マブラヴ 未来への咆哮 episode:24 「最後の欠片が埋まる時」 <九頭竜さん>
夕食を食べ終わった後しばらくして、呼び出しに応じて武は基地裏の丘に向かった。そして、宵闇に包まれた丘には、まりもの姿が在った。
「……神宮司少佐、どんな御用件でしょうか?」
声を絞り出すようにまりもに問い掛ける武。武の心中は信じ難い一つの可能性が渦巻き、千々に乱れていた。
「……妙なものね」
だがその信じ難い可能性は、他でもないまりもによって肯定される。
「……『未来』の、しかも自分が死ぬ『記憶』があるなんて」
「!!!」
その言葉を聞いて理解した瞬間、武はまりもに駆け寄り抱き締めた。
「――まりもっ、オレは、オレはっ!!」
まりもを力強く抱き締めながら、叫ぶように言葉を紡ごうとする武。そんな武を包み込むように抱き返しながら、まりもは優しく武に囁く。
「――そこから先は言わないで、武。その言葉をあなたが言う必要は無いから」
まりもの言葉に、武は無言で抱き締める力を強める。――それは、まるで号泣のような抱擁だった。
「…………『記憶』はいつから?」
しばらく互いに溢れる想いのままに抱き締め合った後、名残惜しげに体を離し隣り合って座った所で武がまりもに問い掛けた。
「最初の日からよ」
「えっ!?」
「もっと細かく言えば、キスされた時からね」
「えぇっ!!?」
武、烈驚愕。
「でも、一度に全部思い出した訳じゃないわ。断片的に少しずつ思い出していったの。……その、武とキスしてた『記憶』から」
どうやらまりもの『記憶』は、武とのキスを起点として芋蔓式に再生されていたようだ。……どんだけキスしてたんだよ、武?
「ただ、経験していない『記憶』を受け容れるのは大変だったんだから。頭がオカシくなったのかもって不安になったし、何よりあなたとの接し方には苦労したのよ?」
最近は苦労するどころか、むしろ、オープンにしてた感があったが。
「……それで、夕呼に相談したの。そうしたら、フフッ、夕呼ったら呆気にとられた顔して。私、夕呼のあんな顔見たの初めてよ。……その後、色々話してくれたわ。理解できない部分は多々あったけど」
「………」
「けれど、夕呼が決して話してくれない事があった。…………武、『全て』が終わった時、あなたは……どうなるの?」
「―――」
まりもの問い掛けに、武の体が刹那、震える。
「……話して、武」
話すべきじゃない。武の結末は決して避けようのない『運命』だ。だからここで話して、例え一時であってもまりもを悲しませる事はしたくないと武は思っていた。
だが、タイミングが悪かった。結末を受け容れていた。それでも、自身の「■■」の恐怖と孤独が消えた訳ではない。みんなに「■れ■られる」事への絶望は消えない。まりもとの予期しなかった『再会』が、そんな武の『弱さ』を曝け出していた。
だから、武は堪え切れなかった。――ゆっくりとゆっくりと、自分の結末をまりもに語った。
「――――――」
武の口から語られた結末に、まりもは言葉を失った。いや、失わらざるを得ない。……何を言えばいい? 何が言える? こんなにも寂しくも悲しい覚悟をした武に。
『この世界』で生きてきて、『運命』と呼ばれる物を恨んだ事がある。憎んだ事がある。呪った事がある。だがまりもは、今この時ほど『運命』と言う物を赦せないと思った事はなかった。
「――武」
泣き出しそうな心を踏み止まらせ、まりもは武を包みこむように抱き締める。……少しでもいい。今、この時だけでもいい。武の恐怖と孤独、そして絶望が和らぐようにと祈りを籠めて。そんなまりもの気持ちが伝わったのか、武も僅かに震える体をまりもに預ける。
武は自分を包みこむように抱き締めてくれるまりもだけを、まりもは自分に僅かに震える体を預けてくれる武だけを感じていたので、気付かなかった。――丘から走り去る一つの影があった事を。
武とまりもが丘から戻ってくると、霞が息を切らして二人の許にやって来た。
「霞、どうした?」
霞の様子から、何かあった事を感じ取り尋ねる武。
「す、純夏さんが、い、いないんです」
「純夏がいない?」
「は、はい。横浜基地の、どこにも」
「な、何だって!?」
「あなたを捜しに外に出て行ってから、純夏さんの居場所が判らなくなって」
「オレを捜しに外に? ……まさかっ!?」
霞の言葉に、武の脳裏にある可能性が過ぎった。即ちまりもとの話を、自分の結末を純夏に聞かれたと言う最悪の可能性が。
「…………基地内に純夏はいないんだな?」
「はい。副指令も捜してくれましたけど、いないんです」
「霞と夕呼先生が捜して見付からないって事は、純夏は本当に基地内には居ないな」
純夏が誰にも何も言わず突然に姿を消す理由。……思い当たるのは、やはり最悪の可能性のみ。
だがそれを予想できても、純夏の行き先が解らなければ意味がない。だから武は考える。純夏がどこに行ったかを。そして、
「霞、心配すんな。あのバカはちゃんと連れ戻してくるから」
武には純夏の行き先が、当たり前のように確信できた。
「……はい。待ってます」
「ああ」
そして、武はまりもに向き直る。まりもは霞がESP発現体である事、純夏が『00ユニット』である事は知らない。だから今の会話を本当の意味で理解しているとは言えない。
だが、そんな事は関係ない。まりもは武を信じている、一片の疑いの余地無く。だから理由も聞かない、止めることも無い。ただ笑顔で送り出す。
「武、鑑の事、お願いね」
「おう、まかせとけ」
霞とまりもの揺るぎない信頼の眼差しを背に、武は駆け出す。……避けようのない絶望に打ちのめされた純夏を迎えに行くために。
廃墟となった柊町で、珍しく原型を留めた一軒の家。かつて白銀の姓を持つ家族が暮らしていた家。『この世界』の「白銀武」の家の前に、武は立っていた。理由も根拠も無い。それでも、ここに純夏がいると言う確信が武にはあった。
ここまでの足に使った車輌から降り、始まりの日以降、足を踏み入れなかった家の中へ入り、真っ直ぐ2階の自分の部屋へ行く。そして武は廃墟と化した室内、布団も無いぼろぼろのベッドの上で膝を抱えて座り込む純夏の姿を見つけた。
「こんな所にいると風邪引くぞ? つーことでさっさと戻ろうぜ」
純夏の傍に歩み寄り、そう声を掛ける武。だが、純夏は肩を震わせ嗚咽を漏らしながら、顔を上げずに首を横に振る。
「…………あの丘で、オレの話を聞いたんだな?」
「ひぃぐっ、ご、ごべん、なざぁい、ダゲルぢゃんっ、ごっ、ごべんっ、うっうぁぁぁぁぁぁぁっ」
「純夏のせいじゃない。誰のせいでもない。だから、泣くなよ」
「だっで、だっで、わだじが、ダゲルぢゃんっを、『ごのぜがい』に、づれでぎだがらっ」
「!!!」
「わだじのぜいで、ダゲルぢゃん、いっばい、いっばい、がなじいごどあっだのに、づらいごどあっだのに、ぞれなのに、ぞれなのにっ」
「……純夏、おまえ、解ってるのか?」
「ごべんなざいっ、ごべんなざいっ、だげるぢゃんっ、うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
純夏は嗚咽交じりに、「ごめんなさい」を繰り返す。その純夏の反応に、武は純夏が『全て』を理解した事を悟った。
「……さっきも言ったけどな、純夏のせいじゃねえよ」
「でもっ、わだじのぜいだもん! わだじのぜいでっ、ダゲルぢゃんは、■■ぢゃうんだもんっ!! ダゲルぢゃん、がんばっだのにっ、いっばいいっばい、がんばっだのにっ!! なんでっ!? なんでなのっ!? …………ごんなの、びどずぎるよぉっ!!」
顔を上げた純夏は、顔をぐしゃぐしゃに歪ませ泣いていた。そんな純夏を武は抱き締める。
「謝るなよ、純夏。……オレはさ、『この世界』に呼ばれた事を感謝してるんだぜ」
「―――ッ!?」
武の言葉に、純夏が涙が溢れる目を見開いて武を見上げている。
「……オレ自身、全部の気持ちが整理できてる訳じゃない。でもな聞いて欲しいんだ、オレの「想い」を―――」
そして、武が語った「想い」を、武が胸に抱くあいとゆうきの全てを、純夏は聞いたのだった。
「――――――」
まりもと同じように純夏も言葉を失った。言うべき言葉は無い。ならばどうしたらいい? どうすれば、その「想い」に報う事ができる? ……解っている。どうすればいいかも、その「想い」に報いるには何をすべきかも、純夏は解っていた。
ただ、武の「想い」があまりにも優し過ぎて、あまりにも悲し過ぎて、今の純夏には武の胸に顔を埋め、思い切り泣くことしか出来なかった――――
―――オレは感じていた。その瞬間、オレをオレとして繋ぎ止める何かが消え去ったのを。
「……純夏?」
その感覚と同時に、唐突に純夏の嗚咽が止まった。泣き疲れたのかと思ったけど、それにしても様子が変だ。
「…………」
「純夏!?」
もう一度呼び掛けても、純夏は答えない。それどころか、軽く純夏の体を揺すってみると、体にも全く力が入っていない事が解った。
「おい、純夏! ……くっ、待ってろ、すぐ夕呼先生のところに連れて行くからな!!」
何らかの異常が純夏に起きている事を理解した瞬間、オレは純夏を抱き上げて駆け出した。一刻も早く横浜基地に戻る為に。
横浜基地に戻ったオレは出迎えたのは、
「――防衛基準態勢2発令――即時出撃態勢にて待機せよ! ――防衛基準態勢2発令――全戦闘部隊は30分以内に即時出撃態勢にて待機せよ!」
防衛基準態勢2を告げる警報と、
「――純夏さんを地下19階のメンテナンスベッドまで運んでください!」
オレと純夏の帰りを待っていた霞だった。オレに抱きかかえられた純夏を見て、霞が指示する。
「わかった! 先生は!?」
「中央作戦司令室です。状況に対処しています」
中央作戦司令室だって!? ……何が起きてるんだ!?
「――武! 鑑は大丈夫なの!?」
地下19階に向かうオレと霞の所にまりもがやって来た。まりもはオレに抱きかかえられた純夏を見て問い掛けて来る。
「大丈夫だ! ただ、オレと霞は純夏を連れて、夕呼先生の所に行くから!」
「分かったわ!」
オレと霞は地下19階に、まりもはブリーフィングルームに向かい駆けた。
純夏を脳みそ部屋にあるメンテナンスベッドに寝かせて霞に後を任せてから、中央作戦司令室にいる夕呼先生の所に向かう。そして、ミーティングルームに場を移してから、純夏と基地の状況を聞かせて貰った。
純夏の異常は、『量子電導脳』の保護と冷却剤の役割を持つ『ODL』とか言う液体の異常劣化が原因らしい。そしてその異常劣化の原因は、純夏が『全て』を理解した事による『量子電導脳』の機能の全解放だと、夕呼先生は結論付けた。
次に基地に防衛基準態勢2が発令されている理由は、佐渡島ハイヴに属していた数万のBETAが恐らく横浜基地に在る『反応炉』を目指し進攻中だからだと言う事。夕呼先生の話じゃ横浜基地は最大の危機に晒されている筈なのに、夕呼先生の態度にはどこか余裕がある。
「あんたの『記憶』から、防衛態勢はきっちり整えていたのよ。まあ、ギリギリだった事は否定しないけどね」
「きっちり整えていた? どういう事です?」
「詳細は部隊のブリーフィングで聞きなさい。あたしも発令所に戻るから」
「分かりました。純夏の事、お願いします」
そう言って、オレはミーティングルームを出てブリーフィングルームに向かった。
「――状況を確認する」
『…………』
オレがブリーフィングルームに入ると、まりもからの状況の説明が始まった。
BETAの出現予想地点は旧町田一帯から横浜基地までの全域。第一陣の地表到達が70分以内。攻撃目標は横浜基地。データから推測されるBETA群の規模は3万以上。とてもじゃないが楽観できる状況じゃない。
「――だが、朗報だ。帝国軍から大規模な戦力が回される事になっている。また、各地の国連軍基地から抽出された増援が30分後には到着予定だ。そして珠瀬国連事務次官の要請で、米国第7艦隊が既に東京湾に展開している」
『――ッ!!?』
な、何だって!? 夕呼先生が言ってた「防衛態勢はきっちり整えていた」ってこう言う事か!?
「私達A-01の最優先任務はXG-70とその衛士である鑑の安全確保。次に基地施設の防衛となる。――この基地を、XG-70と鑑を絶対死守だ! いいな!?」
『――了解!!』
「よし! 全員完全装備で20分後ハンガーに集合!!」
「――解散っ!!」
配置概要や装備関連の説明と言った任務概要と任務への質疑応答も終え、伊隅大尉の解散の号令でブリーフィングが終わる。
さっきまりもが言った通り、この基地を守らなきゃオルタネイティヴ4は終わりだ。……ここまで来て、そんな事は絶対させねえっ!!
「――総員、聞けいっ!! 我ら帝国軍の悲願であった佐渡島ハイヴの陥落は、国連軍の助力無しに、オルタネイティヴ第4次計画無くして成る事はなかったであろう。
そして今、オルタネイティヴ第4次計画の本拠たる横浜基地は危機に晒されている。我々は国連軍への恩義に報いらねばならぬと同時に、人類の未来のため横浜基地を守らねばならぬっ!!
心せよ!! 我らの銃後に在るのは、人類の命運である事をっ!!! この戦い、決して敗北は許されぬっ!!!
――総員、突撃っ!!!」
紅蓮醍三郎大将が率いる斯衛第1機甲連隊、通称「紅蓮連隊」を先鋒とした帝国軍地上部隊と東京湾に展開した帝国海軍、そして、
「――私は忘れていない。3年前の屈辱を。本国の命令で友人達を見捨て、あのBETAどもにケツ捲くって逃げ出したあの日の事を!!
あの日から我々は誇り高き最強の軍隊ではなく、臆病者の軍隊になり下がったっ!!
そんな事が許せるかっ!? 許せる筈がないっ!! 我慢できるかっ!? できる筈がないっ!! この艦隊に所属する全員が私と同じ気持ちであると、確信しているっ!!
さあ、母なる大地を汚すあのBETAどもに教え込んでやれっ!! 我々の力をっ!! この地球にあのBETAどもの居場所など無い事をっ!!
――全艦、攻撃開始っ!!! 全部隊、出撃っ!!!」
米国第7艦隊総司令官アーノルド・ウォーケン提督の号令一下、東京湾に展開した米国第7艦隊所属の全部隊が、各地の増援も加えた国連軍部隊と共に横浜基地に迫るBETA群への攻撃を開始する。
オルタネイティヴ4と言う人類の未来を担うものを守る戦いである事をこの戦場にいる全ての将兵が理解していたため、国連軍に帝国軍、米国軍の士気は非常に高く、戦場は乱戦の態を示しながらも統率に乱れも無く、三軍が一丸となって数に勝るBETAを少ない被害で討ち倒していく。
「――町田の敵は陽動だ! 横浜基地周辺に直接出現するのが敵の本隊である! また、敵はレーザー属種を温存している可能性が高い! レーザー属種が出現していない今の内に、航空隊と砲撃によって敵本隊に打撃を与えるのだっ!!
――総員、奮闘せよっ!!!」
更に、夕呼から純夏のリーディングデータと武の『記憶』に基づく報告を受けていたラダビノッド司令のBETAの動きを読み切った適切な指示命令によって、味方の損耗率は低く敵の損耗率は高くなる。
また、敵の本隊に未だレーザー属種が確認されていない為、まだ横浜基地に不足している有効な戦術対地兵器を装備した帝国軍並びに米国軍の航空戦力と支援砲撃により、敵側の損耗率だけが爆発的に上昇していった。
「――うおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
オレは『武』を駆って、接敵したBETAを次々と長刀で切り裂き、銃弾で穿ちながら討ち倒していく。
「――戦況はこっちが有利、か」
BETAの第一の脅威がその圧倒的物量とは言えレーザー属種がいないせいで、支援砲撃と航空戦力にBETAは手も足も出ず、また、こっちの戦力が揃っている事に加え基地司令部からの適切かつ効率的な指揮によって、数的には圧倒的な劣勢にも関らず戦況は圧倒的に優勢だ。
……そうだ、勝てる。オレ達は敗けねえ!
「……にしても、さっきから通信が入りまくりだな」
横浜基地所属じゃない国連軍機に帝国軍機、米国軍機から、感謝や同じ戦場に立てる事を喜ぶ事を伝える通信が入りまくってる。……「英雄」効果ってヤツだろうが、気分は複雑だ。
「武、あんまりイヤそうな顔しないの」
「けどさ、まりも」
「あなたは彼らから感謝と敬意を向けられるに値する事を、確かに成し遂げてきたわ。……あなたが居なければ、国連軍に帝国軍、米国軍がこんな風に肩を並べて戦う事は無かった筈よ。
――武、あなたは自分のしてきた事に胸を張って良いの」
「…………ありがとうな、まりも」
まりもの言葉にあの夜以来、流さないと誓った涙が零れそうになる。それを堪えて、オレは壬姫に通信を繋ぐ。今だからこそ伝えたい事があったから。
「――なあ、壬姫」
「えっ、どうしたの、たけるさん?」
「……国連軍に帝国軍、米国軍にも事情とか思惑があるだろうな。けどな、今、オレ達は間違い無く肩を並べて戦ってる。力を合わせてBETAと戦ってる。……多分さ、それが壬姫のオヤジさんが目指してるモノなんだと思うんだ」
オレの唐突な通信を受けて、しばらく呆然としていた壬姫だったが、
「うん!」
満面の笑顔でオレの言葉に応えてくれた。そうだ。力を合わせれば、オレ達は、人類はBETAになんぞ敗けやしねんだっ!!
「――久し振でいいかしら、ミキ?」
「あっ、イルマ少尉!」
と、オレ達の近くにいるF-22Aの大隊の方から通信が入ってくる。壬姫が名前を呼んだ人は確かクーデターの時にいた人だ。ってことは、
「――久し振りだな、訓練兵。いや、今は白銀大尉だったな」
「ウォーケン少佐!」
やっぱり、あのF-22Aの部隊はウォーケン少佐の部隊か。
「白銀大尉。貴様を一時でも指揮下に置けた事、こうして共に戦える事は、生涯の自慢になりそうだ」
「お、大袈裟ですよ、ウォーケン少佐」
「そんな事はないぞ、白銀大尉。貴様はそれだけの漢だ」
「そうよ、シロガネ大尉。あなたの勇姿は私のように故郷をBETAに奪われた人達に、確かな希望を与えてくれたわ。あなたは間違い無く「英雄」なのよ」
こうも真剣に褒められるのは、照れるけどマジで嬉しいよな。……オレは胸を張っても良いのかな、…………沙霧さん。
「――その通りだ、白銀大尉! そして、貴様が旗頭となっておるオルタネイティヴ第4次計画は、人類の希望と未来を担うものだ! だからこそ、その本拠たる横浜基地を陥とさせる訳にはいかぬ! 横浜基地こそ、人類の希望の砦なのだ!」
そんな野太い声の通信と共に、全機「赤」の武御雷の部隊がA-01の近くに来ていた。通信はその部隊の先頭に立つ機体、搭乗者が『紅蓮大座』と自称するカスタムチューンされた「赤」の武御雷に乗る紅蓮醍三郎大将からのものだ。……相変わらず、あの人の声はデケエな。
「殿下の命により、我が部隊はA-01と行動を共にする! ……神宮司少佐、よろしいな!」
「は! こ、光栄であります!」
紅蓮大将の言葉に、まりもは緊張した様子で答える。人類最高の衛士である紅蓮大将の率いる部隊は、人類最強の部隊との呼び声が高いから、まりもの反応は頷ける。……それにしてもそんな命令降すなんて、悠陽無茶してるよな。
「――第2滑走路側より新たなBETA群の進攻を確認。A-01並びに帝国斯衛第1機甲連隊第1中隊はそちらに向かって下さい」
『――了解!』
司令部のイリーナ中尉からの通信を受け、オレ達A-01と紅蓮大将率いる中隊が第2滑走路の方へと向かう。ちなみに、オレ達A-01は遊撃部隊的なポジションで、BETAに押されている所に戦況に応じて回されている。
「白銀大尉! 貴様の2機連携、私が務めよう!」
と、いきなり紅蓮大将が通信でそんな事を言ってくる。まあ、紅蓮大将も実力が突出しているせいで、隊に2機連携を組む事のできる人間が居なかった筈だから、そう言ってくるのも頷けた。やっぱり連携を組んだ方が戦い易いしな。
それに正直、今のオレに追随する事のできる技量を持ってるのは今現在紅蓮大将だけだろうし、『天眼』保持者同士の連携の凄さは知ってる。何せ僅かな挙動からでも互いの動きを読めるんで、長く2機連携を組んでいる人間よりも巧い連携ができるんだよな。
となれば、オレの答えは決まってる。
「了解です、紅蓮大将!」
「うむ! 『白銀の閃光』の力、見せてもらうぞっ!!」
そして、オレの『武』と紅蓮大将の『紅蓮大座』が前に出る。
「――往くぞ、白銀っ!!!」
「――了解っ!!!」
通信直後、オレと紅蓮大将が先行して敵群に突撃した。
『白銀の閃光』と『紅蓮の猛き雷』と言う最強の衛士と最高の衛士の競演は嵐の如き猛威でBETAの屍山血河を築き、その戦い振りにこの横浜基地防衛戦に参加している全ての者の士気を昂ぶらせる。
『――続けっ!! 紅蓮大将に、『白銀の閃光』に続けぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!! 』
万単位のBETAの進攻は、天を衝かんばかりの士気を持った国連軍に帝国軍、米国軍の共同戦線に寄って押し返された。
こうして後の歴史で、『甲21号作戦』と同じくらい重要であったと言われる『横浜基地防衛戦』は人類の勝利で終わりを告げた。
――日が昇る。人類の未来を示すような煌く陽光と共に。
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