Blade worker 26 「蒼き槍兵、蒼穹に逝く」 <ウルさん>
「……ランサー」
苦い表情で、自分の召喚したサーヴァントを呼ぶバゼット。
「久し振りだな、元マスター。……やっぱり、敵に回っちまったな、アンタ」
「……残念ながら、その様ですね」
「ところで、何でアンタと士郎が一緒にいるんだ? ……もしかして、アンタの「旦那」って、士郎か?」
「そうです」
「いや、だからまだ、籍入れてないって」
ちなみに、夫婦関係を否定するのは、単なる照れ隠しらしい。この女の敵、男の敵、人類の敵めがっ!!
「そんな長い事、一緒に居た訳じゃねぇが、話す事と言えば、聖杯戦争の事か、娘自慢か旦那自慢だったからなぁ」
「旦那自慢?」
「おう。旦那への惚気をこれでもかって――」
「“後より出でて先に立つもの”」
いつの間にやら展開されている神代の魔剣。
「死ねぇーーー!!!」
対象が「切り札」を使っていない状態である事から、Cランクの能力で放たれた逆光剣を躱すランサー。
「おい、危ねぇじゃねぇかっ!?」
「それ以上、余計な口を開く事は許しませんよ」
「分かった分かった」
「それで、ランサー、あんたがここに居るって事は、今のマスターはやっぱり」
「おう、ここの神父さ。ったく、当りが大外れになるんだからよー、参っちまったぜ?」
そう言って苦笑を零すランサー。だが、次の瞬間、獰猛な獣の笑みを浮かべる。
「まあ、そのおかげで、お前と闘り合えるんだから、ある意味、大当りって言えねぇ事もないか」
蒼き槍兵から迸る闘気。それが、この戦いが避けられぬ物である事を、告げる。
「我が名は、クー・フーリン。汝、衛宮士郎に、一対一の決闘を申し込む。諾か、否か?」
真っ直ぐ、士郎だけを見据えて問うランサー。
ここで「否」と答え、士郎、バゼット、アルトリア、凛、アーチャーの五人で戦う事になろうとも、ランサーは、
「まあ、そうだよな」
そう言って笑い、五対一の不利な戦闘を戦い抜くだろう。
この戦いは戦争。卑怯など戯言でしかない。だから、決闘を拒まれようと、ランサーは気にもしないだろう。
「その決闘、受けよう」
「「士郎(シロウ)!?」」
有利な状況を捨て、決闘を受けると言った士郎に驚きの声を上げる凛とアルトリア。
「……決闘を申し込んだオレが言うのも何だけどよ、本当に良いのか?」
「ああ」
「シロウ!! あなたは何を―」
「考えているのか」、そう続けようとしたアルトリアは、士郎の表情を見て言葉を続けられない。
それは、正に一人の戦士のものであった。
バゼットが決闘を受けた事に関して口を挟まなかった理由を、凛とアルトリアはその表情から悟る。
「……そうかよ。それじゃ、尋常に勝負といこうかっ!!」
赫き魔槍を構えるクー・フーリン。触れる事が出来るのではと思わせる程の闘気が迸る。
「おい、士郎。とっとと固有結界を展開しろ」
「良いのか、決闘なんだろ?」
「オレはオマエとの闘いを愉しみてぇんだ。グダグダ言ってねぇで、さっさとしろ」
強くなったとは言え、固有結界の展開無しに士郎がクー・フーリンと渡り合うのは無理である。
つまり、固有結界の展開前なら士郎に勝つのは容易い。だが、それでは、つまらない。
クー・フーリンにとって、「英霊の座」に登録された以後の事は余禄みたいなものであった。
だったら、精々愉しまなければ、損である。
祖国の為でもなく、大外れのマスターの為などでも決してなく、ただただ、己の愉しみの為に。
クー・フーリンが愉しみたいのは、互いに死力を尽くす戦いなのだから。
「……行くぞ」
そして、冬木教会前の広場に、朗々と詠唱が響き渡る。
「I am the bone of my sword」
「Steel is my body,and fire is my blood」
「I have created over a thousand blades.Unaware of loss.Nor aware of gain」
「Withstood pain to create weapons.waiting for one's arrival」
「I have no regrets.This is the only path」
「My whole life was "unlimited blades works"」
瞬間、あらゆる物が破壊され、再生した。奔る炎が境界線となる。世界を侵蝕し、異なる世界を顕現させる。
―阻む物無き遥か高き蒼穹の下、無限の剣の突き立つ丘―
「―――行くぞ、光の御子。誓約の加護は十全か」
「―――オマエこそ、剣の貯蔵は十分か」
その二人の言葉を合図に、一つの死闘の幕が上がった。
先に動いたのは、クー・フーリン。一気に間合いを詰め、雷光の如き刺突を繰り出す。
それを剣弾で迎撃しようとした士郎は、背筋を駆け抜けた悪寒の命ずるままに全力で後ろに跳んだ。
「初見だってぇのに、鋭いじゃねぇか、士郎」
痛みを感じる場所を見れば、防刃防弾処理をした黒装束が、黒の抗魔布とその下の肉ごと抉り取られたかのようになっている。
その原因は、超高速回転をしながら放たれた刺突。
凄まじいまでの回転が、軌道を逸らそうとする剣弾を弾き、捌く事も不可能にし、士郎の体に届いたのだ。
更に驚くべきは、そんな回転をしながらも、以前の刺突と変わらぬスピードで繰り出される事だ。正に、「槍兵」の面目躍如と言うべき腕である。
もし、後ろに跳んでいなければ、昨夜、ギルガメッシュが見せた宝具を固有結界に登録していなければ、今の攻撃でもっと深手を負っていただろう。
「『螺穿』、そう名付けてみた。どうだ、中々良い名前だろ?」
笑うクー・フーリン。愉しくてしょうがないと言った風情だ。
「英霊」は成長しない。「座」に登録された時点で存在を定義され、不変なるモノとなる。
だが、そうである筈の自分が新たな技を得た。それが愉しくて堪らないし、それを身に付けさせてくれた目の前の戦士と戦える事が愉しくてしょうがない。
「技に、名前なんて付けたのか?」
「この国じゃ、技に名を付けるのが習しだろう? それに」
再び動き出すクー・フーリン。
「名が無いのに比べれば、気の入り様が違うってもんだっ!!」
赫き槍の瀑布が士郎に迫る。今、眼前に迫り来るソレに、衛宮邸の庭で戦った時と同じでは押し切られるのは間違いない。
だが、士郎の身体能力は既に極限。対抗するには、別の物のレベルを上げる他無い。
何を上げるか。それは、――――手数と精度だ。
その全てが「螺穿」の赫き槍の瀑布を凌ぐのに、剣弾が十で足りぬなら百、百で足りぬなら千を以って。そして、その一つ一つを、「是、射殺す百頭」の精度によって撃つ。
ぶつかり合う士郎の攻撃とクー・フーリンの攻撃に、蒼穹を冠する剣の丘が震える。
吹き荒れる剣弾の嵐と赫き槍の刺突の瀑布が、互いに削り合い、鬩ぎ合い、凌ぎ合う。
士郎とクー・フーリン、二人の姿は嵐と瀑布に呑み込まれ見えなくなる。
ぶつかり合う刃金の音が、剣の丘を支配する。
――――それは、まさしく死闘と呼ぶに相応しい、鮮烈な闘いだった。
加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する加速する。
思考が。――どう突くか/どう撃つかと言う思考が速過ぎて反射を越える。
感覚が。――視界は色を失い、音は溢れ過ぎて静寂に等しく、肌は互いの攻撃がかき乱す空気の流れすら余す所無く感じ取る。
だが、それすらも二人は置き去りにしていく。そうして、二人が感じられるのは、己の心臓の鼓動と相手の存在だけになる。
世界を構成するのは、士郎とクー・フーリンのみ。余人の入る隙などありはしない。
今、剣の丘は正に、二人だけの「決戦場」であった。
ギャアァァァァァァァァンッ!!!!
爆音と表して良い音が、剣の丘に響く。
士郎が一点に集束させて放った無数の剣弾と、クー・フーリンの「螺穿」を使った超神速の薙ぎ払いが激突した音だ。
凄まじい力の激突に、剣の丘は震え、両者はその圧力に吹き飛ばされる。
「ゼッ、ゼッ、ゼッ、ゼッ、ゼッ、ゼッ!!!」
「ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ!!!」
期せずして距離をとる事になった二人は、獣の如く荒々しく呼吸する。闘いの激しさを物語るように二人の姿はボロボロだった。
士郎は、黒の抗魔布も戦闘用の黒装束もボロボロになっている。また「螺穿」に因る傷が体のいたる所に在り、かなりの血が流れている。
クー・フーリンも、鎧甲が所々剥げ落ち、武装を切り裂かれ、体に何本か剣が突き刺さっている。彼もまた、かなりの血を流していた。
そんな二人の呼吸音だけが、剣の丘に響く。だが、二人は一流の戦士だ。程なく互いに呼吸を治め、耳が痛い位の静謐が剣の丘を充たす。
――静かだな。
闘いの最中に、こんな穏やかな気持ちになろうとは。周りの静謐と同じくらいに凪いだ心。
生前、戦いに戦った彼ではあるが、今のような心持ちになった事は終ぞ無かった。
――だが、悪くねぇ。
自身が望んだ、全力、死力を尽くした闘い。妙な話だとは自分でも思うが、充たされていた。
勝ち負けすら、もうどうでもいいと思わせる程に。しかし、だからこそ、
――士郎、テメェに勝つっ!!!
穏やかで静かな彼の表情が一転、獰猛な獅子を思わせる凄絶な表情に変わる。
体に刺さった剣を抜き、クー・フーリンは、槍の穂先を地面に向け、己の足元に一つの陣を刻む。
刻まれるは、ARGZ、NUSZ、ANSZ、INGZのルーン。
『四枝の浅瀬』
その陣を敷いた戦士に敗走は許されず、その陣を見た戦士に退却は許されない。
それは、彼ら赤枝の騎士に伝わる、一騎打ちの大禁戒。
魔術の働きは無く、ただただ、己の「不退転」の覚悟を刻むのみ。
「―――往くぞ」
赫き魔槍が、主の魔力を受けて震える。震える槍を手に、「四枝の浅瀬」が刻まれた地面に四肢を付くクー・フーリン。
その様は、限界まで引き絞られた弓、極限まで力を溜め込んだバネの如し。赫き魔槍と共に、解放の時を待つ。
そして、対峙する士郎もその「誓い」に応える様に、自身の力を解き放つ。
「I am the bone of my sword」
―創造の理念を狂わせ―
―基本となる骨子を捻じ曲げ―
―構成された物質を捏造し―
―製作に及ぶ技術を誤らせ―
―成長に至る経験を偽り―
―蓄積された年月を騙し―
―あらゆる工程を乱し尽くし―
―ここに幻想を歪めて剣と成す―
凶々しくも、神々しき光溢れる金の刃
神々しくも、禍々しき闇湛えし黒き刃
聖と魔、絡み合う二重螺旋
在り得ない、在ってはならない剣
「歪んだ幻想」
――まったく、テメェは最高だぜ、士郎!!
士郎の手に顕れた「歪んだ幻想」に、笑みを抑え切れない。
こんなに、戦いに昂ぶったのは初めてだった。
――この先の事なんざ知らん!! この一撃にオレの全てを賭けるっ!!!
「四枝の浅瀬」の誓いに則り、互いに全力にして究極の一撃で、敵を打ち砕かんと力を高める。
解放に向けて高まる二人の力によって、先程の静謐と対極の如き鳴動に充たされる剣の丘。
そして、鳴動が、―――止まる。
「雄嗚ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
咆哮と共に、あまりの強さの踏み込みに爆発する地面。
烈風を超え、蒼き颶風となるクー・フーリン。そして、二度目の爆発。力を全く殺さぬ最高の跳躍。
蒼穹を背に極限まで捻じられる肉体。全ての力、全ての魔力を己が魔槍に込め、真名と共に投擲する!!!
「突き穿つ死翔の槍ッ!!!!」
「螺穿」も使って投擲された赫き魔槍は、超高速回転による摩擦熱で焔に包まれる。
その様は、正に赫き彗星。クー・フーリン、究極の一撃。
彼の敵を打ち砕く為に翔ぶ。
「虚・螺旋剣ッ!!!!」
真名と共に投影した黒い洋弓から撃たれる、捻じ凶った剣。
尋常ならざる回転が竜巻を生む。竜巻は大気摩擦により放電。放電現象は集束し雷となる。
それは、雷の嵐を纏い翔ぶ魔弾。衛宮士郎、究極の一撃。
彼の道を阻むものを貫く為に翔ぶ。
ギャオォォォォォォォォンッ!!!!
新星爆発の如き輝きと、世界の果てまで響く様な爆音を以って激突する彗星と魔弾。
「突き穿つ死翔の槍」と「虚・螺旋剣」は、「約束された勝利の剣」と「天地乖離す開闢の星」のような放出系宝具、「騎英の手綱」のような突進系宝具とは異なり、放った後に威力を増すことなど出来ない。放った時に込める力こそが威力を決める!!
ギャギャギャギャギャギャギャギャッ!!!!
凄まじい音を響かせながら、互いに押し切ろうとする彗星と魔弾。究極の一撃同士の激突は、剣の丘を震わせる。
ギャギャギャギャギャギャギャギャアッン!!!!
だが、その激突は、実際はほんの数秒。互いの回転が互いを弾き合い、遂には、押し切ろうとする力のままに、互いの目標へと弾き飛ばした。
激突により威力は減じられ、究極の一撃ではなくなった。だが、その威力は未だ必殺を保ち、其々の目標に翔ぶ。
「ガアァァァァァァァァァッ!!!」
中空にいたクー・フーリンは身を捻り、躱そうとする。が、「虚・螺旋剣」の直撃を避けるものの、雷の嵐に呑み込まれる。
そして、剣の丘に立つ士郎は、「虚・螺旋剣」の投影の負荷から片膝を地に付けていた。
「「「シロウ(士郎)ッ!!!」」」
その声と共に右手を高く掲げ、昨夜見たモノを引き摺り出す。
「熾天覆う七つの円環ッ!!!!」
真名と共に士郎を護る様に顕れる光り輝く一枚の花弁。
今の士郎の状態で、一枚顕れただけでも僥倖。だが、一枚の花弁では、迫り来る必殺の彗星の前に容易く砕け散るのみだ。
だが、激突の瞬間、花弁が魔力の光を迸らせながら、七枚に増えた。
ギャアァァァァァァァァンッ!!!!
赫き彗星と輝く花弁がぶつかる音が剣の丘に響く。
「グゥ、ガァッ」
激突の衝撃に、血管が破裂したのか、士郎の右腕は血塗れだ。そして、彗星の圧力に圧されるかのように右腕が下がる。だが、
「「「シロウ(士郎)ッ!!!」」」
「破阿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
再び耳朶を打った声に、咆哮を上げ、赫き彗星を押し返す。
そして、
カランッ、カラァァァンッ!!!
乾いた音と共に、全ての威力を失った赫き魔槍が地に墜ちる。
―――死闘の末に、大地に立っていたのは、衛宮士郎であった。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
荒い息を吐きながら、士郎はゆっくりと立ち上がる。そして、前方に歩き出す。
途中、突き立っていた「童子切安綱」を左手で抜き、歩いて行く。
そうして、辿り着いた場所には、
「――よう」
仰向けに倒れた蒼き槍兵がいた。……左肩から右の腋までのラインから下が無い状態ではあったが。
間違い無く致命傷だった。
「…………」
「何、シケた面してやがる。士郎、テメェは勝ったんだ。それらしい面しやがれ」
「……いや、俺は敗けてる。ずっと、敗けっ放しだ」
士郎にとって、例え敵であろうとも、犠牲を出した時点で、それは「敗北」だ。士郎はその意味では、常に「敗北者」だった。
「それに、俺だけの力じゃ、今ここで立ってる事も出来ない」
最後の「熾天覆う七つの円環」。士郎だけの力では、一枚の花弁だけしか顕れなかった。だが、「突き穿つ死翔の槍」を防いだのは七枚の花弁。それを実現したのは、バゼット。士郎とのラインを通じて、「熾天覆う七つの円環」に魔力を注ぎ込んだのだ。
「……ったく、とことん良い女には縁が薄いぜ」
決闘に対するバゼットの介入を、そんな言葉で、クー・フーリンは水に流した。
「……さっき、敗けっ放しと言ったな。それでも、戦い続けんのか?」
真っ直ぐに士郎を見据えながら問うクー・フーリンに、士郎は頷いて答える。
「ああ。体が動いて、この命が在る限り、戦い続けるさ。……敗けない為に」
誰かを護り、救った事を「勝利」と呼ぶのは、どこか違うと士郎は感じている。だから、犠牲を出さずに終わらせる事を目指して、戦い続けると宣言したのだ。
――敗ける筈か。この戦いだけに賭けたオレと、その先を見据えてた士郎。覚悟が違ったな。まあ、愉しかったから、どうでも良いけどよ。
「……おい、士郎。煙草、持ってねぇか?」
「いや、持ってない。吸わないからな」
「そうか、参ったな。……今、喫ったらやたらと旨えだろうになぁ。まあ、しょうがねぇか。これ以上は、贅沢ってもんだ」
そう言って、蒼穹を見上げながら、男臭い笑みを浮かべるクー・フーリン。
「今度、士郎と会う時には、酒でも酌み交わしてぇもんだな」
「……そうだな。その時は旨い肴を作るよ」
「お、嬉しい事言ってくれんじゃねぇか。ああ、けど、「マーボードウフ」って奴だけは止めてくれ」
「? ああ、良く分かんないけど、分かった」
「……あんがとよ」
その言葉を最後に、沈黙が剣の丘を支配する。
そして士郎は、左手で逆手に持った「童子切安綱」を、クー・フーリンに振り下ろした。
ズシュッ!!!
それは戦士の礼儀。避ける事の出来ぬ決闘の決着。だが、その一撃を受けた彼は満足していた。
「―――またな」
そう言って少年のような笑いながら、二人の上に広がる蒼穹のような鮮やかさで、蒼き槍兵は空に融ける様に還っていった。
「…………往こう」
還っていった蒼き槍兵を見送る様に蒼穹を見上げていたのは、僅かな間。
感傷に浸って、立ち止まっている訳にはいかない。前に進む。それだけが、出来る事なのだから。
沈んだ表情で駆け寄ってくるバゼット。
「……士郎」
「ありがとな、バゼット。助かった」
「ですが」
「気にしなくて良いさ。あいつもきっと気にしてない」
「……はい」
歩き出す士郎に続くバゼット、アルトリア、凛、アーチャー。
――そうして一つの死闘を経て、士郎達は冬木教会の扉を開けた。
|