Blade worker 3 「刃金の舞闘」 <樹影さん>



とってもこわいゆめをみちゃった。すごくこわくてめがさめて、ひとりぼっちはいやだったから、おへやをでて、テレビのあるおへやにおりる。ドアからあかりがみえて、やさしいパパ、あかるいママ、げんきなおねえちゃんのこえがきこえた。きょうはおねえちゃんにいっしょにねてもらおう。そうおもってドアをあけると、こえがきこえなくなって、おへやのなかには、

「わぁ、おさむらいさんだぁ」

おさむらいさんがいた。

「パパ、ママ、おねえちゃん、おさむらいさんだよぉ」

ゆかでねているパパとママとおねえちゃんにおしえてあげる。

「………パパ、ママ、おねえちゃん?」

どうしてみんなは、あかいおみずのうえでねてるんだろう?

「……すまぬな、童」

おさむらいさんのこえは、とってもきれいだった。でも、なんでだろう?とっても、こわい。

「……せめて、痛みを感じぬよう、家族の許に送ってやろう」

おさむらいさんがめをあけて、こっちをみた。きれいなめ。でも………こわい。コワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ。

――――

タスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテ。………たすけて、せいぎのみかた!!!

ヒュオン。
ガッシャァァァァァァン!!!
ギィィィィン!!


幼い命を摘み取るために舞った白刃を、庭に続くガラス戸から飛び込んできた黒い影が、手にした二本の小太刀で防ぐ!!

「……ほう」

そして、群青の侍と黒尽くめの魔術使いが対峙する。………戦争が始まる。


――Interlude


海沿いの工業地帯。その一角の廃ビルを利用した事務所、「伽藍の堂」。そこで、事務仕事をしている人物がいた。

「う、う〜ん。…少し休憩するかな。式、君もコーヒー飲むかい?」

背伸びをして、ソファーに横になっている女性に声をかける男。左眼を隠すように前髪を伸ばし、黒縁の眼鏡を掛け、服は上下とも黒。左足を僅かに引きずるように移動する。

「…ああ」

声を掛けられた女性は、体を起こしながら応える。肩口辺りでバッサリ切ってある髪。上物の着物に革ジャンを羽織るアンバランスな格好。しかしながら、誂えたかのように似合っている。そして、気怠そうにしながらも、強い力を湛えた眼差し。

「はい、式。熱いから気を付けて」

「子供じゃないんだぞ、オレは。分かってるのか、幹也」

男は黒桐幹也、女は両儀式と言った。

「……ねえ、式」

「ん?」

式の隣に腰掛けた幹也。コーヒーを半分ほど飲みかけた辺りで、ここの所、気になっていた事を聞く事にした。

「士郎君、大丈夫かな?聖杯戦争って言うのは凄く危険なんだよね?」

「らしいな。まあ、大丈夫なんじゃないか?」

「式は心配じゃないの?」

「別に」

「式―」

「その女は冷血漢なんですから、言うだけ無駄ですよ、兄さん」

「鮮花、冷血漢って、両儀さんは女性よ?」

「言葉の文に突っ込まない、藤乃!」

二人の女性が事務所に入ってきた。双方共に髪は長く、きりっとした眼差しの方は黒桐幹也の妹、黒桐鮮花。大人しそうな方は、鮮花の同級生、浅上藤乃。

「鮮花、藤乃ちゃん。あの子は寝たの?」

「ええ、ぐっすり。可愛い寝顔でしたよ、幹也さん♪」

「ところで、聖杯戦争の事でしたね。橙子師の話では、七騎の英霊を使い魔として降ろし、殺し合う戦争。こんな物騒なモノに、弟のように思ってる士郎君が関わるって言うのよ?あなたと違って心優しい兄さんが心配するのは当然でしょう」

「鮮花、式は優しい女の子だよ」

「兄さん!!そんな事あり得ません!!第一、さっき士郎君が死のうが構わないって言ってたじゃないですか!!」

「……そこまでは言っていなかったと思うわよ?」

「う、と、とにかく、士郎君の心配ができないような冷血人間は、兄さんに近付かないこと!!」

「鮮花、式はちゃんと士郎君の心配をしてるよ。ただ、僕みたいにオタオタしてないだけだよ」

「兄さん!!この女の事を買い被りすぎです!!」

責める妹、フォローする兄。その間にコーヒーを飲み終えていた式が口を開いた。

「士郎は、強い。だから、大丈夫だろ」

明日の天気を口にするような何気ない口調。

「そうなのかい、式?」

「そう言や、幹也達は知らないんだったな。士郎は、かなり、強いよ」

「確か、士郎君はあんたの家で鍛えられてるらしいわね。……凄い剣の使い手なの?」

「いや、士郎の剣はどれだけ鍛えても「二流」止まりだ」

「それなら、士郎君は橙子さんのお弟子さんだから、凄い魔術師なんですか?」

「橙子師は、士郎君は魔術師としては「三流」だって言ってたわよ?」

「式、本当に士郎君は大丈夫かな?」

「幹也、変な顔するな。……士郎は剣の腕は「二流」、魔術師としては「三流」、けどな、戦闘者としては「一流」だ」

「戦闘者?」

「剣が巧く使えるから、魔術師として一流だから、戦いに勝てるわけじゃないぞ」

「でも、相手は英霊よ?」

「……前にさ、トウコの奴に聞いた事がある。士郎を何のために鍛えてるんだってな」

「何て答えられたんですか?」

「『私はね、式。前々から試してみたい事が在ったんだよ。人を護る力の極致たる英霊に人間が勝てるか否かをね。そして、私はその試みを実行に移すことの出来る素材を手に入れた。つまりはそう言うことだ。』って言ってた」

「……式、それって」

「ああ、幹也。トウコはさ、この五年間、士郎が聖杯戦争ってやつで英霊と戦えるように、あいつを鍛え上げてたのさ」


Interlude out――


黒い布―抗魔の呪物―を包帯のように全身に巻き、その上に黒装束を纏った黒尽くめの衛宮士郎。その手に握られた二本の小太刀と交叉した長刀が、戻る前に間合いを詰める。

「ハァァァァァァ!!!」

ボウ!!

「!!」

刀身に刻まれた『火』のルーンが力を放ち、焔に包まれる。それを恐れた訳ではあるまいが、跳んで庭に出る群青の侍。

ザッ!!

それを追って、庭に続く。動かぬ家族を見つめる子供をリビングに残して。

「燃える刀とはな。面白いものだ」

仄かな月明かりの中、悠然と庭に立つ群青の侍。

「………なんで、殺した?」

搾り出すように問う。

「……さてな。この身は奴隷サーヴァント。マスターに理由など聞かされてはおらぬよ。まあ、あの女狐の事だ、この家の者達の命を使い、良からぬ事を企んでおるのだろうよ」

士郎が放つ強く真っ直ぐな闘気を、涼しげに受け流す群青の侍。

「……そんな事のために、殺したのか?」

「それが、此度の戦いではないのか?さて、これ以上、何を言おうと斬った者の命は還らぬ。後は互いに、剣で語る外無かろう」

「お前ぇぇぇ!!!」

ヒュオン!!
ギィィィィン!!


「くっ!!」

飛燕の如く、軽やかに鋭く舞う月光煌く白刃。それを辛うじて防ぐ士郎。

「ほう、やるな」

依り代たる山門を離れている為、能力が落ちているが、サーヴァントの攻撃を防いだのだ。感心も当然であろう。

ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュオン!!
ギィィン、ギィィン、ギィィン、ギィィィィン!!


ふむ、どうやら正統な剣の剣筋には、慣れておるようだ。故に我が邪剣の剣筋には、組し辛いようだな。

ヒュンヒュオン、ヒュンヒュオン、ヒュンヒュオン!!
ギィィンギィィィィン、ギィィンギィィィィン、ギィィンギィィィィン!!


迅さを増し舞う白刃。だが、それも防ぐ!

「!!」

私の動きを読んでおるのか?それに、動きが―

ヒュンヒュオンヒュンヒュンヒュオンヒュオン!!
ギィィンギィィィィンギィィンギィィンギィィィィンギィィィィン!!


更に迅く舞う白刃を悉く防ぐ士郎。

「お主は……」

衛宮士郎の使える魔術の一つに解析が在る。衛宮士郎を鍛える中で、彼の師が重視した魔術である。解析により得られた視覚情報(視認できる、癖や肉体のあらゆる動き)、聴覚情報(骨や筋肉の稼動音と言った、動く際に発生する音の全て)、触覚情報(行動に際し発生する空気の流れ等)から相手の行動を先読みする。彼の知覚範囲内における先読みは、未来予測と言っても良い精度である。これに士郎は会得している武術思想「観の目」を組み合わせており、その精度は人類の範疇を越えていると言っても過言ではない。
そして、解析によって把握した相手の体術を、己の体で模倣、再現する。だが、士郎に合わぬ体術も在る。だが、己の体も解析で知り尽くした士郎は、己に合わぬ体術の中から使える部分だけを、己に合うように「創り」変える。模倣、再現、そして「創る」事は、衛宮士郎の領分。
今、衛宮士郎は、サーヴァントたる群青の侍の攻撃を全て先読みし、邪剣使いの体術を盗み己の物としたのだ。

「初めて会うたぞ、お主のような男には」

群青の侍と士郎が撃ち合ったのは、一分強と言ったところだろう。それなのに、分かるほどにその動きは鋭くなった。

どれだけ強くなる?

もう少し、士郎が強さの高みを昇る様を見ようと群青の侍が踏み出す。と、

―……――…―

頭の中に甲高い声が響く。

「……無粋な」

僅かに眉を顰め、歩みを止める。

「すまぬが、終わりにしよう。女狐がせっつくのでな。……私としては、お主ともう幾ばくか剣を交えていたかったがな」

そうして、初めて構えらしい構えを取ろうとする群青の侍。

ブン、ボォォォォウ!!
キィィンキィィン!!


士郎が投擲した二本の燃える小太刀を、構えを中断して防ぐ。そして、

「!?」

その一瞬の内に士郎の手には、五尺三寸の長刀が握られていた。

「……ほう」

群青の侍が、目を細める。その全てが己の持つ本物と何ら変わらぬ。だが、それは間違う事無き贋物。

「どう言う妖術かは知らぬが、獲物は真似できても、業までは真似できぬぞ」

構える群青の侍。

「……真似なんてするつもりは無い」

同じ構えを取る士郎。

「「―――」」

僅かに吹いていた風が止まる。そして、

「―――秘剣、燕返し

縦の斬撃、円の軌道の斬撃、そして、横の斬撃。三つの異なる斬撃が、同時に士郎を襲う。多重次元屈折現象キシュア・ゼルレッチ。剣のみに生きた男が辿り着いた究極の一。放たれた魔剣の前にあるのは、死と言う未来のみ!!だが、

「―――投影、開始」

ギィィィィンギィィィィンギィィィィン!!!

士郎が振るった長刀、そして虚空より出でし二本の長刀の刃が、必殺の魔剣を防ぎきった。刃に刻まれた守護を表す『大鹿』のルーンの力ゆえか。

「――」

あたかも、己と同じ業で防がれたかのように映る光景。戯れから編み出したとは言え、己にしか成し得ぬであろう境地であったと言う自負が在った。故に、その光景に心の空白が生まれる。

「投影、開始」

一瞬の空白。だが、それは、戦いに於いて在ってはならぬ隙。

「!!」

「鬼を屠った」と言う伝説と共に、千年の時を刻んだ名刀、「童子切安綱」。霊体たるサーヴァントにとって、脅威と言う他無い刀だ。

ヒュゥン!!

トン。…スタ。

月光を反射しながら軌跡を残して振るわれる童子切安綱。それを後ろに跳んでかわす群青の侍。

ボトリ。

だが、左肩から先が地に堕ちた。

「フ、フフフ、ハハハハハハ」

楽しそうに笑う。腕を落とされた事など感じさせない程、涼やかに。

「さて、続けようか、死合いを」

心底愉しげに言葉を紡ぐ。……風が騒ぐ。

「行くぞ」

―――……―………――

踏み込もうとした隻腕の侍が、その動きを止める。

「……まこと、無粋よなぁ」

今度は、あからさまに眉を顰めた。

「今宵はこれまでのようだ。次に刃を交える時は決着を付けたいものよな」

群青の侍の姿が揺らぎ始める。

「!!」

童子切安綱を投擲し、二本の小太刀を構え消えようとする群青の侍に迫る士郎。

「私はアサシンのサーヴァント、佐々木小次郎。……また会おうぞ、戦士よ」

投擲された童子切安綱も、パワーを象徴する『太陽』のルーンが刻まれた小太刀も虚空を斬るだけだった。

「くっ!!」

最早気配は欠片も無い。……戦いは終わった。

「………」

振り返り、リビングを見る。そこには、虚ろな瞳で、物言わぬ家族を見つめ続ける子供がいた。

「…――……」

何か声を掛けようとした口を塞ぎ、伸ばそうとした手を下ろす。

ギリィィィ!!!

歯の根が砕ける程、噛み締める。……己の無力さを。

ダン!!

その家に背を向け、跳んで後にする。それと同時にその家に張られていた結界が消えた。

「くそ!!」

口内に広がる血の苦さが何時もより濃い気がした。


結界が解けてしばらくして、見回りをしていた藤村組の人間が、この家の惨状に気付き、警察に連絡。子供は、保護された。保護された子供は、警察に以下のように答えたそうだ。

「おさむらいさんから、ブレードブラックがまもってくれたの。……でも、パパとママとおねえちゃんはまもってくれなかったの……」

ちなみに、ブレードブラックとは、「聖杯戦隊フェイトウーマン」で、戦隊のメンバーであるメイガスレッド、ナイトブルー、パピヨンピンク、ピクシーホワイト、グラス(眼鏡な)パープルを影から助ける謎の男である。
そして、いつまでも警察署で生活させるのは不憫だし、親類が遠方に住んでいるため、訪問に時間が掛かる。そのため、この子供は、藤村組が当座の間預かる事になった。……頼られちょるぜ、藤村組!!



あとがき:前回、書き忘れてたんで復活!!いや、バトルってムツカシイですなぁ。と言うかこの内容をバトルと呼ぶのはおこがますぃね。とりあえず、私なりに士郎の強さを考察。で、こんなん出ました。あくまで、私の脳内妄想ですんで、深いツッコミは生勘弁♪ただ、ルーンの使い方は旨い設定だと自画自賛。タイトルにも合う感じだしぃ。
さぁて、次もまたバトル(風味)。王様出陣も近いナリ〜。オリキャラのあの子の出番はかなり先になるのぅ。


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