Blade worker 5 「三枝さん・ザ・ワールド」 <樹影さん>
心臓を穿つ赫い魔槍の穂先。圧倒的な死の感触。体を、魂すら塗り潰す悪寒。
「う、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「「キャア!!」」
上半身をバネ仕掛けの人形のように起こす。と、側にいた誰かが、驚いて声を漏らした。
「え、衛宮、だ、大丈夫なのか!?」
「せ、先輩、大丈夫ですか!?」
「……ま、蒔寺に、間桐?」
側にいた誰かを確認する。……頭が回らない。胸がムカムカする。落ち着け。状況を把握しろ。
見渡すと、ここは俺の部屋のようだ。布団が敷かれ、その上に寝かされていたようだ。服は部屋着に使ってる着流し。
なんで、俺は布団で寝てたんだ?…いや、いつの間に?
胡乱な頭で、必死に記憶を掘り起こす。心臓を侵す魔槍。その感触が蘇ると同時に全てを思い出す。
「蒔寺、間桐、皆は、美綴に氷室、三枝は無事なのか!?」
この場に居ない者の安否の確認を取る。
「え、あ、ハイ。美綴先輩と氷室先輩は別室で休んでます。」
「由紀っちは、台所で夕飯の支度をし直してるよ。」
「……そうか。……良かった〜」
ほっと胸を撫で下ろす。
「良くありません!!!わ、わたし、先輩が死んじゃうかもって、凄く心配したんですよ!!!」
「そうだぞ、衛宮!!!ち、血塗れのお前を見て、あたしらがどれだけ心配したと思ってんだ!!!」
「……すまん」
涙目で怒ってくる間桐と蒔寺に謝罪する。
「ところで、俺、どうして助かったんだ?……もしかして、間桐が助けてくれたのか?」
「―え?」
キョトンとする間桐。……む、ちょっと可愛いかも。
「あの、先輩―」
「目が覚めたかしら、衛宮君?」
襖を開けて入って来る誰か。その誰かを認識して驚いた。
「…遠坂?」
「どうやら、話は出来るようね。……良い?」
「ま、待って下さい!そんな、目覚めたばかりで無理をさせたら!」
「そ、そうだぞ、遠坂!あ、あんな、血が出てたのに……」
「……間桐、蒔寺、ありがとう。でも、俺なら大丈夫だ。遠坂、居間で良いか?」
「ええ。それじゃ、行きましょう」
で、居間に移動する俺達、五人。居間に入ると、台所から三枝が、
「え、衛宮君?もう、動いても大丈夫なの?」
心配してますって感じで出て来た。
「ああ。心配掛けて、すまない」
「ううん、衛宮君が大丈夫なら、それで良いよ」
ほにゃっと微笑む三枝。ただ、幽かに涙の跡があるのが分かる。本当に心配掛けたようだ。
「そろそろ、良いかしら?」
先にテーブルに着いた遠坂が、なんか笑顔だ。……向こうで知り合った、金のお嬢様を連想しちゃうなぁ。
俺達もテーブルに着く。お茶を淹れようとしたら、間桐にひったくられた。それくらいはできると思うんだが。全員がお茶を一口飲んでから、遠坂が口火を切った。
「衛宮君、あんた、何者なの?」
「何者って言われてもなぁ」
「……私の事は知ってるみたいね」
「まあ。人から聞いて、知ってる。……遠坂は名門だって」
ただ、先生がその後言ってた事は言えないな。間違いなく怒るだろうから。
「ところで、良いか?」
「なに?」
「なんで、遠坂が家にいるんだ?」
あ、失言したっぽい。居間の空気が、段違いに重くなる。
「命の恩人に、随分な言い草ね?」
うわーい、あかいあくま、降臨でございます。このままじゃ、ヤヴァイ。話題転換で延命を図らねば。
「それじゃ、そっちの女の子は、遠坂のサーヴァントなんだな。間桐のサーヴァントだと思ってたんだけど」
「「ハァ!?」」
「せ、先輩!?」
「ちょ、ちょっと、あんた―」
「マスターーーーー!!!!!」
ガオオオオオオオオオオン!!!!!
うお、レオ!!?獅子の幻が、サーヴァントとおぼしき女の子の背後で咆哮する。
「あ・な・た・が・わ・た・し・の・マ・ス・タ・−・で・す・!!!!!」
「え、でも君、女の子だろ?」
「だから、何だと言うのです!?」
「俺が召喚できるのは、触媒の関係上、アーサー王しかいないぞ?」
「「なっ!?」」
驚く女の子と遠坂。
「マスター、正気ですか!?他のマスターがいる前で、私の真名を明かすなど!!」
「え、じゃあ、君はホントにアーサー王なのか?……事実って、伝説より奇なりって感じだな」
「ふっざけんじゃないわよーーーーー!!!!!」
「と、遠坂?」
「なに、あんた!?サ−ヴァントとガチンコ出来て、固有結界使えるわ、最優のセイバー召喚するわ、トップクラスのアーサー王だわ、しかも、こんな可愛い女の子!!ずるい!!独占禁止法違反よ!!あんた絶対、何か、使ってるから、寿命とか、勝負運とか、金運とか、恋愛運とか、預金通帳の残高とか!!公正取引委員会が許しても、私が許さないんだからーーー!!!」
暴走あかいあくま。
「大体、なんであれだけ宝石使った私のアーチャーが、変な赤い格好の若白髪マッチョなのよ!?どうせなら、軽いウェーブ入った金髪の、黒のゴシックロリータが似合う様な可愛い女の子が良かったわよ!!!」
ぶっちゃけたーー!!……ちなみに、このぶっちゃけを聞いた、衛宮邸の屋根の上で周囲の監視を行っていた赤い弓兵が、そっと膝を抱えてたりした。体は剣、血潮は鉄でも、心はガラスだからねぇ。
「……落ち着いたか、遠坂?」
肩で息する遠坂に聞く。
「……ええ」
そっぽ向きながら答える。ますます、金のお嬢様を連想してしまう。
「で、君が俺のサーヴァントな訳なんだな?」
「そうです!!」
「と言う事はさ、君が皆を護ってくれたんだな。ありがとう」
頭を下げる。
「いえ、結果としてそうなっただけにすぎません。それに、マスターの傷を癒したのはアーチャーのマスターです」
「な、なんで、私が、アーチャーのマスターって―」
「先程、自分で宣言していたではありませんか?」
しまったって顔する遠坂。先生や、爺さんの話通りっぽい。
「ところで、マスターってのは止めてくれ。俺の名前は衛宮士郎だ。好きに呼んで欲しい」
「それでは、シロウと。ええ、私としては、この発音の方が好ましい」
「それじゃ、君はなんて呼ぼうか?…アーサーは流石に不味いよな」
「私は剣の英霊、セイバーです。ですから、セイバーで構いません」
「それは役職名であって、名前じゃないだろ?」
「……フゥ、分かりました。それでは、アルトリアと。私が王となる前の名です」
「アルトリア……、良い名前だな。可愛い感じがして、似合っている」
「ななななななな、何を言うのですか、シロウ!?」
「何って、何か変な事言ったか?」
「……いえ。そう言う人なのですね、シロウは」
「衛宮のバカ」
「先輩のバカ」
「ふ〜ん、衛宮君って、手が早いのね」
睨んでくる蒔寺、間桐、遠坂。俺が何かしたか?
「アルトリアさん、よろしくね」
「こちらこそ、ユキカ」
頭を下げ合ってる三枝とアルトリア。何か和む光景だ。
「先輩!!」
「うお、ビックリした!どうした、間桐?」
「先輩は、わたしの事、知ってたんですか?」
「……ああ」
「………」
「正気?他の魔術師を自宅に出入りさせるなんて……」
「まあ、見られて困る物は家には無いし、間桐は良い子だから大丈夫だ」
「先輩……」
「…そう。まあ、私がとやかく言う事じゃないわね」
「でだ、これからの事を少し話したいんだけど……」
言いながら、襖を開ける。
「良いか、美綴に、氷室も?」
「ああ、こちらとしても、状況の説明が欲しいな」
「ああ、勿論って、美綴!?」
着物の前を開けて、心臓の辺りをまさぐる美綴。
「……良かった、大丈夫なんだな」
そう言って、俺の胸に顔を埋める美綴。肩が少し小刻みに震えている。
「…悪い、心配掛けた」
そう言って、優しく美綴りの髪を梳く。
「「「「「「………」」」」」」
む、何か背筋がゾクゾクするぞ。
「あ〜、三枝、飯ってすぐ食べられるか?」
「…え、うん。すぐ、用意できるよ」
「なら、飯を食べながら、話すって事で良いか、みんな?」
「「……ああ」」
「……分かりました」
「……御一緒させてもらうわ」
「食事ですか?」
「それじゃ、用意するね」
「俺も手伝うよ、三枝」
「…あ」
「「「「………」」」」
何か美綴に、蒔寺、氷室、間桐、遠坂の視線が集まってるが、一体どうしたんだろ?台所に行きながら、ふと思った。
今日のメニューは、肉巻きに、ポテトサラダ、豆腐とワカメの味噌汁だ。……アルトリアに見た獅子の幻視は見間違えじゃなかったらしい。トラとライオンは、同じ猫科の猛獣なんだよな。
コクコクハムハム。
藤ねえが風林火山の火なら、アルトリアは山だな。ゆっくりだが、量は食ってる。ちっちゃくてもおっきいぞ〜って感じだ。
「ふむ、俄かには信じ難い話だが……」
「あんなの見た後じゃ、信じるしかないよな」
「それにしても、遠坂や桜までそっち方面の人間だったとはね」
とりあえず、皆には、世界の「日常」の外に在る秩序、加えて、冬木の聖杯戦争の概要に付いて説明した。総じて、狐に抓まれたような表情だ。まあ、いきなりこんな話されて、すぐ受け容れれる訳無いよな。そんな中、一番分かっていない感じの三枝。う〜んう〜んて感じで首を捻っていたが、不意にポムと手を胸の前で合わせ、
「えっと、つまり、衛宮君が正義の魔法使いさんで、衛宮君を助けてくれた遠坂さんは、正義の魔法少女さんなんだね」
そんな事を口にした。
―ザ・ワー○ド!!時は止まった!!
「魔法少女ジュエリー凛予告!!」 (ナレーション:千○繁、北○の拳風に)
冬木に蠢くマキリの黒い影!!
街が絶望の闇に染まる、正にその時、眩い光が舞い降りる!!
「凛、宝石剣で変身だ!!」
「分かってるわ、アッチャア!!…行くわよ、ジュエル・メタモルフォーゼ!!」
その魂は、誇り高き宝石の輝き!!その名は!!
「魔法少女ジュエリー凛!!ジュエルパワーで、……捻じ切るわ!!」
「およそ、魔法少女の決め台詞ではないな。それでは、嫁の貰い手がないぞ、凛?」
「うっさい!!」
ゴォス!!!
「ウゴ!!…凛、何も宝石剣で殴る事はないだろう!!って、いや、すまない。私が悪かった」
アッチャア:凛の使い魔。見た目は二頭身の某赤い騎士。凛のあっちゃあ的言動、行動に鋭いツッコミをいれるが、一言多い性格な為、自身があっちゃあな目に遭う事もしばしば。
時は動き出す!!―
「プッ!!!アッハッハッハッハッハッハ!!!ま、魔法、魔法少女だよ、遠坂!!!アッハッハッハッハッハッハ!!!」
「ハッハッハッハッハッハ!!!さ、最高、由紀っち、最高!!!ヒャッハッハッハッハッハッハ!!!」
「ク、ククっ………」
「プッ、……わ、笑っちゃ、ダ、ダメ……ププ…」
「ク……クク………ト、トレース、オン!」
「?」
腹を抱えて笑う美綴、蒔寺。俯いて肩を震わせる氷室、間桐、俺。分かっていないアルトリア。そして、
「何が、そんなに可笑しいのかしら?」
絶対零度の笑顔の遠坂。気のせいか、さっきのランサーより凄い殺気、放っていないか?蒔寺と美綴は笑うのを止めて、顔を青くしてる。氷室と間桐は顔を引き攣らせてる。……アルトリア、ぴんちって感じで剣を構えるのは止せ。恐怖空間になる我が家の居間。遠坂を止めようと、声を掛けたくないが声を掛けようとしたその時、
「そうだよ、みんな、なんで笑うの?」
我が家の居間は、和やかな空気で満たされた。三枝の言葉に盛大に肩を落とす遠坂。……頑張れ、遠坂。
「………で、これからの事って言うのは?」
立ち直り、俺に声を掛けてくる。……でも、なんで俺を睨むのさ?俺、関係ないだろ!
「ああ、遠坂に頼みがあるんだ」
遠坂の睨みに、怯みながら答える。
「頼み?」
「ああ。聖杯戦争中、皆を遠坂の家で保護してくれないか?」
「衛宮、どういう事だ?」
「……皆は、ランサーに顔を見られた。あいつと言うか、あいつのマスターが、皆を狙うだろう。だから、遠坂に皆を保護して欲しいんだ。」
「……私がそれを了承すると思ってるの、衛宮君?」
「ダメなのか?」
「当たり前でしょ。……私たちは戦争をしているのよ。勝つために余計な事はしてられないわ」
「……それじゃ、なんで俺を助けてくれたんだ?」
「そ、それは……」
「それに、校庭からランサーを追い掛けて、こっちに来たのは?」
「うっ」
「………やっぱり遠坂は良い奴だな。俺、お前みたいな奴、好きだぞ」
「「「「「「なっ!!!」」」」」」
「はわわ」
「衛宮、お前ん家じゃダメなのかよ!!?」
「って、なんで何怒ってんのさ、蒔寺」
「怒ってない!!…で、何でなのさ?」
「いや、親御さんとの喧嘩の種、増やすわけにはいかないだろ?」
俺の家への出入りで、蒔寺と美綴は親との折り合いが悪い。氷室と三枝は大丈夫らしい。寛容な親御さんだな。
「あたしは衛宮ん家で良いよ。親との事は今更だしね。それに、遠坂の家の方がよっぽど危険だね」
「そーだそーだ。あんなヤバイ笑顔の女と、一緒に生活するほうが危ないっつーの」
いや、本人の前で言うことじゃないだろ。
「大体、着替えとかはどうするつもりだよ?家に帰ってから、俺の家に来るなんて許してもらえないだろ」
「いや、寝巻き以外は、ここに一週間分くらいはあるぞ、衛宮」
「は?」
「パジャマだったら、大河姉さんがこの前、たくさん持って来てたよ」
「お、解決じゃん」
「でも、藤村先生が持ってきてた物なんだろ?……全部、虎柄だったりするんじゃないか?」
「いえ、先生が選んだ物じゃなくて、貰い物らしいですから、大丈夫だと……」
「待て、お前ら!なんで、家に皆の着替えがあるんだ!?」
「なんでって、衛宮ん家で風呂に入っていくんだから、そりゃあるだろ」
「汗で濡れた物を着直せと言うのか、衛宮?」
「ふ〜ん、衛宮、そう言う趣味の人だったのか?」
「え、え、そうなの、衛宮君?」
「そ、そうなんですか、先輩?」
「ちっがう〜〜〜!!!」
「まあ、衛宮の趣味は置いておくとして、藤ねえさんが置いて行ったと言うパジャマを探しに行くとしよう」
「おし、行くか」
「そうだね」
「わかりました」
「アルトリアさんも行こう」
「ユ、ユキカ?私は別に……」
居間を出て、藤ねえが持ってくる物を整理して置いてある部屋に向かう六人。居間に残ったのは俺と遠坂だけだ。
「私が保護する必要はないみたいね。衛宮君、三枝さんにご飯美味しかったって伝えておいて」
立ち上がる遠坂。
「……俺は、遠坂とは戦いたくない」
「ずいぶん、余裕ね?」
「そう言う意味じゃない」
「……分かっているわよ。でもね、あなたと私は敵同士。これは事実よ」
「……それなら、こう言うのはどうだ?俺は、遠坂が聖杯戦争の勝者になるのを手助けする」
「ハァ!?……あんた正気?アルトリアはどうすんのよ?」
「それは最後にアルトリアの願いを、遠坂が聞いてやってくれないか?」
「……それで、あんたにどう言うメリットがあるのよ?」
「遠坂と戦わずに済むだろ。それに俺は、聖杯に願う物なんて無い。それに遠坂なら、聖杯に妙な事願わないだろ?」
「……美味しい話には裏がありそうだけど」
「無いって。……じゃあさ、遠坂に助けてもらった事に対する対価って事でどうだよ」
「O.K。それじゃ、私もパジャマ、見て来ようかな」
決断、はやっ!!居間を出て行く遠坂の後姿を見ながら、そう思った。
あとがき:なんか、今回中途半端な終わりになっちった!!日々、是精進、福岡博多でっす!いや〜、今回、難産でした。バトル風味のテンションが続いたせいか、ほのぼののテンポを書き辛く感じますた。それにしても、魔法少女のネタ、やっと出せた。自分では中々なモノだと思うんですが、如何でしょう?
次も一応、ほのぼの。雪色の少女、再来です。さ〜て、次回もジュエル・シャイン!!
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