朝、目覚めた時に解った。―――今日がその日なのだと。



マブラヴ 未来への咆哮 Last episode
「輝ける明日アスに向かって」 <Tシローさん>




『桜花作戦』から数日、武は自室で目を覚ます。ただしB4Fの部屋ではなく、急遽移されたB19Fの部屋なのだが。これは、横浜基地の人間が武の部屋に殺到したため取られた対応策だ。『桜花作戦』の成功に沸く横浜基地で、武が常に中心だった事を考えれば当然の措置と言える。……特に夜這い関係。その中には男も混ざっており、武を戦慄させたが。
とにかく、『甲21号作戦』の成功の時以上の歓喜と興奮の坩堝となった横浜基地は、三日間、軍事基地としての機能が麻痺していたと言っても過言ではない。誰もが歓喜の涙と笑顔を浮かべ、勝利を祝っていたのだ。

「……ホント大騒ぎだったな」

昨日までの騒ぎを思い出し苦笑しながら、武は隣で寝ている純夏を起こさないように小声で呟きながら、身体を起こしベッドから抜け出す。そして、国連軍の制服を着終わった武は静かで優しい微笑みを浮かべ、全裸で眠る純夏の髪をしばらく愛しむように優しく梳き、頬を同じように撫でてから、静かに自室を出て行く。

――パタン

静かに閉じられたドアは、寂しく、悲しい響きを奏でた―――


「おや、タケル、早いじゃないのさ」

「おはよう、おばちゃん」

部屋を出たオレは、最初に仮設の食堂にやって来た。……おばちゃんはいつも通りだ。いつも通り、暖かく朗らかな笑顔でみんなに旨い飯を作ってくれてる。それが日常あたりまえの事だった。けど、今その事がどれだけ尊いことであるかを、……実感してる。

「あんたたちは、今日まで休養日のはずじゃなかったかい? 昨日まであれだけ騒いでいたんだから、ちゃんと休まなきゃダメじゃないのさ」

「なんか目が覚めちゃって。で、今日の朝飯は何なの、おばちゃん?」

「今日はサバミソだよ。大盛りにしたげるからしっかり食べるんだよ、タケル!」

「ありがと、おばちゃん」

受け取った合成サバミソ定食をゆっくりと味わう。……考えてみれば、オレにとって横浜基地がホームなんだから、おばちゃんの料理がオレにとっての「おふくろの味」だったんだよなぁ。

「おばちゃん、ごちそうさま。…………凄え旨かった」

食べ終わった食器を持って行き、忙しそうに料理をしているおばちゃんに声をかける。

「お世辞言っても、出せるのは合成玉露くらいだよ」

「ハハッ、お世辞じゃないよ。………本当に感謝してるんだ、いつも旨い飯を作ってくれてる事にさ」

「いやだよ、この子は。いきなりそんな事、改まって言わないでおくれよ。まるで、今生の挨拶みたいじゃないか」

「――ごめん、おばちゃん。そういうつもりじゃなかったんだけど。……それじゃ、オレ行くわ」

「はいよ。……次の上がったよ!」

そして、オレは人の集まり出した食堂を後にする。

「今まで、ありがとう。――――母さん」

誰にも聞こえない様な、掠れた小さな呟きを残して。


次にやって来たのはハンガーだ。整備兵が忙しく働いている中、オレは『武』の所に向かっていく。擦れ違う人間と拳を合わせながら、『武』の所に辿り着くとゲティとハキムが居た。

「おや、タケル、どうしたんダイ?」

「ん、ちょっとさ。それよりも二人は何してるんだ?」

「『XM3』の機動に対応した『武』の改修チューン計画に付いて話し合っていた所だ」

「え、マジで?」

「マジだヨ。『甲21号作戦』後と基地襲撃後のオーバーホールの際に行った機体調査で、改修の必要性が認められたからネ」

「『桜花作戦』は成功したが、未だ20以上のハイヴが健在なのだ。戦いはまだ続く。我々は出来る事を、速やかに確実に行わなければならない」

「…………そうだよな。戦いは、まだ続くんだよな」

「そうだネ。けれどタケル達のおかげで、人類の勝利が見えてきたのは確かなんダ! だから頑張ろう、タケル!」

「……ああ。ところで、『武』の事、洗ってやっていいか?」

「どうしたんダイ、イキナリ?」

「うん、……まあ、そうしたい気分なんだ」

「ソウ。整備は終わっているから構わないとは思うケド」

「了解。んじゃあ、いっちょ綺麗にしてやるか!」

そう言って、オレは『武』を洗い始める。途中、ハキムや手の空いた人間が手伝いを申し出てくれたけど、丁重に断った。どうしても、オレ一人でやらなくちゃいけなかったから。

「――それじゃあ、『武』の事頼むな、ゲティ、ハキム」

「無論だ」
「まかせといてヨ!」

『武』を洗い終わった後、『武』と未来を託すように、オレはゲティ、ハキムと拳を合わせてからハンガーを後にする。そして、ハンガーから出る間際振り返り、

「――――あばよ、相棒」

今まで一番多く最期を共にした半身あいぼうに、別れを告げた。


「霞?」

ハンガーを出て少し歩いた所に、霞が立っていた。……オレをじっと見詰めながら。今にも泣き出しそうな瞳で。

「…………今日、なんですね」

「……ああ」

オレの返した答えに、霞は悲しそうに顔を俯かせる。

「なあ、霞。海、見に行こうぜ。……約束したもんな」

「…………はい」

オレの、後で無神経だと思い知らされる提案に、霞は頷いてくれた。そして、歩き出したその時、霞がオレの手を握る。霞の精一杯の力で。……オレは優しく、でもしっかりとその手を握り返した。


純夏を迎えに行った時のように基地の車輌を借りて、オレと霞は元欅町の海岸にやって来た。基地を出る時、あの伍長コンビとも拳を合わせて。

「……これが、海。……これが、波の音なんですね」

海岸の砂を踏みしめながら、霞は波打ち際近くまで歩いていく。

「ああ、そうだ。……本当ならさ、総戦技演習の時に行った南の島のような綺麗な海に、連れて行ってやりたかったんだけどな」

「いいんです。……同じですから」

オレの言葉にそう答える霞。まあ、霞の言う通り海って言う点じゃ同じだけど、やっぱり綺麗な海を見せてやりたかった。

「うおっ、つべてっ」

この季節の海で水遊び、砂遊びって訳にはいかない。海水に手を浸けてみれば、身を切る様な冷たさだ。と言う訳で、どうしたもんかと考えていると、

「……白銀さん」

霞に名前で呼ばれた。あれ、もしかしてオレ、初めて霞に名前で呼ばれなかったか? ……いや、荷電粒子砲撃った時が最初だったかな? まあとにかく、呼ばれたから霞の方を向くと、霞はあやとりの糸を取り出していた。

「……約束です。『踊る蝶々』を、今から作ります」

「おっ、マジで? 凄えじゃん、霞! 出来るようになったんだ」

「はい。……見ていて下さい」

霞はたどたどしい手付きだけど、指が複雑に動かしていきながら、少しずつ形を作っていく。けど、その動きは唐突に止まった。……そして、落ちてきた水滴が糸に当り弾ける。霞の瞳から次々と零れ落ちていく涙と言う名の滴が。

「…………霞」

「……いや、です。…………こんな、悲しい、思い出は、…………消えて、しまうと、解って、いる思い出、なんて、悲しくて、いやです」

……オレは、なんて無神経な大馬鹿野郎なんだ。約束を守る事に気を取られて、霞は解っているから大丈夫だって思い込んで、霞の気持ちを少しも考えてやれてなかった。

「ごめんな、霞」

涙をポロポロと零す霞に、心から謝る。と、霞はオレの胸に顔を埋めるようにして抱き付いて、フルフルと首を振る。そして、涙を浮かべた瞳でオレを見上げて、

「……私、白銀さんの事、好きです」

「え?」

霞の突然の予想もしてなかった告白に驚く。けど、霞がそんな事を冗談で言う性格じゃない事は解ってる。だから、この告白は霞の本当の気持ちなんだ。

「……最初は、この気持ちが、純夏さんの、ものか、自分の、ものか、判り、ません、でした。でも、今は、判ります。この気持ちは、私の、ものなんです。……白銀さんに、名前を、呼ばれると、嬉しい、です。白銀さんの、傍に、居ると、楽しい、です。白銀さんが、一緒じゃ、ないと、どんな海でも、同じ、なんです」

霞の涙を流しながらの告白に、オレは抱き締めてやることしか出来ない。

「お願い、ですっ、………居なく、ならないでっ」

「――ありがとう、霞。オレなんかを好きになってくれて。けど、ごめんな――」

「……うぅっ……ぁうぅぅ……っく…………っ…………うぅ……」

オレの言葉に、霞はオレの胸に顔を埋めてから泣き出す。まるで「この世界」にオレを繋ぎ止めようとするかのように、精一杯の力でオレを抱き締めながら。

「――もうオレが消えるのは、止められないんだ」

そう、オレは今日「この世界」から、跡形も無く消え去る事になる―――



泣き続ける霞を武が抱き締めていると、欅町の海岸に四台の車輌がやって来る。

「!?」

驚く武を尻目に停止した車輌から降りてきたのは、夕呼に純夏、そしてA-01全員に加えピアティフだった。

「……どうしたんだよ、みんなして」

霞から体を離して、内心の動揺を表に出さないようにしながら、武が問い掛ける。

「……鑑が泣きそうな顔でみんな一緒に来てって言うから」

「私達は副指令に付いて来なさいと言われてな」

武の問いに事情が解っていない千鶴とみちるが困惑気味に答える。それは純夏、まりも、夕呼以外の全員に言える事だった。

「純夏、おまえ……」

「……だって、こんなの、こんなの、ダメだよっ、タケルちゃんっ!!」

泣きながら純夏が、そう答える。そのやり取りが更に、事情が解らない面々の困惑を深める。

「…………武、今日なの?」

悲しみに揺れる瞳でまりもが武に問う。だが、武には答えられない。今、この状況では。

「ふ〜〜ん、つまり白銀、あんたは悲劇の主人公よろしく、このまま消えるつもりだったわけ。…………気に入らないわね、そういうの」

「…………」

沈黙は、雄弁に肯定を示していた。

「……あんたたち、今から面白い話をして上げるわ」

「――ッ!? 夕呼先生っ!?」

夕呼の言葉に、武は激しく狼狽する。この状況で夕呼がする面白い話など、白銀武の「全て」しかない。

「さっき、気に入らないって言ったでしょ。だから、あんたの言う事を聞く気なんて無いわよ」

「くっ! って、霞!?」

「……ダメ、です! こんな、お別れは、ダメ、ですっ!!」

夕呼を止めようとした武を霞がしがみつく様にして止める。振り払う事もできる。引き剥がす事もできる。

「……霞」

けれど武には、必死に自分を止めようとする霞にそのどちらもする事が出来なかった。
そして、夕呼は語り始める。御伽噺のように荒唐無稽な一人の青年の物語を。

「――――そして今日、白銀は文字通り消えるわ。「この世界」から跡形も無くね」

『…………』

そんな武の残酷な終わりうんめいを告げられて、誰も言葉を発せない。
話の内容が「因果律量子論」「因果導体」「因果情報集積統合体」「世界移動」『繰り返しループ』と言った、彼女達の理解を越えた物ばかりな事に加え、余りにも唐突過ぎたからだ。

「……白銀を構成する因果情報そのものが消える訳じゃない。ただ、元在った場所に還るだけ。そう言う意味では、消えるって言葉は当てはまらないわね。
けれど、今ここに存在する「白銀武」は消滅するわ。あらゆる「確率世界」から。そもそも、存在の単位に%なんてものは無い。10、それだけ。「白銀武」として存在できない以上、消滅って表現が妥当でしょうね」

「……えっと、それはたけるさんが居なくなっちゃうって事なんですか?」

「居なくなる? そんな生やさしい物じゃないわ。「この世界」を含めたあらゆる『記憶』から、「白銀武」と言う存在だけが抜け落ちるように消滅するのよ。まるで最初から存在していなかったかのように。
……以前、白銀はこんな事言ってたわ。人が本当に死ぬのって憶えている人がいなくなった時だってね。つまり、あらゆる『記憶』から消える事になる白銀は、完全なる死を迎えると言っていいわ。そして、あたし達はその事を認識すら出来ない。白銀の事を忘れて、……いえ、「白銀武」だけが消え去った世界に生きていく事になる」

『――――』

夕呼の言葉にみんなが息を呑む。夕呼の話を完全に理解できた訳ではない。それでも、武が非情な運命を背負っている事だけは感じ取れたのだ。

「――今の話、真なのですか、香月副指令?」

と、そこで震える声でみんなの背後から夕呼に問う者がいた。

『―――殿下っ!!?』

驚くみんなを尻目に、真那と真耶を従えた悠陽が夕呼の所に進み出てくる。

「……何で?」

「あたしが連絡を取っておいたのよ。あんたが色々やってたおかげで、こうして殿下も間に合ったってわけ」

「――夕呼先生!」

「言ったでしょう? 気に入らないって」

武の責める視線を、夕呼は泰然と受け流す。

「……香月副指令」

「信じるか信じないかはお任せいたしますわ、殿下」

夕呼にそう答えられた悠陽は、不安を湛えた瞳を武に向け、みんなの気持ちを代弁するかのように問い掛ける。

「……白銀、いえ、。香月副指令の話、真なのですか?」

武は一瞬だけ目を閉じ、悠陽を真っ向から見つめながら答えた。……答えは決まっていたから。

「……本当の訳ないじゃないですか。夕呼先生の話みたいな事、ある訳ないでしょう?」

悲しませたくなかった。例え、その悲しみが刹那の夢幻の如く消え去る物だったとしても。……だから、騙す。騙そうとした。

「前にもSES計画とか言って、みんなをからかった事があるんですよ。でも、まさか殿下を巻き込むなんて、副指令もやり過ぎ――」

だが、そんな嘘を付く事が苦手な武の一世一代のお芝居も、真実の前には脆すぎた。

「――止めろ、純夏っ!!!」

武の視線の先には、リボンを解く純夏の姿が。その行為が何を意味するかを悟った武は、純夏を止めようとする。けれど、武の制止より早く、純夏は力を解放したのだった。


――それは、とてもおおきな、とてもちいさな、とてもたいせつな、あいキボウゆうきゼツボウのおとぎばなし――


――立ち上がるための希望の源は、ただ愛する人に未来を希う意志だった。
――立ち向かうための原動力は、絶望を恐れず未来まえに進む勇気だった。

純夏が武の『記憶』をリーディングし、プロジェクションによって伝達する。そして、その場に居る全員が実感していた。その「おとぎばなし」が真実であると。

「〜〜〜〜〜〜ッ!!! 純夏っ、……このっ、バカヤロウッ!!!」

「だってっ! ……だって、わたしは、みんなから、たくさん、たくさん、取り上げてっ、………それにっ、みんなも、「同じ」だから、だからっ!」

武の叫びに、純夏は顔をくしゃくしゃにして泣きながら思いの丈を吐露する。そう、リーディングなどせずとも「同じ」想いを抱いていると解るから、例え、自分が人間じゃない00ユニットと知られても、そんな終わりわかれは認められないと。

『…………タケル/武/たけるさん』

冥夜、千鶴、慧、壬姫、美琴、晴子、悠陽の七人が、涙を流し震える声で武を呼ぶ。何故なら、プロジェクションによって知った武の『記憶』を起点にして、彼女たちも未来の『記憶』を取り戻したためだ。
その『記憶』による感情の昂ぶりが涙を流させ、…………『記憶』を真実として受け容れたからこそ、武の消滅が真実であると突きつけられたから、声が震えるのを抑える事が出来なかった。

「…………」

自分に向けられる瞳を見て、武は悟る。……もう、騙す事などできないと。そして、武はみんなに背を向けて歩き出す。

一歩―――優しく霞の手を解いて。
二歩―――踏み出す度に、これまでの日々を想い。
三歩―――笑顔で別れようと心に決め。
四歩―――自分を「この世界」に繋ぎ止める意志を緩め。
そして、五歩―――「白銀武」を、この世界から消し去る漂白の光が顕れた。

「――パラポジトロニウム光。……どうやら、カーテン・コールおわかれの時間みたいね」

A-01はその資質故に、それ以外の人間もその輝きを見て湧きあがる途方も無い不安感に、理解せざるを得ない。……その純白の光が、「おとぎばなし」の終焉を告げるものだと。人の手では覆す事の叶わぬ、残酷な運命の宣告なのだと。

「そうですね。……にしても、夕呼先生、最期くらいオレの思う通りやらせてくれたって良いじゃないですか」

振り向いた武は、…………ひどく穏やかで透明な微笑を浮かべていた。

「何言ってんのよ。自分のじゃない都合で一番使える手駒を失うんで気分が悪いって言うのに、そのうえ気に入らない事を我慢しろなんて、あたしにあたしを止めろって言ってるようなもんよ?」

「……言われてみれば、そうですね。ホント夕呼先生らしいや」

「随分な言い草じゃない」

「ハハハハッ、まあ、最期くらい良いじゃないですか。―――夕呼先生、今まで、ありがとうございました。……後の事、頼みます」

そう言って、武は夕呼に深々と頭を下げた。

「……ええ。頼まれた事は忘れちゃうけどね」

そんな夕呼の言葉に苦笑して、武は夕呼の後ろに控えていたピアティフに声を掛ける。

「ピアティフ中尉にも、今まで色々世話かけちゃいましたね」

「………し、白銀大尉、わ、私は、あなたに何と言えばいいのかっ、わ、解らないっ!」

ピアティフも武の運命の非情さに動揺せずにはいられず、何か言わなければと思えば思うほどに、心は乱れ涙が零れる。

「――ありがとう、ピアティフ中尉。夕呼先生ってあんなだから、これからも色々と大変だとは思いますけど、頑張って。………それじゃあお元気で」

涙を流しながらピアティフが頷く。そんな事しか出来ない自分の無力に憤りながら。

「……白銀。私は貴様を尊敬する。恐怖と孤独に苛まれながらも、絶望の底から立ち上がり、再び立ち向かった勇気を持つ、……あんたを尊敬するわ」

そこへ、みちるが一歩進み出て武に言葉を贈る。

「――ありがとうございます、伊隅大尉。……温泉作戦、上手く行くと良いですね」

「……っ、ええ。上手く行くに決まってるわ。あんたが教えてくれた必勝の作戦なんだから」

そして、みちると武は敬礼を交わし合う。消え去る武に自分が出来る事は、衛士の流儀に則った精一杯の笑顔で送る事だと信じて。

「……白銀っ!!」
「……白銀大尉」

「速瀬中尉、涼宮中尉」

次に進み出たのは水月と遙だった。

「私もあなたに何を言えばいいのか、解らない。ただ、一つだけ聞かせて? ……こんなお別れの仕方しかなかったのかな?」

「それは、オレにも解らないです。……けど、これがオレに出来る精一杯で、最高の結果だと思ってます」

みんなが生きている。自分の短い手が届く中で最高の未来をその手に引き寄せたと、武は心から思っていた。その武の達成感に満ちた表情が水月と遙だけでなく、全員の胸を打ちのめす。

「……白銀、あんた、本っ当にバカなんだからっ!! あ〜あ、こんな大バカに勝ち逃げされるなんて、癪に障るったらないわっ!!」

「ハハハハッ、最期まで手厳しいですね。――今までありがとうございました、速瀬中尉、涼宮中尉。……二人の決着、早く付くといいですね」

「〜〜ッ! ……よ、余計なお世話よっ、このバカッ!!」

と、静かな声が水月の怒声の後に続く。

「……白銀、私は貴様を認めない」

不快感を隠そうともしない不機嫌そうな顔で、美冴は武を睨む。

「美冴さんっ!?」

「男はいつもそうだ。……残される者の気持ちを考えずに、往ってしまう」

「……そうかも、しれないですね」

「もう、貴様に言う事は無い。……祷子」

そう言って背を向けた美冴に促され、祷子が前に出る。

「……やっと解りました、白銀大尉。……あなたが諦めていたものが」

武が諦めていたもの、それは未来だけではなかった。過去、現在、そして自分と言う存在そのもの、……自身の「全て」だったのだ。

「……ごめん、なさい。……私も、あなたに、何を言ったら、良いのか、解らない」

武の気持ちを思い、祷子は自分の言葉が詰まるのを抑えられない。

「――短い間でしたけど、ありがとうございました、宗像中尉、風間少尉。……宗像中尉の好きな景色、オレも一度くらい見たかったです。……風間少尉のヴァイオリン、もう一度聞きたかったな」

「「………っ…」」

その武の言葉に、背を向けた美冴も溢れる涙を抑えられない祷子も、何も言えなかった。

「……こんなの、おかしいよっ!!」

「涼宮?」

抑え切れなくなった思いを叫ぶように、茜が声を上げる。

「……白銀、頑張ってたじゃないっ! あんなにっ、あんなに、頑張ってたのに、それなのにっ、こんなのって、ないよっ!!」

「おどぎばなし」の中、武は傷ついていた。天を衝くような叫びを上げ、腕を千切れんばかりに伸ばしても届かず、絶望に打ちのめされ、しかしその絶望を乗り越えて戦い続け、そして、その果てに人類に勝利を齎したのだ。
それなのに、武は己が「全て」を奪われ、何一つ与えられない。……その事実を、茜は受け容れられなかった。

「……白銀の事、語り継ぐ事すらできないんだよっ! 白銀、それで良いのっ!? 自分が生きた証さえ消えちゃうんだよっ!?」

「――オレが、生きた証は消えないよ、涼宮」

「……え?」

「――――みんなが生きる未来が、オレの生きた、存在した証だ」

誇り高く語り継がれることも無く、意志を受け継がれることも無く、誰の「記憶」に留まる事も無く、何一つ自身に還ることも無い、けれど、守りたいと希った人達が生きる未来こそが、誇るべき己の生きた証なのだと、武は言い切ったのだ。

「………っ……」

12月29日の夜、まりもと純夏が聞いたそのあまりにも寂しく悲しい、そして優しすぎる武の想いに、茜は何も言えない。

「……今までありがとな、涼宮。……元気でな」

「………しろ、がねの、バカッ」

茜は傍に来てくれた遙の胸に顔を埋めながら、そう呟くのが精一杯だった。

「……貴様の挺身に、一人の人間として感謝する」
「……私もだ」

「ありがとうございます、月詠さん、真耶さん」

次に真那と真耶が進み出て敬礼する。

「……二人の事、頼みますね。……いつか、姉妹として過ごせる時が来ると思うから」

武の言葉に真那と真耶は無言で、けれど確かに頷いた。

――最愛の人を失い、天を衝かんばかりに咆哮する武の姿に感じた胸の痛みが、己の真の想いが如何なる物かを告げる――

……取り戻した『記憶』の中に確かに在る、烈しい「想い」を表に出さぬよう押さえ込みながら。

―――そして最期に、武は最も守りたいと希った者たちと向かい合う。……その間に、10mにも届かない、けれど、決して越えられない境界線のような距離を挟んで。

「……泣かないでくれよ。おまえらの泣き顔なんて、見たくないんだけどな」

「無茶、言わないでよっ、タケルッ! ボクらを泣かせたくないんならっ、居なくならないでよっ……」
「……そうよっ! 私達を、泣かせるような事、しておいて、勝手な事、言わないでよぉ……」

溢れる涙は止め処無く頬を濡らす。言いたい事はたくさんある筈なのに、口が上手く動かせない。

「……何とか、何とかならぬのかっ!? 最早、どうにも、ならぬのか、タケルッ……」
「……そうだよっ! タケルは、いつだって、諦めなかった、じゃないっ! だから、諦めないでよぉ……」

「――ごめんな」

……武は太陽だ。その強く暖かな光で自分達をいつも照らしてくれた。その光に、何度救われただろう。それなのに、そんな武の存在を忘れ、いや、最初から存在しない「この世界」で生きていく。その事を思うだけで、心が砕けそうになる。
だと言うのに、何も出来ない。抗うことも出来ず、ただ、理不尽にその絶望を受け容れさせられる。……いや、その絶望すら奪われるのだ。

「……私達は、武に、何一つ、返せて、ないっ! なのにっ、どうしてっ……」
「……わたしたちは、たけるさんに、たくさん、もらって、ばっかりでっ! これから、みんなで、返して、行こうって、みんなで、そう決めた、ばっかり、だったのにぃ……」

「――そんな事ねえさ。……だって、返しきれてないのは、オレの方なんだから」

そして伝わる。武の想いが。
どれほどの黄金よりも、どんな宝石よりも眩しく輝いていた日々。未来に「人類滅亡」という絶望おわりしか無かった。けれど、心から愛し、愛された、何にも代え難き、――素晴らしき日々。
だから、戦えた。だから、立ち向かえた。だから、前に進めた。だから、生きてこれた。

『〜〜〜〜〜〜ッ』

その武の想いが、狂おしいほどに胸が打つ。あまりも唐突過ぎた「おとぎばなし」の幕引きおわりに覚悟など出来ている筈も無く、溢れるおもいを止められない。

「――だから、幸せになってくれ。……それが、オレの最後の頼みねがいだ」

「……ええ。必ず、あなたの、言う通りに、するわ……」
「……解り、ました。そなたの、頼み、必ずや、叶えましょう……」

そんな武の本当に最期の願いに、頷く以外に何が出来るだろう。

「……タケル、ちゃんっ!!」
「……しろがね、さんっ!!」

パラポジトロニウム光の輝きは勢いを増し、武の首までを包んでいる。もう、別れの時はすぐそこで…………だから、武は口を開いた。――――最期の言葉を紡ぐ為に。


「―――冥夜」

――大切に、大切に――

「―――悠陽」

――これまで、幾万回も口にした名前を――

「――― 千鶴」

――これから、幾億回でも口にしたい名前を――

「―――慧」

――愛しむように、口にする――

「――― 壬姫」

――消えてしまうと解っている――

「――― 美琴」

――悲しませると解っている――

「―――晴子」

――それでも、どうしても伝えたい想いことばがある――

「―――まりも」

――今までかここれからみらい――

「―――そして、純夏」

――その想いの全てを、この一瞬いまに籠めて――

「―――愛してるぜ」


――未来を告げるような鮮やかな青空を背に――
――成し遂げた者にのみ許された無上の笑顔で――
――この上もない愛を告げた――


――さあ、おとぎばなしは、もうおわり――
――幕引きカーテン・コールといこう――
――幕引きわかれの言葉は唯一つ――


「―――ばいばい」



―――そしてその幕引きわかれの言葉と共に、武の全身はパラポジトロニウム光の輝きに包まれた―――



――トサッ

砂の鳴る渇いた音が幾つか重なる。この上もない別れの言葉は、みんなから立つ力を奪い去った。力無く海岸に腰を落とし、涙に滲む視界の中、弱まっていく白光の輝きを虚ろな瞳で見詰める。けれどその心の内で、ただひたすら武を想う。運命などに、この想いを奪わせてなるものかと。
……しかし、運命は無情だった。パラポジトロニウム光の輝きは急速に弱まっていき、そして、その輝きの消失と共に、白銀武も消え去って――――――



















――――――いなかった。

「…………………………え?」

その声は誰の物だったか。だが重要なのは、誰が上げたのかではなく、何を見て上げた声であったかだった。
涙に滲む視界に映る、頭部が白く黒い服を着ている誰か。涙を拭って見れば、そこに居たのは―――

「…………白銀ぇ〜、いつまで間抜け面、晒してるつもり?」

「――――ッ!!?」

夕呼の言葉に、それまで満たされた表情で立っていた武は、ビクンッとしてから目を開け、何度も瞬きする。そして、混乱した表情を浮かべた武は、おもむろに頬を引っ張った。

「ひてててててててっ!? ……痛え。夢、じゃない 『武/タケル/たけるさん/白銀/白銀大尉/白銀さん/タケルちゃんっ!!!』

こんな状況で真面目にあんな事をするのは、武しかいない! そう思った瞬間、さっきまでの状態が嘘の様に力が湧き上がり、翔ぶが如く武の許へ駆けて行き、その勢いのままに身を預けた。……純夏、冥夜、悠陽、千鶴、慧、壬姫、美琴、晴子、霞、水月、遙、祷子、茜、ピアティフの計14人が。――そうなれば当然、

「―――ぷれすっっっ!!!?」

受け止めることなど出来ずに、武は圧し潰された。その結果、武の口から魂的なものが押し出されたが、みんなが泣き止むまでその状態から解放される事はなかった。
だが、解放されたらされたで、武は地獄を味わう事となった。――何故なら、武が消えなかった事で、みんなの昂ぶった感情がとんでもなく物騒な共同攻撃フォーメーション・アタックと言う形で放出されたから。

フォーメーションV、GO!!!

「―――武のバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカッ!!!」
「べっべっべっべっべっべっべっべっべっべっべっべっべっべっべっ!!?」

先陣は、千鶴の高速往復ビンタだ!

「―――武の……バカッ!!!」
「どわあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!?」

ビンタでピヨピヨ状態になった所を、慧のSスペース.Tトルネード.Aアヤミネにより、武は上空高く投げ飛ばされる!

「―――たけるさんのぉ、ばかぁっ!!!」
「ぎゃへえっ!? ずわっはぁっ!!?」

上昇の途中、壬姫ブゥメラァンが武を切り裂き!

「―――タケルの、バカ―――――――――――――――ッ!!!」
「うばぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!?」

投げ飛ばれた頂点で晴子に捕まり、ダンクシュートで武は地上に叩きつけられる!

「「白銀のぉ、馬鹿っっっ!!!」」
「がはぁっっ!!! ………な、何で、二人が………?

起き上がった所に、水月と茜のクロスアックスボンバーが炸裂!

「―――タケルのバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカッ!!!」
「しべあっ!? ぶでひっ!? ばわたっ!?」

度重なるダメージでフラフラの武に、美琴が左近から教えられたどこかの一族秘伝っぽい秘孔の百烈突きを放つ!

「「「―――白銀大尉の、バカッッッ!!!」」」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ、マジで、普通に痛いっ!?」

遙と、祷子、ピアティフは普通に、けれど本気で抓ってます!

「――光風霽月、輪をもって成す……『月の輪』
「――祓正無道ふっしょうむどう……『月輪』
―――タケル/武の、馬鹿者っっっ!!!」」

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

皆琉神威みなるかむいの剣閃と煌奉如月こうぶきさらぎの斬閃による双月が、武を斬り裂く!

「―――タ・ケ・ル・ちゃ・ん・のぉ〜〜〜〜〜〜、ばかぁ―――――――――っ!!!」
「グッバイ、アァ―――――――――スッ!!!」

そして、どりるみるきぱんち&ふぁんとむによって、武は星になったのだった!!


「…………んっ」

沈んでいた意識が浮上していく感覚。……ああ、オレは目覚めるんだなと解る。

「――目覚めたか、白銀?」
「――ッ!?」

こ、この声はっ!!

「…………さ、沙霧さん」

「……久しいな、白銀」

目を開けるとすぐそこに、オレがこの手で討った沙霧さんの姿が。

「何て顔をしているのだ、白銀」

「沙霧さん……オレは、オレはっ!」

「もういい、白銀。――もう、己を赦してやれ」

「………っ…」

沙霧さんの言葉に、視界が滲んでいくのを止められない。

「……貴様は我らの託した想いに見事応え、念願を果たしてくれた。人類の未来を切り拓いてくれた。……この身に余る話と解ってはいるが、数多の英霊に成り代わり、礼を言わせてくれ」

そう言って、沙霧さんは深々と頭を下げた。そして、沙霧さんはオレ達の頭上高くにある光を指し示す。

「――さあ、白銀。貴様はまだ此方に来るのは早過ぎる。還るのだ。貴様を待っている者達がいるのだから」

「……はいっ! …………けど、どうやって戻れば?」

「――それは、この一文字鷹嘴がまかせもらおう!」

「タ、タカハシさん!?」

声をする方を見れば、そこにはポーズを決めたタカハシさんの姿が。……も、もしかして、夕凪の艦長の一文字さんって、タカハシさんだったのかっ!? 声しか聞いてないから解んなかった。

「我が送迎最速理論を以って、貴様を送り還そうではないか! その為に沙霧大尉、あなたの力を貸して欲しい!」

「心得た、鷹嘴殿!」

そう言って、タカハシさんが取り出し沙霧さんに渡したのは、金髪アフロのかつらとゴーグルっぽいサングラス―――


「――それはヤバイですって!!?」
「!!?」

そんな叫びと共に上半身を勢いよく起こしたオレは、その直後クラッと来て、上半身を再び後ろに倒す。と、後頭部に柔らかい感触を感じる。目の前にはオレの顔を逆さに覗きこむような霞の顔。……どうもオレ、霞に膝枕されてるっぽい。

「……大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ、霞」

「……ビックリしました」

「そっか、悪りいな。……何か、途中までは凄え良かったけど、最後がとんでもない悪夢を見たような気がして……」

「……よくわかりません」

「まあ、オレもよく覚えてないから気にすんな」

確かに、もう夢の内容は殆ど思い出せない。……けれど、オレにとってとても大事な夢だった。そんな気がする。

「――起きたの、白銀?」

霞の膝枕されてる所に夕呼先生がやって来る。

「夕呼先生!? オレは――」
「ストップ。説明はまとめてするから、あっちのを呼んでからね」

「あっち? …………うわっ」

夕呼先生の指差す方を見れば、フォーメションVに参加したみんなを残らず正座させその前に立ち、烈火の如く説教する憤怒のオーラ迸るまりも、月詠さん、真耶さんの姿が。……3人の放つオーラが混ざって、もうなんかケルベロス降臨って感じで、怖過ぎた。

「まりも。白銀が目を覚ましたわよ〜」
「――武っ!」

夕呼先生がそう言うと、まりもは弾かれたようにこっちに走って来て、オレは優しく抱き締めてくれる。そして耳許で小さく、

「――バカ」

って言われた。

「……ごめん」

そう答えて、オレもまりもを抱き締める。……周りの視線が凄え痛かったけど。

「――ところで、夕呼先生。…………オレは何で」

「消えていないのか、でしょ?」

「……はい」

オレを含めた全員がひとまず落ち着いた所で、オレは夕呼先生に尋ねる。

「あんたが「この世界」に存在するには、3つの力が必要。それは解るわね?」

「はい。世界の力、周囲の認識、オレの意志ですよね?」

「そう。「因果導体」じゃなくなったあんたは世界の力と、自分の状態を知ったために意志を失った。残ったのは周囲の認識だけな訳なんだけど。白銀、今世界であんたの事を知らない人間なんて、殆どいないのよ?」

「……ま、まさかっ!? そ、そのために、オレを「英雄」に祭り上げたんですかっ!?」

「そうとも言えるわね。まあ、主目的は広告宣伝であって、あくまで副次的なものよ。成功の保証も無かったし」

「けど周囲の認識だけで、オレは「この世界」に存在できるものなんですか?」

何だかんだ言っても世界の力、即ち「因果導体」である事が、オレと言う存在の根幹に関っていると実感して理解できていただけに、納得できない。……もちろん、こうしてオレが存在できてる事は嬉しいに決まってんだが。

「……これは推論なんだけど、あんたを世界の中心として起こった『繰り返しループ』が、「この世界」にあんたの存在を刻み付けたのよ。繰り返される事で、深く確かにね。そうすると、「この世界」はあんたをこう認識する。自分の一部だと。
……知ってた? 世界ってね、閉じてるけど巨大なのよ。人間一人分くらいの因果情報を賄うなんて余裕に決まってんじゃない」

「…………そんなもんなんですか?」

「まあ、所詮推論よ。実証は、ほぼ不可能と見ていいわね。……ただ、今現実にあんたは「この世界」に存在してる。――それが全てよ」

「……はあ」

「実感できてないって顔してるわね。……それじゃ、あたしが実感させてあげる」

そう言った夕呼先生がいきなり唇を重ねてきた。つーか唇を重ねるどころか、すっげえディープなキスだった。

「!!!!?」
『――――――ッ!!?』

オレも激驚いたが、みんなも烈驚いてる。

「ん〜〜〜、ジュゥスィ〜〜〜」

オレの口内を思う存分堪能したって感じを醸し出す夕呼先生は、愉しそうに笑う。

「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆ夕呼先生っ!!?」

年下は対象範囲外だって、いっつも言ってたじゃん!? けど、今のは間違い無くマジキスだった!! 何でっ、どうしてっ!!?

「いや〜〜、計算外だったわ。……鑑の行動が」

「ええっ!? わ、わたしっ!!?」

「ずっと鑑がプロジェクションしてたせいで、この場に居た全員が、白銀の気持ちをダイレクトに感じた事になったでしょ? 例え自分に向けられたものじゃなくても、あんな気持ちに触れちゃったら、コロッとイッちゃうわよ。……まあ、それなりの下地が必要だとは思うけどね」

「…………冗談ですよね?」

「何よ、白銀、その言い草は。大体ね、あたしが落ち込んでたからって、本当に何とも思ってない奴に自分から体を許すと思う?」

……いかん、もの凄い説得力だ。

「そもそも、「嫌い」に理由は在るけど、「好き」に理由なんて必要無いのよ」

「……夕呼先生とは思えない、乙女チックな言葉ですね」

「……悪かったわね。乙女チックってヤツが似合わなくて」

……ヤバイ。拗ねる夕呼先生の表情が可愛いとマジに思えた。

「……で、でも、本気なんですか?」

「……しょうがないじゃない。流石のあたしもあんたの力には抵抗できなかったんだから」

「は? オレの力?」

「「向こう」のあたしの提唱した「恋愛原子核論」によれば、白銀、あんたは「人を好きになる」と言う「恋愛原子核」の力が最も強い因果情報のみで構成された、――――正に究極アルティメット恋愛原子核」なのよ!!」

究極アルティメット恋愛原子核ぅっっっ!!?」
「……究極アルティメット恋愛原子核って、何かカッコイイ感じだね」
「「ほ、本気、遙/お姉ちゃん……?」」

夕呼先生のその言葉に、もの凄い敗北感がオレを打ちのめす。…………何に敗北したのか全然解んねえけど。

「……フフッ、夕呼ったら、照れちゃってる」

「…………コホン。とにかく白銀、そう言う事だから。まあ、一人二人 じゃないだろうけど 今更増えたってもう大差無いんだから、気にしないでおきなさい」

「……ふ、二人って?」

「あら、社は仲間外れなの?」

「えーーっ、タケルちゃん、ひど〜〜いっ!!」

「だ、誰も、そんな事言って無いだろ!?」

「だって。良かったわね、社」

「……はい」

――んがっ!? やられたっ!! 地面に手と膝を付き、項垂れるオレ。……まるで負け犬のようだ。…………もちろん、何に負けたのかは全然解んねえけど。

「で、そっちの話は関係者全員で追々詰めていくとして」

「……もう、好きにしてください」

「ええ、好きにさせてもらうわ。とにかく白銀、あんたにはまだまだ働いてもらうわよ。
―――人類の勝利の為にね」
「―――了解っ!!!」


―――そして、地球を奪還するための戦いが始まる………


………その前に。
翌日、PXで朝食を食べている時の事だった。……ちなみに、昨日の晩はまりもと一緒でした。

「――速瀬中尉と涼宮中尉、髪切ったんですか?」

二人ともかなりばっさり切ってるから、最初誰か判んなかった。

「……まあ、切り時が来ちゃったからね」

「切り時?」

「ところで、白銀君。……どうかな?」

「どうかなって、………………ああっ、似合ってますよ」

「えらく間が空いたわね。で、白銀? どんな風に似合ってるわけ?」

「ど、どんな風って……」

「キリキリ答える!」

「り、了解! えっと、速瀬中尉は今までより大人っぽいって言うか落ち着いた感じになってますね」

「……つまり、今までは子供っぽくて落ち着きがないと思ってたわけね」

「……………ノ、ノーコメント」

「し〜ろ〜が〜ね〜」

ヤベッ!! 正直に言い過ぎた!! ここは緊急避難だ!!

「でっ! す、涼宮中尉は………」

「……私は?」

「……可愛くなってますね」

「本当?」

「ええ、本当です」

……正直、年上に全然見えねえ。年下だって言われたら納得しちまいそうだ。

「それで、何で二人とも髪切ったんです?」

「「………」」

いや、何でそこで無言? まあ、オレには関係ない事なんだろうなとその時は思ったんだが、とんでもなかった。
その日の午後の実機訓練で、なぜかオレ対速瀬中尉、風間少尉、涼宮の三人のチームって組み合わせで対戦させられた。それで涼宮中尉が向こうの、ピアティフ中尉がオレの管制を担当してくれた訳なんだが、……まさか、あんな事されるとは思いも付かなかった。

「「「「「白銀/君/大尉、好き/よ/です!!」」」」」
「……………………は?」

唐突過ぎる一斉の告白。そうしてオレが呆けた所に、ペイント弾が雨霰と着弾して『武』に大破判定が出る。

「……ず、ずりいっ」

で、ハンガーに戻ったオレはすぐに速瀬中尉達の所に抗議に向かったんだが、

「――白銀。言っとくけど、さっきの告白は本気よ」

って言われて唇を奪われた。……本当に奪われたって感じだった。さらに風間少尉に涼宮、後からハンガーに来た涼宮中尉にピアティフ中尉にも。そう言えば、五人共、昨日あの場に居たんだよなぁ。まあ、夕呼先生がああなるくらいなんだから、こうなる事も予想できる訳…………ねえだろっ!! もうみんな、退く気無しで気合満々なんだよなぁ。
で、更にこの日から一週間後、悠陽の呼び出しで行った帝都の超高級老舗料亭には月詠さんと真耶さんだけが居て、通された部屋の隣室には布団が一つ枕が三つあって、

「……今、ここにいる事が私達の答えと思って欲しい」
「否ならば、このまま何も言わず横浜基地へ……」


なんて思い詰めた顔で言われて。まさか月詠さんと真耶さんまでそのオレの事好きだなんて思いもしなかったから、ショックで成すがままに事を運ばれ。……結局、二人を呼び捨てで呼ぶような関係になりました。しかも翌日は悠陽と二人きりでした。…………だから、横浜基地に帰った時、またフォーメーションVを喰らいました。
………………これが「究極アルティメット恋愛原子核」の宿業ってやつなんだろうか? 大体、何かみんなの間で協定っぽい物が既に作られてるみたいだしよぉ。―――正に、オレに逃げ場無しっ!!
いや逃げるつもりがあるかって聞かれたら無えけどさぁ。色々と複雑なんだ。みんなが笑顔でいるなら良いかって思っちまうけど。……結局、そんな関係に3ヶ月もしない内に慣れたんだけどな。
まあ、そんな感じでオレ達は、新たな局面を迎えたBETAとの戦いに身を投じる事になったんだ。


――『桜花作戦』より2年の月日が流れた。人類は人類の英雄、『白銀の閃光シルバー・ライトニング』白銀武大尉を擁する『勝利を齎す部隊』A-01を先鋒に、ユーラシア大陸を散らばるハイヴを次々に陥落させていく。
この人類の快進撃は、地球上全てのBETAの頭脳にして指揮の頂点である超大型反応炉、BETA側の呼称「上位存在」の破壊と新OS『XM3』の普及、そして『凄乃皇四型』の力に拠るものだった。
そうして、人類の快進撃の末、その日は訪れた。奇しくもその日は今は無き「未来」、移民船団が地球を旅立った日であった。

「――1973年、喀什カシュガルに、宇宙より災いが堕ちて来た。………それから35年。夥しい血と涙が流れた。数十億の命が奪われた。限りない悲しみが、怒りが、絶望が産み落とされた。
それでも、我々はたった一つの希いを抱いて生きてきた。………この母なる星を、地球を取り戻すと言う希いを!
………………告白しよう。私はその日の訪れる事を希っていた。だが、その訪れを心の底から信じる事ができずにいた。………だが、しかし! 今日と言う日は確かに、訪れたのだっ!!
………失ったものは数知れず、取り戻せないものは余りにも多い。………悲しみは未だ晴れず、怒りも鎮まる事はない。………だが、今日だけは、ただ喜びに支配される事を許して欲しい。
―――人類われわれは、地球を奪還したっっっ!!!」


この世界中に発信された国連事務総長の『地球奪還宣言』を以って、地球上でのBETAの戦いは終結を迎えたのだった。


『地球奪還宣言』から2週間後、オレ達A-01と夕呼にイリーナは帝都城は謁見の間にいた。……まあ、この2年の間にも色々あったんで名前で呼べるようになるさ。
それで、何でオレ達がこんな所にいるかと言えば、A-01が名実共に人類反攻のフラグシップ的存在だからだ。なので『地球奪還宣言』から今日まで、国連を始まりとして現存する国家全てから最高位の勲章・褒章を授与されてきた。そして、今日は日本帝国の番って訳だ。
ちなみに、『桜花作戦』以後はA-01も表舞台に立つようになり、ヴァルキリーズの人気も凄え高い。けど、オレの人気が下がったりしない。何故なら、あんなに凄い彼女達を虜にするなんて流石だって言うのが世間の評価らしい。……そのせいでヴァルキリーズが「シルバー・ハーレム」なんて言われる事もあって、伊隅少佐と宗像大尉にものすっごく怒られた。……オレのせいじゃ………あるよなぁ。………ハァ。
で、政威大将軍である悠陽を始めとした文武百官ってやつが居並ぶ謁見の間で待つ事しばし、遂に皇帝陛下が御簾の向こうにやって来た……瞬間、

「…………冥夜タァァァァソッッッッ!!!!」

あっさり御簾を押し上げて冥夜に飛び掛かる、正真正銘の日本帝国皇帝、雷電

「――人の女に何しようとしてんだ、爺っ!!」
「むぅとろんっ!!?」

それを思わず撃墜しちまうオレ。……謁見の間が一瞬凍りつく。が次の瞬間、斯衛が一斉にオレを捕らえようと殺到してくる。その中でオレを守ろうとする影が二人―――真那と真耶だ。

「――鎮まれぃっ!!! 御前であるぞぉっ!!!」

オレが押さえつけられる寸前、紅蓮大将の轟声が謁見の間に響き渡る。だが、斯衛はオレをそのままにしておけないと動こうとするが、

「―――良い、下がれ」

立ち上がった雷電の爺さんの一声で、真那と真耶を含めた斯衛全員が引き下がる。

「白銀武、そちの沙汰は後じゃ。――冥夜よ、大きゅうなったの」

「ヘ、陛下、お、畏れ多う御座いますっ」

自分に歩み寄ってくる雷電の爺さんに、冥夜は平伏する。

「面を上げよ。……余に愛しい孫娘の顔を見せておくれ」

「―――ッ!!」

煌武院先代当主の奥さん、即ち悠陽と冥夜の母親は皇女だったそうだ。つまり、「この世界」でも雷電爺さんは悠陽と冥夜の祖父さんなんだよな。

「おうおう、母に面差しが良う似ておる。悠陽と同じじゃ」

「……あ、ありがたき幸せっ」

顔を上げた冥夜の頬を愛しむように撫でながら、雷電爺さんは顔を綻ばせる。

「……こんな可愛い孫娘を余から引き離しおって。煌武院のしきたり、無くすべきじゃな」

……何気にかなりとんでもない事言ってねえか、あの爺さん?

「――陛下っ! 褒章の授与を致しますればっ!」

紅蓮大将にそう言われ、名残惜しそうに御簾の向こう側に戻る雷電爺さん。……御簾の意味が無い様に思えてしょうがねえんだけど。
とにかく、褒章を授与されるオレ達、と思いきや、褒章はオレにだけ無かった。……やっぱ、撃墜したからかな?

「白銀武、そちは余から大事な大事な愛し〜〜〜い宝を二人も奪った! 故に、そちに授ける褒章は無い!」

えっ、そう言う理由?

「と言って、そちに褒章を授けん訳には行かぬので、華燭の典を執り行う事を許す!」

「かしょくのてん?」

「結婚の儀の事じゃ」

「…………は?」

「先日、国会にて民法が改正されたのは知っておろう?」

確か現在の人口比率が女性の方が高いから、世情を鑑み一夫多妻制を採用するって言われてたヤツだよな。つーかそれ、可決されたの一昨日じゃん。…………あれ、えっと、つまり?

「つまり、そち達全員が日本の一夫多妻婚姻の第1号となるわけじゃ」

『はあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!?』

その言葉で、謁見の間にオレ達を含めたその場に居たほぼ全員の驚きの声が響き渡る。驚いてないのは、発言者の雷電爺さんとニッコリと笑った悠陽。………これ、絶対おまえの仕業だろ、悠陽っ!! 法改正に合わせて、雷電爺さんを説得してたんだな? ……こ、こういう所が怖いぜ、悠陽は。


―――そして、あれよあれよと言う間に、結婚式へ。この結婚式、一夫多妻制の認知普及促進のためと、これからの宇宙での戦いに向けての士気軒昂策と言う政治的な思惑もあり、来賓はVIPがわんさか、結婚式の模様は世界中にリアルタイムで発信と、後の歴史に語り継がれる人類史上最大規模の結婚式となった。
そんな式の中、武が居並ぶ花嫁に問い掛けた。

「………………なあ、みんな幸せか?」

その答えは―――

『ワアァァァァァァァァァァッ!!!』

その光景を見ていた全ての人々が歓声を上げた、花嫁達の熱い唇付けだった―――



白銀武:月攻略戦、火星攻略戦で多大な戦果を挙げ、「白銀武の前に白銀武なく、白銀武の後に白銀武なし」と、後の歴史に謳われる大英雄となる。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『武・四型』。
火星攻略戦後、国連軍を退役し、国連軍横浜基地を基に設立された国際衛士養成機関「Gaia-Guardian-Garden」の戦術機教官となり、多くの優秀な次代の衛士を育て上げたが、同時にその訓練は熾烈を究めたので、教え子達には鬼教官5の一人として畏敬されていた。
享年、73歳。子供や孫、曾孫達には未来を託し、一人として欠けていない愛する妻達には変わらぬ愛を告げてから、安らかに逝った。
死後、「Gaia-Guardian-Garden」の裏の丘に彼を祀った神社が建立される。軍神としてだけでなく、恋愛成就、安産、家庭円満の神としての信仰も集めていたりする。

鑑純夏:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時は超弩級万能戦闘母艦『高天原』の艦長兼制御ユニットを務めた。
軍は武と共に退役。退役後は家庭に入る。武との間に子供はいなかったが、武の子供達全員に純夏ママと呼ばれ慕われていた。
武の死後、眠るように『量子電導脳』の機能を停止させ、以後、鑑純夏の人格が蘇る事はなかった。

御剣冥夜:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『ヴァルキリー・TypeW』。
軍は武と共に退役し、一緒に「Gaia-Guardian-Garden」の教官となる。鬼教官5の一人。
御剣家は後に「日本の剣」と呼ばれ、斯衛の長となる優秀な武人を輩出する事になる。
武との約束を守り、武の死後、姉と共に穏やかに息を引き取った。

煌武院悠陽:火星攻略戦後に政威大将軍位を後進に譲り、家庭に入る。と言っても、一から家事を学ばなければいかなかったが。
煌武院家は、後に五摂家において最も多くの政威大将軍を輩出する家となる。
武の死後、妹と共に穏やかに息を引き取った。

榊千鶴:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、月攻略戦まで武と共に戦う。月攻略戦時の機体は、第4世代戦術機『ヴァルキリー・TypeU』。
月攻略戦後、国連軍を退役。父の側近であった代議士の秘書になり、政治家を目指す。そして、日本初の女性首相となった。
榊家は後に「日本の盾」と呼ばれ、多くの優秀な政治家を輩出する事になる。
武との約束を守り、武の死後、穏やかに息を引き取った。

彩峰慧:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『ヴァルキリー・TypeW』。
軍は武と共に退役し、一緒に「Gaia-Guardian-Garden」の教官となる。鬼教官5の一人。
武との約束を守り、武の死後、穏やかに息を引き取った。

珠瀬壬姫:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、月攻略戦まで武と共に戦う。月攻略戦時の機体は、第4世代戦術機『ヴァルキリー・TypeU』。
月攻略戦後、国連軍を退役。父と同じ道を志して猛勉強し、そして、父と同じ国連事務次官に実力で就任、国際協調のため世界中を奔走した。
武との約束を守り、武の死後、穏やかに息を引き取った。

鎧衣美琴:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『ヴァルキリー・TypeW』。
軍は武と共に退役し、一緒に「Gaia-Guardian-Garden」の教官となる。鬼教官5の一人。
武との約束を守り、武の死後、穏やかに息を引き取った。

柏木晴子:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『ヴァルキリー・TypeW』。
軍は武と共に退役。その後、家庭に入り、純夏と共に悠陽の教師役をこなした。
武の死後、穏やかに息を引き取った。

神宮司まりも:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『ヴァルキリー・TypeW』。
軍を武と共に退役後、「Gaia-Guardian-Garden」の初代校長に就任する。……色々ムチャをする教官達に苦労したようだ。
武の死後、穏やかに息を引き取った。

社霞:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時は超弩級万能戦闘母艦『高天原』で純夏の副官を務めた。
軍は武と共に退役。退役後は家庭に入ったが、にんじん嫌いだけは直らなかった。
社家は後に、「白銀神社」の宮司を務める家となる。
武の死後、穏やかに息を引き取った。

香月夕呼:オルタネイティヴ4の中心人物として、人類史に名を残す。また技術分野においても多大な功績を残した。
夕呼の家系は、多くの天才とも言うべき科学者を輩出する事になる。
生涯現役を謳い精力的に活動を続け、武の死後、亡くなった時も研究施設に居た。

イリーナ・ピアティフ:夕呼の副官を長くに渡り務め、武の退役後、家庭に入る。
だが、家庭に入った中で一番年上だったので、まとめ役になってしまい、家庭でも色々苦労していた。
武の死後、穏やかに息を引き取った。

速瀬水月:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『ヴァルキリー・TypeW』。
軍は武と共に退役し、一緒に「Gaia-Guardian-Garden」の教官となる。鬼教官ボスと呼ばれていた。
武の死後、穏やかに息を引き取った。

涼宮遙:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時は超弩級万能戦闘母艦『高天原』の副長を務めた。
軍は武と共に退役。その後、家庭に入り、忙しい家族を支えた。
武の死後、穏やかに息を引き取った。

風間祷子:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『ヴァルキリー・TypeW』。
軍は武と共に退役。その後、家庭に入り、遙と同じように家族を支えた。
また、風間家は後に多くの優れた音楽家を輩出する事になる。
武の死後、穏やかに息を引き取った。

涼宮茜:「シルバー・ワイフ」の一人として、ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『ヴァルキリー・TypeW』。
軍は武と共に退役し、一緒に「Gaia-Guardian-Garden」の教官となる。鬼教官5の一人。
武の死後、穏やかに息を引き取った。

月詠真那:斯衛の名に相応しい軍歴を経て、退役。退役後も後進の指導に努めた。
ただ、家庭において悠陽に世話をされる事には、終ぞ慣れる事はなかった。
武の死後、冥夜と悠陽の後を追うように穏やかに息を引き取った。

月詠真耶:斯衛の名に相応しい軍歴を経て、退役。退役後も後進の指導に努めた。
ただ、家庭において悠陽に世話をされる事には、真那と同じで慣れる事はなかった。
武の死後、冥夜と悠陽の後を追うように穏やかに息を引き取った。

伊隅みちる:ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『ヴァルキリー・TypeW』。
温泉作戦は実行したが、結局、法改正により姉妹全員が前島正樹の妻となった。ちなみに、正樹は婿養子である。
「シルバー・ワイフ」との仲も家族ぐるみで良好で、伊隅家は後に各家と親戚筋になってしまう。

宗像美冴:ヴァルキリーズの一員として、火星攻略戦まで武と共に戦う。火星攻略戦時の機体は、第6世代戦術機『ヴァルキリー・TypeW』。
想い人と結ばれ、退役後は家庭に入った。ちなみに、この二人は一夫一妻の夫婦だった。
「シルバー・ワイフ」との仲も家族ぐるみで良好で、二人の子孫の中には、武の子孫と結ばれる者もいた。

―――以上が、その後の武達の足跡である。
これより未来は別のお話。語る術は無い。………だが、一つだけ言えるのは、人類は戦い続けていくに違いない。

――かがやく未来あしたが続いていくように――


Fin.

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