Blade worker 23 「NEKOMIMI-MODEと初デ・ェ・ト」 <Edgeさん>
「新都に出かけようと思う」
「新都に?」
「ああ。残ってるサーヴァントは、ランサーだけだ。キャスターにも確認した話なんだが、ランサーとそのマスターの拠点は新都みたいだから」
「それで新都に出かけて、ランサーの情報を掴もうって訳ね」
「そう言う事だな。それと俺、一人で行こうと思ってる」
ランサーは斥候としても優れた能力を持っているが、世界の異常に敏い士郎なら、ランサーの痕跡を捉える事のできる可能性は高い。
「一人での行動は危険です、シロウ。私も同行します」
「いや、情報収集だから、目立たない方が良い。それに、ランサーがアーチャーとの戦いより、目撃者を消す事を優先した事を考えれば、ランサーのマスターは「真っ当」な魔術師だろうから、衆人環視の中で仕掛けては来ないと思うぞ?」
「ですが」
「大丈夫。アルトリアが来てくれるまで、保たせる事くらいできるさ。いざとなったら、令呪を使うし」
「……シロウは頑固で困る。分かりました、シロウを信じましょう」
「ありがとう、アルトリア。皆の事、頼むな。それじゃ、俺は出かける用意をしてくるから」
そう言って居間を出て行く士郎。その士郎の後姿を見送った後、不意に凛が呟いた。
「……士郎も十分目立つと思うんだけど」
その言葉に居間にいる人間が首肯する。まあ、全身に包帯を巻いた人間が目立たない訳ないが。凛の呟きの答えは、士郎の用意が整った時、明かされる。
「ところで、橙士とあの二人の姿が見えんのだが」
「ホントだ」
「さっきまでそこにいたと思うんだけどね」
「どこに行ったんでしょうか?」
「橙士ちゃんとアーチャーさんとメディアさんなら、さっき離れの方に行っちゃったよ?」
「なんかアーチャーとキャスターがすごく嬉しそうと言うか、楽しそうな顔してたけど」
「……様子、見に行った方が良いかしら?」
「凛、君が何を想像したのかは知らんが、私が橙士を害したりする筈がないだろう」
「……鼻血拭いてから言いなさいよ、そんな事は」
ダクダクと鼻血を流しながら、居間に入ってくる赤い弓兵。……人間なら、致死量レベルっぽい。
「て言うか、離れでナニしてたのよ、あんたは!?」
「フッ、良い質問だっ、凛っ!! その問いに対する言葉は数多在るが、百聞は一見に如かずっ!! これが、答えだっ!!」
アーチャーの言葉と共に開け放たれる襖。そして、居間に飛び込んできた影は、
「にゃん♪」
そんな台詞と共に、可愛くポーズをとった。
「「「「「「「「「「!!!!!」」」」」」」」」」
居間の時間が静止する。そんな居間の様子に、
「にゃう?」
小首を傾げるネコ橙士。……実に「萌え」である。
「「「……なんと愛らしい」」」
「「「「「「可愛い〜〜♪」」」」」」
「可愛い」
「うにゃにゃ? にゃにゃ〜〜ん♪」
皆に、もみくちゃにされる橙士。ネコミミやシッポも自然な動作で、橙士のらぶりぃ〜さを強化する。
「フフフフフッ、成功の様ね」
そう言いながら、居間に入ってくるメディア。……鼻血は拭こう。
「うむ、感謝するぞ、キャスター。君の協力無くしては、ここまで素晴らしい物はできなかっただろう」
「それは、私の台詞よ、アーチャー。私だけではここまでの物は出来なかったわ」
未だ鼻血を垂れ流しながら、熱く通じ合う英霊二人。……現界した目的は、既に忘却の彼方に違いない。
アーチャーとメディアの共同制作、「橙士のネコミミシッポ」は、二人の持てる技術の粋を注ぎ込んだ逸品である。
元は藤ねえが持ち込んだ虎縞のネコミミとネコシッポ、それを橙士の髪の毛と同色の鮮やかな橙色に染め、橙士の感情に感応して動く様に「創り」変えたのだ。
橙士への負担を懸念して「精神感応」方式を採用し、橙士の感情に合わせ、橙士の可愛らしさをより高い次元に導くように動くネコミミとネコシッポ。ちなみに、「精神感応」のメカニズムを自身の持つ魔術技術を総動員してメディアが、ネコミミとネコシッポの動作をべらぼうに高い解析能力を無駄使いしたアーチャーが担当した。
――その頃、欧州、某城
「失礼します、姫様。お客様にお茶を御用意致し、キャアァァァァァァァァッ!!!」
その城で働くメイドが、城の主の部屋に入った瞬間、悲鳴を上げた。
「何事だっ!? ひ、姫様っ!?」
悲鳴に反応して、部屋に飛び込んでくる黒騎士と白騎士。しかし、飛び込んだ瞬間、言葉を失う。何故ならそこは、血の海だった。
「「「ウフフフフ〜〜〜〜♪」」」
「「グフフフフ〜〜〜〜♪」」
血の海の只中で、遠視の魔術により映し出された映像にコワれた笑いを零す五人。……部屋に入った瞬間、白騎士もコワれていたようだ。
「……部屋の掃除を頼む。……何をしている?」
黒騎士がコメカミを指先で押さえながら、メイドに向き直ると、そのメイドはどこから取り出したのか、カメラを構えていた。
「えっ? あ、はい、掃除ですね! た、直ちに取りかかります! それでは失礼致します!」
カメラを直し、廊下の向こうに姿を消すメイド。それを見送って、黒騎士は奈落の底に届くような深ぁ〜い溜息をついたのだった。
黄色い雰囲気の居間に、入って来た人影。
「賑やかだけど、何かあったのか?」
「「「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」」」
居間に入ってきたのは、鈍色の瞳に鮮やかな橙の髪、上下とも黒い服を着た青年だった。
夢に向かう少年のひたむきさと信念を貫く男の精悍さを併せ持ち、所謂「美形」ではないが、人を惹きつけて止まない容貌の青年は、注目を浴びている事を訝しみながらも座る。と、
「おとうさん♪」
「どうしたんだ、橙士、その格好?」
「アーチャーおにいちゃんとメディアおねえちゃんにもらったの♪」
「そっか。似合ってるぞ、橙士」
「えへへ〜〜〜♪」
橙士が照れてはにかむのに合わせ、ネコミミがピコピコ、ネコシッポがタシタシ、動く動く。……鼻血も増量だっ!!
「「「「し、士郎(シロウ)!?」」」」
「うおっ!?」
「にゃ!?」
遠坂、イリヤ、綾子、楓の突然の大声に驚き、ネコミミ、ピーン、ネコシッポ、ボワワッ。……鼻血が止められない止まらない♪
「どうしたんだ、いきなり大声出して」
「シロウ、なのですか?」
「? ああ、そうだけど」
「よく聴けば、確かに士郎の声だな。だが、その姿はどう言う事だ?」
「……話してなかったか?」
「聞いていないな」
「あ〜〜、それじゃ、驚くのも当然か。俺が出歩く為のモノなんだ、これ」
そう言って、顔を摘まむ士郎。
橙子作、士郎出歩き用アイテム「士郎君スキン」。特殊メイク技術と各種擬態系魔術を融合させた士郎専用のアイテムである。
士郎の包帯姿は、冬木では知られているので問題ないが、欧州では不審者、下手をすればテロリスト扱いだ。その為、このような偽装アイテムが必要だった。
「って、なんじゃ、そりゃーーーっ!!!」
「ど、どうした、楓?」
楓が怒った顔で士郎に詰め寄る。
「そんなモンあるの、なんで黙ってたんだよっ!?」
「いや、魔術に関わる事だったから秘密だったし」
「納得いかねぇーーーっ!! 士郎と遊びに行けなかった3年間を返せぇーーーっ!!」
士郎は冬木では基本的に出歩かない。行く所と言えば、藤村邸、柳洞寺、学校くらいなものだ。楓達も、士郎の事を慮って、外へ遊びに誘う事は殆どしなかった。
「士郎、一つ、聞いてもいいかな?」
「ああ、何だ?」
「橙子女史や、バゼットさんとは、出かけた事はあるのか?」
「え、まあ、あるけど」
「………ほう」
鐘の目がスッと細まる。
「!?」
な、何か居間の空気が重くなったぞ? そ、それに、皆の視線が、凄く鋭い気が……。
「士郎。午後の予定は変更だね」
「変更って、なんでさ、綾子?」
「……文句でも、あるのかい?」
「い、いえ、ありません」
むぅ、怖い。一体、どうしたってんだ、綾子達は? 俺、何か怒らせる事でも言ったかな?
「それで、変更って何するんだ?」
「そりゃもちろん、遊びに行くに決まってんじゃんっ!!」
「遊びに行くの? さんせ〜い♪ シロウ、行こう行こう♪」
「どこに行くの、蒔ちゃん?」
「モチ、新都♪」
「いや、それは危ないって」
「そうです、カエデ。アルスターの光の御子は、音に聞こえし豪の者。その拠点となっている場所へ、遊びに行くなど危険です」
「大丈夫だって、アルトリアさん。こっちにはサーヴァントだっけ、五人もいるんだし」
「そうよ、バーサーカーがいれば、ランサーなんかちょちょいのちょ〜いなんだから」
「イリヤスフィール、油断は禁物です。彼は並の戦士ではない。シロウ、私は反対です」
「夕食はホテルの豪華ディナーと言うのも良いな」
「ですがシロウ、休息も時には必要だとは思います」
意見変わるの、早っ!? 鐘、策士だ。何か、皆で新都に出かける流れになっているなぁ。……俺に、反対出来そうな雰囲気じゃないし。
「……ハァ、分かった。それじゃ、皆で新都に出かけるか」
「うっし、それじゃ、出かける準備してくるっ!!」
「私たちも行こうか、由紀香」
「うん、鐘ちゃん。蒔ちゃん、待って」
「新都で何しよっかね、桜?」
「えと、先輩達におまかせしちゃいます。あ、あの、メディアさん、あ、あとで少しお話があります」
「別にいいけれど? それじゃ、セイバーのマスター、私も出かける準備をしてくるわ」
「サクラ? ……サクラとシロウが行くのなら、私も行くのみです」
「……豪華ディナー、どのようなものなのでしょうか? 心が躍ります」
「シロウとお出かけお出かけ〜♪」
「おでかけおでかけ〜♪」
「橙士、出かける用意をせねばな」
「お嬢様、御支度のお手伝いを致します」
「手伝う」
出かける準備のため、皆、居間から出ていく。居間に残ったのは士郎と遠坂だけだ。
「本当に今が聖杯戦争中か疑わしくなるわね」
「……確かにそうだな」
「士郎が言うと、説得力が有りそうで無いわね」
「なんでさ」
この聖杯戦争で一番戦っているのは士郎だが、緊張感を奪ってる原因も士郎だからだ。
「まあ、別に良いんだけどね。こう言うのも悪くないと思うし。……心の贅肉だけどね」
目指す望みは立派な当主になり、家系の悲願を達成する事。でも、本当は、ここに在るような日々を――
「………ホント、心の贅肉だわ。それじゃ、私も出かける準備してくるわね」
「ああ、分かった。それじゃ、俺は玄関で待ってる事にするかな」
凛が居間を出た後、士郎も居間を後にした。そして、玄関にて、
「それじゃ、セラさんとリーゼリットさんは、留守番してくれるのか」
「はい。高貴なイリヤスフィール様が、滞在するに相応しい品格を備えた屋敷としなければなりませんから」
「頑張る」
変わらない格好のセラは良いんだが、捻り鉢巻きにサラシを巻いて、「あいんつべるん組」と入った半纏を羽織り、大工道具を携えたりーゼリットの存在が、激しく目に留まる。
「極力、イリヤの部屋の改装だけにしてくれ」
「……承りました。了見の狭いことです」
「残念」
小声で毒を吐くセラと判り難いが落胆した表情を見せるリーゼリット。帰ってきた時、衛宮邸が「風雲イリヤ城」になってたら困るからな。
「それじゃ、行こうか」
そうして、士郎達は新都に向かった。
プシュー、バタン、ヴォン、ブロロロロ〜〜〜〜。
深山町のバスから、新都パークに降り立った士郎達一行。完全無欠に注目を集めている。
「よっしゃーーっ、遊び倒すぞーーーっ!!!」
「遊びたおすぞーーー♪」
「たおすぞーーー♪」
「……テンション、高いなぁ」
苦笑する士郎。
「まあ、初デートだからな。我々の関係が、少々他とは違うとは言え、蒔が浮き立つのは仕方あるまい。……私も、そうだしな」
まあ、恋人(だけじゃないけど)で出かけているのだから、デートと言って間違いないわな。……現時点で五つ股?だが。
「ところで、先ず何をしようか?」
「まあ、十人以上いるからね。一緒に楽しめるものが良いんじゃない?」
「映画とかかなぁ?」
「そうね。とりあえず、映画館に行ってみて、どういうの上映してるか見て判断する?」
「そうだな、そうするか」
「そんじゃ、レッツゴーッ!!」
「「ゴー♪」」」
上映されてたのは、「GTTしえる 劇場版」と「NEKOARUKU The MOVIE」の二本で、俺達は「NEKOARUKU The MOVIE」を見たのだった。
「いや〜、あの場面でロケット噴射を使うとはな〜〜」
「それも意外であったが、まさかグラスドシッキーの正体が彼であったとはな」
「本当だね。それにしても、面白かったね」
「しかし、ジャンルはどう分類すべきかね、コレ」
「わたしは、SF、だと思いますけど」
「え〜〜、わたしはコメディと思うけど?」
「えっ、ラブ・ロマンスではないの?」
「ミステリーであったように思いますが」
「アクションムービーなんじゃないの、あれ?」
「外に出ると、このポップコーンと言う菓子は、何故か味気なく感じます」
「楽しかったかね、橙士?」
「うん、おもしろかったよ♪」
俺も面白いと思ったが、不思議と内容を正確に把握できていない。…まあ、良いか。みんな、楽しんだようだし。ただ、強く印象に残っているのが、スタッフロールのSPECIAL THANKSに「伽藍の堂」ってあった気が。………気にしない気にしない。
「さて、次はどこに行く?」
今は、三時半ちょい過ぎってところか。
「ちょうど、お茶の時間といったところだな」
「それだったら、一度行ってみたかった紅茶専門店があるのよ。そこでどうかしら?」
ちなみに、今日の遊興費の全ては士郎負担である。理由は「士郎君スキン」の事を黙っていたから。
「皆はどうだ?」
遠坂の提案に誰も首を横に振らない。決定だな。
「それじゃ、そこに行こうか。遠坂、案内頼むな」
「ええ、こっちよ」
遠坂の案内で、ログハウス風の紅茶専門店に行く。落ち着いた雰囲気と豊富で高価で美味な品揃え。俺達は優雅な時間を堪能した。
俺とアーチャーが従業員より遥かに洗練された手並みで紅茶を淹れた事で、店主に勧誘されたりした。丁重にお断りしたが。
「エネルギーも補給したし、次は体動かそうぜーー!!」
との、蒔寺の言葉により、何故かバッティングセンターに。
カキィィン、カキィィン!!!
「やるじゃない、アルトリア!!」
「あなたこそ、凛!!」
互いに負けず嫌い。その対決の終着点は。
「賞品、根こそぎか」
コレ以後、このバッティングセンターで「ツインテール、アホ毛ブロンド、お断り」と言う看板が立ったとか立たなかったとか。
「可愛いのがいっぱ〜〜い♪」
「いっぱ〜〜い♪」
その店に入った瞬間、イリヤと橙士が駆けて行く。次に訪れたのはファンシーショップ。右を向いても左を見ても、ぬいぐるみだ。
「こ、ここはっ」
アルトリアが硬直する。そういや、アルトリア、可愛いもの好きだもんな。家で使っている物も、何気にファンシーなものだし。
「アルトリアも見てきたらどうだ? 気に行った物があればプレゼントするぞ?」
「シ、シロウ、ほ、本当ですか!?」
「ああ。アルトリアには、助けられてるからな」
「そ、それはシロウの剣として当然で、れ、礼など……」
「まあ、そう堅く考えずにさ。ほら、行ってこいよ」
「ハ、ハイッ!!」
疾風となって店内に突貫して行くアルトリア。……焚き付け過ぎたかな? 結局、アーチャーとメディア以外の全員にぬいぐるみを買う事となった。ちなみに、アルトリアのは、本人と同じ背丈のライオンのぬいぐるみだった。
「ライダー嬢はどういう本が好みなのだ?」
「特に好みと言うものはありません。強いて言えば、読書自体を好んでいると言えます」
「なるほど」
今、いるのは、新都のデパート「ヴェルデ」に入ってる冬木で一番大きい本屋だ。ここに行く事を口にしたのはライダーだった。
「ライダーは本の読むのが好きなんだな」
鐘が美術関連のコーナーに行って、一人、新書のコーナーにいるライダーに話しかける。
「ええ、好きと言えます。シロウは本を読まないのですか?」
「読むには読むけど、専門書とか、知識を得るためだけだったし。まあ、読書って言うよりは鍛錬の一部って感じだったなぁ」
渡された本の内容を自分の物にしてなかったら、先生にお仕置きされてたし。キツイんだ、コレが。
「それは、なんと言えば良いのか……。ところで、シロウ。一つ、訊いてもよろしいですか?」
「何だ、ライダー?」
「アヤコがどう言う本を好むか、御存知ですか?」
「綾子の? いや、すまない、知らないな。でも、なんでそんな事を知りたがるんだ?」
「アヤコが好む本があれば、私の部屋に招き易いと思いまして」
「そうか。なら、あとで綾子に聞いとくよ」
ライダーも、皆と仲良くなろうとしてくれてるんだな。
「ありがとうございます、シロウ」
微笑むライダーに、ちょっと赤面する士郎。ライダーの思惑には欠片も気がついてないようである。
ちなみに、ライダーが綾子をロックオンした理由は、昨夜の事が原因である。士郎との間に出来ていたパスを介して、綾子の“精”がライダーにも流れ込み、その“精”の味をライダーがいたく気に入ってしまったのだ。
ゾクゥッ!!
「ヒィアッ!」
「ちょ、どうしたのよ、綾子? いきなり変な声出して?」
「い、いや、いきなり背筋に悪寒が奔って」
己を襲う悪寒に、自らを抱きしめる様にする綾子。……頑張れ、綾子さん。対策としては、常にケダモノの側にいる事がお勧めです。……結果的には一緒か!?
「いや、俺はここで待ってるからっ!!」
「「「「「駄目!! (ダメ〜〜♪)(だな)」」」」」
「はわわ〜〜」
「あ、あの、その、せ、先輩、よ、よろしくお願いしますっ!」
「シロウが選んでくれれるのですか? 私には判らない事ばかりなので助かります」
「私には必要ありませんって、サクラ、離して下さい!?」
「ヴェルデ」内、レディースファッションフロア、ファウンデーションエリアに引っ張られて行く士郎。
衛宮士郎。ベッドの上では、どこぞの英雄王以上の暴君の癖に、こう言う時は新兵以下になってしまう、へっぽこであった。
「―――フゥ、素晴らしかったです」
感無量、大満足と言った感じのアルトリア。ホテルの豪華ディナーに御満悦のようだ。
このホテルは、謎の外国人オーナーが所有する「FUYUKI KING HOTEL バビロニア」。冬木市と言う観光名所も名跡も無い一地方都市に、在る意味が見出せない豪華絢爛、荘厳華麗な超一流な外観と内装を誇るホテルである。スタッフやサービスの質も、かのエンパイアなホテル以上と言われてたりする。
ちなみに、最上階にはオーナー専用のペントハウスがあり、スタッフの話では、「一言で言えば、『金ピカ』としか言えません」とのこと。
「ですが、調理の技術だけを見れば、士郎の方がここの料理人より腕前が上のようです」
頷きながらそんな事を口にするアルトリア。ただの大食いと言うわけでは無いようだ。アルトリア、恐ろしい子っ!!
「………」
「どうした、アルトリア? いきなり、機嫌悪そうになって?」
「いえ、何故か不本意な評価を、誰かにされたような気がして……」
ホテルを出て、新都の街を皆で歩いている。皆、今日を楽しめたようだ。笑い合い、他愛ないお喋りをしながら、俺達はいつの間にかそこに足を踏み入れていた。
「……冬木中央公園」
ここは俺の始まりの場所。
俺の呟きに、皆の雰囲気が変わるのを感じる。折角の良い空気に水を差す事も無い。早く帰ろう。そうして踵を返した瞬間。
パチン。
ドンドンドンドンドンドンッ!!!
「熾天覆う七つの円環!!」
降り注ぐ魔弾の雨を、光り輝く七枚の花弁が防ぎ切る。
「王たる我の攻撃を防ぐとは無礼だぞ、贋作者! ……まあ、良い。今の我は気分が良いからな、特別に赦してやろう」
倣岸に言葉を発しながら、金色の男は不遜に姿を現した。
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