マブラヴ 未来への咆哮 episode:1 「再び動き出した時間とき」 <ウルさん>



――2001年10月22日(月)

「……ここは?」

覚醒してすぐ目に入ってきたのは、何年も目にしていない気がする見慣れた天井だった。

「……オレの部屋?」

その事実を認識した瞬間ベッドから跳ね起き、部屋を見渡す。不意に視界が滲む。

「……ハハッ、何でオレ、泣いてんだよ?」

目を閉じて、気持ちを落ち着かせる。

「……それにしても、何て『夢』見てんだ、オレ」

宇宙からやって来た侵略者『BETA』によって、人類が滅亡の危機に瀕した世界。
そんな『狂った世界』に突然投げ出されたオレは、軍隊に入って、戦術機ってロボットに乗って、人類の敵『BETA』と戦う為に生きていた。……南の島で死に掛けたり、『BETA』にビビッて気絶なんかして、メッチャカッコ悪かったけど。
しかも傑作なのは、主要キャストにはオレの知り合いが多いことだよな。まあ、オレの『夢』だし当然か。冥夜、委員長、彩峰、たま、尊人ならぬ美琴。てか、どうして、尊人を女にしてんだ、オレは? 夕呼先生も、まりもちゃんも、月詠さんも、3バカもいた。あっ、でも、純夏はいなかったな。……あと、霞や、京塚のオバちゃんは、オレの創作か?

「……まあ、『夢』だし、どうでもいいけどな」

時間は8時か。そろそろ、登校、しなきゃならない時間だ。……オレは、今感じている違和感を、窓から見える景色を、極力意識しない様にしながら、制服に着替えて、部屋を出て、階段を下り、玄関に辿り着き、ドアノブに手をかける。

「……この扉を開けりゃ、ハッキリするよな」

……解っている。解ってるけど、正直整理しきれてないんだよ。それでも、この扉を開けるしかない。……何時までも、ここに居たって何もならねえし。

ガチャ。
「………………」
ヒュオォォォォォォッ

そして、ドアを開けた向こう側に広がっていた景色は、風が吹き抜ける音だけが響く、瓦礫しか残ってない廃墟。あの『狂った世界』の横浜だった。

「……やっぱか」

搾り出すように呟いて、周りを見渡す。純夏の家があった場所に打ち捨てられた「撃震」の残骸。あの『夢』の内容と一致する。

「何なんだよっ、どうなってんだよっ、これはっ!!?」

持て余した感情の高まりを叫ぶ事で放出する。そんな事で何が起きる訳じゃないが、それでも、少し落ち着いた気になった。こんな時、自分の「いつでも準備無し」って性格は、結構貴重なのかもなんて思ったりもした。……あんま、役には立たねえけど。

「……オレは、戻ってきたのか?」

10月22日はじまりの日に。それとも、あの『夢』は予知夢か? いや、そもそも、これは現実なのか?

「……お約束だが、やるかっ!」

そう言って、思いっきり自分の頬を抓る。

「ひててててててっ!? ……痛え。やっぱ、夢じゃないよな」

って言うか、オレをオレと認識して動けている以上、これはオレの現実なんだ。……まあ、分かってはいたんだけど、それでもこの現実を受け容れるためには、こう言う「儀式」は必要だったんだよな、……多分。

「……ここに居てもしょうがねえ。行くか」

目指すは、『元の世界』で白陵柊のある場所、国連太平洋方面第11軍横浜基地だ。
瓦礫となった柊町を歩き、基地に向かう。落ち着かない。自然と歩調が大きくなる。まるで何かに追い立てられるように。
その原因は、オレの記憶、それとも予知夢かは判断が付かないが、とにかく、その中にある。……とは言っても、虫食いのような欠損があって、細部に関しては自信がないが。それでも、ハッキリと覚えている事もある。
オルタネイティヴ5。選抜された十数万人のみを外宇宙に脱出させる計画。……選抜されなかった全ての人々が残った地球を放棄して。
オレは、外宇宙に脱出する移民船には乗らず、地球に残った。横浜基地で移民船搭乗の為に打ち上げられる駆逐艦の護衛任務に就いて、そして、……その後の事の記憶はハッキリとしない。
移民船団の出発の後に行われたはずの地球規模の反攻作戦、そして、207のあいつら、冥夜、委員長、彩峰、たま、美琴がどうなったのかすらも。
でも、多分、オレ達は、……人類は負けたんだと思う。……漠然とした大きな喪失感が、何かを失った後悔が、今のオレを支配しているから。それがオレを急かすように衝き動かす。
オルタネイティヴ5は絶対阻止しなきゃならない。その為には、夕呼先生にオルタネイティヴ4を何としても成功してもらわなくちゃならねえ。人類が未来を繋ぐ為には、オルタネイティヴ5じゃダメなんだ。
それでも、ラグランジュ点じゃ、移民船の建造はもう始まってるだろうし、オルタネイティヴ5発動まで二ヶ月程しかない。……オレはもう御免だ、あんな未来は。

「……あんたらが、オレを呼び戻したのか?」

衛士訓練校のゲート前にある桜並木。本土奪還作戦で散った御霊達が眠ると言われてる場所に、いつの間にか着いていた。
ここで眠ってる人達は、僅か十数万人にだけが地球を脱出して、残った人々が全滅するなんて結末を迎える為に、命を賭けた筈がない。だからだろうか? そんな事をふと思っちまった。

「……つっても、オレの記憶がホントだったらの話だけどな」

もし、オレの記憶がただの妄想だったら、イタイ人でしかねえ。……その方が良いかも知れないけどな。

「……やっぱ、そんな訳ねえか」

坂を上りきった先にあったのは、『元の世界』の白陵ではなく、『前』にオレが笑った馬鹿でかいレーダーのある国連太平洋方面第11軍横浜基地だった。

「……覚悟を決めるしかねえか。もう、オレはあの未来を見たくねえ。そのために、オレにしか出来ない事をやるしかねえんだ」

本当に覚悟が決まってるかどうか、それは分からねえ。……それでも、前に進むしかねえ!! 踏み出すしかねえんだっ!!

「……行くぜっ!!」

で、基地入り口で衛兵の伍長コンビに止められた。『前』でも、この二人とはそれなりに仲良かったんだよな。『前』で横浜基地に二年間居たお陰で。……二人を見て少し目が潤んじまったのは、男の秘密だ。

「とにかく、香月博士に連絡を取ってくれないか?」

オルタネイティヴ5の発動まで時間がない。独房に入るなんて時間の無駄はできねえ。一刻も早く夕呼先生に会わなきゃ。
オレの言葉に、互いに顔を見合わせる伍長コンビ。とりあえず、連絡を取ってくれるようだ。焦る気持ちを抑えて、穏便に事態を進ませようと四苦八苦した成果だろう。……自分で自分を褒めてやりてえよ。

「……シロガネタケル」

「ああ、どうだった?」

カチャ。
「!?」

伍長コンビの持つ機関銃の銃口が、オレに向けられる。だけど、そのあとチョビヒゲ伍長がオレに言った言葉は、銃口を向けられた事より、オレに衝撃を与えた。

「香月博士は、オマエの事なんて知らんと仰っている」

「なっ、なんだって!?」

どういう事だよ!? それじゃ、何で『前』の時、オレを独房から出してくれたんだ!? く、くそ、どうすりゃ良い!?

「大人しくしろよ」

銃口向けて、そんな事言われてもな。ちっ、くそ、『前』と同じに、独房から始めるしかねえのか?

「連行する。……抵抗するなよ」

「……ああ」

ここで下手な騒ぎを起こすのはマズイ。くそっ、もうちょっと考えて動くべきだったか? こんな所で足踏みしてる訳にはいかねえのにっ!!

「――ねえ、連絡をくれたのはあなた?」

「「「!?」」」

ゆ、夕呼先生!? な、何でここに!? い、いや、これはチャンスだ。ここでこの人の興味を惹けばっ!!

「はっ、自分であります」

「それで、あなたがシロガネタケル?」

「そうです、夕呼先生っ!」

「先生? あたしはあなたみたいな教え子、って言うか、教え子そのものを持った覚えがないんだけど?」

「お、おい、黙れっ!」

「オレ達にはこんな事をしてる時間はないっ! そうでしょ、先生っ!?」

「こら、止さないか!」

「………」

「4は崖っぷちなんでしょう!? 5の準備はもう空の上で始まってるんでしょう!?」

「!!!」

「良いんですか!? このままじゃ、『また』間に合わなくて終わっちまうんじゃないんですかっ!?」

「……『また』?」

「オレはそんなのはもう御免なんだっ!! だから、オレの話を聞いて下さい、お願いします、先生っ!!」

「このっ、いい加減にしろっ!!」
ガスッ!!
「ぐあっ!!」

「……あなた、本当にシロガネタケル?」

「「香月博士?」」

イテテ、そ、そうです」

「ソレを証明する手立てはある?」

「……無かったら、脳と脊髄にまで解剖してシリンダーに入れますか?」

「…………伍長」

「はっ」

「離して良いわよ。そいつ、私の知り合いだから」

「は? しかし、先程は……」

「ごめんなさい。今、思い出したのよ、伍長」

「ですが、……本当によろしいので?」

「ええ。それじゃ、ついてらっしゃい、シロガネ」

「はいっ!!」

何とか、チャンスはモノにできたみてえだな。……いや、これからだ。先ず、この人に信用して貰わなきゃ、何も始まらないんだ。


――横浜基地B19F・夕呼の執務室

正面ゲートから四時間近く。諸々の検査が終わり、主観時間で二年振りに入った先生の執務室で、オレは今現在、……夕呼先生に拳銃を向けられている。

「……あなたの目的は何?」

ハッキリ言って、オレは混乱のしっ放しだ。オレの身元の証明になると思って、オレの部屋の調査を頼んだら、オレの部屋は廃墟になってた。部屋に置き忘れた『ゲームガイ』や、この世界に無い物も無くなっちまったみたいだ。
それで、夕呼先生に信用して貰うためには、知ってる事を話すしかなくなって、オレの知ってる限りのオルタネイティヴ計画の情報や、オルタネイティヴ4の成功の為には、「半導体150億個の並列処理装置を手のひらサイズしなければならない」事、この執務室の隣の部屋にある、脳と脊髄が入ったシリンダーの事を話し終わったら、今の状況だ。

「……オルタネイティヴ5を阻止して、BETAに勝利する事です」

夕呼先生の冷たい視線を真っ向から受け止めながら、答える。

「………」

「信じてもらえませんか?」

「あなたが、反オルタネイティヴ派の工作員って話の方が、よっぽど信憑性があると思うけど」

「『こっちの世界』の工作員は、こんな回りくどい方法を使うんですか!?」

「………」

「何でだよっ!? こんなのが、先生、あんたの望みなのかよっ!?」

「……望み?」

「たった十数万人だけが地球から脱出して、残された十億人が滅亡を待つだけ、そんな未来があんたの望むモノなのかよっ!?」

胸の奥から湧き上がる、大きな喪失感と失った後悔から来る深い悲しみに、言葉が止められない。

「………」

「違うだろっ!? そうでなきゃ、あの時、ベロベロになるまでヤケ飲みして泣き喚いたりしないだろっ!? それでもっ!?」

――ミニスカサンタの夕呼先生――酒臭い、けど甘い吐息――柔らかく熱い肢体――そして、繋がるオレと先生――

「うっ、えっ、あっ!?」

単なる情報としての記憶じゃない。五感やその時の空気感まで鮮明に伴った記憶に、オレの頭はショート寸前だ。

「!? ……何、急に顔を赤くして? ヘンな奴ねぇ」

「あっ、いや、そ、その、と、とにかく、オルタネイティヴ4を、何としても成功させなくちゃならないんですっ!! オレはもう、あんな未来は御免なんだっ!!」

強引に話を戻す。う〜〜っ、でも今の記憶は何なんだ? ありえねえだろ、オレと夕呼先生がだぞ? ……とりあえず、後回しにしようぜ、この事は。

「………」

「……それでも、オレを殺しますか?」

「………」

「……オレは、死ぬのは怖くない。『前』じゃ一応軍人やってましたから。……しかも、先生のおかげでね」

「……あたしの?」

「……オレは元々、BETAのいない世界の人間だったんです」

「……BETAの、いない世界?」

「……ある朝、目覚めたら、こんな狂った世界に投げ出されて、これは夢だと思って学校に行ったら、そこはこの横浜基地で、衛兵に捕まって、尋問されて拘禁されて、でも、先生は、突然現れたオレに何でか興味を持って、独房から出してくれました」

「………」

そして、『前』の事を話す。B19Fに出入りできるセキュリティの高いIDをくれた事、衛士訓練校に入れてくれた事、霞に会わせてくれた事、隣の部屋の脳みその入ったシリンダーを見せてくれた事を話した。先生は無言でそんなオレの話を聞いていた。そして、オレの話が終わって、先生が口を開いた。

「で、あたしはあなたの言っていることを、どうやって信じたらいいの?」

「……分かりませんよ。ただ、『前』の先生は、ありえない話じゃないとか、研究に協力しろとか言ってました」

「……ひとつ聞くけど、あなたが知っている秘密を、暴露しないなんて保障はあるのかしら?」

「オレが知ってる情報に根拠なんて無い。知らない人間が聞いたら、妄想としか思われませんよ!! それに、オレには『この世界』で身元を保証する物が無いんだ!! そんな奴の言う事誰が信じるって言うんですか!?」

「………」

「……オレの持ってる情報は、先生に信じてもらえなきゃ、何の意味もないんだ」

「……あたし達は、ある種の利害が一致しているって訳ね」

「それでも工作員だって疑ってるって言うんなら、気の済むまで調べて下さいよ!! さっきの検査だってそうなんだろ!? 先生は、それが出来る立場も能力も持ってるだろ!? こんな問答してる場合じゃないんだよ、先生!!」

「………」

「『あなたがワケわかんなくたって、事実は変わらない』」

「!?」

「『この世界』を夢だと言い張って、現実を認めないオレに、先生が言った言葉ですよ」

「……そう。……少し、待ってなさい」

そう言って、先生はキーボードに何やら打ち込み始める。銃口はオレに向けたまま。

「………」

でも、先生があの言葉に反応したって事は、オレの妄想じゃないって事だよな?

チャ。
「!!」

モニターを凝視して考え込んでいた先生が、オレに向けていた銃を下ろす。

「……まったく、おもしろい事になってるわね」

「……あの」

「……確かに、ありえない話じゃないのよ」

「……先生、あの、オレが工作員じゃないって、証明されたんですか?」

「元々、工作員だなんて思ってないわよ。理由はさっきあなたが言った通りよ」

それじゃ、単に頭のおかしい奴、若しくはイタイ人って思われてたって事か。まあ、当然だよな。オレが先生の立場だったら、そう思うだろうし。

「あなたは、情報を知り過ぎていたし、あたしの頭の中にしかない事まで口にした。……ただの頭のオカシな奴には出来ない芸当よ」

グサッ!! それを、わざわざ言わなくても良いだろっ!? やっぱ、夕呼先生は夕呼先生だよなぁ〜〜。

「それに、この検査結果に、これと言い、………面白過ぎるわね」

うわ、何か既視感のある笑顔を浮かべてる。ありゃ、イイ実験動物モルモットを見つけたって表情だ。

「と、とにかく、信じてもらえたんですか?」

「100%じゃないわ。まあ、あたしにはあたしなりの信じるに足る理由があると言うだけ。それに、あなたの言っていることを、少なくとも、あなた自身が嘘と思っていない事は証明されたわ」

「!?」

証明されたって、……どうやって、そんな事を証明するって言うんだ!?

「あの先生、証明されたって」

「あなたにそれを言う気はないわ、……まだね。それに、あなたにとって重要なのは、あたしがあなたの言うことを信じたことじゃないの?」

「……確かに、そうですね」

「まあ、これから長い付き合いになりそうだし、よろしくって言っとくわ、白銀」

「……ハイッ!!」

ようやく、始まるんだ、オレの戦いが。もう地球は見捨てさせないっ!! あんな未来は絶対に、来させないぜっ!!


横浜基地のグラウンドで、夕焼けに染まる空を見上げながら、オレはこれからの事を考えていた。
あの後、夕呼先生に、『前の世界』と『元の世界』の話をしてから、オレの待遇が決められた。『前の世界』と同じ待遇で、第207訓練分隊からのスタートだ。
正直、時間がない今の状況で、『前の世界』と同じスタートって言うのは、受け容れ難かったが、先生の信用を100%得ていない以上、先生が言った通り、破格の条件と言える。
それによく考えたら、オレの持ってる情報って、ほとんど夕呼先生の役に立ってねえんだよな。
大体、オルタネイティヴ5の発動の期限が分かっただけだし。オレの持つオルタネイティヴ4の情報は、夕呼先生が知ってる事だけで、4を成功させるための鍵となる情報がある訳じゃない。……オレって、実は役立たず!?

「もし、そこのお方」

ドックン

「……あ」

その声に振り返る。そして、その振り返った先に居たのは。

「……?」

オレが固まっちまった事に、訝しげな表情をした冥夜だった。

「……あ………ああ…」

オレの中で、記憶が、想いが、怒涛のように噴出する/溢れる/爆発する。

――天元山の災害救助――二人っきりのコクピット――プレゼントだった「皆琉神威」の鍔――シミュレーターで繋がった心と体――移民船搭乗資格を巡って見せた連携――そして、残された地球での日々/未来への希望を持った別れ――

……オレが、『前の世界』で失ったのは、冥夜だったんだ。その冥夜が、今、オレの目の前に居る!!

「どうかなさいましたか?」

オレの異常に気付いた冥夜が、一歩、オレに近付いた。それが、引き鉄になった。

「冥夜っ!!」

「なっ!?」

強く、強く、冥夜を抱き締める。そうしなきゃ、目の前の冥夜が居なくなっちまうような気がして、だからもう、離れ離れにならないように、強く強く抱き締めた。

「……冥夜ぁ、冥夜ぁぁ」

「なっ、なあっ!?」

自分の命よりも大事な、最愛の相手の名前を口にしながら、ひたすらに、湧き上がる愛しい想いのままに抱き締める。

「……何をしてる!?」

声と共に、オレ達の方に向かってくる複数の足音がする。あの声はまりもちゃんだ。……良く考えたら、この状況はあんま良くないよな? つうか、いきなり、女に抱き着いたら、痴漢じゃねえ?
突然、湧き上がった想いに流されていた思考が、冷静さを取り戻し始める。仕方なく本心とは裏腹に、冥夜から渋々と体を離す武。

「……キサマ、白銀武だな? 自己紹介の前に、婦女子に抱き着くなど、元気が有り余っている様だな? 明日からの訓練、楽しみにしていろ?」

「ちょっ、ま゛っ!?」

「「「「!?」」」」

素っ頓狂な声を上げたオレに、面食らった表情になるまりもちゃん、委員長、彩峰、たま。だけど、オレはそんな事気にしてる余裕がなかった。……オレの中でまたしても、記憶が、想いが、怒涛のように噴出した/溢れた/爆発したから。

――実機演習中のオレの部屋での合宿――軍人として偉くなりたいと思う理由――プレゼントだった「チョップくん人形」――シャワー室で繋がる心と体――そして、残された地球での日々/未来への希望を持った別れ――

――実機演習中のオレの部屋での合宿――父親のようにはならないと言う理由――プレゼントだった「お昼、一緒に食べてあげる券」――慧の部屋で繋がる心と体――そして、残された地球での日々/未来への希望を持った別れ――

――HSST墜落事件――基地を救う為の狙撃――プレゼントだった「セントポーリア」――壬姫の部屋で繋がる心と体――そして、残された地球での日々/未来への希望を持った別れ――

――オルタネイティヴ5発動後の激戦――207衛士訓練学校に於ける武以外の教え子全員の戦死――仲間を、教え子を失った二人――傷の舐め合いのような始まり――深まった戦場での愛――


「ああああああああああああああああ!!!!」

氾濫する記憶と想いに、頭を抱え叫ばずにはいられない。

「お、おい!?」

いきなりの事に、まりもをはじめ、皆、手を出しかねている。と、武の絶叫が不意に治まる。

「……お、おい、白銀、大丈夫か?」

虚ろな光を湛えた瞳に、まりもが心配しながら、問い掛ける。

「…………マ」

「「「「ま?」」」」

「……マジで?」
ドサッ!!


まりも達にとっては、謎の、武自身にとっては、何年か振りに使った口癖を残して、白銀武は後ろに倒れ、気絶した。
……ちなみに、冥夜は、武に抱き締められた時からずっと固まっていた。


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