ネギとの戦いの後、エヴァンジェリンと茶々丸は超鈴音のラボに来ていた。レックスによってシステムに侵入された茶々丸に不具合が起きていないかを調べる必要があると、茶々丸本人が言ったためである。

「システムに異常は無し。大丈夫だよ、茶々丸」

「ありがとうございます、ハカセ」

葉加瀬――ハカセの言葉に礼と共に頭を下げる茶々丸。だが、一方でモニターを睨みつけるように見ていた2人がいた。1人はエヴァンジェリン。もう1人は超鈴音である。モニターに映し出されているもの。それはレックスの姿であった。

「く、いまいましい……こやつのせいであんなみっともない姿をさらすハメになったんだからな」

「でも、ネギ先生がなんであれを持っていたのか気になるが、あれを造った奴は私やハカセ以上に天才ネ」

怨敵を見るような目をするエヴァンジェリンの横で、超はそんなことを漏らした。わかるのだ。科学者でもある彼女には。

「それは本当か?」

「マジネ。まず、あのサイズで完全自立型……しかも、魔法の力を使わずに。更には茶々丸にハッキングを仕掛ける能力。運動性は茶々丸が勝ってるだろうが、それ以外は完全に負けてると見ていいヨ」

エヴァンジェリンに答えつつ、超は考える。レックスを造った人物のことを。茶々丸でさえAIの小型化には相当苦労したのに、あのレックスのAIは茶々丸以上に小型化されているのが容易にわかる。同時にその者の知識や技術力の高さが伺える。だが……どこかで歯車が噛み合わなくなるような、そんな感覚を受ける。その感覚に思わず歯を食いしばりそうになる超。

「一度、詳しく調べてみたいですねぇ〜」

「ふん、私達が勝ったら好きなだけ調べるがいい」

興味津々といった様子のハカセに、エヴァンジェリンは意味ありげな笑みを浮かべていた。彼女としては煮え湯を飲まされたレックスに仕返しがしたかったのである。そんなエヴァンジェリンに超はあることを思いついたようで、笑みを向け――

「なら、いい話があるけど、聞く気はないネ?」

そんなことを言い出すのだった。そんな様子を茶々丸は静かに見ており――



episode :05 『出来事の片隅では――』




「ふむ、プログラムを仕掛けておいて正解でしたね」

イヤホンを右耳に付け、そこから聞こえる音声にシンジはそんなことを呟いた。実は彼、レックスが茶々丸にハッキングを仕掛けた際、レックスにあるプログラムを茶々丸に仕掛けるように指示を出していたのである。
そのプログラムとは盗撮及び盗聴の為のもの。茶々丸が見聞きしたものを、こちらでも見聞き出来るようにしたものだ。プログラムの方は茶々丸の記録ファイルに紛れ込ませており、茶々丸自身色々と電波を出しまくってる上に本人が盗撮と盗聴用機械になっているとは思ってもいないだろうから、本人は元より誰かに簡単にバレることはまず無い。
それはさて置き、シンジはネギ達が集まる教会に来ていた。そこには仕事で参加出来なかった刹那と真名、刀子とシャークティに美空とココネの姿もある。

「すいません。勝手なことを……」

「まだ謝るには早いですよ。結果が出たわけじゃありませんし。それに今回のことはネギ君に任せると言いましたしね。ま、いい傾向で無いことは事実ですが……」

謝るネギにシンジはにこやかにそう答えた。ネギが父であるナギのことを知りたがっていたのはシンジも知っている。なので、気持ちもわからなくはなかった。今回はそれを我慢して欲しかったが……いきなりでそれを求めるのも酷かと考えている。

「ですが、戦って勝てるのですか? エヴァンジェリンに……」

「そのことなんですが……エヴァンジェリンさんのことですから、封印を解除して挑んでくるんじゃないかと――」

シャークティの疑問にシンジは人差し指を立てつつ答えるのだが――

「どういうことよ、それ?」

「力の封印は別物とお話しましたが、その封印は学園内にあるシステムを使っているようでしてね。それを止めることが出来れば、力の封印を一時的にですが解くことが出来るようなんですよ」

アスナの疑問にシンジはしれっと答える。ただし、この話は超とエヴァンジェリンの話を盗聴していたからわかったことだが。

「ですが、システムを止めるのは簡単ではないと……学園側もそれはわかっているはずですし……」

「確かにそうなんですがね。あらゆる面で手薄になる日があるでしょう? それを狙ってくるはずです」

訝しげな刀子にシンジは意味ありげな笑みを浮かべる。他の面々はなんのことかわからずに首をかしげていたが――

「学園では年に2回、システムの一斉メンテナンスの為に麻帆良を停電にするでしょう?」

シンジの次の言葉にシャークティと刀子、刹那があっという顔になる。

「どういうことなの?」

「この麻帆良には様々な結界や魔法が随時張られているのですが、そのほとんどがシステム化されているんですよ。しかしながら、システムである以上メンテナンスは必要となります。そのための停電なのですが……そうなるとどうしても結界や魔法の効果が弱まって、守りが緩くなりますからね。緩くなった分、魔法使い達が警備をするわけです。
ですが、そうなると今度はシステム側の警備が緩くなって、侵入しやすくなるわけでして。それを利用して、力の封印を解くおつもりなのですよ。エヴァンジェリンさんの力を封印している魔法もシステム化されてますからねぇ〜」

ハルナの問いにシンジは説明するのだが、やはりというか盗聴した内容を話しているだけにすぎない。だが、それを見せない辺り、結構な狸であったりする。それはともかく、力の封印が解けるということはそれだけネギが不利になるということだ。今回勝てたのは不意を突けたというのもあるが、力が封印されていたことが大きい。

「じゃあ、エヴァンジェリンさんが戦いを挑んでくる日は……」

「十中八九、大停電の日でしょうね」

夕映の問い掛けに、シンジはうなずきつつ答える。実際はそれを決意してるエヴァンジェリンの声を聞いてたりするんだが……

「どうするの……ネギ……」

不安そうな顔をしながら、アスナは問い掛ける。心配になってきたのだ。ネギは勝てるのかと――

「やります。これが自分のわがままだというのは……迷惑を掛けているのはわかっているんです。でも、知りたいんです。お父さんがどんな人だったのかを……」

決意を秘めた顔を、ネギは見せていた。わがままだというのはわかってはいる。でも、これだけはどうしても譲れなかったから――それに対し、シンジはうんうんとうなずいていたりする。今回のことでネギが失敗するのはほぼ目に見えていた。が、それはそれで良いとシンジは考える。その方が学ぶものが多いと考えていたからである。ま、ただ失敗させるわけにもいかないので、裏で仕掛けをするつもりであるが――

「で、どなたを連れて行くつもりなので?」

ふと、シンジがそんなことを聞いてみる。今回のことでアーニャとあと1人を連れて行くことになっている。順当でいけば、楓か古菲のどちらかだろうが――

「そのことなんだけど……アスナちゃんを連れて行ってはどうかしら?」
「紫さん!?」

シンジの横でスキマから姿を見せる紫。それにネギだけでなく、アスナ達も驚いていたが――

「って、私が!?」

アスナがそのことに気付いて、自分を指差しながら驚いていた。

「なんでまた?」

「ほら、アスナちゃんは例の能力を持っているでしょ? それで自分で自分を守れるようにした方がいいと思うのよ」

「例のって……ああ、あの、むぐぅ!?」

シンジの問い掛けに紫は楽しそうに答える。それでそのことを思い出したこのかがそれを言おうとして、スキマから伸びる手に口を塞がれてしまう。

「言ったでしょ? 秘密にしておいてと」

「まぁ、確かにわからなくもないですが……今から鍛えるにしても、日数が足りないですよ?」

「あ、でも……あれなら――いや、でもなぁ……」

このかを見る紫にシンジはそういうのだが、カモが何かを思い付いたのか、そんなことを言い漏らす。

「なになに? 何かいい方法でもあるの?」

「あ、いや……流石にすぐに戦えるようになるってわけじゃねぇんだが……仮契約パクティオーってのがあるんだよ。魔法使いの従者ミギステル・マギの契約のお試しみたいなもんなんだがな。
時間制限はあるが、従者になった奴に魔力を供給することでパワーアップ出来たり、アーティファクトっていう魔法具を手に入れることも出来るんだよ。ただ、アーティファクトは必ずしも武器が手に入るわけじゃねぇし、パワーアップつっても力が強くなるとか、少し頑丈になるってだけだしな。それに――」

何か面白いものを見つけたとばかりに問い掛けるハルナに、カモは腕を組みつつ答えるのだが――

「契約の方法が、今はキスしかなくてよ……」

「へぇ、そうなんだ……て、キスぅ!?」

カモの話を聞いて、それなら自分でも出来るかもと思い始めた矢先、その一言にアスナは驚く。そのことを知らないシンジと紫、ネギとアーニャ以外の面々も驚いていたけど。ついでにのどかは真っ赤になってたりする。

「な、なんでキスなのよ!?」

「いや、オイラ達オコジョ妖精は仮契約の魔法を使えるんだけどな。キスで契約を交わす方法のしか知らねぇんだよ。他にもやり方がないわけじゃないんだが……そっちの方は高度なものになっちまってな。多分だが、麻帆良でそれが出来る奴はいねぇんじゃねぇかと」

「それに……例え仮契約をしたとしても、戦えるわけじゃないですしねぇ」

慌てるアスナにカモも困ったように答え、シンジもやれやれといった様子でそんなことを言うのだが……それにアスナがカチンときてしまったようである。

「それって、どういうことですか?」

「カモさんもさっき言ってたでしょう? パワーアップするといっても力が強くなるくらいだって? 力が強くなった程度で戦えるわけじゃないんですよ? そうですねぇ……重量挙げと柔道。そのくらい違うといえば、おわかりになると思いますが」

怒ってますよといった様子のアスナに、シンジは人差し指を立てつつ答えた。柔道は力だけでなく、相手の重心利用する技術が必要なのである。重量挙げもバーベルを上げる技術も必要となるが、それとはまったくの別物なのだ。アスナは勘違いしてるようだが、戦いとは力が強ければいいとか、そんな単純なものではない。なのだが、自分には出来ないと言われたように感じたアスナは、怒りを強めていた。

「ネギ! 仮契約って奴をするわよ!」
「え、ええぇ!?」

「あの……人の話、聞いてましたか?」

「言い方が悪かったようね。でも、これはこれでちょうどいいかもしれないわ。カモちゃん、やって頂戴」

「は、はぁ……」

アスナの言葉にネギは驚く中、呆れるシンジとなぜか楽しそうな紫。カモも言われて仕方なく魔方陣を描いていく。それを興味津々といった者もいれば、呆れたように見てたり、真っ赤になってことの成り行きを見ている者がいたけど。

「出来たぜ。この中でキスをすれば、契約完了だけど……本当にいいのかい?」

「ええ。それに――」

心配そうなカモに対し、アスナはどこか決意を秘めた顔をする。確かに怒り任せではあるが、ふと思い出されるのはネギの鍛錬風景。あんな真剣な顔をするネギの目的というのはとっても大事なんだと思う。それをただ見てるだけというのは、どこかツラかったから――

「あの、アスナさん……やっぱり、こういうのは――」
「うっさい! それに……いいからやるわよ!」 「むぐ!?」

なんとかなだめようとするネギであったが、アスナは何かを言おうとして、言うことが思い浮かばずに勢いでキスしてしまう。と、同時に魔方陣が輝き出し、1枚のカードが現れる。大きな剣を持つアスナが描かれたカードが――

「よっと、終わりだぜ」

「ふぅ……」

現れたカードをカモが飛びつく形で取り、その間にアスナは深いため息を吐いたが……そこで気付く。自分に向けられる様々な視線を。多くは呆れた視線だったが、中には興味津々といったものや、羨ましいとか……中には明らかに意味深げな笑みを浮かべてる者もいる。ま、そんな視線にさらされたおかげで、アスナハ自分のしたことに気付いて――

「か、勘違いしないでよ!? わ、私はネギだけに戦わせるわけにはいかなかったから――」

「はいはい、ツンデレはそこまでにしてくださいね」
「違うわよ!?」

シンジのツッコミに言い訳をしていたアスナは思わず怒鳴ってしまう。顔は真っ赤だが。

「ほらよ。これが姉さんのカードだ。「来れアデアット」で、アーティファクトを呼び出せるぜ」

「え、あ、そなの……それじゃあ……「来れアデアット」!」

カモからコピーされたカードを乱暴に受け取りながら、言われた通りに発動させて――

「な、なによこれぇ!?」

現れたハリセンに驚くハメとなった。見ていた面々は感心してたり、呆れたり、驚いたりしてたけど。

「な、なんでハリセンなのよ!?」
「いや、それはオレっちにも……」

「それに関しては詳しい方にでも聞いた方がいいでしょうな。それはともかくとして、明日からがんばりましょうね」

「へ?」

慌てるアスナであったが、カモは困った顔をしながら答える。実際、アーティファクトに関しては詳しくないので、しょうがないのだが。と、シンジがアスナの肩に手を置きつつ、そんなことをのたまったりするけど。

「特訓ですよ。成り行きとはいえ、戦いのイロハを知らずに戦わせるわけにはいきませんからねぇ〜。 刹那さん。そういうわけですのでお願いします。あ、最初はコテンパンにしてくださいね。殺気を込めて」

「は? あ、いや……なぜ、そんなことを――」

「そ、そうよ!? なんで、特訓でコテンパンにされなきゃならないのよ!?」

シンジの言葉に刹那は戸惑い、アスナは慌てる。特訓は仕方ないにしても、コテンパンにされるのは理不尽にしか思えなかったのだが――

「アスナさんは戦いというのを勘違いなされてるようですしね。そこら辺を矯正する必要があるんですよ。それにエヴァンジェリンさんのあの様子だと、ただ事じゃ済まなそうですしねぇ〜。今の心構えじゃ、絶対に役に立ちませんよ? ま、怪我をさせろって言うわけではありませんから、そこはご心配なく」

「確かにそうよね。じゃ、私も協力しようかしら?」

「手加減はしてくださいね。あなたの場合、本気でシャレになりませんから」

シンジの話に紫は楽しそうに協力を申し出るが、そこは念を押されてしまう。まぁ、能力が無くとも素で強いのだから、当然とも言える配慮だが。一方で話を聞いたアスナは顔を引き攣らせていたが、刹那は半ば納得していた。アスナは確かに戦いを知らない素人である。
それにアスナは気付いていないが、今まで彼女が戦いだと思って見てきたものは、実の所お遊び程度のものでしかない。本当の戦いとは……命のやりとりとはあんなものではないのだ。まぁ、だからといって学友を叩きのめすのに抵抗が無いわけではないのだが……

「ま、そういうわけですので、明日からがんばりましょう」

と、シンジは言うのだが……アスナはこの時、自分の行動を後悔し始めてたりする。
そんなこんなで、次の日からエヴァンジェリンとの対決に備えて特訓が始まった。始まったのだが――

「あつつ……」

「だ、大丈夫ですか、アスナさん!?」

放課後、アスナは刹那と特訓していたのだが……アスナはアーティファクトのハリセンで、刹那は竹刀で打ち合いをしていたのだが――アスナのハリセンは刹那に当たることは無く、逆に一方的に打たれるハメとなった。当然とも言える結果だが、刹那は手加減しているのでこれで済んでるとも言える。
なお、この場にいるのは2人以外にこのかにのどか、夕映にハルナ、それにレックスとカモである。楓はまだ来ておらず、刀子やシャークティ達は仕事の都合で来られないとのこと。古菲とまき絵は部活終了後に来ることになり、ネギとアーニャは学園長に呼ばれ、シンジはなにやら用があると同様に不在であった。レックスとカモがいるのはアスナの特訓の様子を見る為である。

「ところでさ、ネギ君とはだいぶ違うようだけど、なんで? まるでスパルタじゃん」

〈ネギは幼少の頃から基礎を積み重ねている。君達には大したことに無いように見えるだろうが、実際はそうではない。事実、ネギとアスナが魔法抜きで戦っても勝つのはネギだろう。ただ、シンジ殿の話ではアスナの身体能力はその年齢では高い方らしい。だから、少しでも戦えるようにするとのことだそうだ〉

「確かに……アスナさんは無意識に気を使っている節がありますね」

ハルナの疑問にレックスが答え、それに同意するように刹那がうなずいた。そう、アスナの身体能力の高さは無意識に気を使っていることにある。なのだが……刹那には腑に落ちない点が1つあった。それはアスナが妙に気の扱いに慣れているような感じがするのだ。
確かに気の存在を知らない者が無意識で気を扱うことが無いわけではない。でも、アスナの場合はどこか慣れているような感じがするのだ。慣れているというのは、気の扱いに長けているとまでいかないものの、それに近い感じで気を使っている感じがする。それは気を知らない者にはまず出来ないものなのだが……

「それにアニキは旦那に連れられて、あちこちの戦場を見てるからな。戦いに関しては姉さんよりも知ってるぜ」

「戦場……ですか?」

カモの話にのどかは驚いたような顔をしていた。それは夕映やアスナ、刹那も一緒に驚いてたけど。まぁ、自分達よりも若いネギが戦場に行くというのは、彼女たちには驚きであったのは事実だし。

「なぜ、戦場に?」

〈シンジ殿の話では、ネギの目的には必要ななことらしい〉

「目的? そういえばさ、ネギの目的ってなんなの?」

夕映の疑問にレックスが答えるのだが、その中に出てきた言葉が気になったアスナがふと問い掛ける。 ネギが言っていた目的。良く聞くのだが……それがなんなのかを聞いていなかった。だから、気になったのだが……

〈本来はネギの口から言うべきことだろうが……ネギの目的は父上に会うことだ〉

「は? それだけ? それだけで特訓とかしてんの、あいつ!?」

レックスの話にアスナは少し驚いた。どんな大層な目的があると思ったら、それが父親に会うためとは……それだけなら、別に鍛錬など必要無いように思えたのだ。

〈あいにく、私も詳しい話は知らないが……ただ、シンジ殿の話だとネギの父上に会うにはかなりの危険を伴うそうなのだ〉

「はぁ!? あ、会うだけでなんで危険なのよ!?」

レックスから返ってきた言葉にアスナは驚かずにはいられなかった。それはこのか達も一緒であったが。なぜ、父親に会うだけで危険が伴うというのか? それが理解出来なかった。

〈私も詳しい話は知らないと言っただろう? ともかく、その危険に対処出来るように鍛えているのだ〉

レックスはそう言うのだが、アスナ達は納得が出来ないといった顔をしていたが、刹那だけは首をかしげていた。ネギの父親であるナギ・スプリングフィールドは英雄であり、同時にすでに亡くなった人物と聞いている。亡くなった人物に会いに行くというのはどういうことなのだろうか? それが不思議でならなかった。

「お、やっているでござるな」

そんな時、楓がシュタっと手を上げながらやってくる。

「あれ? 楓さん1人?」

「そうでござるよ。それとシンジ殿の伝言でござる。「今の調子で続けるように」だそうでござるよ」

「あいつ……いつの間に見てたのよ?」

〈私がシンジ殿に動画付きで報告したからだ〉

ハルナの問いに楓はにこやかに答えるのだが、その中で出てきた疑問にアスナがツッコミ、それにレックスが答えていたりする。そのせいで、アスナはレックスを睨むハメになったが。

「それでどうしますか、アスナさん?」

「ん、続けるわ。成り行きとはいえ、やるって言ったのは自分だしね」

刹那に答えつつ、アスナは立ち上がってハリセンを構えた。刹那もうなずくと竹刀を構える。再び始まる打ち合い。それはネギ達が来るまで続けられるのであった。



さて、ネギとアーニャは学園長室で学園長の質問に答えている所だった。聞かれるのはここ最近のことや回りの人のこと。シンジから「多分、学園長辺りが自分のことを聞いてくると思うので、それとなく誤魔化してください」と言われていたので、そのことだろうと当たり障りの無い程度に答えていた。
学園長も直接的なことは聞かず、遠回しな質問のみで留めていた。レックスのことを知りたかったが、それを言えば自分達があの場を見たことがバレてしまうだろうし、下手をすればエヴァンジェリンに自分が画策していると気付かれる可能性があったためである。ネギ達には自分が関わっていると知られているのは気付かずに。

「ふむ、わかった。もう、戻ってよいぞ」

「はい」 「それでは」

学園長の言葉に頭を下げてから、学園長室を出るネギとアーニャ。それから少しして、高畑が学園長室に入ってきた。

「ネギ君の方はどうでしたか?」

「さっぱりじゃよ。ま、直接的に聞かなかったせいでもあるがの」

高畑の問いに学園長はため息混じりに答えた。少し強引に行くべきかと考えたが、それが元でエヴァンジェリンに知れるのもどうかと考え直していたりする。

「で、そちらの方は?」

「こちらもさっぱりです。噂だけが行きかっているようなものですからね」

学園長の問いに高畑は首を振って答えた。最近、麻帆良では妙な噂が飛び交っていた。それは見知らぬ青年を見たというもの。それだけなら高畑が調べる必要は無いのだが、その噂には続きがあった。その青年は気が付けばどこからとも無く現れ、気が付けばいなくなっているというものである。実際に見たという者がいたため、この噂は瞬く間に広がり……流石におかしいと感じた学園側が調査を始めたのだ。
ちなみにだがこの青年を見ることが出来たら、その日一日は幸運になれるという話が混じってたりするけど。

「そうか……敵対者の可能性は?」

「僕の勘ですが、半々ではないかと……なにしろ、今の所噂のみですからね。実際にいるかどうかも怪しいですし……例え実在してたとしても、何が目的なのかわかりませんしね」

学園長の疑問に高畑は笑みを交えて答えていた。といっても、内心は焦っている。あまりにも実態が無さすぎるからだ。その青年が敵対者だとしたら……そう考えると、焦らずにはいられなかった。

「ふむ、ただの噂であれば良いがの……」

どこか遠い目をしながら、学園長はそんな一言を漏らす。本当に何事も無ければ……それが自分達の斜め上を行く感じで裏切られることに、2人はまだ気付いてない。
で、その噂の元であるシンジは何をしてるかといえば――

「ええ、そうです。私としては互いの為かと……ええ……はい、そうですね。では、今後ともよろしくお願いいたします」

麻帆良の喫茶店のオープンテラスの席に座り、携帯で話し合いを終えたばかりであった。携帯を閉じ、懐にしまってぬるくなったコーヒーを一口。そこにシンジの席に座る者が1人。シンジが顔を向けてみると、それは刀子であった。

「まったく……あなたのこと、噂になっていますよ。学園側にあなたのことが知られたらまずいのではないのですか?」

「なに、その心配はもうしなくても良さそうですよ」

以前からその辺りの話を聞いていた刀子が気になって問うのだが、シンジはふっと笑みを浮かべて答えていた。

「どういうことですか?」

「なに、少なくとも学園側は私を拘束することが出来なくなったということです」

首をかしげる刀子にシンジは笑みを浮かべつつ答えるのだが……彼女には意味が理解出来なかった。何かをしたのは間違いないだろうが……その何かがまったくもってわからなかったのである。

「そうですね。ここは学園とはいえ私立である以上、営利団体であることは否めませんからねぇ。その手の類を押さえられたらどうなりますかね?」

楽しそうにシンジは語るのだが、刀子にはやはりというかいまいち理解しきれていなかった。シンジが何をしたのか? それはいずれ話す時が来るとして、もし彼女がそれを理解した時、きっと思い知ることとなる。彼がいかに恐ろしいのかを……

「さてと、アスナさん達の様子を見てきませんと……」

「それなのですが、ネギ先生達はエヴァンジェリンに勝てるのですか?」

立ち上がるシンジに刀子がそんなことを聞いてくる。気になるのだ。本気になったエヴァンジェリンの実力がどれほどなのかわからないし、そんな彼女にネギ達が敵うのかという不安もある。

「ああ、それですか……たぶんですが、ネギ君がエヴァンジェリンさんと戦うことは無いと思いますよ?」
「へ?」

だが、返ってきた言葉はまったくの予想外の言葉だった。だってそうだろう。ネギとエヴァンジェリンの対決なのだから……

「ただ、今のままじゃ確実とは行かないでしょうが……確実にするためにもう一押ししますかね」

どこか楽しそうに語るシンジはどこかへと歩いていく。だが、その言葉の意味を理解出来ていない刀子は呆然とその後姿を見送るしか出来なかった。

「シンジさん……あなたは何を……」

その呟きの答えは……当日、いくつかの驚きをもって知ることとなる。



エヴァンジェリンとの対決までは休日を挟むため、ネギ達は幻想郷でエヴァンジェリン対決に見立てた試合をしていた。ただ、場所は博麗神社から離れた原っぱである。まぁ、これからすることは博麗神社じゃ確実に被害が出るからなんだが……というのも――

「ちょ、これってありなの!?」

「あら? これでも手加減してる方なのよ?」

慌てるアスナに紫はのん気な声で答えていた。何をしてるのかといえば紫をエヴァンジェリン、藍を茶々丸に見立てて試合をしているのだが……そこでアスナは震え上がっていた。なぜ? それは紫から感じる殺気と威圧感のせいだ。存在感の方は慣れたアスナであったが、こうして威圧感と殺気を向けられたのは初めてだ。感じる恐怖に体の震えが止まらない。
まぁ、無理もない。紫は幻想郷では最強と謳われる妖怪であり、そんな彼女が放つ威圧感と殺気が生易しいわけがない。それはこのか達もアスナと同じようで、みんな恐々といった顔をしている。ちがうのは3人。ネギとアーニャ。それにどこから出したのか椅子に座ってコーヒーをのん気に嗜むシンジである。

「あ〜、アスナさん。エヴァンジェリンさんも当日はそれくらいやると思いますよ?」

なんてことをのん気に言うくらいにシンジは余裕であった。ま、彼にしてみれば慣れたものであるし。

「そ、そんなぁ!?」

驚くアスナだが、シンジは多分大丈夫だろうと感じている。というのもエヴァンジェリンは教室の中でも結構きつい殺気を放っている。というのも不本意なやり方で負けてしまったのだ。再戦でその雪辱を晴らそうとしているが、それまでは屈辱に耐えなければならない。もっとも、そう考えているのはエヴァンジェリンだけであるが。
ともかく、そのせいか殺気を放っているのである。殺気を知らないクラスメートが思わず怖さを感じるくらいに……そんな中でもアスナは平然としていたが。まぁ、エヴァンジェリンが本気で無かったことと、それと比べたら紫の存在感の方が強かったからだが……ただ、同時にそれは今後の課題ともなる。
というのも下手に殺気に慣れてしまうと、それに対する危機感が薄れてしまう可能性があるのだ。殺気に対する矯正を気配を感じ取る訓練と一緒にした方がいいなと考えつつ、シンジは試合を眺めていた。

「アスナさん、大丈夫ですか?」

「ね、ネギは平気なの?」

「平気ってわけじゃないですけど……ともかく、がんばりましょう」

ネギの様子にアスナは驚いていた。というのも、怖がっている様子は無い。アーニャも表情は硬いが、怖がってるようには見えなかった。2人の場合、シンジによっていくつもの戦場を見せられてきた。そこでは実際の戦いを見ただけでなく、様々なものを感じさせられたのだ。それに――

「ま、とりあえずアスナは私と一緒に藍さんの相手に集中して。いい?」

「わ、わかったわよ!」

アーニャに言われて、アスナはなんとか自分を奮い立たせた。そして始まる試合。結果は……ま、ネギ達の敗北とだけ言っておこう。

「あんなの勝てるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

アーニャがこんな感じだったし。



「調子はどうだ? ネギ先生?」

大停電3日前。アスナやこのか、刹那とアーニャと共に歩くネギに、横に茶々丸を立たせるエヴァンジェリンが声を掛けてきた。

「可もなく不可もなく……といった所ですね」

それにネギは振り返って答えるが……実の所、本音である。まともにぶつかり合うのは分が悪いとわかっているので、どうやって自分達のペースに持っていくか? それが見えてこないのだ。なので、弾幕使っちゃおうかと考えたりもする。が、そのことに気付いてないエヴァンジェリンには気に入らなかったようで、明らかに不機嫌といった顔を見せていたが――

「ふん、まぁいい……それで3人目は誰なんだ?」

「ああ、それは――」 「私よ!」

不機嫌なままエヴァンジェリンがそんなことを聞いてくる。それにアーニャが答えようとして、その前にアスナが胸を張って答えてしまった。途端に驚くエヴァンジェリンにネギとアーニャ。ちなみにネギとアーニャの場合、驚きの理由が異なるが……

「貴様が……だと?」
「そうよ!」

胸を張るアスナであったが、最初驚きで見ていたエヴァンジェリンは、理解してくると表情が変わってきた。笑いへと――

「く、くく……は、はははは、お前が……本気なのか!」

「なによ、悪い? 言っとくけど、笑っていられるのも今のうちなんだからね!」

笑うエヴァンジェリンを見て、むっとしたアスナはそう言ってしまうのだが……その後ろではネギとアーニャがあちゃ〜といった顔をしていた。

「これはまた、見くびられたものだ。いいだろう、せいぜい首を洗って待っているんだな。いくぞ、茶々丸」

「はい」

エヴァンジェリンは茶々丸と共に笑いながら去っていった。それを悔しそうに見ていたアスナはネギ達に振り返り――

「好き勝手言って……こうなったら、絶対に勝つわよ……って、どうしたの?」

そこでネギ達の様子に気付き、きょとんとしてしまう。

「まったく、余計なことして……」
「え?」

苦虫を噛み潰したような顔をするアーニャだが、アスナはなんのことかわからず頭の上に?マークを浮かべていた。

「アスナさんのことはエヴァンジェリンさんには内緒にしておきたかったんです。確かにアスナさんは思った以上に戦えていますけど……それでも勝てるかと聞かれたら……」

「え?」

「だから、あなたのことは内緒にしたかったのよ。不意打ちみたいなもんだけど、そうでもしないと勝てそうに無いもの」

困った顔をするネギとアーニャ。アスナは未だに理解出来てなかったが……

「もしかして私、余計なことしちゃった?」

「ええ……まぁ……」

まずいことをしたのではと思ったアスナだが、ネギはそれに困った顔をしながら肯定してしまう。それを聞いて、途端にアスナは顔を引き攣らせてしまった。

「せっちゃん……ネギ君達、大丈夫やろか?」

「さ、さぁ……」

この様子を見ていたこのかと刹那は、一抹の不安を感じずにはいられなかった。



大停電当日、3時間前――

「よし、これでハッキングされることは無いと思うよ」

「ありがとうございます」

超達のラボで茶々丸は調整を受けていた。決戦当日にレックスのハッキングを受けないとも限らないため、その対策を施すためである。

「本当に大丈夫なんだろうな?」

「同じ過ちは繰り返さないヨ。プロテクトを設けたし、茶々丸でも防御出来るようにしたしナ」

睨むように問い掛けるエヴァンジェリンに、超はにこやかな笑顔で答えていた。何しろ、考えうるハッキング対策を施したのだ。簡単に乗っ取られることにはならないだろうという確信がある。

「そうか。行くぞ、茶々丸」

「はい。ありがとうございました」

 エヴァンジェリンに言われて、茶々丸は頭を下げてから共にラボを去っていった。

「ところで……ネギ先生は大丈夫なんですかね?」

それを見送ったハカセがそんなことを聞いてくる。全てではないがエヴァンジェリンの実力を知る彼女としては、やり過ぎないかと不安になったのだ。

「たぶん、大丈夫ヨ。エヴァンジェリンもわかってるはずネ」

「ほほぉ。アクセス権の無いものや強制的なアクセスを一方的にシャットアウトですか……多少不便ではありますが、ハッキング対策としては有効でしょうな」

超が答えた時、そんな声が聞こえてくる。その声に思わず互いの顔を見てしまう2人だが、すぐさま声が聞こえた方へと顔を向ける。そこにはモニターを見つめる見知らぬ青年が立っていた。

「あなた、誰ですか……どうやってここに……」

戸惑うハカセ。何しろ、登録された以外の人物がここに入ることはまず出来ない。出来たとして、自分達に気付かれないなんて事は無いのに――

「先に2番目の質問に対する答えですが、魔法に頼り過ぎるのもそうですけど、機械に頼りすぎるのもどうかと思いますよ? 人が造り、扱う物である以上、どうにかすることは可能ですからね。それはそれとして、初めまして。私は……まぁ、レックスの製作者とだけ答えておきましょう」

なんてことを言いながら、頭を下げつつ自己紹介をする青年ことシンジ。超とハカセはそれを呆然と見ていたが……

「レックス……って、あなたがあのロボットを!?」

「そうです。それであなた方が茶々丸さんを造られた葉加瀬聡美さんと超鈴音さんですね? 茶々丸さん、いいガイノイドですねぇ。そんな茶々丸さんを造ったお2人……というか、超さんにお聞きしたいことがあるのですが……」

ハカセの疑問に答え、茶々丸のことを褒めながらもシンジは超へと顔を向け――

「あなたは何者ですか?」

穏やかな顔のまま、直球でそれを聞いてきた。途端に超は睨みつけるかのような顔となり、ハカセは戸惑いながら2人を見てしまう。確かに超のことを調べればおかしいと思われてもしょうがないだろう。だから、シンジの問いも当然あって――

「と、聞きたい所ですが、茶々丸さんのおかげで大体の予想はついているんですよね」

だが、次に出た言葉に超とハカセは「へ?」っという顔になってしまった。あまりにも唐突に、予想を斜め上を行くことだっただけに。

「茶々丸さんに使われている技術はどれもが革新的に見えますが……実の所、その多くは現在ある技術の延長線上のものでしかありません。数年から数十年あれば開発されるものばかりです。では、問題。これはどこから来たのか? と、考えたら、行き着く答えはそう多くはありませんよ」

にこやかに話すシンジだが、超は内心焦っていた。まさか、茶々丸が原因でバレるとは思ってもいなかったのだ。シンジの言う通り、茶々丸に使われている技術のほとんどは自分が持ってきたものだ。なのだが……そこからバレるとは思いもしなかった。確かに見る者が見ればわかることではあるが……考えていなかったことだけに、超にしてみればマズイ展開である。

「それが事実として……どうするつもりネ?」

「あなたの目的が気になる所ですが……それは別の機会にいたしましょう。今回はあなたに会うのが目的でしたので」

超の問い掛けにシンジはにこやかに答え、歩き出してラボを去ろうとした。

「あ! その、お名前は……」

「そうですね。それも含めて、今日にでも少し詳しいことをお話しすることになると思いますよ。では」

呼び止めるハカセにそう答えてから、シンジはラボを去っていた。残された2人はただ、重苦しい雰囲気に包まれてしまう。

「何者……なのでしょうか?」

「さぁナ……ただ者じゃないのは間違いないヨ。レックスと呼ばれたロボットに使われてる技術も含めてナ」

ハカセが漏らした疑問に、超は苦虫を噛み潰した顔をしながら答えていた。そう、レックスに使われている技術はありえない。それが2人が出した結論であった。なぜなら、あのサイズで完全自立というのはありえなかったのだ。だが、同時に2人は知らないだけである。AIはこことは別の世界の技術であり、レックスの体の方も”銀河”では標準的な技術であることに……まぁ、多少シンジの手が加えられてはいるが。
この時、超は言い知れぬ不安を感じていた。何かがおかしいという……不安。それを押さえ込もうとするが、この時考えるべきであった。シンジが何者であるかを。超は気付いてはいない。本来、来るべきだった場所とはまったく違う場所に来てしまったことに――

さて、その頃エヴァンジェリンは自分が住むログハウスに戻る途中であった。顔見れば上機嫌なのが良くわかる。何しろ、懸念していた3人目が戦いは素人であるアスナだったのだ。楓か古菲辺りと考えていただけに、彼女にしてみれば嬉しい誤算である。それにネギを徹底的に打ちのめす策も講じてある。あの時は不意を突かれたが、今回は――それを考えると笑みが止まらない。

「おや、偉く上機嫌だね」

「真名か……」

そんなエヴァンジェリンに買い物袋を持つ真名が声を掛けてきた。

「その様子だと、そろそろなのかな? ネギ先生との決闘は?」

「知っているのか?」

「ネギ先生とは色々と付き合いがあってね。ああ、別に手を出すつもりは無いさ。ネギ先生に依頼されてないしね」

真名との話し合いにエヴァンジェリンは「そうか」と返す。真名とネギに付き合いがあったのは驚きだが、邪魔をしないというのならばそれでいいと考えたのだ。

「そうだ。これは忠告だ。下手なこと考えずに戦った方がいい」

「なんだと?」

だが、それは真名の一言で覆され、エヴァンジェリンは途端に不機嫌な顔となった。

「言葉通りだよ。生半可な策は通じない。悪いことは言わない。下手なことせずに真正面からやった方がいい。そっちの方がまだ勝ち目があるからね」

「それじゃあ」と言い残し、真名は去っていく。残されたエヴァンジェリンは震えていた。怒りで……当然だろう。ネギには敵わないと言われたも同然なのだから……と、エヴァンジェリンは考えている。だが、真名は”ネギに敵わない”とは一言も言っていないのだが……そのことにエヴァンジェリンは気付かない。せっかく良い気分が今ので台無しになった怒りで。まぁ、例え冷静であっても気付けたかはわからないが。

「ふ、ふふ、ふふふふふふ……面白いじゃないか、坊や……ならば、見せてやろう……悪というものがどんなものかをな!」

声高らかにそう言い放つエヴァンジェリン。だが、気付いてはいなかった。すでに策というクモの糸に絡め取られていることに……

さて、真名はといえば寮へと向かう道を歩き……その途中、ベンチに座って本を読むシンジの所で立ち止まり、その隣に座る。

「言われた通りにしたよ。でも、いいのかい? 余計、ネギ先生に勝ち目が無くなると思うけど?」

「確かにネギ君が戦うのならば、そうでしょうねぇ」

その疑問に本から目を離さずにシンジは答えるのだが、真名は意味がわからず首を傾げるが……徐々に理解し、感心したような顔付きになる。

「いいのかい? そんなことをして」

「確かにそのままならばルール違反でしょうがね。でも、相手がルール違反を犯したのなら、こちらもルール通りにやる必要が無いだけです」

面白そうなものを見つけたとばかりの顔をする真名に、シンジはやはり本から目を離さず答える。本当にひどい人だ。真名はそう思う。シンジがやろうとすることは、ネギの意思を踏み潰すことにもなるだろう。でも、それでも見せなければならない。戦うというのはどういうことなのかを。

「アスナが怒ると思うけど?」

「彼女にも見てもらわないとね。例え理解出来なくとも、そういうものもあるというのを知っておくのは彼女の為にもなるでしょうしね」

本を閉じつつ答える。シンジの表情は穏やかなのだが、どこか冷めたもの。その表情に真名は震え、下腹部が熱くなり始める。そう、これだ。シンジのこの表情……それが真名が求めてやまないもの。あの時、シンジに助けられた時、真名は魅入られたのだ。”あのシンジの姿”に……

「さてと、私も準備しませんとねぇ……」

そういって、ベンチから立ち上がって去っていくシンジ。真名はその後姿を淫靡な瞳で見つめるのだった。



あとがき

DRT:というわけで、エヴァ編中編いかがでしたか〜?
シンジ:なぁ、これって前後編じゃなかったっけ?
DRT:いや、後編が思ったより長くなったんで、前中後編にしたの。
シンジ:いいのか、それ?
DRT:どうなんだろうね?
シンジ:おいおい……(汗)
DRT:で、次回はいよいよシンジ君が表舞台に登場です!
シンジ:でも、これって完全に悪役だよな? 俺……
DRT:はははは、気にしちゃいけないよw
シンジ:するわ!!
DRT:ていうか、そんなもんじゃん。君。
シンジ:うう、悪かったな……
DRT:てなわけで、次回をお楽しみに〜


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