Blade worker 20 「実録、女(サーヴァント)が男(マスター)を捨てる時」 <烈風601型さん>



夕食は、しっとりバターライスをふんわりトロトロの半熟オムレツで包み、薫り高く濃厚なデミグラスソースがその上にかかった、アーチャー作のオムライスと温製野菜サラダ。
二品とも美味なのだが、今日の夕食の席を明るく彩る事はない。

「「「「「「「「………」」」」」」」」

「味はどうかな、橙士?」

「美味しいよ♪」

「そうかそうか♪」

「橙士、可愛いほっぺにソースがついてるわよ♪」

「んんぅ〜、ありがとう、メディアおねえちゃん♪」

……訂正。二人ほど場を読めないサーヴァントが居た。

「ねえ、おとうさん」

「ん、何だ、橙士?」

「あやこおねえちゃんは?」

この場にいない美綴の事を訊いてくる橙士。その問いに、何人かの体が一瞬揺れる。

「…ん、綾子お姉ちゃんは、今日はお家に帰ったんだ」

「そうなの?」

「ああ」

「それじゃあ、あしたになったらあえる?」

「…ああ、勿論だ」

橙士に見えない位置にある士郎の手が強く握り込まれた。


夕食が終わり、橙士の事をメディアにまかせ(アーチャーも行こうとしたが遠坂に睨まれ、居間に残った)、居間に居る面々は重苦しい雰囲気を漂わせていた。

「……シロウ、本当に申し訳ありません」

最初に口を開いたのはアルトリアだった。苦渋に満ちた表情で頭を下げる。

「いや、アルトリアのせいじゃないさ。読みが浅かった俺のせいだ」

学校にあんな結界を張り、日中に発動させるような間桐慎二ライダーのマスターが、今日のような行動に出る事を予想できなかった俺のミスだ。

「確かに貴様の読みが浅かった事が、美綴綾子が攫われた原因の一つである事は間違いないな」

「アーチャー!!」

「どうした、凛? 私が事実を言っただけだが」

「あんたねぇ」

「遠坂、いい。アーチャーが言っている事は事実だ」

「士郎……」

「ところで、セイバー。昨日私達がライダーと対峙した時の感じでは、彼女達を護りながらであろうと、君が不覚を取るとは思えなかったのだが」

「……ええ、私も昨日の話を聞いた限りでは、そう思っていましたが、今日、私の前に現れたライダーには魔力が満ち溢れており、その高機動力に翻弄された一瞬の隙を突かれ、アヤコを……」

「でも、どうやって一日でそんな魔力を……」

「君には前に説明したと思うが、凛?」

「……人喰い、か」

「「!!」」

「察しが良いな、衛宮士郎。あの結界は地脈を利用するモノで早々使えるものではない。間桐慎二の魔力ではセイバーの言う状況は有り得ん。となれば、それ以外思い付かんな。さて、昨日だけでどれだけの人間がこの冬木の街から消えたのやら」

「アーチャー!!」

「事実だ、凛。目を背けるな」

「〜〜〜ッ!!」

更に重く暗くなる居間の雰囲気。……とは言え、死者は一人も出ていなかったりするのだが。と、そこで、

「ぼくぅ〜、ダァメ人間ですわぁ〜」 (中○正広の声)

間の抜けた音が響く。そして、気まずそうに顔を赤くした間桐が、携帯を取り出し、

「あ、あの、兄さんから、メールが届いたみたいです」

ちなみに、慎二は「ダメ人間」で桜の携帯に登録されている模様。
すぐに凛が桜から携帯をひったくるも、操作が良く分からなかった為、士郎に渡す。

「……間桐、慎二!!

メールの内容に目を通した士郎が、搾り出すように声を発する。
メールの内容は、

2月7日AM1:00、新都センタービル屋上へ、エミヤシロウ様とセイバーのお二人でお越し下さい。その際に、ミツヅリアヤコはお返し致します。エミヤシロウ様のお越しを心待ちにしています

である。丁寧な文体だが、この状況では怒りを煽るものでしかない。

「どうやら、間桐慎二の標的は衛宮士郎のようだな。美綴綾子はそのための人質か」

「間違い無く、罠ね」

「ああ。それでも、美綴を助ける為には行くしかない」

「ええ、シロウ。必ずアヤコを助けましょう」

気合を入れる士郎とアルトリア。

「……待って、シロウ。わたしとバーサーカーもついて行くわ」

「イリヤ?」

「イリヤスフィール、それには及ばない。私がシロウを護り、アヤコも救い出してみせます」

「何よ、そもそもアヤコが攫われたのは、アルトリアがだらしないせいじゃない!」

「!! そ、それは……」
「イリヤ!!」

「アヤコは好きだし、死んで欲しくないけど、シロウがわたしの居ない所で危ない目に遭う方がイヤなの!!」

「イリヤ……」

イリヤは自分の体を抱くようにして、震えを抑える。昨夜、昏い影の前に残った士郎が死ぬかもしれない恐怖。それなのに、何も出来なかった自分に対する無力感を思い出しながら。

「イリヤ、心配してくれて、ありがとな。でも、俺は大丈夫だから、な」

そんなイリヤを優しく抱き締めながら、安心させるように言う士郎。

「…………分かったわ、シロウ。絶対、帰って来てね、……約束だよ?」

「おう、約束だ」

眼を潤ませ見上げるイリヤを真っ直ぐ見据える士郎。

「……イリヤスフィール、シロウを護る事を、あなたにも誓います」

「……ええ、あなたの誓い、受けてあげるわ、アルトリア。シロウのサーヴァントとして恥ずかしくないようにね」

「無論です」

もう一度、士郎の体に顔を埋めた後、体を離したイリヤはいつもの調子を取り戻していた。

「……先輩、兄さんは"書"を持っているはずです。それをどうにかすれば……」

桜が俯きながらも一歩前に出て話し始める。

「どういう事、桜?」

「…………ライダーを召喚したのは、わたしなんです」

「!! 成る程ね。令呪のシステムを構築したマキリならではの裏技か。おかしいと思ってたのよね、魔術回路の無い慎二がサーヴァントを召喚できるはずないし」

「それで間桐、"書"って言うのは?」

「"偽臣の書"と言って、令呪一回分の力でマスターの権利を譲渡する事のできる物です。だから、"書"をどうにかして貰えれば……」

「ライダーは、本来のマスターである桜に従うって訳ね」

「はい。………ごめんなさい、先輩。わたし、戦うのが怖くて、イヤで、それで、兄さんに、ライダーのマスターを譲って、でも、こんな事になるなんてっ」

「間桐のせいじゃないさ」

「でも、美綴先輩が」

「大丈夫。アルトリアも力を貸してくれる。美綴は、絶対、助けてみせる」

居間の重い雰囲気を吹き飛ばすように、力強く答える士郎。

「そ、そうだよな、美綴、大丈夫だよな」

「うん、士郎君が、助けてくれるよね」

「ああ、勿論だ」

「「「………」」」

士郎の答えに表情を明るくする楓と由紀香とは対照的に、凛、桜、鐘の表情は暗い。

――人質である以上、美綴綾子の命は無事だろうが、間桐慎二が相手では、命以外は無事ではあるまい。
さて、この状況で貴様ならどう行動する? 私の知らぬ衛宮士郎よ――


――2月7日 AM1:00

ガチャ、キィ〜〜〜〜〜。


深夜、新都一高いセンタービルの屋上の扉が開く。そして、屋上に現れる二つの影。
黒尽くめの魔術使い、衛宮士郎と青き剣士、アルトリア。

「…………」

屋上の真ん中辺りへアルトリアと背中合わせで進み出て、辺りを見回す。夜の澄んだ冷気を孕んだ風が吹き抜ける屋上に、二人以外の影は無い。
二人が周囲を警戒しながら屋上の中心に進み出た時、アルトリアが弾かれたように夜空を見上げる。

「!! シロウ、ライダーの気配です! から来ます!!」

アルトリアの言葉に士郎が彼女の視線の先に目を向けると、そこには、朧に白く輝きながら翼を羽ばたかせ翔ぶ幻想種がいた。

天馬ペガサス……」

虚空を駆けながら、士郎達の居るビルの屋上に迫る天馬。その背にある影は二つ。……と、天馬に鎖で曳かれながら翔ぶ影。

「「…………は?」」

カカッ、カカッ、カカッ、カカッ、カカッ、カカッ、カカッ、カカッ!!
ドガッ、ベチャ、ズシャアアアアアアアア、ベンッ、ベシャ、ズシュウウウウウウウ!!
「うぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ、………ううっ


屋上に着地した天馬は、蹄の音を響かせながら、屋上を大回りしながら減速し、予想外の光景に呆けた士郎達の前で止まる。
その背から降り立つのは、紫の長い髪を風に靡かせる黒衣の女。そして、先に降りた彼女の手を借りて、天馬の背から降りたのは、

「美綴、無事かっ!?」

「あ、うん。大丈夫だよ、衛宮」

攫われた美綴綾子だった。見た限りでは、襲われたような形跡は見当たらない。と言って、安堵する訳にはいかない。
士郎は、いつでも動けるよう体勢を整えながら、黒衣の女――ライダーに問う。

「……ところで、あれは何なんだ、ライダー?」

視線の先には、天馬に屋上をバウンドしながら曳きずられたせいで、ズタボロになっているモノが居た。
この寒空に黒のビキニパンツ一丁である事に加え、鎖で亀甲縛りされ、屋上を曳きずられた物とは別の蚯蚓腫れが、体の至る所に見受けられる。弱々しく痙攣する姿は、もう、憐れ、としか言い様が無い。

「シンジですが?」

関心は皆無ですと言わんばかりに端的に答えるライダー。そう、その憐れを誘う物体は、間桐慎二だった。

「……ライダー、美綴を返してもらう」

とりあえず、慎二の事は棚上げする事にした士郎が、ライダーを見据えながら投影した小太刀を構えながら言う。

「わかりました。アヤコ、御迷惑をおかけしました」
ガクッ。

思いも寄らないライダーの言動に体勢を崩す士郎。

「い、いや、気にしないでいいよ」

深々と頭を下げるライダーに、美綴も苦笑しながらこっちに歩いて来る。攫って行った者と攫われた者のやり取りとは思えない。

「……どういうことなんだ?」

「あたしに訊かれてもね」

「……何が目的なんだ、ライダー?」

美綴を背に庇いながら、問いかける。

「私の目的ですか?……セイバーと邪魔が入らないように闘う事です。その為とは言え、アヤコには不愉快な想いをさせてしまいました。アヤコ、申し訳ありませんでした」

「不愉快な思い?」

「あ〜〜、あいつに襲われかけてね」

未だに痙攣する慎二を指差しながら言う。

「大丈夫なのか!?」

「う、うん。ライダーさんに寸での処で助けられたよ。……初めて見たよ、人間が縦回転しながら飛ぶの」

美綴を襲おうとした慎二は、"偽臣の書"を使う間も無く殴り飛ばされ、着ていた服が弾け飛ぶほど、「無銘・短剣」の鎖で鞭打たれ、気絶した処をそのまま縛られて、今に至っている。
……良く生きてるものだ。このしぶとさがマキリの特色なのだろうか?

「目的が、アルトリアセイバーと一対一で闘う事だってのは解った。でも、なんで、アルトリアと闘いたいんだ?」

単純に、聖杯戦争に勝つためなら、サーヴァントと闘う必要はなく、マスターを狙えば良い。アルトリアと闘う必要はないと言うか、この場に呼ばなければ良かった筈だ。
アーサー王アルトリアメドゥーサライダーの間に因縁が在るとは思えない。アルトリアは、ライダーから綾子を護れなかった事を気に病んでいるだろうが、ライダーがアルトリアに拘る訳が解らない。
どうにもライダーの狙いが読めない。そんな、俺の訝しげな様子を読み取ったのか、ライダーが口を開く。

「セイバーと私、どちらが、マスターご主人様に相応しいか、証明する為です」

「「……は?」」

ますます疑問を深めるライダーの返答に、素っ頓狂な声を上げてしまう士郎とアルトリア。
ライダーの現在のマスターは、仮初とは言え間桐慎二であるし、本来のマスターは、間桐桜だ。その事を考えれば、ライダーの言葉は意味不明なものでしかない。
士郎は、ライダーの「マスター」のニュアンスと、眼帯越しなのに感じるライダーの熱い視線に、そこはかとなくイヤな予感を感じていたが。

「ライダー、あなたと私のマスターが異なる以上、あなたの言う証明の必要性が感じられませんが?」

「いいえ、セイバー。シロウに仕えるべきは、あなたではなく私なのです」

イヤな予感、大的中。なんでさ。


「どういう事(ですか)、衛宮(シロウ)?」
ビクッ!!

――他者封印・嫉妬神殿――

他者封印・嫉妬神殿:嫉妬する乙女により作られる領域。これに囚われた者は精神的重圧により多大なダメージを受ける。「朴念仁」のスキルを保有している者はダメージが軽減される。

「シ、知ラナイ、オレ、知ラナァイ」

目を吊り上げたアルトリアと美綴に迫られながらも、首を激しく横に振りながら何故か片言で弁解する士郎。そんな士郎達を余所に痙攣が激しくなる慎二。

「では、何故、ライダーがあのような事を言うのですか?」

「わ、解りません!! って言うか、俺、ライダーと会うの、今が初めてなんだぞ?」

「じゃあ、ライダーさんのあの態度は何なんだよ!?」

「な、何なんでしょう?」

二人の余りの剣幕に涙目になる士郎。ここには助けに来た筈なのに、今や助けを求める立場に大逆転。ただ、助けを求めようにも、助けてくれそうな者はこの場にはいない。追い討ちをかける者はいるが。

「シロウを責めないで下さい。シロウは、ただ、私にを溢れんばかりに注ぎ込んでくれただけなのですから」

「「「………」」」

沈黙。

「シ・ロ・ウ?」
「え・み・や?」

ブルンブルン!!

奈落の底から響いてくるような問いかけに、首を横に振るしか出来ない。慎二の痙攣も更に激しくなる。

「……シロウ、ライダーを討った後で、詳しく話を聞かせてもらいます」

そう言って、ライダーと向かい合い、剣を構えるアルトリア。今までで、一番の殺気を放っている。だが、その殺気を受けても、ライダーに微塵の動揺を見受けられない。

「セイバー」

「何です!?」

「あなたは、小さくて可愛らしい。それは素晴らしい事です」

「なっ、何を言っているのです!?」

「ですが、シロウから見れば、私も小さい。その点の条件は互角です。ならば、慎ましやかなあなたと私ならば、私の方がお得です。大は小を兼ねると言うそうですし」

「……何が言いたい、ライダー?」

「シロウを満足させるには、あなたの貧相な肉体では役不足だと言っているのです」

「……私も、殿方の悦ばせ方くらい知っている」

「私は昨夜、シロウを悦ばせましたし、シロウに悦びを頂きました」

プッツン!!

頬を染めるライダーに、アルトリアからナニかが切れる音がする。

「シロウ、あなたと言う人は、カネとユキカだけでは飽き足らず、敵であるライダーを招き入れ、ふ、不埒な事をしたと言うのですかっ!!!」
ガオォォォォォォォォォン!!!


獅子、咆哮。

「し、知らない。ほ、本当だ。し、信じてくれ」

「衛宮、日頃の行いって言葉、知ってるか?」

女丈夫、般若面。

「む。……い、いや、でも、本当に、知らないんだってば」

士郎、超必死。

「ラ、ライダー! 俺はライダーと会うのは今が初めてなんだぞ! デタラメ言うのは止めてくれ!」

「そ、そんな……」

ショックを受けたかのように口元を手で覆い隠し、後ずさるライダー。

「シロウ」
「衛宮」


そんなライダーの様子に、士郎を批難するように睨むアルトリアと美綴。

「どうしろって言うんだよ?」

思いっ切り肩を落とす士郎。

「夢の中とは言え、あんなに激しく濃厚に愛してくれたのに……」

「「「ゆ、夢?」」」

「はい、それが何か?」

「げ、現実での話じゃないのか?」

「はい、夢を介して魔力を頂きました。……シロウの熱い魔力、最高でした」

ホゥと濡れた吐息を零すライダー。

「お、俺、む、無実、だよな?」

「「………」」

二人の怒りはまだ治まっていない模様。現実にナニしてないと言え、納得できるものではないだろう。まだ慎二、痙攣してるし。

「……む。と、ところで、ライダー」

「何でしょうか、シロウ」

「そ、そのライダーの魔力なんだけど、俺以外から集めたり……」

「シロウの魔力で充たされている私に、他の者の魔力など必要ありません」

「そ、そう」

「魂喰い」をしていないようだ。嘘を言っているようにも思えない。その事を口にすると拙そうなのでしないけど。

「ライダー、アルトリアとはどうしても闘わないとだめか? 出来れば、止めて欲しいんだけど」
「シロウの望みなら」

即答です。

「私はシロウのものですから」

「お、お前は、僕のものだろうがっ、ライダァァァァッ!!」

フラフラで、立つのも精一杯と言った感じの慎二が絶叫した瞬間、

「誰があなたのものですか」

パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパン!!!

ライダーの平手が慎二の左頬を打つ。慎二は左に一回転。先に動いていたライダーの平手が右頬を打つ。今度は右に一回転。そして、繰り返し。
……こんな往復ビンタ、見たことない。

ドサッ。

慎二が崩れ落ちた時、その顔はバスケットボール並みの大きさに腫れ、人間とは思えない有様であった。……生きてるか?

ピク、ピクピクッ。

痙攣しているから、辛うじて生きてはいるようだ。……限りなく瀕死の様だが。

「あ〜〜、そ、それで、ライダー。"偽臣の書"は何処にあるんだ?」

「それでしたら、慎二のパンツの中ですが」

「え゛」

確かに、股間が不自然な盛り上がり方をしているが。

「……俺が、どうにかしないといけないんだよな」

コクリ×3

「……うぃ」

ゴソゴソ。

慎二の股間から取り出した、ちょっとしっとりした本を小太刀で斬る。斬られた"偽臣の書"は翠の焔に包まれて消えた。

「つまらぬ物を斬ってしまった……」

思わず零れる某剣豪の台詞。気のせいか、小太刀の輝きが失われたような。

「それでは帰りましょう、シロウ。私達の愛の巣へ」

項垂れた士郎に声をかけるライダー。

「えっ、って、うおおおおっ!?」
「シロウ!!」
「衛宮!!」

ライダーに宙空に放り投げられる士郎。体の下にあるのは屋上ではなく、新都の街並み。……墜落死コースだ。

ドサッ。

と、思いきや天馬の背に腹這いで着地。ライダーも既に騎乗している。

「帰りますよ、ペガサス」

ライダーに応えるように羽ばたくペガサス。アルトリアと美綴がいるセンタービルの屋上が見る間に離れていく。

「待ちなさい、シロウ!!!」
「待て、衛宮!!!」


「お、俺に言われてもぉぉぉぉぉぉっ!?」

俺とライダーが家に帰りついて、そう間を置かず帰って来た怒れる獅子と化したアルトリアと、無表情・無口に俺を見据える美綴に、土下座する以外の術を俺は持たなかった。……理不尽な気がするのは俺の気のせいかな?

ちなみに、屋上に捨て置かれた間桐慎二は、翌朝、ビルの警備員に凍死寸前の処で保護、病院に収容された。………再起不能リタイヤ

「……お、おびょへてりょぉぉおぼえてろ……」


ライダーの事を始めとした諸々の問題は、朝になってからと言う事で一先ず落着した。
そうして、深夜の静けさに包まれた衛宮邸の浴室に明かりが灯っている。

バシャ!!

湯舟に浸かっている人影は、お湯を掬って、顔に叩きつけるようにする。

………もう、我慢なんて、してやるもんか

そう低く呟いた後、彼女は勢い良く湯舟から出て、浴室を後にした。


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