Blade worker 4 「Fate 運命に出会った日」 <シンペイさん>
―2月2日・三日目
カチャカチャ。
衛宮家の居間は静かだった。もともと、食事の席でそう騒がしいわけではない。
「「「「「「「………」」」」」」」
とは言え、無言と言う訳ではない。しかし、今朝は誰も自分から口を開こうとはしない。
「ごちそうさま」
「あ、おそまつさまでした」
最初に食べ終えた士郎が、今日の当番である由紀香に声をかけ、食器を台所に持って行く。日常と変わらぬ朝。……だが確実に日常と異なる朝。
「「「「「「「………」」」」」」」
度々、このような雰囲気になる事がある為か、ぎこちなさも無く、登校する面々。
そして、交差点にさしかかる。一角に止まるパトカーの群れ。
ギリ。
「……先輩?」
士郎の一番側にいた桜が、かすかなその音を聞いた。
「ん、どうかしたか、間桐?」
いつもと変わらぬ様子の士郎。
「あ、いえ、何でも無いです、先輩」
「そっか」
その雰囲気のまま、学校に向かう。
校門から内側に足を踏み入れた瞬間、それを感じ取った。
結界!?………タイプは「溶解吸収」、宝具級。
解析により情報を得る。
くそ、聖杯戦争のマスターは、その手の奴らばっかなのか!!
奥歯を噛み締め、握り締めた手に力が篭る。
今度は護ってみせる!!
周りに気取られぬよう、決意を新たにする。運命の一日が始まる。
月始めの休み前は道場の大掃除をする。ただ、自主的なものではあるが。
「こっち、終わったぞ」
「こっちもだ」
「わたしも終わりました」
掃除を済ませた俺、美綴、間桐は帰る用意をする。放課後の練習が終わった後に始めたせいか、外はもう夜の帳がすっかり落ちていた。
「さて、帰るかね。」
弓道場の鍵を閉めた美綴を先頭にして、校庭の方に向かう。
今日は発動しなかったな。………良かった。
安心してたせいか、周囲の警戒を怠っていた。だから、それに気付くのに遅れてしまった。
ギィィンギャリィィィィン!!
「「「!?」」」
校庭が目の前に開けた時、音と共にその光景が飛び込んできた。
ギィンギィンギィンギィンギィンギィィン!!
赫い槍を怒涛の如く繰り出す蒼き騎士と、それを白黒の双剣で捌く赤い騎士。魂凍らす人外の剣戟。
サーヴァントの戦闘!?くそ、あり得る事だったのに!!
自分の迂闊さを呪う。距離を取る蒼い槍騎士。そして、赫い魔槍に集束する魔力。
「「ヒッ」」
その凶々しさに竦んだ美綴と間桐が声を漏らす。
「誰だ!?」
こちらに注意が向いた。……ヤルしかない。でもここじゃ、不味い。なら、先ずは!!
「投影、開始」
顕れるは、目の前の蒼い槍騎士の持つ赫い魔槍。
「何!?」
驚いてる、けどな、まだ驚いてもらうぞ!!
「突き穿つ―」
体を捻り、力を引き絞る。
「死翔の槍!!!」
こちらに向かってくる蒼い槍騎士に、カウンターで投擲する。
「ウオオオオオオオオオ!!!」
赫い魔弾を、己の槍で防ぐ。今の内だ。
「「え?」」
二人を抱え、風の如く走る。校庭を横切り、学校の塀を飛び越えた辺りで、
「壊れた幻想」
背後で爆音が響いた。
砂煙が舞っている校庭で、遠坂凛は呆けていた。
「嘘」
先程、人間の身ではどうにも出来ない存在と実感したと思った瞬間、同じ人間にどうにかされてしまった。知ってる。何せ、自分よりも有名人。一緒にいたのは、親友と、そして―
「ク、ククク、ハハハハハハ、ハハハハハハハハハハハハ!!!」
砂煙が晴れた中に立ち凶笑をあげるランサー。迸る殺気。
「弓兵。勝負は預けるぞ」
逃げて行った先を睨み、
「殺す!!!」
最早、人の目では捉えきれぬ速さで、往くランサー。
「……さて、凛。結界をどうする?」
「え、そ、そうね。取り敢えずはって、なんで、あんたここにいるのよ!?」
「何故と言われてもな。君からは、何も命を受けていないが?」
「〜〜。とにかく、追うわよ!!」
と、皮肉気な表情を消す赤い弓兵。
「凛、奴に構うべきではない」
マスターの行く手を遮るように立つ弓兵。
「……良いから行くわよ、アーチャー」
弓兵をサッとかわす凛。
「……フゥ。了解した、マスター」
ヒョイっと、凛を抱えあげるアーチャー。勿論、「お姫様抱っこ」である。……「彼」が女性を抱き上げる時のスタンダードなのだろうか?
「ちょ、ちょっと!?」
「この方が速い。行くぞ、凛」
深山の町に蒼い疾風に続き、赤い疾風が吹く。
「ちょ、ちょっと、え、衛宮!?」
「せ、先輩!?」
「喋るな、舌噛むぞ!!」
人二人を抱え、風のように走る。
追ってきてるな。
背後から迫る殺気の塊。門の方に回ってる暇はない。
ダン!!
「「キャアァァァァァァ!!!」」
塀を飛び越え、中庭に着地。そのまま、土蔵に向かい美綴と間桐を押し込める。
「しばらく、ここにいろ!!」
「え、衛宮、い、一体、何が―」
「せ、先輩、ダ、ダメで―」
土蔵の扉を閉め、強化をかける。そして、振り返ると、
「追いかけっこは終わりか?」
殺気を漲らせた蒼い槍兵がそこにいた。
「「………」」
対峙する二人。戦いの前の静謐。
ギィィン!!
奔る赫い雷光。それを捌く『大鹿』のルーンが刻まれた小太刀。
「行くぜ」
ガガガガガガガガガガガガガガガ!!!
怒涛の如き赫い魔槍の刺突を、手に持った二本の小太刀と槍の側面を撃つ二十五の剣弾で弾き、逸らし、捌く。
「破ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「雄ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
弾ける火花は灯火に、響く剣戟を楽曲にして、戦闘舞踊を舞う二人。それは、戦いを知らぬ者の胸すら打つ程に美しい、魂を賭けた激突。
「「衛宮!?」」
「衛宮君!?」
「!?」
ザシャッ!!
縁側から聞こえてきた声に捌きを誤り、脇腹辺りに傷を負う士郎。
「三人か」
蒼い槍兵が縁側に目を向ける。そこにいるのは先に帰っていた蒔寺、氷室、三枝。
迂闊にも程がある!!
彼女達がいる事を忘れていた自分の愚を責める。
「モテるんだな、坊主。後ろの二人にそっちの三人。……女を殺すのは好かねえんだがな」
「なら!!」
「かといって、ほっとく訳にもいかねえしな。それに、オマエと闘う理由が要るだろ?」
「何!?」
「……そろそろ「全力」で行く。女達を死なせたく無けりゃ、オマエも出し惜しみすんな、坊主」
先程の攻防で戦士独特の嗅覚により、士郎の「切り札」を感じ取った蒼い槍兵が、枷無き全力で行くと宣言する。
「クッ!!」
縁側で震える三人と、背後の土蔵にいる二人。……護ってみせる!!
「I am the bone of my sword」
「Steel is my body,and fire is my blood」
「I have created over a thousand blades.Unaware of loss.Nor aware of gain」
「Withstood pain to create weapons.waiting for one's arrival」
「I have no regrets.This is the only path」
「My whole life was "unlimited blades works"」
瞬間、あらゆる物が破壊され、再生した。奔る炎が境界線となる。世界を侵蝕し、異なる世界を顕現させる。
―阻む物無き遥か高き蒼穹の下、無限の剣の突き立つ丘―
「ハッ、固有結界だと!?……愉しい野郎だな、オマエはぁ!!」
所々弾け飛んだ包帯とボロボロの制服でありながら、なお悠然とその世界の中央に立つ。その様は正に王。
「―――行くぞ、光の御子。誓約の加護は十全か」
激しさを増した剣戟。人の身では捉えきれぬ速さも、固有結界内により拡大された認識能力で先読みされ、三桁を越える剣弾により弾かれ、逸らされ、捌かれる。いや、ランサーにも傷を負わせる程に雨霰と翔ぶ。
――ハッ、少しでもミスりゃ、針鼠ならぬ、剣鼠になるなぁ、こりゃ!!
剣弾の雨をかわしながら、尚愉しげに瀑布の如く赫い魔槍を繰り出すランサー。
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!
「破阿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「雄嗚ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
それは正に異界の美。響く剣戟はジャズセッションの如く、熱く烈しく戦いを彩る。
ガギィィィィィィィィィィン!!!!!
一際高い音を響かせ、距離を取る二人。その距離50m程。士郎の半径30m程の空間が、「剣の結界」とでも言うべき攻撃範囲と見切ってのことだ。
「ク、ククク」
――笑いを抑え切れねえ。
背筋を奔る怖気に震える悦び。体中にある創の痛みを感じる歓び。命を賭ける事への喜び。
――コイツこそ、オレの「敵」だ!!
溢れ出す歓喜混じりの殺気。
「ゼッ、ゼッ、ゼッ!!」
呼吸を乱している士郎。固有結界を展開しながら、最速の英霊との戦闘を繰り広げたのだ。その消耗は激しい。持久戦に持ち込めば、程なくランサーに勝利の女神が微笑むだろう。だが、
――コイツとオレとの闘いの幕切れが、そんなつまらねえ物であって良い筈がねえ。………それにコイツには、でっけえ借りも在る!!
ザッ!!
更に距離を取るランサー。そして、
「オレの名はクー・フーリンだ!!」
高らかに謳う。そのまま、士郎を見据える。
「士郎、衛宮士郎だ!!」
応える士郎。
「士郎、オマエに本家本元って奴を教えてやるぜ!!」
言って、地面に四肢を付くランサー。それは、限界まで引き絞られた弓、極限まで力を溜め込んだバネを思わせた。
「――」
ランサーが繰り出そうとする一撃を、既に士郎は知っている。その人の身では受け切れぬ威力を!!
「投影、開始」
それに対抗すべく、創り出す。――捻れた金色の剣を。
「ハ、ハハハハハ」
――士郎、テメエはビックリ箱かよ!?
顕れた捻れた剣の力に、奮えが止まらない。歓喜の奮えが!!
「行っくぜぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
ランサーが動く。疾風を越え、青き烈風となりて走る。そして、力を殺さぬ絶妙の角度で跳躍。空中で限界まで体を捻る。
士郎は、黒い洋弓を投影し、捻れた金色の剣を弓に番える。的は飛翔したランサーの投擲する魔槍。
「突き穿つ死翔の槍!!!」
「■・螺旋剣!!!」
放たれた赫き魔弾―いや、流星と評すべきか―が、士郎の命を砕くべく翔ぶ。
対するは、紫電迸る旋風を纏う金色の魔弾。赫い流星を撃ち堕とすべく飛ぶ。
ゴォォォォォォォォォン!!!
激突する両者の一撃。拮抗する。しかし、それは一瞬。
ビキ!!!
捻れた剣が、僅かに罅割れる。あらゆる工程が情報不足な為、脆い。すぐにも砕かれるだろう。だが、
「壊れた幻想!!」
指向性を持った爆発が、流星を襲う。僅かに勢いを減じた赫い流星が、爆煙からすぐに飛び出す。
ガガガガガガガガガ!!!
加えて、無数の剣弾が赫い流星を撃墜しようと飛ぶ。
「くっ!!」
更に『大鹿』のルーンが刻まれた大剣を交叉させ防御する。
ドゴォォォォォォォォォォン!!!
轟音と共に吹き飛ばされる士郎。『無限の剣製』は消え、扉ごと土蔵の中へと吹き飛ばされる。
「………」
我が必殺の一撃を凌ぐとはな。……だが、愉しい時間もここまでだ。
中庭に小規模のクレーターを穿った己の愛槍を抜き、土蔵に乗り込むランサー。
「カ……ハ………」
「衛宮!?」
「先輩!?」
扉の奥の壁辺りまで飛ばされた士郎。背中を強打したせいで肺の中の空気が吐き出され、呼吸が儘ならない。意識が朦朧としている。体を動かせない。
「終わりだ、士郎。」
赫い魔槍を構えるランサー。
「……オマエが、オレのマスターだったら、ってダメだな。それじゃ、オマエと闘り合えなかった」
僅かに寂寥感を滲ませながら、勝利を確信するランサー。
「あばよ、士郎。………道行きが寂しくないように、嬢ちゃん達もすぐに送ってやる」
奔る赫い雷光。
させない、そんな事、絶対に、させない!!!
体を回復させその一撃を防ぐべく、体内に存在するある宝具に魔力を流す。だが、流した魔力にその宝具は反応しなかった。
ズシュゥゥゥ!!!
真名通りに心臓を貫く赫い魔槍。
「「イヤァァァアァァアァァァァアァ!!!」」
ヒュオォォォオォォォォォォオォォォ!!!
二人の悲鳴と魔力を孕んだ風を感じたのを最後に、衛宮士郎の意識は闇に堕ちた。
町一番の有名人の家だから、場所は知っていた。……それ以外に理由なんて無いわよ?無いったら無いのよ!!って、私誰に説明してんのよ?
「凛、屋敷内にサーヴァントの気配を感じる。……この獣臭さ、間違い無くランサーだな」
「獣臭さって、あんたね。…とにかく、行くわよ」
アーチャーは私を抱えて塀の上に飛び上がる。そして、その光景を目を奪われた。
「………嘘」
蒼穹を冠する剣の丘で、激突する人と英霊。
あれって、固有結界!?って、英霊と真っ向勝負してるなんて、あいつ、本当に人間なの!?
ドゴォォォォォォォォォォン!!!
困惑している間に、士郎が吹き飛ばされ、ランサーがそれを追って、土蔵に入る。
「アーチャー、行くわよ!!」
言って中庭に下り立った瞬間、土蔵から魔力の奔流。
「え―」
土蔵から躍り出てくる蒼い槍兵と、追撃するかのように出てきた青い騎士。繰り返される人外の剣戟。赫い魔槍と見えない何かが火花を散らす。と、何合か目に距離を取ったランサーは、
「おい、セイバー。ここは剣を退かないか?」
「馬鹿な事を!!貴様はここで討つ、ランサー!!」
殺気を放つセイバー。ランサーより上だ、あれ。惜しいなぁ、私のだったら良かったのに。……可愛いし。
「ハン、オレより己のマスターを気に掛けたらどうだ?オレと闘えば、死ぬ時間が早まるだけだぜ」
「く!!」
と、セイバーが土蔵に注意を逸らした一瞬で、退くランサー。
「待て、ランサー!!」
「生き残れよ、セイバー。…あばよ!!」
消えるランサー。そして、セイバーがこちらを捉える。
「「「………」」」
対峙する私、アーチャー、セイバー。と、土蔵から出てきた人影が状況を動かす。
「ねえ…遠坂先輩!!!」
「桜!!!」
良かった、無事だった!!
桜は私の方に走ってきて、
「お願いです!!先輩を、先輩を助けて!!!」
泣きながら縋りついてくる。それだけで彼がどう言う状態か察しがつく。
「え、衛宮、衛宮どうなったの!!?」
「落ち着け、蒔!!……由紀、蒔を頼む」
「う、うん!!」
震える蒔寺を抱きしめる三枝さんを縁側に残して、氷室さんが土蔵に靴下のまま、走って行く。それを横目に見ながら桜に頷く。そして、土蔵に走り出そうとして、
「凛、君は余計な事をしようとしているぞ」
赤い弓騎士に阻まれる。
「奴はマスターになったようだ。ならば、君が奴を救う理由なぞ、どこにも無い」
理由?……そんなもの、
「先輩を、先輩を、助けて……」
蹲り泣きながら、それを願う桜の姿だけで十分よ!!
「退きなさい!!!」
令呪が発動しなかったのが不思議なくらいの言霊。アーチャーは、やれやれと肩を竦め、道を開けた。セイバーは、後ろに付き従ってくれた。理解してくれたのかしら?
「衛宮、衛宮!!!どうしよ、血が、血が止まんない!!!」
「衛宮、しっかりしろ!!!目を、目を開けてくれ!!!」
土蔵の中では、綾子と氷室さんが倒れた男の左胸を、返り血をモノともせず、必死に押さえている。
「アーチャー!」
アーチャーは綾子と氷室さんの首筋に手刀を落とし、二人の意識を刈り取る。
父さん、許してください―
切り札に成り得る形見の宝石。でも、この傷じゃ、これを使うしかない。
「――Anfang」
―そして、私は切り札を失い、運命を手にした。
あとがき:とりあえず、バトル終了っす!!いや〜、やっぱ難しい。まあ、次はギャグを交えたほのぼのです。温めてたネタもやっと出せる!!ちょっと、自信有り、かな……かな!?広い二次創作世界、誰か書いてるかもしれませんが、自分色を出して書きたいデス。
ようやく、Webでのグラフィックの載せ方を勉強中。作中の絵やオリキャラの絵、誰か描いてくれないかな?
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