……可愛くなってますね」 「本当?」 「ええ、本当です」 ……正直、年上に全然見えねえ。年下だって言われたら納得しちまいそうだ。 「それで、何で二人とも髪切ったんです?」 「「………」」 いや、何でそこで無言? まあ、オレには関係ない事なんだろうなとその時は思ったんだが、とんでもなかった。 その日の午後の実機訓練で、なぜかオレ対速瀬中尉、風間少尉、涼宮の三人のチームって組み合わせで対戦させられた。それで涼宮中尉が向こうの、ピアティフ中尉がオレの管制を担当してくれた訳なんだが、……まさか、あんな事されるとは思いも付かなかった。 「「「「「白銀/君/大尉、好き/よ/です!!」」」」」 「……………………は?」 唐突過ぎる一斉の告白。そうしてオレが呆けた所に、ペイント弾が雨霰と着弾して『武』に大破判定が出る。 「……ず、ずりいっ」 で、ハンガーに戻ったオレはすぐに速瀬中尉達の所に抗議に向かったんだが、 「――白銀。言っとくけど、さっきの告白は本気よ」 って言われて唇を奪われた。……本当に奪われたって感じだった。さらに風間少尉に涼宮、後からハンガーに来た涼宮中尉にピアティフ中尉にも。そう言えば、五人共、昨日あの場に居たんだよなぁ。まあ、夕呼先生がああなるくらいなんだから、こうなる事も予想できる訳…………ねえだろっ!! もうみんな、退く気無しで気合満々なんだよなぁ。 で、更にこの日から一週間後、悠陽の呼び出しで行った帝都の超高級老舗料亭には月詠さんと真耶さんだけが居て、通された部屋の隣室には布団が一つ枕が三つあって、 「……今、ここにいる事が私達の答えと思って欲しい」 「否ならば、このまま何も言わず横浜基地へ……」 なんて思い詰めた顔で言われて。まさか月詠さんと真耶さんまでそのオレの事好きだなんて思いもしなかったから、ショックで成すがままに事を運ばれ。……結局、二人を呼び捨てで呼ぶような関係になりました。しかも翌日は悠陽と二人きりでした。…………だから、横浜基地に帰った時、またフォーメーションVを喰らいました。 ………………これが「究極 いや逃げるつもりがあるかって聞かれたら無えけどさぁ。色々と複雑なんだ。みんなが笑顔でいるなら良いかって思っちまうけど。……結局、そんな関係に3ヶ月もしない内に慣れたんだけどな。 まあ、そんな感じでオレ達は、新たな局面を迎えたBETAとの戦いに身を投じる事になったんだ。 ――『桜花作戦』より2年の月日が流れた。人類は人類の英雄、『白銀の閃光 この人類の快進撃は、地球上全てのBETAの頭脳にして指揮の頂点である超大型反応炉、BETA側の呼称「上位存在」の破壊と新OS『XM3』の普及、そして『凄乃皇四型』の力に拠るものだった。 そうして、人類の快進撃の末、その日は訪れた。奇しくもその日は今は無き「未来」、移民船団が地球を旅立った日であった。 「――1973年、喀什 それでも、我々はたった一つの希いを抱いて生きてきた。………この母なる星を、地球を取り戻すと言う希いを! ………………告白しよう。私はその日の訪れる事を希っていた。だが、その訪れを心の底から信じる事ができずにいた。………だが、しかし! 今日と言う日は確かに、訪れたのだっ!! ………失ったものは数知れず、取り戻せないものは余りにも多い。………悲しみは未だ晴れず、怒りも鎮まる事はない。………だが、今日だけは、ただ喜びに支配される事を許して欲しい。 ―――人類 この世界中に発信された国連事務総長の『地球奪還宣言』を以って、地球上でのBETAの戦いは終結を迎えたのだった。 『地球奪還宣言』から2週間後、オレ達A-01と夕呼にイリーナは帝都城は謁見の間にいた。……まあ、この2年の間にも色々あったんで名前で呼べるようになるさ。 それで、何でオレ達がこんな所にいるかと言えば、A-01が名実共に人類反攻のフラグシップ的存在だからだ。なので『地球奪還宣言』から今日まで、国連を始まりとして現存する国家全てから最高位の勲章・褒章を授与されてきた。そして、今日は日本帝国の番って訳だ。 ちなみに、『桜花作戦』以後はA-01も表舞台に立つようになり、ヴァルキリーズの人気も凄え高い。けど、オレの人気が下がったりしない。何故なら、あんなに凄い彼女達を虜にするなんて流石だって言うのが世間の評価らしい。……そのせいでヴァルキリーズが「シルバー・ハーレム」なんて言われる事もあって、伊隅少佐と宗像大尉にものすっごく怒られた。……オレのせいじゃ………あるよなぁ。………ハァ。 で、政威大将軍である悠陽を始めとした文武百官ってやつが居並ぶ謁見の間で待つ事しばし、遂に皇帝陛下が御簾の向こうにやって来た……瞬間、 「…………冥夜タァァァァソッッッッ!!!!」 あっさり御簾を押し上げて冥夜に飛び掛かる、正真正銘の日本帝国皇帝、雷電。 「――人の女に何しようとしてんだ、爺っ!!」 「むぅとろんっ!!?」 それを思わず撃墜しちまうオレ。……謁見の間が一瞬凍りつく。が次の瞬間、斯衛が一斉にオレを捕らえようと殺到してくる。その中でオレを守ろうとする影が二人―――真那と真耶だ。 「――鎮まれぃっ!!! 御前であるぞぉっ!!!」 オレが押さえつけられる寸前、紅蓮大将の轟声が謁見の間に響き渡る。だが、斯衛はオレをそのままにしておけないと動こうとするが、 「―――良い、下がれ」 立ち上がった雷電の爺さんの一声で、真那と真耶を含めた斯衛全員が引き下がる。 「白銀武、そちの沙汰は後じゃ。――冥夜よ、大きゅうなったの」 「ヘ、陛下、お、畏れ多う御座いますっ」 自分に歩み寄ってくる雷電の爺さんに、冥夜は平伏する。 「面を上げよ。……余に愛しい孫娘の顔を見せておくれ」 「―――ッ!!」 煌武院先代当主の奥さん、即ち悠陽と冥夜の母親は皇女だったそうだ。つまり、「この世界」でも雷電爺さんは悠陽と冥夜の祖父さんなんだよな。 「おうおう、母に面差しが良う似ておる。悠陽と同じじゃ」 「……あ、ありがたき幸せっ」 顔を上げた冥夜の頬を愛しむように撫でながら、雷電爺さんは顔を綻ばせる。 「……こんな可愛い孫娘を余から引き離しおって。煌武院のしきたり、無くすべきじゃな」 ……何気にかなりとんでもない事言ってねえか、あの爺さん? 「――陛下っ! 褒章の授与を致しますればっ!」 紅蓮大将にそう言われ、名残惜しそうに御簾の向こう側に戻る雷電爺さん。……御簾の意味が無い様に思えてしょうがねえんだけど。 とにかく、褒章を授与されるオレ達、と思いきや、褒章はオレにだけ無かった。……やっぱ、撃墜したからかな? 「白銀武、そちは余から大事な大事な愛し〜〜〜い宝を二人も奪った! 故に、そちに授ける褒章は無い!」 えっ、そう言う理由? 「と言って、そちに褒章を授けん訳には行かぬので、華燭の典を執り行う事を許す!」 「かしょくのてん?」 「結婚の儀の事じゃ」 「…………は?」 「先日、国会にて民法が改正されたのは知っておろう?」 確か現在の人口比率が女性の方が高いから、世情を鑑み一夫多妻制を採用するって言われてたヤツだよな。つーかそれ、可決されたの一昨日じゃん。…………あれ、えっと、つまり? 「つまり、そち達全員が日本の一夫多妻婚姻の第1号となるわけじゃ」 『はあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!?』 その言葉で、謁見の間にオレ達を含めたその場に居たほぼ全員の驚きの声が響き渡る。驚いてないのは、発言者の雷電爺さんとニッコリと笑った悠陽。………これ、絶対おまえの仕業だろ、悠陽っ!! 法改正に合わせて、雷電爺さんを説得してたんだな? ……こ、こういう所が怖いぜ、悠陽は。 ―――そして、あれよあれよと言う間に、結婚式へ。この結婚式、一夫多妻制の認知普及促進のためと、これからの宇宙での戦いに向けての士気軒昂策と言う政治的な思惑もあり、来賓はVIPがわんさか、結婚式の模様は世界中にリアルタイムで発信と、後の歴史に語り継がれる人類史上最大規模の結婚式となった。 そんな式の中、武が居並ぶ花嫁に問い掛けた。 「………………なあ、みんな幸せか?」 その答えは――― 『ワアァァァァァァァァァァッ!!!』 その光景を見ていた全ての人々が歓声を上げた、花嫁達の熱い唇付けだった――― 白銀武:月攻略戦、火星攻略戦で多大な戦果を挙げ、「白銀武の前に白銀武なく、白銀武の後に白銀武なし」と、後の歴史に謳われる大英雄となる。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『武・四型』。 火星攻略戦後、国連軍を退役し、国連軍横浜基地を基に設立された国際衛士養成機関「Gaia-Guardian-Garden」の戦術機教官となり、多くの優秀な次代の衛士を育て上げたが、同時にその訓練は熾烈を究めたので、教え子達には鬼教官5の一人として畏敬されていた。 享年、73歳。子供や孫、曾孫達には未来を託し、一人として欠けていない愛する妻達には変わらぬ愛を告げてから、安らかに逝った。 死後、「Gaia-Guardian-Garden」の裏の丘に彼を祀った神社が建立される。軍神としてだけでなく、恋愛成就、安産、家庭円満の神としての信仰も集めていたりする。 鑑純夏:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時は超弩級万能戦闘母艦『高天原』の艦長兼制御ユニットを務めた。 軍は武と共に退役。退役後は家庭に入る。武との間に子供はいなかったが、武の子供達全員に純夏ママと呼ばれ慕われていた。 武の死後、眠るように『量子電導脳』の機能を停止させ、以後、鑑純夏の人格が蘇る事はなかった。 御剣冥夜:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『ヴァルキリー・TypeW』。 軍は武と共に退役し、一緒に「Gaia-Guardian-Garden」の教官となる。鬼教官5の一人。 御剣家は後に「日本の剣」と呼ばれ、斯衛の長となる優秀な武人を輩出する事になる。 武との約束を守り、武の死後、姉と共に穏やかに息を引き取った。 煌武院悠陽:火星攻略戦後に政威大将軍位を後進に譲り、家庭に入る。と言っても、一から家事を学ばなければいかなかったが。 煌武院家は、後に五摂家において最も多くの政威大将軍を輩出する家となる。 武の死後、妹と共に穏やかに息を引き取った。 榊千鶴:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、月攻略戦まで武と共に戦う。月攻略戦時の機体は、第4世代戦術機『ヴァルキリー・TypeU』。 月攻略戦後、国連軍を退役。父の側近であった代議士の秘書になり、政治家を目指す。そして、日本初の女性首相となった。 榊家は後に「日本の盾」と呼ばれ、多くの優秀な政治家を輩出する事になる。 武との約束を守り、武の死後、穏やかに息を引き取った。 彩峰慧:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『ヴァルキリー・TypeW』。 軍は武と共に退役し、一緒に「Gaia-Guardian-Garden」の教官となる。鬼教官5の一人。 武との約束を守り、武の死後、穏やかに息を引き取った。 珠瀬壬姫:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、月攻略戦まで武と共に戦う。月攻略戦時の機体は、第4世代戦術機『ヴァルキリー・TypeU』。 月攻略戦後、国連軍を退役。父と同じ道を志して猛勉強し、そして、父と同じ国連事務次官に実力で就任、国際協調のため世界中を奔走した。 武との約束を守り、武の死後、穏やかに息を引き取った。 鎧衣美琴:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『ヴァルキリー・TypeW』。 軍は武と共に退役し、一緒に「Gaia-Guardian-Garden」の教官となる。鬼教官5の一人。 武との約束を守り、武の死後、穏やかに息を引き取った。 柏木晴子:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『ヴァルキリー・TypeW』。 軍は武と共に退役。その後、家庭に入り、純夏と共に悠陽の教師役をこなした。 武の死後、穏やかに息を引き取った。 神宮司まりも:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『ヴァルキリー・TypeW』。 軍を武と共に退役後、「Gaia-Guardian-Garden」の初代校長に就任する。……色々ムチャをする教官達に苦労したようだ。 武の死後、穏やかに息を引き取った。 社霞:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時は超弩級万能戦闘母艦『高天原』で純夏の副官を務めた。 軍は武と共に退役。退役後は家庭に入ったが、にんじん嫌いだけは直らなかった。 社家は後に、「白銀神社」の宮司を務める家となる。 武の死後、穏やかに息を引き取った。 香月夕呼:オルタネイティヴ4の中心人物として、人類史に名を残す。また技術分野においても多大な功績を残した。 夕呼の家系は、多くの天才とも言うべき科学者を輩出する事になる。 生涯現役を謳い精力的に活動を続け、武の死後、亡くなった時も研究施設に居た。 イリーナ・ピアティフ:夕呼の副官を長くに渡り務め、武の退役後、家庭に入る。 だが、家庭に入った中で一番年上だったので、まとめ役になってしまい、家庭でも色々苦労していた。 武の死後、穏やかに息を引き取った。 速瀬水月:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『ヴァルキリー・TypeW』。 軍は武と共に退役し、一緒に「Gaia-Guardian-Garden」の教官となる。鬼教官ボスと呼ばれていた。 武の死後、穏やかに息を引き取った。 涼宮遙:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時は超弩級万能戦闘母艦『高天原』の副長を務めた。 軍は武と共に退役。その後、家庭に入り、忙しい家族を支えた。 武の死後、穏やかに息を引き取った。 風間祷子:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『ヴァルキリー・TypeW』。 軍は武と共に退役。その後、家庭に入り、遙と同じように家族を支えた。 また、風間家は後に多くの優れた音楽家を輩出する事になる。 武の死後、穏やかに息を引き取った。 涼宮茜:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『ヴァルキリー・TypeW』。 軍は武と共に退役し、一緒に「Gaia-Guardian-Garden」の教官となる。鬼教官5の一人。 武の死後、穏やかに息を引き取った。 月詠真那:斯衛の名に相応しい軍歴を経て、退役。退役後も後進の指導に努めた。 ただ、家庭において悠陽に世話をされる事には、終ぞ慣れる事はなかった。 武の死後、冥夜と悠陽の後を追うように穏やかに息を引き取った。 月詠真耶:斯衛の名に相応しい軍歴を経て、退役。退役後も後進の指導に努めた。 ただ、家庭において悠陽に世話をされる事には、真那と同じで慣れる事はなかった。 武の死後、冥夜と悠陽の後を追うように穏やかに息を引き取った。 伊隅みちる:ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『ヴァルキリー・TypeW』。 温泉作戦は実行したが、結局、法改正により姉妹全員が前島正樹の妻となった。ちなみに、正樹は婿養子である。 「シルバー・ワイフ」との仲も家族ぐるみで良好で、伊隅家は後に各家と親戚筋になってしまう。 宗像美冴:ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『ヴァルキリー・TypeW』。 想い人と結ばれ、退役後は家庭に入った。ちなみに、この二人は一夫一妻の夫婦だった。 「シルバー・ワイフ」との仲も家族ぐるみで良好で、二人の子孫の中には、武の子孫と結ばれる者もいた。 ―――以上が、その後の武達の足跡である。 これより未来は別のお話。語る術は無い。………だが、一つだけ言えるのは、人類は戦い続けていくに違いない。 ――かがやく未来
Fin.
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