Blade worker 9 「悲しき笑顔と胸に秘めたる父の願い」 <黒鎧さん>
「鞘」に魔力を流し、肉体の回復に努める。
「良し。そろそろ動けそうだ」
体を動かして、不具合が無いか確かめる。
「シロウ、そんなに早く回復するものではないでしょう。もう少し安静にすべきです」
と言って紅茶を飲み、先程からイリヤと一緒に食べていたザッハトルテや、バームクーヘンに手を伸ばすアルトリア。
「あ、言ってなかったな。俺の体内には、聖剣の「鞘」が在るんだ。だから、もう大丈夫だ」
「!! なるほど。私の召喚の触媒は「鞘」だったのですね」
「ああ。本当は、アルトリアに返すべきだと思うんだけど、事情があって、俺の体から取り出せない」
「いえ、構いません。シロウの性格を鑑みれば、シロウが持っておいた方が良いでしょう」
「手厳しいなぁ」
コンコン。ガチャ。
「失礼致します。お嬢様、お荷物をまとめておきました」
と、変わった格好のメイド?さんが、大きなトランクを携えて部屋に入ってきた。
「ありがとう、セラ。そこに置いておいて」
「かしこまりました、お嬢様」
トランクをドアの脇に置くセラさん。彼女がイリヤの「家族」なんだな。
「ところで、リズは?」
イリヤの話じゃ、もう一人いるんじゃなかったけ?
「それが、先程からどこにも見当たらないのです。まったく、どこで遊んでいるのやら」
分かり辛いが怒っているセラさん。どこかしょうがないと言った雰囲気があるけど。
「それじゃ、行こう、シロウ」
椅子から立ち上がり、ドアの所で振り返るイリヤ。
「セラさん達は、どうするんだ?」
「私共は、こちらの整理が終わり次第、お嬢様の御世話の為、そちらに伺わせて頂きたく思います」
「分かった。それじゃ、行こうか」
「……ムグムグ、分かりました、シロウ」
健啖だな、アルトリア。そして、俺はベットから起き上がろうと、ベットに手をつく。
むにゅん。
「うぅん」
ベットの柔らかさとは異なる柔らかさ。首を巡らせ、声のした方を見ると、
「シロウ、テクニシャン」
セラさんと一部分が、大幅に異なるメイドさんが寝ていた。
「どぉわぁぁぁぁ!!!」
「シロウ!? 何事ですか!?」
「あ〜、リズ、ずるい!!」
「リーゼリット、何をしているのです、あなたは!!」
「シロウ、あたためてた」
「雪山で遭難した訳じゃないから!!」
「私に気付かれずに、ベットに入り込むなど―」
「メイド・コマンドー、サイレント・ベットイン」
ベットから起きて、特盛な胸を張るリーゼリットさん。三人の目が吊り上った気が……。
「と、とにかく、行こうか?」
このままじゃ話が進まないので、先を促す俺。
「……うん。行こう、シロウ」
「……分かりました。行きましょう、シロウ」
眦を上げたままのイリヤとアルトリア。
「お嬢様の事、お願い致します」
「イリヤのこと、おねがい」
「ああ。それじゃ、二人の事も待ってるから」
セラさんとリーゼリットさんに見送られながら、先を行くイリヤとアルトリアを追っかけるようにして、城を後にした。
森の入り口まで戻り、バイクのエンジに火を入れる。ヘルメットを、アルトリアに渡し、さあ、家に戻ろうとした時、
「イリヤスフィール。あなたがシロウの後ろに乗りなさい」
そう言って、ヘルメットをイリヤに渡すアルトリア。ヘルメットを受け取り、きょとんとするイリヤ。
「それじゃ、アルトリアはどうするんだ?」
「私はサーヴァントですよ?ここから、シロウの家まで走る事位、造作もありません」
「いや、でも、魔力の供給がない以上、消耗は避けるべきじゃないのか?」
「心配は無用です。この程度で消費する力なぞ、微々たるものですから」
「……分かった。アルトリアがそう言うなら。じゃあ、行こうか、イリヤ」
イリヤをバイクのリアシートに招く。
「しっかりつかまってろよ、イリヤ」
「うん、シロウ!!」
ぎゅっと俺につかまるイリヤ。そして、イリヤはアルトリアに顔を向けて、
「セイバー、お礼と言うわけではないけど、特別にバーサーカーであなたを運んであげる。バーサーカーの肩は私だけの場所だけど、今日だけは特別に座らせてあげる」
「いえ、私は―」
「別にあなたのためじゃないわ。シロウが気にするだろうから、シロウのためよ」
「……分かりました。イリヤスフィール、あなたの申し出に感謝します」
「だ、だから、あなたのためじゃないわよ」
アルトリアからぷいっと顔を逸らすイリヤ。微笑ましいなと思いながら、家に向かった。
家に帰りつき、しばらくして、皆が帰ってきた。
「どうだった、遠坂?」
「収穫も何もなし。そっちはって、聞くまでもないようね」
俺の膝の上に座るイリヤを見て言う遠坂。なんか剣呑な雰囲気だな。
「ねえ、シロウ。わたしがいるんだから、リンなんて要らないでしょ?ここでやっちゃおうよ」
「へえ、出来るものならやってみなさいよ?」
何故に一触即発!?
「イリヤ、遠坂とは同盟組んでるし、俺の命の恩人でもあるんだ。出来たら、仲良くして欲しい」
「……シロウはその方が嬉しい?」
「ああ、嬉しい」
「分かったわ。と言うわけで、仲良くしてあげるわ、リン」
「別に、そんな必要はないわよ?」
立っている遠坂に対して、座っているイリヤの方が目線が思いっきり下にも拘らず、見下ろすような目付きのイリヤ。先程より輪を掛けて重くなる居間の空気。仲良くしてくれ、ホント。
「うわ、居間に入り辛え」
「魔術師とやらがまみえるとは、こう言う事なのだろうな」
「はわわ、どうしよう?」
「衛宮がどうにかするだろうさ」
「先輩、頑張って下さい」
「桜、今日の夕食は何なのでしょうか?」
助けは期待できそうにないっぽい。と、助けはチャイムの音と共にやって来た。
ピンポ〜ン。
「お、来たな。ちょっと、行って来る」
「何が来たの、シロウ?」
「食料だ、イリヤ」
イリヤを膝から下ろし、玄関に向かう。
「シロウ、これはどこに運べば良いのですか?」
野菜の詰まったダンボールを抱えるアルトリア。……素早いな、アルトリア。
「台所に運んでくれ。三枝、アルトリアに付いてやってくれるか」
「分かったよ、衛宮君。それじゃ、行こう、アルトリアさん」
「ええ、ユキカ」
「残りはどうすんだ、衛宮?」
「軽いのを手分けして、持ってってくれるか? 重いのは俺が運ぶから」
「分かった。蒔、そっちを頼む」
「桜、これ持っていこうか?」
「お願いします、美綴先輩」
届いた食材を、台所に持って行く。手分けして然るべき所に納め、居間に戻る。
「通販で食材買うなんて、結構裕福なのね、士郎。家もかなり大きいし」
「いや、別にそう言うわけじゃなくて、商店街には行き辛いからさ。知り合いの伝で融通してもらってるだけだ。家はオヤジが買ったものだしな」
「ふ〜ん。……士郎、一つ訊いて良い?」
「何だ?」
「貯金っていくらあるの?」
上目遣いで訊いてくる遠坂。態度は可愛らしいが、内容が可愛くない。
「あのな〜」
「ちょっとした興味よ。減るもんじゃなし、良いじゃない?」
なんとなく減りそうな気が、ビシバシするんだが。……絶対聞き出してやるって顔に書いてるぞ、遠坂。
「1500万ってとこだ」
溜息と共に白状する。
「へえ、結構持ってんのね。……いざって時の選択肢と考えておこうっと」
遠坂の不穏な小声は、スルーしておく。とりあえず、これ以上訊いてくるつもりは無い様だな。
ちなみに、凛はこの時点で固有スキル「うっかり」が発動している。士郎の貯金の通貨を確認し忘れているのだ。
実は、士郎の貯金の通貨単位はユーロである。執筆時点で1ユーロ=約137円であり、士郎の貯金総額は約20億5500万円である!!
かなり金持ちな士郎君。どうやって、これだけの金を手にしたかと言うと、まあ、色々だ。魔術使いとしての仕事、両儀家や橙子の伝による鑑定、金のお嬢様からの彫金等の依頼などなど。だが、今挙げたのだけでは、現在の貯金額には至らない。
士郎の最大の収入手段は、解析による各種鉱脈の発見である。士郎の解析は己の魔力を流すことで、物体の構造把握が出来る。ぶっちゃけると、山に魔力を流し、鉱脈を探り当てると言う荒業である。士郎一人の魔力では無理であるが、超一流の魔術師二人とラインが繋がっているため出来る芸当だ。
士郎が発見した鉱脈の権利は金のお嬢様の物で、そこから得られた利益の一部が、士郎の口座に支払われている。
「ところで、先輩」
「ん、何だ、間桐?」
なんか、訊き難そうにしている間桐。何かあったか?
「あの、藤村先生には、今の状況をどう説明されるんですか?」
「あ〜、藤ねえか〜」
藤ねえ、それは我が家に巣食う猛獣の名だな。………藤ねえ?
「って、忘れてたぁぁぁぁぁぁ!!!」
くっ、どう説明しても暴走しそうだ、あのタイガー。どうしよう?
「うむ、その事なのだが、私と遠坂嬢、美綴嬢で相談してある。多分何とかなるだろう」
「ホントか!? ありがとうな、氷室」
「まあ、少しは衛宮の心労を取り除いてやらないとな」
「恩に着る、美綴」
「失敗しても、被害を受けるの士郎だけだし、気楽よね」
「……勘弁してくれ、遠坂」
と、そこへ噂をすれば、何とやら。
「今日の晩御飯、何ー!?」
「おかえり、タイねえ」
「おかえりなさい、大河姉さん」
藤ねえが帰ってきた。……願わくば、穏便に済みますように。
結論から言うと、穏便に済んだ。
話はこうだ。遠坂は家の改修工事を行っており、その間の住居の問題で困っている所に、俺が家で下宿したらどうかと提案した。とは言え、一つ屋根の下で年頃の男女が一緒と言うのも宜しくない。そこで、蒔寺達が自分たちも一緒にいれば、その懸念も解消されるだろうと言う事から、蒔寺達もしばらくの間、家に泊まる事になった。ちなみに、イリヤはオヤジの娘だから、何も問題はない。アルトリアは、向こうでのオヤジの知り合いの娘で、イリヤの付き添いで来たと言う事になっていた。
当然、
「ダメーーー!!! そんなラヴコメ、認めてたまるかーーー!!!」
藤ねえは吼えるも、遠坂、美綴、氷室の波状口撃により、敢え無く鎮圧された。……勉強になるなぁ。実践は出来そうにないが。
思いっ切り釈然としていない藤ねえを余所に夕食ができあがる。
「「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」」
今日の夕食は間桐作のかぼちゃのグラタンだ。かぼちゃの中身をくり抜き、裏ごししする。裏ごししたかぼちゃにチーズ、海老や帆立と言った海鮮、ブロッコリーやニンジンなどの野菜を混ぜ、それをくり抜いたぼちゃに入れ、オーブンで焼く。一人前にかぼちゃを丸ごと1個使った、なかなか豪快な料理だ。
「ア、アツ!!ハフ、ハホ、れ、れも、美味ひぃ〜」
美味い物を食うと、あっさり機嫌が直るな。お手軽だぞ、藤ねえ。しかし、間桐もかなり、料理の腕を上げたなぁ。
「どうですか、先輩?」
「ああ、美味いぞ、間桐」
俺の答えに満足気な間桐。
「よし。俺も、明日は腕によりを賭けて作ろう」
教えている立場として、恥ずかしく無い物を作らねば。
「うむ、頑張るのだぁ〜、士郎。主に、お姉ちゃんのために」
「あら、シロウはわたしのために頑張ってくれるに決まってるじゃない」
「いえ、シロウは戦いに備えて、私のために美味なる料理を作ってくれるに違いありません」
「いや、特定の誰かのためって訳じゃないぞ」
賑やかな夕食の時間も終わり、藤ねえは明日の授業の準備のため、早めに帰った。俺に皆に手を出さないよう念を押しながら。……アルトリアに虎竹刀を渡そうとするな!!
「さて、士郎。これからの事、話しましょうか?」
現在、居間にいるのは、俺、遠坂、イリヤ、アルトリアだ。蒔寺達には遠慮してもらった。ちなみに、アーチャーは屋根の上で周辺の警戒、バーサーカーは庭で、彫像のように立っている。……実体化している意味はないような?
「先ずは、イリヤは味方と思って良いわけよね?」
「ああ」
「わたしはシロウの味方であって、リンの事はどうでも良いわよ?」
「私だって、同盟結んだのは士郎だけよ?」
「大体、わたしがいれば、シロウが聖杯戦争の勝者になるのは間違い無しなんだから。リンもセイバーも要らないわ」
「む、それは聞き捨てなりません。シロウに勝利をもたらすのは私です」
「違うわ、わたしよ」
睨み合うイリヤとアルトリア。
「ま、最後に勝つのは私よ。私を勝たせてくれるって、士郎と約束したし」
「なっ!?」
「本当なの、シロウ?」
「ああ。俺は聖杯に願う事なんて無いしな。イリヤは、聖杯に何を願おうと思ってるんだ?」
「別に、願う事なんて何もないわよ。そもそも、アインツベルンの目的は聖杯そのものだし」
「……シロウ、あなたは勝利を放棄するつもりなのですか?」
「アルトリアの願いは遠坂に頼んである。ただ、俺自身が聖杯に望む物は無い」
「………」
「戦いまで放棄するつもりは無い。それじゃ駄目か、アルトリア?」
「……納得は出来ませんが、この場は治めましょう」
「それじゃ、話を進めるわね。私達のサーヴァント以外で分かっているのは、ランサーくらいね」
ランサー、クー・フーリンか。ランサーとしては、間違い無くトップクラスだ。
「ランサーねぇ。……逃げ足は速かったわよ?」
「何、戦った事あるの、イリヤスフィール?」
「ええ。大した事なかったわ」
ランサー、クー・フーリン本人が聞いたら、烈火の如く怒りそうな台詞である。
「他は、学校に結界を張ったであろう奴ね。該当しそうなのはキャスターか、ライダー」
「多分、ライダーだと思うわ。キャスターは、柳洞寺を拠点にして、冬木の街から精気を集めてるみたいだから」
「新都で多発してるガス漏れ事故って、キャスターの仕業な訳ね。確かに、そんな周到に事を進めているキャスターが、あんな目立つ結界を張る訳ないか」
「イリヤ、キャスターが柳洞寺にいるって本当か?」
「ええ、本当よ。それに、キャスターはルール違反を犯してる。サーヴァントの癖にサーヴァントを召喚してるのよ」
「え、それって」
「そう、キャスターはアサシンを―」
「――佐々木、小次郎」
「「「!!」」」
士郎から湧き出る、血の臭いを孕んだ強力な殺気じみた気配。
「出来るだけ、速く、柳洞寺を攻めよう」
言って、士郎は立ち上がり、
「すまん。ちょっと、席を外す」
居間を出て行った。
「……シロウ」
アルトリアも士郎に続く。居間に残される凛とイリヤ。
「……ホント、士郎って何者よ?」
士郎が出て行った先を見ながら呟く。
「ねえ、リン。「Blade worker」って聞いた事ない?」
「え?……あ〜、そう言えば前に、綺礼にそんな名前を名乗ってる凄腕の戦闘魔術師の話、聞いた事あるわね。何でも、死都を一人、一夜で制圧したとか、幻想種を何匹も倒したとか、あの「王冠」を退けたとか、色々噂が絶えない人物みたいね。そんな中の極めつけが、あの蒼崎姉妹の喧嘩を抑えて、「時計塔」が消滅するところを、半壊でとどめたって話。でも、それがどうかしたの?」
「察しが悪いのね、リンって」
「……ちょっと、まさか、士郎がそうだって言うの、イリヤスフィール?」
「シロウの強さがその証拠よ。まあ、わたしも、実際シロウの強さを見なければ信じられなかったけど」
「何、士郎の事、調べてたの?」
「ええ。情報は大事よ? ガードが堅くて、苦労したけど」
「なるほどね。これで、士郎の強さにも納得がいったわ。……さっきの士郎にも」
垣間見えた士郎の闇。「こちら側」に生きる者なら誰もが持っているであろうそれ。だが、士郎の闇は、何か違う気がした。凛が痛々しいと思うほどに。
士郎は庭に下りて、月を見上げていた。
「……シロウ、一つ訊いてもよろしいですか?」
「……ああ」
問いかけるアルトリアに、顔を向けず応える士郎。
「……あなたは、人を斬った事があるのですか?」
「…………ある」
平坦で、簡潔な応え。
「…………大勢の人を殺した」
だが、そこに込められた想いは、聞く者の心を千々に乱れさせるほどに、荒れ狂っている。
士郎が初めて人を殺したのは、中一の冬。反転した混血の男だった。
混血の共同体に属さない位、血の薄れた一族の者で、本来なら普通の人間として一生を終えるはずだった。だが、先祖帰りとでも言うべきか。彼は、反転した。家族を、友人を、恋人を、その手にかけた。
士郎は、彼を終わらせた。それ以外に士郎に出来る事はなかった。
それからも、士郎は剣を振るった。反転した混血、道を外れた魔術師、死者、魔獣等の作られた命。
殺した。殺した。殺した。殺した。
目に映り、手が届く限り、人を救うと決めた。「全て」は無理でも、それだけは叶えようと。
それでも、置き去りにして、見過ごして、掴み損ねて、届かなくて、間に合わないことがあった。
その度に、膝が折れそうになる。その度に、あの日の誓いを思い出す。
そして、士郎はまた歩き出す。「正義の味方」になるために。「幸せ」になるために。
士郎の「幸せ」とは「他者の幸せ」だ。だから、それを損なわないように、士郎は笑う。
いつ砕け散ってもおかしくない継ぎ接ぎだらけの笑顔で。
そして、その笑顔で、アルトリアに向き直った。
「―――」
目を見開くアルトリア。そして、士郎を痛ましげに見据え、
「……シロウ。聖杯はあなたにこそ必要です」
「……何でさ。俺には、必要ない「そんな表情で、何故そんな事が言えるのです!?」
声を荒げたアルトリアを、困った風に見つめる士郎。
「……シロウ。あなたは何故、一人で背負おうとするのですか?」
「……誰かに、背負わせるものじゃない。これは、俺が背負うべきものだ」
「……シロウ、やはり、あなたには聖杯が必要だ。………私と同じく」
士郎に背を向け、母屋に歩き出すアルトリア。
「今日は、もう休みます。おやすみなさい、シロウ」
「……おやすみ、アルトリア」
士郎も、しばらく庭で月を見た後、母屋に戻った。
この後、士郎と寝るとイリヤが駄々を捏ね、一騒動があった。結局、士郎の隣の部屋でアルトリアと一緒に寝る事になったが。ちなみに、士郎はバーサーカーと一緒である。
「なんでさぁーーー!!!」
翌朝。冬木の街に二人の人間が入った。
一人は、「私、執事でございます」と行った出で立ちの男性。もう一人は、
「ねえ、はやく、はやく」
「分かっています。さて、この時間でしたら、学校に向かっている筈です。という訳で、学校に参りましょう」
「は〜い」
三歳くらいの幼児だ。
「人生には、サプライズが必要です」
己の後継者と勝手に決めている相手が驚き慌てる様を思い浮かべ、本当に楽しそうにしながら、三歳児と共にその男は、穂群原学園へ向かった。
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