Blade Worker 22 「突発的タイガー道場〜えっちなのはいけないとおもいます〜」 <Edgeさん>



瞼が開く。

「……ここは?」

知ってる天井だった。板張りの床から身を起こし、周りを見回す。

「……道場か? でも、いつの間に……」

道場で寝た記憶は無い。薄暗い道場内で首を傾げていると、突然、道場の明かりが点く。
掛け軸の前に立つのは、見知っているものの決して普段着ではない二人組だった。

「藤ねえにイリヤ? ……二人とも何してんだ?」

「ノォーーー!!! 私は、藤村大河などと言う素敵無敵おねえちゃんではなぁーーーい!!!」

「わたしも、イリヤスフィールなんて言うシロウ専用決戦美少女じゃないわよ♪」

「……じゃあ、誰なんだ?」

「フッフッフッ、問われたならば、答えよう。我が名は、タイガー。この「タイガー道場」の道場主なのだぁ。………ぬあぁぁぁっ、私を虎と呼ぶなぁーーー!!!」

「落ち着くっす、ししょー。と言うか、毎回自己紹介の度に吼えるの止めましょー。あっ、わたしの名前は弟子一号。よろしくね、おにいちゃん♪」

剣道着姿の藤ねえとしか思えないタイガー、体操着、しかもブルマを穿いたイリヤにしか見えない弟子一号を名乗る二人組。

「……で、二人はここで何してるんだ?」

思考停止しそうな精神に鞭打って、質問を続ける。

「我らは、導き手!! デッドエンドに猫まっしぐら!! 「好奇心は猫を殺す」と言う格言を知らぬのくわ!! そんな困った士郎あなたの最後の砦、それがここ、「タイガー道場」なのだぁ!!」

「押っ忍、ししょー!! ……でも、ここに来るって事はもう死んでるって事だから、最後の砦って言う表現はおか」「ちぇすとぉ」
ビシィ!!
「痛っ!!」

「そう言うココの存在意義を根底から覆す発言は禁止と言ったでしょー!?」

「ううっ、すみません、ししょー」

「ウム、分かれば良し。さてと、それじゃ、気をとり直して、おお、士郎、何故死んでしまったのだって、あら、死んでない?」

「え? ……あっ、本当っすね、ししょー。どういう事なんでしょう?」

「むむぅ、……おそらく、必然的な死の未来が確定しようとしている影響で、ココへの道が開いたのだろうと推測される」

「おおっ、何か説得力があるっぽい発言を、ししょーがしてる」

「いや、てきとーに言ってみただけなんだけどね」

「……それじゃ、どうします、ししょー?」

「ウム、我らの役目は導き手。道を指し示し、あっちゃあな結末を回避させるのだぁ」

「了解っす、ししょー。そう言うわけで、良く聴くようにね、おにいちゃん♪」

「……何が何だか、良く分かんないけど、一応聴いとくよ」

「そう、心して聴きなさい、って言うか、ぶっちゃけ、身を慎めぇぇぇ、こぉんのエロ獣めっ!!!」

「そうよね〜。三日で五人。……日替わり計算でも二人余っちゃうし。あ〜あ、私も仲間入りしよっかな〜?」

「なっ、なななな、何言ってんのよぅ、このちみっ娘はぁ!! こ、壊されちゃうわよぅ!?」

「……おにいちゃんになら、壊されてもイイかも♪」

「ぬぅわーーーー!!! 何とセクシャルな発言!!! ……弟子一号、恐ろしい子

「随分仲良くなったな、二人とも」

二人のテンションについて行けない士郎は、的外れな感想を漏らす。

「さてと、そろそろ自分の世界に戻る時間よ、士郎」

「頑張ってね、おにいちゃん♪ それじゃ、お願いしまっす、ししょー!!」

「ウム。己の世界に帰り逝けぇぇぇ!!!」
「へっ?」

士郎の全身を奔り抜ける下方から迫る戦慄。そう、その戦慄の名は、

「虎伏○刀勢」

ベッキャアァァァァァァッ!!!
「フォーーーーーーーーーッ!!!」


こうして、芸人のネタの様な絶叫を上げ、奇妙な二人組のいる不思議世界から、士郎は自分の世界へと帰って逝った。


―2月7日・八日目

目が覚めた。

「……何か、物凄ぉ〜くイヤな夢を見たような」

気のせいか、藤ねえのアレを喰らったかのように股間が痛む。……いや、気のせい気のせい。

「こんな爽やかな朝に、妙な事を考えるのは止めよう」

「へぇ〜〜〜、爽やかな朝で良かったわね、え・み・や・く・ん?」
ギシリ

その声と共に軋む世界。ニゲロ、ミルナと本能が訴えかけるが、視線は吸い寄せられるようにそちらへと、開け放たれた襖の方へと向く。
そこに居たのは、声の主を含め三人。全員、見知った相手、驚く事は何もないはずだ。……三人が、この上もない瘴気を背負っている事を除けばの話だが。

「私の左腕があんたをブッ殺!! って轟き叫んでるわ」

魔術刻印を真っ赤に燃やす、実にスンバらしい笑顔のハイパーモード遠坂。一人で、マッチョなハートの王様をぶっ放ちそうです。

「シロウ、貴様の行状、最早許し難い。……覚悟するがいい」

髪、瞳、肌、鎧、剣、そして、身に纏う空気、全てがいつもと違う色のアルトリア。……どうも、彼女の“逆鱗”に触れてしまった様です。

「……クスクス、先輩、ぜ〜んぶ、喰べ尽くしてあげちゃいます♪」

闇より昏い影を纏い、どこかの当主妹さんと似たような台詞を呟く間桐。下から見上げているのに、前髪の陰に隠れて表情が判らないのが、とっても怖いです。

「お、おはようっ、遠坂、アルトリア、間桐。………そ、そのっ、あのさっ」

「んっ……士郎、好き……」

士郎が、その身を圧し潰さんばかりの瘴気の中でようやく口を開いた瞬間、隣で寝ていた綾子が士郎に擦り寄り、決定的な寝言を零した。……と言うか、この瘴気の中で、まだ寝ていられるその胆の強さを、分けて欲しいなぁと思った士郎であった。

「おはよう、衛宮くん。そして、さよなら
さらばだ、シロウ
クスクス、サヨウナラ、セ・ン・パ・イ♪


最終地獄ジュデッカ、顕現っ!!!

「……あっ、……うあっ、……ああああああああああっ」


恐怖の余り、言葉にならない声を上げながら、士郎の意識は闇へと堕ちて逝った。

「あら、もうコッチに戻って来たの? せっかちさんね〜、士郎は」
「わ〜い、おにいちゃん、あそぼあそぼ♪」


最後に、何か幻視した。

「フッ、嫉妬に塗れて溺死しろ」

ついでに、台所で三角巾に割烹着を着けた弓兵の呟きが聞こえたりもした。


「…………俺も、頑張っていくよ、切嗣オヤジ

虚空を見つめ何気にヤヴァイ発言を零す、生きた屍のようになっている士郎。……と言うか、良く生きてた。
おそろしく酷い目にあったのか、ひどく恐ろしい目にあったのか、いや、その両方か。とにかく、身体は「鞘」の力でどうにかなっているが、精神の方はどうにもならないようであった。

「あなた達、このケダモノに思うところは無いの!?」

未だ憤懣やるかた無しと言った感じの遠坂が、朝食を食べ終わりゆっくりとしている楓、鐘、由紀香、綾子に声を荒げて問い掛ける。
ちなみに、スッキリしたのかアルトリアと間桐はいつもの二人に戻っており、しかも、最終地獄顕現時の記憶も無いらしく、何処か彼方へと旅立っている士郎を心配して、両隣に座っている。

「何一つ思うところが無いと言えば嘘になるな。とは言え、私達も橙士の母親である蒼崎橙子女史や、バゼットなる女性に割り込みを掛けた身。道を外れた責任は私達の側にも在る訳だし、士郎だけを責められんな」

「まあ、鐘や由紀っちはさ、オッケーなんだけど。美綴に関しては、士郎をとっちめてやらなきゃなっ!!」

「へぇ〜〜、何であたしに関してだけなんだい、蒔寺?」

「へんっ、そんな事、あんたに教える義理は無いね」

「あれ、でも、蒔ちゃん、昨日、士郎君が美綴さんの気持ち、受け止めてくれるかすごく心配してたよね?」

「ゆ、由紀っち!? な、ななななに言い出すんだよぅ、あたしが、美綴の心配なんてするはずないだろっ!?」

「美綴嬢が攫われた時、蒔が心配で倒れそうになっていたように見えたのは、私の気のせいか?」

「そう、気のせい気のせい、って、なに笑ってんだ、鐘ーー!! あたしのキャラを捏造すんなーー!!」

「その、ありがとな、蒔寺。あんたがあたしの事、そんなに想ってくれてたなんて」

「うがーーーーーー!!! ち・が・うーーーーーー!!!」

照れから顔を真っ赤にして叫ぶ楓に、居間が笑いに包まれる。話題は重いものの筈だが、その割に雰囲気は軽いと言うか和やかだ。

「……いいの、綾子?」

今のやり取りに毒気を抜かれた遠坂が、もう一度親友に静かに問い掛ける。

「氷室がさっき言ったように、何も思わない訳じゃないけどね、自分の気持ちに正直でいようって決めたもんでね」

「……そ。なら、もう何も言わないわ」

「ところで、リン」

「何よ、イリヤスフィール?」

「どうして、シロウとアヤコ達の事そんなに気にするの?」

「そ、それは、友達を心配するのは当たり前でしょっ?」

「ふ〜〜ん、それにしては、さっきのシロウへの態度は、浮気をしたキリツグを責めるお母様みたいだったわよ」

「なっ!?」

しろいこあくま、降臨。

「ねえ、どうして〜?」

「う、あ、あっ」

意地の悪い笑みを浮かべながら詰め寄るイリヤに、顔を真っ赤に染め、口をパクパクさせながらあとずさる遠坂。

「シロウとアヤコ達の問題よ。友人だからと言って、リンがシロウをあそこまでする理由にはならないと思うけど。そ・れ・と・も、他に何か理由があるのかしら?」

「それに関しては、私も興味があるな」

「同じく。さ、キリキリ吐いてもらおうか、遠坂?」

イリヤに便乗して迫る鐘と綾子。

「だ、だから、そ、それはっ」

「「「それは?」」」

イリヤ、鐘、綾子だけでなく、居間にいる全員の視線が、遠坂に集まる。俄かに、張り詰める居間の空気。
その時彼女の頭に浮かんだのは、赤い夕焼けに染まる運動場で、飛ぶ事の出来そうにない高さの高跳びに一心に挑む少年の姿。
その光景が、始まりだと、自覚・・してしまった。
意識が沸騰する。全身の血液が集まったかのように、顔が熱い。

「そっ、そんな事、いっ、言える訳ないでしょーーーっ!!!」

抑えきれず、叫んでしまう。……まあ、理由、答えたようなものなんだが。

「そんな事って、何なんだ、遠坂?」

「!!!」

タイミング良く(?)帰還した士郎が、遠坂に何の考えも無しに訊く。固まる居間の空気。そして、

「きっ」

「き?」

「記憶を失えぇ〜〜〜〜〜〜いっ!!!」
「なんでさっ!!?」
「シ、シロウ!?」
「せ、先輩!?」

弾けた。遠坂のコークスクリュー・フックを喰らい、居間の外に吹っ飛ぶ士郎。帰還を果たした直後の災難(?)であった。

「……いつも、このような?」

「私もここに来て、日が浅いから断言できないけど、多分そうなのではないかしら。……本当は、騒々しいのはキライなのだけど、ここの騒々しさはキライではないわ」

「……ええ、分かる気がします」

眩しそうに居間で繰り広げられる喧騒を見守るメディアとライダー。ちなみに、ライダーは、士郎の作った「魔眼殺し」の眼鏡を掛け、藤ねえが持ち込んでいた物の中から選んだ、黒のセーターとGパンを着ている。

「できたよ〜、メディアおねえちゃん♪」

「ありがとう、橙士♪ 橙士、三つ編み編むの上手なのね♪」

「えへへ〜、うん♪ あおこおねえちゃんもほめてくれるよ♪」

本当に綺麗に編まれた三つ編みだ。流石、橙子の息子である。三歳児とは思えぬ器用さだ。微笑ましい光景である。背後で髪を投影するか否か迷っている弓兵がいたりするけど。

「ライダーおねえちゃんのかみもしてあげる♪」

「えっ、私のもですか、トウシ? い、いえ、私は別に」

「してもらいなさい、ライダー」

「キャスター?」

「橙士が望んでいるのだから、あなたは大人しくしていなさい」

「ですが、私の髪など編んでも」

「ライダーおねえちゃんのかみきれいだから、ぼくすきだよ」

「そ、そうですか? ……そ、それではお願いします、トウシ」

「うん♪」

嬉しそうにライダーの髪を編み始める橙士。中庭には、悠然と佇むバーサーカー。
―――今日も、衛宮邸の朝は平和だった。


お昼前、台所に足を踏み入れた士郎を待ち構えていたのは、アーチャーだった。

「何してるんだ、お前は?」

「台所でする事など決まっているだろう。馬鹿なのか、貴様は?」

「………」

士郎はこめかみ辺りがピクピクしているのを自覚するが、何とか押し留める。何せ、台所を破壊する訳にはいかないからだ。……主に、獅子と虎の逆鱗に触れぬ為に。

「今日の昼食は何を作る気だ、衛宮士郎?」

「カレーにしようかと思っている」

「スパイスから作るのか?」

「ああ、家じゃそうだ」

受け答えしながらも、調理の準備を整えていく二人。

「貴様に訊きたい事がある」

「? 何だよ、急に?」

「貴様が目指すものとは何だ?」

「……答えなくちゃいけないのか?」

「フッ、戯れに訊いただけだ。答える必要など無い。まあ、貴様の目指すものだ。愛欲に塗れた、他人に語れぬ恥ずかしさ満載なものなのだろう」

「………、俺の「正義」を貫く事と、「幸せ」になる事だ」

「……そう、か。……衛宮士郎、貴様の「正義」とは何なのだ?」

「俺の目に映り、この手の届く限り、皆を護ることだ」

「………救えない者は救わない、貴様はそう言うのだな」

「違う。俺に救えない人は、俺がどうしようと救えない。………救えないんだ」

「………やはり、貴様は、とは違うか」

「何でこんな事訊くんだ、お前?」

「先程も言ったが、ただの戯れだ。深い意味など無い。それよりも」

「何だよ?」

「そろそろ、決着を付けようではないか、衛宮士郎。私と貴様、どちらが上か知ると良い」

「む」

アーチャーが包丁を手に、まな板の前に立つ。対する士郎はフライパンを持ち、コンロの前に立つ。

「ついて来れるか?」

「お前の方こそ、ついて来いってんだ」


二人は同時に動き出す。包丁が奔り、鍋が炎と踊り、具材が舞う。それは、鬩ぎ合いぶつかり合う魂(料理人)の競宴。
そして、二人は遥かなる高みへと――


士郎作の本格的なビーフカレーライスの皿と、アーチャー作の卵のカレー、南瓜のカレー、トマトと茸のカレー、海老のクリームカレー、フルーツのカレーを小分けした定食ターリー形式の皿が、居間の卓の上に並ぶ。

「「「「「「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」」」」」」

「待ちなさい、リーゼリット。何故あなたまで食事をしようとしているのです」

「だって、美味しそう」

「私達は、お嬢様に仕える身です。お嬢様のお食事が終わるまで、お待ちなさい」

「……って言うか、二人はいつの間に来てたんだ?」

「シロウが、ご飯作ってた時」

「ようやく城の整理が終わりましたので、高貴なイリヤスフィール様を迎えるに相応しくない、みすぼらしいほったて小屋に、参った次第です」

いきなり、何か凄い毒吐くセラさん。……四日前、ちょっと話しただけだったんで、判んなかったけど、嫌われてる、俺?

「そんな事言わないの、セラ。趣って言うのかしら、それがあって、わたしは好きよ、ここ。ねっ、シロウ♪」

……残念だけど、イリヤ。それ、さっきのセラさんの台詞のフォローになってないぞ? そりゃ、アインツベルンの城と較べればさ、そうかも知れないけど。

「ところで、随分こっちに来るの早かったのね。一週間以上掛かると思ってたのに」

「早く来るために、頑張った」

「可憐なイリヤスフィール様が、野卑で野蛮なケダモノの毒牙に曝されているかと思うと、早く駆けつけねばと奮起致しました」

今度は猛毒。……どうして、俺の周りにいる、誰かに仕える職業に就いている人は、一癖、二癖、三癖、四癖、有るんだろうか?

「ま、まあ、セラさんも、リーゼリットさんも一緒に食べよう。食事は皆で食べた方が美味しいし」

「そう、美味しい。セラも、食べよう」

「リーゼリット、アインツベルンのメイドとして、そのような事許容でき」
「わたしが許すわ」

「お、お嬢様!?」

「ここはシロウの家。この家の流儀に従うのが礼儀と言うものよ。わたしに恥を掻かせたりしないわよね、セラは?」

「……分かりました。お嬢様の仰せに従います。例え、底辺の地位しかない家主であっても、家主は家主。その面目を立たせて差し上げるのも、誇り高きアインツベルンのメイドの責務と言えます」

「……とにかく、食べよう」

心の硝子が、粉微塵に砕かれたような気分だ。……何か、俺、聖杯戦争より、この家の中でダメージ受けてる事の方が多くない?

「とっ、橙士っ!?」

「んぅ、な〜に、アーチャーおにいちゃん?」

驚愕の表情で橙士に問い掛けるアーチャーに、口の中の物を飲み込んでから橙士が口を開く。

「か、辛くないのかねっ!?」

橙士が食べているのは士郎作の本格ビーフカレー。普通に考えて三歳児が食べれるものではない。

「からくて、おいしいよ♪」

「……ハム……ムグ、ええ、本当に美味しい。香辛料の風味が各々際立っていながら絶妙に調和し、立体的な味の世界を構築している。味わいの深い辛味と旨味が混然一体となって、……ああっ、幸せです」

「悔しいけど、絶品ね」

「同感。こっちの立つ背がないね」

「美味しい」

「クッ、料理の腕だけは認めざるを得ないようですね」

辛いけど、美味しいカレー。食べている橙士、アルトリア、遠坂、綾子、リーゼリット、セラには、好評のようだ。対するアーチャー作のカレーを食べているのは、楓、鐘、由紀香、間桐、イリヤ、ライダー、メディアだ。

「色々な味が楽しめて良いね。それに、すっげえ美味いし」

「ふむ、辛みを排した品揃えだな。しかし、味は深い。面白いものだ」

「辛くなくて、すごく食べ易くて、美味しい。アーチャーさんに後でレシピ教えて貰おう」

「野菜中心でカロリーも低め。それなのにこの美味しさ。やりますね、アーチャーさん」

「甘くて美味しい〜♪ リンのサーヴァントにしては、なかなかね」

「確かに美味しいですね。料理に秀でているとは、一体、彼はどういう英霊なのでしょうか?」

「橙士、これも、美味しいわよ。はい、あ〜ん♪ どう、美味しい? そう、良かった♪」

こちらも好評のようだ。その割には苦虫を噛み潰したような表情のアーチャー。

「何故だ!? 何故、橙士は貴様の作ったカレーを美味しそうに食べる事ができるのだ!?」

「まあ、橙士、辛いの平気だからな。ハバネロ(世界一辛い唐辛子)だって食べれるし」

「なっ!? おのれ、謀ったな、衛宮士郎!! 橙士の味覚を知っていれば、甘いカレーなど作らなかったものを!!」

ちなみに、士郎は、アーチャーの作る様子を見て、辛いカレーを作る事にした。

「クッ、どうやら、私の、負けのようだな」

膝を付く項垂れるアーチャー。その様は正に敗北者。どうも、勝ち負けの基準は橙士にあったようだ。

「アーチャーおにいちゃんのも、あまくておいしいね♪」

「そうだろうともっ!!」

実にあっさり復活しやがった。何なんだろう、コイツは。
そして、昼食も終わり、士郎は午後の予定を口にした。

「新都に出かけようと思う」


――同時刻、新都、冬木教会

「おい、コトミネ。オレは暇だ。よって、出かける」

「そうか、好きにすると良い。それと、今日の夕食は麻婆」
「要らぬ」

「そうか、残念だ。今日は魃さんから頂いた四川省産の山椒を使おうと思っていたのだが」

「フンッ、狗にでも食わせてやれ!!」

「そうだな。労いの意味も込め、馳走するとしよう。誓約ゲッシュのお陰で、奴は私からの食事の誘いを拒めぬしな」

神父の言葉を聞きながら、教会を出た金色の男は呟いた。

「不憫だな、狗」

そして、金色の男は、新都に向け、歩き出した。


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