立派な魔法使いマギステル・マギ歩き続ける悪魔デビル・ウォーカー』  第6話『半悪魔 日常の中での出来事』



さて、期末試験が終わって数日……あと少しで春休みというある日――

「カズヤ! ボクに戦い方を教えて!」

「断る」

頭を下げながら必死の表情でお願いしてるネギだったが、和也は即座にあっさりと断る。ちなみにこの間、1秒にも満たなかったりする。で、それを聞いてネギは泣きそうになってるが、和也は我関せずといった感じで小指で耳の穴をいじっていた。言い忘れたがここは麻帆良の外れにある丘。ネギが話があるといって和也をここに案内し、今の状況になったのである。
んでもって、そのことに怒り出す者達がいた。アスナとアーニャである。ちなみにミーナリア、このかと刹那、楓と古菲もここにいる。期末試験の勉強中に楓と古菲にはある程度事情を話したのだが、それで興味を持ったらしく、こうして良く顔を出すようになったのだ。

「ちょっと! こんな必死にお願いしてるのになんで断るのよ!!」

「そうよ! 何考えてんのよ、この悪魔!!」

物凄く怒った表情で迫ってくるアスナとアーニャ。で、和也はといえば気にした風もなくため息を吐いてたりする。

「と言われてもな。一応、断る理由があるんだが」

「なによ、理由って?」

「まずはめんどくさい」

まだ怒ってるアスナの疑問にあっさりと答える和也。ただ答え方に多大な問題があったようで、アスナとアーニャの怒りは倍増してたが。

「あんたねぇ……」

「まぁ、それが主な理由なんだが……後は悪魔と人の違いもあるな」

物凄く睨んでるアーニャを気にせず和也は答えるのだが……このことにこのかが首をかしげていた。

「それって、どういうことなん?」

「体の造りや魔力なんかの使い方。それが違うってことさ。悪魔がしてることは、人にしてみれば無謀ってところか……」

あごに手をやりつつ話す和也だが、刹那と楓にミーナリア以外は良くわからなかったようで首をかしげている。

「あの、良くわからないんだけど……」

「説明とかは苦手なんだがな。そうだな……アスナ、お前犬と同じ立ち方して同じスピードで走ること出来るか?」

「出来るわけないでしょ……あ、なんとなくわかった」

疑問を表情に出してるアーニャの言葉に和也はそんなことを言い出し、アスナは文句を言いそうになって気付く。
みなさんは犬のように4つ足で立ち――もちろん膝を付かずに――走ることは出来るだろうか? しかも、犬と同じ速度で。誰もが無理と答えるだろう。まぁ、当然である。人と犬とでは骨や筋肉の構造からして違うのだ。それで犬と同じ立ち方をし、同じ速度で走れというのは人には明らかに無謀であろう。和也が言ってるのはこれと同じことなのだ。

「俺は半分は悪魔だからな。だからこそ出来ることがあるが……それをネギにやらせたら、一生もんの障害残るかもしれんし」

頭を掻きつつ和也は話すが……彼の場合、肉体構造は人とほぼ変わりない。反面、耐久性は人よりも遥かに高い。その高い耐久性を使い、悪魔が持つ力や魔力などで戦闘力を高めているのだ。
で、これがネギに出来るかといえば、ある程度までならば出来なくもない。ただし、かなりの低レベルになるというオマケが付くが……なぜかといえば、先ほど言った耐久性の問題になる。和也を鉄とするならネギは豆腐。同じ力で叩けば、当然豆腐が砕ける。魔力で戦闘力を高めることは可能だ。でも、和也と同じレベルでやろうとすれば、ネギの体がもたない。下手をすれば、死にいたる場合だってある。

「それはちょっと……どうするの、ネギ?」

理解出来たアスナが顔を向けるが、ネギといえばなにやら不満そうな顔をしている。どうやら、あきらめきれないらしい。

「それにしても、なんでんなことを言い出したんだ?」

「だって、この間の図書館島じゃボクは生徒守らなきゃならないのに……なのに、楓さんや古菲さん、あたっ!?」

うつむき、暗い表情で答えるネギだったが、その途中で問い掛けた和也の脳天チョップを受けて遮られてしまう。で、和也はといえば盛大なため息を見せ付けるように吐き、

「ガキがナマ言ってんじゃないの。ガキは大人に頼っていいんだよ」

「だけど、ボクは先生だし楓、おぐ!?」

それでも言い返そうとするネギの脳天に今度はかかとを落とす。結果、見事に沈んだネギはアスナとアーニャを慌てさせながら介抱されることとなった。で、かかと落としを決めた和也はといえば、またもや盛大なため息を吐いていた。

「あの……やりすぎではないのですか?」

「ナマ言ってるガキにゃ、これくらいせんとな。それにな、ガキの頭でなんでも1人でやろうとするな。適材適所って言うだろ? 出来ないことまで無理にやろうとすれば、かえって迷惑掛けるだけだ」

「人のこと言えないわよね?」

なだめる刹那に返しつつ頭を掻く和也。ミーナリアにつっこまれていたが、それはスルーしている。で、ネギはといえば頭を両手でおさえつつ、まだ不満そうに和也を見ていた。

「どうするの?」

「はぁ……まぁ、前回のあれで悪魔の狙いがネギだってわかったしな。あの時は仕込みをしてたから良かったが……いつでも上手く行くわけでもないし……古菲、お前格闘やってたよな? 楓は忍者だろ?」

「そうアルが?」

「さて、なんのことやら……」

ミーナリアの疑問に和也は盛大なため息をまた吐いてから、2人にそんなことを問い掛ける。古菲はあっさりと認めるが、楓は笑顔でとぼけていた。もっともバレバレなのだが。前回は語られていなかったが、クナイや手裏剣に分身の術まで使っていたのだし。

「ネギに基礎の基礎を教えてやってくれ」

「ワタシは構わないけど……本当にいいアルか?」

「理由はわからんが、ネギを狙ってる奴がいるのは間違いないからな。自分の身は自分で守れるようになってもらわんと。今後のことを考えるなら絶対に必要になる」

「確かに……」

古菲が首をかしげながらの問い掛けに和也はやれやれといった表情で答え、楓はそれに賛同するようにうなずいていた。ネギを狙う者がいる。理由やその正体はわからないが、そのことだけは間違いない。で、問題なのがネギの護衛方法だ。
和也が受けた依頼は麻帆良の警備である。なので、麻帆良にいる以上ネギも当然対象となるのだが…… かといって、四六時中貼り付いているわけにもいかない。和也の警備の対象はあくまで麻帆良であり、ネギはそれに含まれているにすぎないのだ。
それにネギには先生という仕事もある。そのため1人になるという状況が多くなってしまう。また、誰かが一緒にいようともそこを狙う者がいないとも限らない。和也が初めて麻帆良に来た時や前回の図書館島でのことがいい例なのだ。
それゆえに和也はネギを鍛えることを考えていた。せめて、自分で自分を守れるように……だが――

「危険よね。あれって」

「危険……とは?」

「ネギの考え方だ。あいつは気付いてないが、あの考え方は危険なんだよ。一度、失敗でもすれば気付くんだろうが……ガキってのを考えるとそれもまた問題がある。失敗の内容次第じゃ、取り返しのつかないことにもなりかねないしな」

ミーナリアの言葉に疑問を感じた刹那に和也がネギを見ながら答える。ネギは否定するだろうが、彼は良くも悪くも”ガキ”なのだ。それゆえに知らないことが多すぎる。知識ではなく人生という名の経験が。それは悪いことではない。年齢的にも当然のことなのだから。
が、問題もあった。和也も今気付いたことなのだが、ネギは意地になりやすい。それは”ガキ”としての現われの1つだが……それが元で失敗を起こすことは和也とミーナリアには目に見えていた。今は語ることは出来ないが、その失敗を和也はしていた。 それはそれでいい。ネギにとっては失敗はいい経験になる。が……状況によっては逆の場合もありえた。
何者かはわからないがネギを狙っている。しかも魔物と下級悪魔を送り込み、一般人などを巻き込んでいた。今後もこのようなことは起こるだろう。そして、”ガキ”としての意地が失敗を起こすかもしれない。そして、その失敗の内容次第ではネギは大きな傷を負うことになる。心に……
和也の場合、そうなってもおかしくない失敗をしたのだが、同時に”覚醒”したためにほぼ無傷で済んだ。人としての何かを引き換えにして――
でも、ネギはそうはいかないだろう。魔法使いである前に“人間のガキ”なのだ。……もし、心の傷が大きいものならば――

「相変わらず、そういうところは優しいわよね。和也って」

「そう見えるか?」

笑顔のミーナリアに和也は顔も向けずに答える。しかしながら、優しさからこのようなことを言ったのではない。先程も言ったが、和也には経験があるのだ。取り返しの付かない失敗をした経験を……その時は何もわからなかった。していたと思っていた覚悟は覚悟ではなかった。その時は”覚醒”があったからこそ、無事でいられた。
でも、ネギはそうはいかないだろう。だから、和也がしたような同種の失敗をしてしまったら……どうなるか、あまり考えたくは無い。いや、下手をすれば再起不能にもなりかねない。和也は忘れているが、ネギは人の死やそれに近いものを一度に多く経験している。
もし、失敗をした時にその時のことを刺激されてしまったら……時と場合によるが面白くない事態にもなりかねない。遅かろうと早かろうといずれその失敗はしてしまうだろう。ネギを取り巻く環境を考えるなら。
だからこそ、和也はネギを鍛えることにした。肉体的にもだが、精神的に。それで回避出来るかは別問題なのだが……

「でも、それだけじゃないでしょ? ネギのお父さんって有名な人みたいだし。それも問題よね」

「ある意味、俺の親父と一緒か……まったく、有名人の子供ってのはなにかといらん苦労をするよな」

ミーナリアが漏らした一言に和也はため息混じりに答えていた。ネギの父親が魔法界では有名な人であることを和也はシャークティに聞いたことがある。ちなみになんでそんな話をしたかといえば、以前シャークティと刀子と一緒に夜回りした時にそんな話題が出たためだ。
というかこの2人、和也が外回りをする時は必ずと言っていいほど一緒になろうとする。もっとも、必ず一緒にはなれなかったりもするけど。刹那と真名もまた和也と組もうとするためなのだが……まぁ、その話はいいとして。
ネギの父親は偉業を成したと聞いているが、実を言えば和也の父も似たようなことをしている。もっとも、和也の場合それが元でトラブルに巻き込まれることが多々あるが。そして、ネギもまたそれが元で同じような目にあう可能性がある。それがネギにどのような影響を与えるのか……いや、その影響が悪魔の襲撃だとしたら……

「まさか、俺の親父と似たようなことしてないよな? ネギの親父さんって……」

ふとそんな予感がよぎるのだが……和也としてはあまり考えたくは無かった。ともかく、やるべきことはやっておく必要がある。

「とりあえず、戦い方は教えてやるが……今は体を鍛えておけ。普通に運動出来なきゃ、意味が無いからな」

顔だけを向けながらそう答える和也。なにはともあれ、まずはそれから始めなければならない。ちなみにこの運動とは戦闘のことを指す。今のネギでは、まともな戦闘が出来ようもないのだ。

「あ〜……そのことなんだけど……」

「私達も……教えてもらえないかな?」

そこになにやら言いにくそうにしてるアーニャの横で、恥ずかしそうに言い出すアスナ。

「お前らがか?」

「な……なによ! だって……ネギだけ強くなるのって、なんかしゃくだし……」

「それに……なんかほっとけないしね」

明らかにめんどくさそうな顔をしてる和也にアーニャはそっぽむきつつ言い返し……顔は真っ赤だが。アスナもてれたように顔を紅くしながら頬を指で掻いていた。
アーニャの場合は答えた通りの理由もあるが、このままじゃいけないような気がした。このままじゃ、ネギに置いていかれそうな……そんな気がしてならない。それが嫌だ。ネギのそばにいたい。それは表に出さず……だけど、明確な意思を持って願い出た。
アスナもまた答えた通りの理由だった。ほっとけない、ほっておいてはいけない。そんなことをしたら……それが自らを脅迫するようにしめつけてくる。なぜかはわからない。わからないけど、何も出来ないままなんて嫌だから。何も出来なかったからネギは傷ついた。あの時だって……あの時のこととはなんのことなのか? そのことには考えがいたっていないが――
で、困ったのは和也だ。アーニャはいい。魔法使いであるし、運動も苦手ではなさそうだ。ネギと同じように鍛えることも可能である。問題はアスナだ。アスナは一般人である。ついこの間までは裏のことなど知らなかった。鍛えることが出来ないわけじゃない。ただ、その方向性が不透明な分、どのようにするかで困るのだが……

「それだけど……アスナちゃん、ちょっと動かないでね」

「え? なにをって、きゃ!?」

 そこにミーナリアが前に出たかと思うと、ホタルが放つような淡い光を放つ。その光は触れた瞬間に弾けて消えてしまい、アスナを驚かせただけで終わったが。

「無効化しただと?」

「やっぱり……」

そのことに和也は睨むかのように見つめ、ミーナリアは納得したような顔をしていた。

「い、今のなに?」

「ああ、ちょっとした呪いよ。受けると体が動かなくなる程度だけど」

「呪いって……なんでそんなものを私に!?」

「いいじゃない、効かなかったんだし。ま、別の問題はあるんだけど……」

「え?」

適当にあしらうミーナリアだったが、その事実には困った顔をしていた。呪いと聞いて怒り出したアスナもそれを聞いてポカンとしていたが。

「魔法無効化……時と場合によるが、お前さんは魔法に関するものを無効化する能力を持っている」

「初めて会った時にあら? って思ったんだけど……本当にそうだったとはね」

「厄介なことだ」

なにやら納得してる和也とミーナリア。和也はなんかため息交じりではあったが。だが、置いてけぼりを喰らってるアスナはなんのことだかわからない。それはネギ達も一緒なのだが……

「なんか問題でもあるの?」

「大いにな。なんでもってわけじゃないが、その気になれば例え魔王の魔法だろうと無効化出来るんだ。お前さんはな。だけど、それだけのことが出来るからこそ、狙われる可能性があるんだが……」

「魔法関係者や悪魔とかには特にね。なにしろ、全部じゃないとはいえ魔法を無力化出来るもの。魔法に対する盾とか実験材料とか……そういう風に使われるわね」

ポツリと出たアスナの疑問に和也は頭痛を感じるのか、額に指を当てながら……ミーナリアも珍しくため息混じりに答えるが……それはその場にいた者達が息をのむ結果となった。
和也とミーナリア以外は気付いてないが、アスナの能力はそれだけの価値があるのだ。だから、狙われる。今、アスナが無事なのはその能力のことを知られていなかったためである。もっとも、そうなるようにあの者達が仕向けたのだが。

「アスナ、このことは誰にも言うなよ。刹那、アスナに気の扱いを教えてやれ。気のことは良くわからんが、体の方が先に動くアスナならそっちの方がいいだろうしな」

「わかりました」

和也の言葉に刹那はうなずくが……アスナといえば、自分の体を見るかのように両手を見つめていた。自分にそんな能力があって、それが元で狙われると思ってもいなかった。能力のことだって、初めて知った……という所で、あれ? っと疑問に感じる。自分はそのことを知っていたような気がするのだが……なぜなのかは今はわからず、アスナは首をかしげる。

「まぁ、そのことは後で考えるにして……後は任せる」

そう言うと、和也は振り返ってミーナリアと一緒に歩き出していた。

「どこに行くんや?」

「じいさんの所だ。呼ばれててな」

このかに右手を振りながら答え、ミーナリアと一緒に去っていく和也。それを見送るネギ達だったがやがて古菲と楓がネギとアーニャに、刹那がアスナに指導を始めるのだった。
余談となるがこの日古菲と楓がやりすぎてしまい、ネギがボロボロになるというエピソードがあったりする。この時、慌てるアーニャの後ろで古菲と楓を叱るアスナの姿があり、このかと刹那はそれを微笑ましそうに見ていた。それはまんま姉弟のように見えて――



さて、その頃和也はといえば――

「こちらが現在の関西呪術協会の実情を記した資料。こちらは麻帆良の周辺状況です」

「ふむ」

学園長室の中でジェスターがイスに座る学園長に書類の束を渡しているのを和也は来賓用のソファーに座りながら眺めていた。ちなみにミーナリアはこの場にはいない。なにやら用事があるとどこかへと行ってしまったのだ。

「関西呪術協会の方じゃが、これに間違いは?」

「無いとは言い切れません。状況が入り組んでいるらしく、正確に調べるためにはあちら側の人手が足りませんので」

学園長の問いにジェスターは静かに答える。その学園長の横に居た高畑は書類を見て、顔をしかめていた。

「そうかい。でも、これが事実となると……厄介になりそうだね」

高畑がそんなことを漏らすが、書類に書かれていたことはそう思っても仕方がないようなものだった。
関西呪術協会には大きく分けて3つの派閥がある。1つが和平派、1つは穏健派、1つは過激派である。和平派は西洋魔法が中心となっている関東と和平を結ぼうとするもの。十数年前にあった東と西の戦争による被害をかんがみての思想である。あのようなことを二度と起こしてはいけない。もしくは受けたくは無いという思いからだ。
過激派は西洋魔法そのものを追い出し、裏の日本を我ら呪術で統治をと考えている者達の集まりとなる。
穏健派はどちらにも属せず、ことのなりゆきを見守る者達なのだが、実はここが一番厄介であった。というのも、状況によってはどちらかの派閥に鞍替えする者が多い派閥なのだ。甘い汁を吸いたいがために。
そして、書類にはこの3つの派閥の状況が書かれていたのだが……

「過激派の一部が外部と接触か……何者じゃと思う?」

「さてね。何をやろうとしてるかわからねぇしな」

学園長がふと漏らした疑問に、和也はやれやれといった様子で答えていた。過激派が外部の組織と接触を持った。理由は不明。だが、明らかに行動を起こそうとしている。なにしろ以前からこの麻帆良にちょっかいをかけてきてるのがこの過激派なのだ。なので、気を抜くことが出来ない。

「ふむ……こちらはわしらの方でも探りを入れておこう。しかしながら、おぬしがこのようなことを調べておったとはの」

「護衛対象の周囲に関することを調べるのは普通だろうが」

学園長の言葉に和也は頭を抱えていた。和也は普段の行動から無茶苦茶なことばかりしてるように思われるが、策士的な面もあるのだ。
これはDevil Walkerをやるにあたり必要だと実感し、学んでいったためである。それ故に仲間というか交友関係も手広い。まだ登場していない者もいるし、実はヤクザやマフィア、悪魔だけでなくヴァチカンとの繋がりもあったりする。それを話す気は今は無いが……

「やっぱり、そういうもんなんだね」

「あんたらが俺をどのように見てるか、よっくわかったが……好き勝手やるにもそれなりに準備は必要ってことだよ」

なにやら感心してる高畑に和也は頭を掻きながら答えていた。その場限りの仕事もだが、この麻帆良でのような長期のものとなるとそれなりに準備や調査などが必要となる。まぁ、和也がその大事さに気付いたのはDevil Walkerを始めてからしばらくしてからだったりするのだが……

「それとなんじゃが……お前さんに関する情報が明らかに操作されてるのと麻帆良周囲の治安が良くなっておることに関してなにか心当たりはないかの?」

「最初のは護衛対象を不利になるようなことするのはバカのすることだろ?」

「後のは和也がいることを察知したあらかたのヤクザやマフィア、犯罪組織もろもろが逃げ出したからでしょうね」

学園長の問い掛けに和也はしれっと、ジェスターはあっさりと答えるが……それは高畑を含めて冷や汗を流すはめとなった。まぁ、冷や汗の理由はジェスターの話を聞いたからだが。それはそれとして和也が答えたことだが、ある意味当然といえる。依頼主を不利にするのは不利益が多くなるのがほとんどだからだ。
では、なぜ依頼人に迷惑を掛けるという話が出てくるのか? 前にも話したが、和也は相手が真の悪党とわかれば容赦はしない。それが例え依頼人であったとしてもだ。まぁ、それに怒った依頼人(悪党)がそういう噂を流してるのだが……ちなみに真の悪党とは和也的には他人に不幸な迷惑を掛ける者を指す。

「まぁ、わしらとしては困った問題を解決してくれたのでな。今回は深くは問わぬが……出来れば、これからは一言言ってもらえぬかの?」

「時と場合によるな。情報ってのはどこで漏れるかわからんし」

困った様子で声を掛ける学園長に、和也はしれっと答えるが……実際はその通りでもあるので、学園長も強くは言えなかった。情報に関して調査などをする場合、その過程で漏らしてはならない情報が漏れることもありえない話では無い。特に和也の場合、ハーフデビルということが漏れると雇っている麻帆良に面白くないことが起こるのは明白だった。
それもあって、学園長はその辺りの情報を操作してるのだが……どうやら、杞憂だったようである。

「やれやれ……最後に……ネギ君が狙われる理由はわからんかね?」

「親のことで子供が苦労するってのは嫌だよな〜……というのは独り言だ。聞き流してくれ」

なんでもないように漏らしてから、和也はジェスターと共に学園長室を去るのだが……問い掛けた学園長はため息を吐きながら椅子に深く座り直していた。

「学園長……やはりネギ君は――」

「ナギ絡み……じゃろうなぁ……」

高畑の疑問に学園長は弱々しく答えた。ナギが何をしたかはわからない。だが、何かをしたのは間違いない。結果、そのことで恨みを買い……その報復に血筋であるネギが狙われた。ネギにとってははた迷惑な話だが、そうではないかと学園長は考えている。和也も同じ結論にいたり、あんな風に話したのだろうとも考えているが……

「まったく……息子に余計なことを背負わせるもんじゃないぞ……」

ナギがその場にいれば間違いなく話したであろう言葉を学園長は漏らす。彼は魔法界では死んだとされているが……それは無いと学園長は半ば確信めいた感じで考えていた。だが、なまじ有名すぎると様々なトラブルが起きる。例え、それが生きていようが死んでいようが関係無くだ。
そして、そのトラブルに息子であるネギが巻き込まれてしまった。なんの罪も無い息子が……学園長といえどただ見ているつもりはない。彼を守る為に打てる手は打つつもりだ。その手段を模索するべく、学園長は思考の海へと潜っていくのだった。



その頃、ネカネは自室で1人いた。ソファの上で膝を抱えながら。

――私は……和也さんのことが好き……それは偽りの無い想い……でも……
「私は……本当にあの人のそばにいていいの?」

そんな自問が出てきてしまう。自分が弱いのはわかってる。それがもし、和也さんの枷になってしまったら……それを考えると和也のそばにいるのがつらくなってしまう。思い出してみれば、自分は和也さんに迷惑ばかり掛けている気がした。
6年前の故郷での出来事。麻帆良で再会した時。先日の図書館島でのこと……全部、和也さんに助けられてばかりで……彼に会うのが怖い……いつの間にか、そんな風に考えていた。そんなネカネを見守る者がいた。ミーナリアである。

「やっぱりか……今、話しかけても逆効果よねぇ……どうしようかしら?」

ネカネの様子を見ながら、ミーナリアは心配そうな顔をしつつ解決の方法を考える。ほっとけなかった。自分もまた、彼女のような時があったから。だから気になる。何とかしてあげたいと思うが……今のネカネに自分や和也が話し掛けても効果は無いだろう。
でも、自分や和也以外の……彼女ならもしかしてと考える。今はそれしかないと考えると即実行するためにミーナリアはこの場を去るのだった。
彼女もまた優しかった。本来持っていなかった感情……でも、和也と付き合っていくうちに彼女にもその優しさが伝染っていた。もっとも、彼女はそのことに気付いていないのだが――



で、それから3日後――

「なんていうか、天才ってのはいるもんなんだな」

半ば呆れた様子で和也は呟いていた。古菲と楓に頼んだネギとアーニャの鍛錬。刹那に頼んだアスナの鍛錬。それを見ているのだが……

「ハッ!」

形になっている突きを繰り出すネギ。

「ええい!」

両手で持ちながら木刀を振り回すアスナ。刹那が組み手の相手となって受けているが、その動きは初心者には到底見えなかった。錬度から見て高いのはネギの方だが、アスナはまだ粗い面が目立つもののなかなかに様になっている。とてもではないが、特訓を始めて3日目とは思えない動きである。

「うう……」

「気にするなとは言わんが、自分のペースでやらんと後が大変だぞ?」

不機嫌そうに唸っているアーニャに和也はやれやれといった様子で珍しくなだめていた。アーニャが不機嫌なのはネギとアスナよりも遅れているからだ。ネギはあらかたの基本を身に付けようとしてるのに対し、自分はその半分も行っていない。
もっとも、これはネギがある意味異常だからだ。鍛錬の後も反復練習を重ねていたとはいえ、3日でここまで出来るというのは異常なペースである。アスナはといえば古菲と組み手をすることもあるが、基本的には剣の方を重点に学んでいる。本人曰く、「なぜかこっちの方がしっくりくる」のだそうだ。

「にしても……ネギってどうなってんだ?」

「確かにネ。フツーならサマになるのに1ヶ月はかかる技を3時間で覚えるアル。まったくどうなってるのかネ」

和也の疑問に古菲も同意したようにうなずくが……その話に和也の中でなにかが引っ掛かる。魔法使いということを差し引いてもネギの錬度の高さは異常だ。和也は先程天才と言ったが……これは本音を隠す為のものだ。
本音を言えば、例え天才であろうと才能があろうとネギのようには普通はいかない。ではどうしてなのか? 実を言えば、和也にはある心当たりがある。あるのだが……確信を得る為にそこら辺を調べることを心の中で決める。

「で、アスナの方はどうなんだ?」

「そうですね。アスナさんは無意識に気を使っているようでして、結構すんなりと覚えています。ネギ先生ほどではありませんが、時間を掛ければかなりの使い手となるでしょうね」

和也の疑問に戻ってきた刹那が答える。彼女の話はわからなくもない。アスナの身体能力は常人とは一線を越えている。その要因が無意識の気の使用というのもわかるのだが……この辺りも和也としては引っ掛かりを感じるのだ。
というのも、無意識とはいってもアスナはかなり高いレベルで気を使っている。刹那はその辺りのことをあまり疑問には感じてはいないようだが。だが、和也としてはどうにも気に掛かるものだった。この辺りも調べた方がいいのかと考えているくらいだし。

「うっひゃ〜……ネギ先生もアスナも凄いなぁ〜」

「ウン……確かに……スゴイ……」

と、来ていた美空とココネがそんな感想を漏らす。隣にいた刀子とシャークティも無言ではあるが、表情から見て同意権のようだった。

「凄いですね。ネギ先生はともかく、アスナさんをあそこまで育てるなんて……」

「いや、俺はなにもしちゃいないぞ。刹那にも古菲にも楓にも基本以外は教えるなって言ってるしな」

感心してる刀子に和也はしれっとそんなことを言い出すが……これに驚いたのは刀子とシャークティだった。
アーニャを含めた3人を鍛えていることは聞いていたのだが、ネギとアスナの錬度の高さは和也が指導したからだと思っていたからだ。和也の実力を考えれば流石と思っていただけに、今の言葉は十分に驚きに値するものだった。
さて、言い遅れたがここ麻帆良の丘は今はネギ達の鍛錬場となっている。まぁ、魔法の秘匿ということを考えると人があまり来ないここが最適だからだが。ちなみに念のため人払いと防音の結界を張っている。
で、落ち着いた様子でネギとアーニャ、アスナの鍛錬を眺めるこのかと美空、ココネの他にもう1人、見慣れぬ女性がいた。背中まで伸びるブラウンの髪。メガネをかけた優しげな顔。ここまでならどこにでもいそうなのだが、着ている服がそうではなかった。髪の色に近い色の制服……らしきものを着ている。少なくとも麻帆良では見かけないものだ。だが、どこの者かは和也以外は検討もつかない。
で、刀子とシャークティがここにいるのもこの女性を監視するためである。和也の知り合いらしいのだがその女性はネギとアーニャ、アスナの鍛錬風景を見ることは無く、ノートパソコンを操作している。 もっとも、その女性の横にはカメラがセットされており、それがノートパソコンとコードで繋がれていた。どうやら、3人の鍛錬の様子をデータ化し、収集しているようなのだが……

「そっちの方はどうなんだ? シャーリー」

「そうですねぇ……ネギ君とアーニャちゃんに関しては問題無しです。後でこちらの魔法のサンプルを取らせてもらいますが、問題は無いと思います。ただ、アスナちゃんは……バリアジャケットの装着は可能ですけど、レアスキルの方をどうするかが問題ですね」

和也の問いにシャーリーと呼ばれた女性は考える仕草をしながら答えていた。
シャリオ・フィニーノ。彼女が何者でなんで和也の知り合いなのかは……後ほど説明することになる。で、シャーリーの話に和也以外の皆は首をかしげていた。例外は鍛錬中のネギとアーニャ、アスナとそれを傍で見ている古菲と楓、刹那だが。彼女の話の意味がわからないのだ。というか、そもそも何者かすらも和也の説明が無い。

「気になっているのですが……彼女は何者なのですか?」

「それは……今は内緒だ。まぁいずれ紹介するから、それまで待って欲しい」

シャークティの疑問に、和也は懐から人の拳ほどの大きさがある水晶球らしきものを取り出しながら答える。そのことに不満そうにしながらも、シャークティは引き下がった。彼がそういうのなら……昔のシスターなら考えそうもないことを納得して。

「さてと……で、ネギを見てどうよ?」

《歪だな》

「やっぱり?」

女性の声が響く水晶球とそんな会話を交わす和也。もっとも、鍛錬をしているネギ達以外の皆を驚かせるには十分な光景だが。

《ふん。久々に外に出されたと思えば、あの小僧の子守をしろと頼まれるとはな》

「つっても俺もいつも一緒ってわけにもいかないし。でも、どうにかあれは矯正させんと後が色々とな。そういうのを考えるとお前さんが適任なんだけど」

《ふむ……では、貴様好みに調教しろと?》

「出来ればな。一般大衆がほざく『正義』じゃく、小汚くあがく『小悪党』が理想なんだがね〜」

《それでは貴様と一緒ではないか。だが、面白くもあるか……しかし小悪党か……貴様はどちらかというと大悪党ではないのか?》

「あいにくだがそんな大層なものになるつもりはねぇよ。やりたいようにやる。ただ、そのやり方が小悪党なだけなんだが」

と、なにやら物騒なことを言い交わしてる水晶球と和也。その光景に鍛錬をしている以外の者達は引き気味だが。

「あ、あの……それはなんなのですか?」

「ん? ああ、こいつはベオウルフ。彼の英雄の名を冠するに相応しい魂だよ。それはそれとして……アスナの方はどうするかね?」

刀子の疑問に答えつつ、和也はそのことを考える。その返事はシャークティを驚かせていたが。
ベオウルフ……巨人や竜と戦った英雄である。シャークティはその英雄譚をさわりではあるが知っていたのだ。その本人では無いとはいえ、英雄の名を冠するに相応しい魂。そのことに驚きながらもどれほどのものなのかと興味も出てくる。
それはともかくとして、ネギとアーニャにはアレを与える予定だが……問題はアスナだ。彼女の魔法無効化能力は全てではないとはいえ、魔法を無力化することが可能だ。今はその能力をコントロール出来るように色々とやっている。ただ、その能力をどう扱うかが今はまだ決めかねている状態だった。下手をすれば能力が装備する物にも干渉しかねない。

「どうしたんすか?」

「いや、アスナはどんな装備にしたらいいかとな。与えておきたいんだが……彼女の能力がネックになっててな」

気になって問い掛ける美空に和也はそれとなく答える。詳しく教えないのは下手に言い広められない……のもあるが、単にめんどくさかったからでもある。まぁ、下手に教えてそれが他の魔法先生や生徒に伝わるのはマズイというのも考えていないわけではないのだが。

「ああ、それなら仮契約パクティオーなんてどうっすか?」

「なんだそりゃ?」

美空の提案に和也は顔を向けるが、刀子とシャークティは戸惑いの表情を浮かべている。まぁ、仮契約がどんなものなのか知っていれば当然といえば当然なのだが……

魔法使いの従者ミニステル・マギを作るための契約のことっすよ。魔法使いって、基本的に呪文唱えてる間は無防備でしょ? それを守るためにいるのがミニステル・マギなんですよ。といっても、あくまで仮なんで途中で破棄も可能なんですけどね」

「それって契約する意味あるのか? 普通に傭兵と変わらん気がするが」

「むろん、ただの契約って訳じゃないですよ。時間制限はありますけど契約すれば契約主の魔力供給を受けてパワーアップ出来るし、アーティファクトっていうミニステル・マギ専用のアイテムもゲット出来るんです。まぁ、アーティファクトは必ずしも武器ってわけじゃないですけどね。私なんてスポーツシューズだし」

と、和也の疑問に照れた様子で美空はあるものを取り出す。それはシスター姿の美空が写真のように描かれている1枚のカードだった。

「このカードで私が履いてる靴がアーティファクトっす。効果は足が速くなるだけだけど。でも、このアーティファクトはミニステル・マギによって違うから、もしかしたら武器が手に入るかもしれないです」

「なるほどな……手の1つとして考えとくか」

「へぇ、この世界ってそういうのもあるんだ。後で教えてもらおうかしら?」

「ですが、契約の仕方に問題が……」

なにやら考えてる和也と感心してるシャーリーだが、シャークティは困ったように……というか、なぜか赤くなっている。ちなみに刀子はシャーリーの気になる一言に眉をひそめていたが。
仕方なく、契約の仕方を話すシャークティ。もっとも余り大きな声で言えるものではないので、和也とシャーリーの耳元に顔を近付け小声でだが。

「それって……どうなんでしょうかね?」

「ま、一応話だけはしとくか。すまんがその仮契約の準備は出来るか?」

「今スグにはムリ。専門の魔法を扱う人や精霊が近くにイナイ。準備には最低でも1日はかかる」

「そうか……準備だけはしといてくれ。こっちで話はしておく」

困ったようでなにやら興味津々と言った様子のシャーリーの横で和也はそう言っておく。話したココネも準備なら問題ないようなのでうなずいていたが……シャークティーと刀子は困ったような顔をする。 まぁ、契約方法を知っているが故になのだが……和也もそれを考慮してないわけではない。なので話しておこうと思ったのだ。無理矢理にではなく、自分で自分の歩く道を選ばせる為に……

「来たけど、用事ってなに?」

と、ここへフリムがやってくる。和也は振り向くと持っていたベオウルフの魂を投げ渡した。

「っと、これってベオウルフよね?」

「そうだ。そいつを使ってデバイスを造ってきてくれ。シャーリー、デバイスの仕様を一部変更だ。仮契約で出てくるアイテムとシンクロ出来るようにしてくれ。アスナの能力の方は防御で固めよう」

「わっかりました……けど、一応アーティファクトっていうの見せてくれないかな? データ取っておくと楽だしね」

「はぁ、別にいいっすけど……」

フリムに答えつつ指示を出す和也。一方でシャーリーは美空にお願いのポーズしながら頼んでいたりする。美空はそれに戸惑いつつも結局はOKしていたが。

「にしても……どうしてそこまで?」

「あいにく、俺は状況を楽観的には見れなくてね。それが自分じゃなく、ネギのようなガキならなおさらだ。それに――」

刀子に疑問にそこまで言いかけ、和也の視線がどこか険しくなる。それに気付いたのかシャークティーと共に訝しげに見ていた。美空はそれを見て、なぜか顔を赤らめてたりするけど。

「ネギには色んなことが欠けている。それに気付いているのか、じじい?」

和也のその一言……その意味をシャークティーと刀子は今はまだわからずにいた。



さて、時間は過ぎて夜になり、夕映達が魔法を教わる時間になったのだが――

「さて、ネギ、アスナ、アーニャに言っておくことがある。まず、お前達専用の装備を現在造っている」

「装備……ですか?」

和也の話にネギが首をかしげる。アスナとアーニャも似たようなものだった。まぁ、彼らの場合今初めて聞いたのだから当然なのだが。

「悪魔がなんでネギを狙うか、まだ詳しいことはわからんが……狙われているのは確実だ。この間の図書館島のは仕込みをしておいたのもそうだが、運良くことが進んだってのもある。だが、次もそうなるとは限らない。俺もいつでも駆けつけれるってわけでもないしな。だから、お前達だけでも戦えるようにする。そのための装備だ。
もっとも、今のお前達じゃその装備があったとしてもすぐに戦えるってわけじゃないがね。だから、戦い方とか教えていくことになるが……手段は1つでも多い方がいいんでな。アスナとアーニャ、お前達にはネギと仮契約パクティオーをするかどうかを話し合ってもらう」

仮契約パクティオー?」

和也の話にアスナは首を傾げるが、逆にアーニャは顔を赤くしていた。ネギはといえば、知らないのかアスナと同じ様子であったが。

「アーニャは知ってるようだが、一応説明しておくとだ。いわゆる主従関係という奴だ。魔法使いってのは基本的に呪文を唱えてる間は無防備だからな。そこを狙われないように守るのが契約した者、魔法使いの従者ミニステル・マギというわけだ。ただ守るだけなら、別に契約する必要も無いがね。
だが、契約することでミニステル・マギに魔力を供給して身体能力を上げたり、アーティファクトという専用のアイテムを手にすることが出来る。まぁ、俺も聞いただけなんで詳しくは知らんが……大体はこんな感じなんだそうだ」

「へぇ、結構便利なのね」

和也の話を聞いてか、アスナは興味が出たようであるが……アーニャは未だに顔が赤い。話を聞いて同じように興味を持ち出したのどかと夕映はそれに気付いて不思議そうにしていたが……

「あの、和也さん……確かにパートナーは必要なのでしょうけど……その……」

「ああ、契約方法は聞いてる。だから、すぐにやらせるつもりは無い。流石にそこまで無神経だと、色々とうるさそうだしな」

「どういうこと?」

心配そうに顔を出すネカネに和也はため息混じりに答えるが、理由を知らないハルナは不思議そうに問い掛ける。アスナやネギ、のどかと夕映、このかに刹那もまた気になり、顔を向けていたが。

「契約方法がな、キスなんだそうだ。一応、キスをしなくて済む方法も無いわけじゃないそうだが……そっちは専門の魔法使いじゃないと無理らしい」

「へぇ……って、キスぅ!?」

和也の話にうなずこうとしてそれに気付き、慌て出すアスナ。同じように話を聞いていたのどかと夕映といえば、アーニャと同じように顔を赤くしていたが。

「なんでキスしなきゃならないのよ!?」

「まぁ、待て。今すぐにやれとは言わんよ。準備にも時間が掛かるそうだしな。だが、戦う手段の1つとして仮契約は魅力的であるのは事実だ。だが、やり方がやり方だしな。そうほいほいやれというわけにもいかんよ」

「へぇ、もしかして和也って結構純情だったりするの?」

「この手のことで問題を起こしたくはないだけだ」

慌てるアスナをなだめつつ、意地悪っぽい笑みを浮かべながら問い掛けるハルナにそう答える和也。以前この手の問題に付き合わされ、とんでもない目に遭ったことがあるのだ。

「あ、でもキスしなくてもいい方法があるんでしょ? それなら――」

「残念だが、そっちの方は専門の魔法使いが近くにいないらしくてね。呼ぶにしても早くても1ヶ月は掛かるそうだ。悪魔達の次の襲撃がいつになるかわからん以上、そう時間を掛けるわけにもいかない。 まぁ、さっきも言ったが準備には時間が掛かって……終わるのは3日後なんだそうだ。それに絶対にしろって言ってるわけでもないんでね。するかしないかは話し合って決めてくれ」

アスナの思い付きはダメだと答えつつ、話すだけ話してこれで終わりとばかりにソファーに横になる和也。残されたネギ、アスナ、アーニャは互いに顔を見合わせているが……アスナとアーニャは顔が赤い。そりゃまぁ、いきなりキスをしろと言われたも同然なのだから仕方が無いが……

「カズヤ、やっぱりダメだよ。アスナさんとアーニャを巻き込めないし……それにキスは女性にとっては大事なものだってお姉ちゃんも言ってた――」

「だから、ガキがナマ言ってんじゃないの。前にも言っただろうが? 今のお前じゃ出来ることなんてたかが知れてるってな。それにひどいことを言うようだが、その考えは逆にアスナ達にひどいことをすることになるかもしれないぞ?」

「え?」

和也の話に断ろうとしたネギは戸惑う。自分はただ巻き込みたくは無いのに、それがどうしてそうなってしまうのだろうか? それがわからないネギであったが……

「ま、アスナもアーニャも良くも悪くもお前さんが心配ってことさ。それなのにそんなのを無視する方がひどいと思うがね。後、お前さんがピンチって聞いたらアスナは先に体が動きそうだしな。で、1人で行動した挙句大変なことになった〜なんてことになったらどうするよ?」

「う……」

和也の話にネギは言いよどんでしまう。なぜか、和也の話は的を得ているような気がした。だから、言い返せない。そんなネギをアスナとアーニャ、のどかと夕映は心配そうに見つめていた。

「さっきも言ったが、絶対にしろなんて言ってるわけじゃない。するかしないかは話し合えばいいしな」

「にしても、随分とお優しいですね? 悪魔というわりには……」

そう締めくくろうとした和也に、夕映は顔を向けながらそんなことを言い出す。彼女なりの皮肉なのだろうか、どこか面白くなさそうな顔をしていたが。

「いや、ひどいかもしれんぞ? なにしろ俺は道を狭めただけなんだからな」

「え?」

和也の今の言葉を夕映や他の皆は理解していなかった。今はまだ……



それから今まで通りの日が過ぎていった。学校が終われば、ネギとアスナとアーニャは古菲と楓、刹那に鍛えてもらい――夜となればのどかと夕映、このかに魔法を教える。だが、この間ネギとアスナ、アーニャが話し合うことは無かった。
ネギは2人を巻き込みたくは無い、けど和也に言われたことが気になってどうすればいいのかわからない。そのことに悩み続けていた。あまりにも悩みすぎて授業中にもそれが出てしまい、生徒達を心配させていたが。
その一方では――

「私、ネギと仮契約するわ」

前日の夜。寮の自室でアスナはアーニャとのどか、夕映の前でそんなことを宣言する。ちなみにだがこのかとネギは別々に用事があって今はいない。

「本気……なの?」

「うん、やっぱりほっとけないし……それに何かあれば駆けつけられるみたいだしね」

戸惑いの色を見せるアーニャに対し、アスナは確かな意思を見せていた。あの後、アーニャに仮契約の詳細を聞いたアスナは決意を固めていたのだ。

「それにね、ネギはほっとくと1人でどこまでも行っちゃいそうな気がするの。そんなことさせちゃいけない気がしてね……」

苦笑しながらアスナはそう言うのだが、実を言えば確信めいたものがあった。その例が先日の図書館島での出来事だろう。襲撃された時に真っ先に飛び出したのはネギだった。すぐに楓と古菲が出てくれたので、あの場はなんとかなったが。
だが、和也が言うように全てが上手くいくとは限らない。あの時だって、一歩間違えばどうなっていたかわからないのも事実である。アスナはそこまで考えたわけではない。ただ、このままではいけない。半ば本能的にそう感じていた。

「で、アーニャはどうするの?」

「わ、私!? 私は……その……」

いきなり話を振られて慌てるアーニャだったが、すぐに落ち込んだようにうなだれてしまう。自分はアスナのようにはなれないと感じていた。そう思うが故に素直になれない。だから、自分の気持ちに気付けない。思い悩んでいたがアスナの「ネギはほっとくと1人でどこまでも行っちゃいそうな気がするの」という一言を思い出す。
確かにそうだろう。なまじネギとの付き合いが長い分、アーニャもそれには気付いていた。だから、そうはさせまいとネギに追いつけるように色々とがんばって……そこで気付く。なんでそれを忘れていたんだろうかと。

「ネギの従者ってのは癪だけど……でも、あいつに追いつけるならなんだってやってやるわ!」

さっきとは打って変わってガッツポーズを取ったりする。今はまだその気持ちと向き合う勇気は無く、だからこのような形に置き換えてしまう。アーニャ自身、自覚があっての事ではないのだが……無意識にそうしてしまう。

「はは……それで本屋ちゃんはどうするの?」

「わ、私ですか? その……」

そんなアーニャの様子を見たアスナに微笑が浮かぶ。なんとなくだが、彼女の気持ちがわかったような気がしたからだった。それはそれとして、今度はのどかに問い掛ける。のどかがネギに想いを寄せているのは知っている。というか、ほぼクラスメート全員の常識と言ってもいい。それを考えるとのどかを抜きにしていいものかと考えてしまうのだ。

「で、でも……私、アスナさんみたいに戦えませんし、アーニャちゃんみたいに魔法もろくに使えないですし……そんな私がしちゃって……」

「別にいいんじゃない? 和也もOKしそうな気がするし」

不安そうなのどかにアスナはあっさりと答える。ただ実を言えば、そうした方がいい気がした。のどかの気持ちを考えてというのも事実だが……

「ま、和也も変な所で常識あるみたいだし、仮契約したからってすぐに戦えって言わないと思うわよ」

「あ、そ……そうですか? あ、でも……夕映が……その……」

「え?」

アスナの一言に安堵するのどかのそんな言葉に夕映は戸惑ったように声を漏らす。アスナとアーニャはきょとんとしていたが。

「な、なんでそこで私の名前が出るのですか、のどか?」

「だって、夕映もネギ先生のこと……気になってるんでしょ?」

「う……それは……」

のどかの言葉に夕映は言葉に詰まる。反面、頬は紅く染まっていたが。親友の言葉は事実だ。最初は のどかを応援する為にネギを見ていた。でも、いつの日か気になるようになった。魔法を習い始めたのも興味もあったが、ネギがいる世界を一緒に見てみたいからだった。
その気持ちに夕映は目を背けていた。のどかのことを考えると……応援すると言ったのに裏切るような感じがして……けど、あの姿を……図書館島で戦うネギの姿を見ると……あの時の姿を思い出すと、この気持ちを自覚してしまう。どうしたらいいのか……彼女は思い悩んだ。

「あのね……夕映がネギ先生を好きになっても別にいいんだよ。だって、ほら……その……ミーナリアさんとフリムさん、ジェスターさんもそうでしょ?」

「あ〜……確かにそうよね」

のどかが恥ずかしそうに話すのを聞いて納得するアスナ。まぁ、夕映がネギのことが好きだと知って、アーニャと共に軽く驚いてたりするが。
それはそれとして彼女達は会ったことがないので知らないが、ジェスターも合わせて彼女達は仲がいい。和也に好意を寄せているのだろう。でも、そのことで争うようなことは見た限り無いように思える。

「確かにミーナリアさんやフリムさん、ジェスターさんのようには無理かもしれないけど……でも、一緒にネギ先生を好きになったからって、ケンカしなきゃならないってことはないと思うの。だから、素直になってもいいと思うよ」

「で、ですが……その……のどかはそれでいいのですか? それに……和也さんがなんと言うか……」

「私はいいよ。夕映とずっと仲良くしたいもん」

「和也はOKしそうだしね」

話を戸惑う夕映にのどかは笑顔を見せた。アスナは苦笑して答えつつ、内心「あいつのことだから、面白そうだって言いそうだけど」と思っていたが。それを言わないのは話をややこしくしそうな気がしたからだった。

「私達、親友だもん。そうでしょ、夕映?」

「のどか……う……うう……」

のどかの言葉を聞いて夕映の目に涙が浮かび……少しして、のどかの胸で泣き出す。のどかはそんな夕映を優しく抱きしめ、アスナとアーニャはそれを安堵した様子で見ていた。内心、どこか複雑なものがあったが。 そんな彼女達の様子を見ている影が1つ――

「やれやれ、信頼されてると思っていいのかね?」

偶然、ドア越しにその会話を聞いていた和也はふと漏らすのだった。



その頃、ある場所でミーナリアは忙しそうに動いていた。シャーリーが着ていたのと同じ物を着て。

「すみません。手伝ってもらっちゃって」

「いいのよ、今回のことはあなたに手伝ってもらった方が良さそうだから。だから、これはそのお礼だと思ってね」

白い制服らしきもを着る栗色の髪をサイドテールにしている女性にミーナリアは笑顔で答える。それを聞いた女性は微笑んでから外の景色を見るかのように顔を向け――

「あれから3ヶ月か……和也お兄ちゃん、相変わらずみたいですね」

「まね。あれはあれで楽しんでるみたいだけど」

女性の言葉にミーナリアはウインク交じりに答えるのだった。



そんなこんなで仮契約をする日。いつも稽古をしている丘で和也とネギ、アスナとアーニャ、のどかと夕映がいたのだが……

「準備をしてくれたココネと美空がいるのはいいとしてもだ……なんでお前らもいる?」

「ミソラ、準備手伝ってないヨ」

「あはは……」

呆れた顔の和也。その横ではココネのツッコミに美空が乾いた笑みを浮かべていた。で、どうしたのかといえば……なぜか大所帯になっていたのだ。いつも稽古を手伝う刹那、楓、古菲はまだいいとして……ハルナにこのかや真名、それに刀子とシャークティもいたりするのだ。

「あ〜、私達は野次馬みたいなもんだから」

「私達はその……やはり、魔法関係者として立ち会うべきと思いまして……」

ハルナの言葉にこのか達はうなずく。シャークティの方も刀子がうなずいているが、なぜか2人とも顔が紅い。それを聞いた和也は盛大にため息を吐き、ネギやアスナ達は真っ赤になっていた。まぁ、仮契約でキスをするのだ。それが見世物になるのはアスナ達としては恥ずかしいので勘弁して欲しかったりする。

「お前らは……どうせ追い返しても見ようとするんだろうから見てもいいが、からかうなよ? からかったら何かをする」

「なにを……でゴザルか?」

和也の言葉に楓が汗をいくつも浮かべつつ問い掛けるが……無視された。それにシャークティと刀子以外の皆が青くなる。思い出されるは期末テストの時のおしおき。いや、あれは拷問……それ以上か……直接受けた者達にとってはトラウマとなっている。受けてはいないが目の当たりにした者達も忘れたい過去だったし。ちなみにそのことを知らないシャークティと刀子は首をかしげていたが。

「さてと……で、どうするか決めたか?」

「あの……やっぱりダメ――」 「するわ。私もアーニャも……それに本屋ちゃんと夕映ちゃんもね」
「ええ!?」

和也の問いにネギが何かを言おうとして、それを遮るようにアスナが答えた。それに同意するかのようにアーニャとのどか、夕映もうなずく。それに驚いたのはネギである。ハルナ達は「お〜」といった感じで感心してたが。

「だ、ダメですよアスナさん! わかってるんですか? 危険なんですよ!?」

「アホかお前は。それがわかってるから言ってるんじゃないか。すでに経験済みだし」

「そうよ。それにあんたをほっとくと何するかわからないしね」

慌てるネギに和也は呆れた様子で、アスナはしっかりとした眼差しで答えていた。ネギはこれ以上巻き込みたくないから断ろうとしていた。あの過去がどうしてもそうさせてしまう。一方のアスナはといえば、危険なのはわかっていた。でも、それにネギだけが向かおうとするのは彼女としては許せなかったのだ。
だがこの時、ネギもアスナは気付いていなかった。戦いにおいて危険なのはそれだけではないと……このことに関し、和也は何も言おうとはしなかった。今、そのことを言えばネギが更に騒ぎ出すのは目に見えていたためである。

「それにね、これは自分で決めたことなの。和也に言われたからじゃない。自分でしなきゃって考えたことだから……あんたも言いたいことはあるんでしょうけど、文句は言わせないからね」

「あ、あうう……」

決意を秘めながらも笑顔で語るアスナ。それにネギはなんと言えばいいかわからずにいた。実を言えば、見惚れていたと言ってもいい。それほどまでに今のアスナの笑顔は眩しかったから――

「お前の負けだよ、ネギ。そんじゃココネ、やってくれ」

「ウン」

笑いをこらえる和也に言われてココネが発動の呪文を唱えると地面に描かれていた魔方陣が淡い光を放ち始める。

「さ、行くよ」

「あ、あわわ!?」

その中へとネギを引っ張って入るアスナ。ネギはといえば慌てるものの、ただ引っ張られるままであったが。

「あ、アスナさん、やっぱり――」

「言ったでしょ? これは自分で決めたことだって。それにね……あんたは危なっかしいのよ。だから、ほっとけないの」
「アスナ……さ、んぶ!?」

やめさせようとするネギの言葉を遮るようにキスをするアスナ。やはり恥ずかしいみたいで、その頬はうっすらと赤くなっていたが。それと同時に魔方陣はまばゆく輝き、和也以外のみなはその眩しさに思わず顔を背けていた。その輝きが消えると2人の間に1枚のカードが浮かんでいた。大きな剣を持つアスナが描かれたカードが――

「契約完了でいいのか?」

「ウン。後はそのカードを複製して終わり」

和也に答えつつカードを手に取るココネ。アスナは顔を赤くしつつも戻ってきたが、ネギはといえば真っ赤になったまま呆けていた。初めてのキスは色々とショックが大きかったようだ。その間にアーニャが魔方陣の中へと入ってくる。戻ったアスナの方はハルナが何か言っているようだったが、和也に睨まれてピタリとやめていた。何かされるのが怖いからようである。

「まったく……まさかこんなのが初めてなんてね……でも――」

「アーニャ?」

自分に言い聞かせるように呟くアーニャにネギは正気を取り戻すのだが――

「でもね、嫌じゃない。それと……絶対にあんたに追いつくから……だから、置いていくような真似したら、許さないからね!」
「あ、アーニャ……それって、んん!?」

アーニャの言葉に戸惑う……暇も無く唇を奪われるネギ。同じように魔方陣が輝き、それがおさまるとカードが現れた。炎を宿すスティックを持つアーニャの姿。そのカードもココネが手に取る。その間、顔を真っ赤にさせながら戻っていくアーニャ。ネギは再び赤くなって呆けていたが……

「ネギ先生……」

「え? のどか……さん?」

いつの間にか目の前にいたのどかに戸惑っていた。のどかは恥ずかしそうにしていたが、その瞳には確かに決意を秘めたものがある。

「私は……なんの役にも立てないですけど……それでも一緒にいたいんです。だから、お願いします」
「え? ん!?」

のどかの言葉の意味を理解する前に三度唇を奪われるネギ。現れたカードにはいくつもの本に囲まれたのどかの姿が描かれていた。のどかは真っ赤になりがら慌ててその場を離れようとするが――

「傍にいてやれ。あいつがどっかに飛んでいかないようにな。それがお前さんに今出来ることだよ。後は少しづつがんばっていきゃいい」

「え? あ……ありがとうございます!」

和也にそう言われて一瞬きょとんとするが、言われたことに気付いてのどかは頭を下げた。そう、傍にいるだけでも良かった。今ののどかにはそれだけで幸せだったから――

一方で夕映は恥ずかしそうに魔方陣に入るものの、ネギは気付いた様子は無い。すでにオーバーヒート気味のようである。

「えと……その……ふつつかものですが……その……ん!」

何かを言おうとするがテンパってるせいで言葉が浮かばず、ほとんど勢いでキスをする夕映。で、されたネギはといえばついにショートしたらしく、蒸気を噴出しながら倒れてしまう。

「ネ、ネギぃ〜!?」 「ちょっと!? 大丈夫なの!?」 「ネギ先生!?」

慌てて駆け寄るアスナ、アーニャ、のどか。夕映は自分のしたことを恥ずかしく思い、真っ赤になっていたが……

「別に今すぐ答えを出す必要はないさ。じっくり考えて、自分なりの答えを出しときな」

「え? え、あ!? あうぅ……」

「それより、あれほっといていいのか?」

和也に言われたことに最初は戸惑うが……次に言われたことで夕映は正気に戻り、慌ててネギの元へと駆けつける。それを頭を掻きつつやれやれといった様子で見守る和也。ハルナ達はそれを微笑ましそうに見ていた。一部、恥ずかしそうにしている者もいたが。

「コピー出来たヨ」

「じゃ、カードを渡しといてくれ。そろそろお客さんが来る」

「わかっタ」

ココネとそんな会話をする和也だったが、シャークティはそれを聞いて首をかしげていた。というのも――

「あの、そんなお話は聞いておりませんが……」

「話してなかったしな。お、来たな」

戸惑うシャークティに和也があっさりと答えた時、離れた場所に大きな魔方陣が現れた。

「なにあれ!?」
「あんなの……見たこと……ナイ」

驚く美空の横でココネはそんなことを漏らす。少なくとも彼女が知る中であのような魔方陣は無いのだから。でもそれはシャークティも同じで戸惑っており、他の皆も戸惑いや驚きを見せていた。ネギも状況に気付き、見知らぬ魔方陣に驚いていたし。
やがて、その魔方陣から複数の人影が現れる。その中にはなぜかフリムとミーナリアの姿もあったりするが。

「おいおい、フォワード勢揃いって……いいのか、そんなことして?」

「和也が目を付けた子達を見てみたかったしな。ていうか、それなら有望株やん? それならぜひともスカウトせんとあかんと思ってな」

「悪いがそれはしばらく待ってくれないか? 色々とあってね。そういやナンバーズ達は?」

「今回はお留守番や。六課を空けるわけにもいかんしな」

「だったら、メンバー勢揃いで来るなよ」

と、なにやら関西弁のような口調で話す女性と会話する和也。どうやら顔見知りのようなのだが――

「あの、和也さん……この方々は?」

「ああ、これは自己紹介もしないで……初めまして、時空管理局本局古代遺失物管理部機動六課部隊長、八神はやていいます。よろしく」

「時空……管理……え?」

刀子の疑問に女性――はやてが笑顔で答えるもののシャークティが首をかしげる結果となった。というのも――

「なんだい、その組織は? 少なくとも聞いた覚えは無いんだけど?」

「そりゃそうだ。俺は行ったことは無いんだが、魔法の国はこことは別の次元にあるんだろ?」

「え、ええ……そうですけど……」

真名の疑問に和也が答え、それにシャークティがうなずく。厳密には違うのだが、概念的に言えば魔法の国は別次元の世界と言ってもいい。

「その魔法の国と同じように別の次元にはこことは異なる世界が存在する。それも無数にな。時空管理局はほんの一部だが、その世界を管理したり交流したり。後はそういった世界に渡って犯罪やらかしてる奴らを取り締まったりとか……大雑把なんだが、こういったことをしてる組織。ついでに言うと知らなくて当然だな。時空管理局も魔法の国と同じでこことは別の次元にある。それに交流もまったくないから、知らなくて当然だな」

「後、うちらの部隊はロストロギアって呼ばれる古代文明の遺失物の確保と管理をしてます。時空管理局の目的の1つでもあるしな」

和也の話を補足するようにはやてが続ける。もっとも、ネギ達は驚き半分戸惑い半分といった様子だが。まぁ、自分達の知らない世界が無数にあって、しかもそれを管理している組織が存在する。そんなことをいきなり聞かされても、すぐに信じるのは……まぁ、まず無理だろう。

「あの……和也さんは……どうしてこの方々とお知り合いに?」

「ああ、昔仕事でポカやらかして異世界に飛ばされたことがあってな。その時に出会った」

戸惑ってる夕映の疑問に和也があっさりと答える。それを聞いたもう1人の女性……なのはは笑みを浮かべ、赤髪を2本のお下げにしてる少女が「そんなこともあったな〜」と漏らしていたが。

「とりあえず、自己紹介はしてもらうが……所属とかは言わんでもいいぞ。混乱させるだけだろうしな」

「そうだね。私は高町なのは。よろしくね」
フェイト・T・ハラオウンです」

 和也の言葉にまずはなのはが笑顔で、フェイトも頭を下げて自己紹介し――

ヴィータだ。よろしくな」
シグナムだ」
スバル・ナカジマです。よろしくね、みんな!」
ティアナ・ランスターです」
エリオ・モンディアルです」
「初めまして、キャロ・ル・ルシエといいます」
「初めての人もいるよね。シャリオ・フィニーノ。シャーリーって呼んでね」
ルーテシア……よろしく……」
リーンフォースです。よろしくですぅ〜」
アギトだ」

他のメンバー達も思い思いの自己紹介をするが……ネギ達の注目はリインフォースとアギトに向けられていた。まぁ、彼女達のサイズ……いわゆるお人形サイズなのだが……この世界ではまず存在しない。精霊とかは除くとしてだが。なので興味が行ってしまうのである。

「おチビちゃん達に注目するのもいいが、お前らちゃんと聞いてたか?」
「誰がチビだ!」 「です!」

和也の言葉にアギトとリーンフォースがすかさずツッコムが、スルーされた。

「で、出来てるか?」

「もちろんよ。ちょっと徹夜しちゃったけど、文句無い出来だと思うわよ?」

アギトとリンフォースに睨まれながらフリムがケースを開けた。その中にはビー球サイズの水晶の左右に同じ材質で出来たブレードアンテナが付いた物。縦長の六角形でふちが金色になっており、黒いパネルの真ん中に十字の星が浮き彫りされた物。シルバーに輝くカードで、その中央には五芒星が刻まれた物。その3つが収められていた。一見するとアクセサリーにも見えなくはない物ばかりだった。
和也はそのうちの1つ、水晶のアクセサリーを手に取ると、ネギに向かって放り投げる。

「え? っと……これは?」

一瞬戸惑ったが、なんとか受け止めて問い掛けるネギ。アスナ達も興味を惹かれてか、それを見ていたが――

〈そんなに見られても困るのだがな〉

「うえぇ!?」
「し、しゃべったぁぁぁぁぁぁ!!?」


アクセサリーにしか見えない物がいきなりしゃべり出した為、大いに驚くネギとアスナ。時空管理局組以外の皆も似たようなもんだったが。

「か……カズヤ、これなに?」

〈これとは言ってくれるな。我が名はベオウルフ。お前の教育係としてデバイスに生まれ変わった者だ〉

「ベオウルフ? 確かそんな名前の英雄がいましたが……」

「本人って訳じゃないがね。その名を名乗るに相応しき魂。そいつを使って、デバイスを作ったんだがな」

戸惑うネギをよそにあっさりと答えるデバイスことベオウルフ。その名を聞いた夕映がそのことに気付き、和也が答えていたが。

「あの……デバイスってなんですか?」

「それを説明する前に……はい、これがアスナちゃんので、こっちがアーニャちゃんのね」

ベオウルフを見つつ問い掛けるネギにフリムが言いながらアスナには六角形のアクセサリーを、アーニャにはカードを渡した。

〈初めまして、マスター。私の名はエクシルと言います。以後、お見知りおきを〉
〈初めまして、エンバースと申します。マスター、これからよろしくお願いいたします〉

「え? あ……よ、よろしく……」
「ど、ども……」

渡されたアクセサリーことエクシルとエンバースの挨拶に戸惑いつつも返すアスナとアーニャ。2つとも女性の声を響かせていた為、優しい感じを受ける。その様子に時空管理局組は笑みが浮かんでいた。どうやら、この状況は彼女達にとっては面白いらしい。唯一、なのはとはやてだけは違う意味の笑みのようにも見えたが。

「それじゃ、それを構えてセットアップって声に出して頂戴。あ、アスナちゃんはこれから起きることは受け入れるようにね。一応大丈夫なようにしてあるけど、あなたの場合魔法無効化が変な干渉起こしちゃうかもしれないから」

「は……はい……」

フリムに言われて戸惑った返事を返すアスナ。ネギとアーニャも互いに不安そうな顔を向けているが……やがて、意を決したように思い思いの形で渡された物を構え――

『セットアップ!』

思わず叫んでしまう。が、それと同時にそれは起きた。3人の衣服が分解されるように消えたかと思うと別な物が纏われていく。

「え? ええぇ!?」 「な、なにこれ?」 「これって……」

戸惑う3人の服はまったく別な物へと変わっていた。
ネギは青いウェットスーツのようにフィットしているズボンに赤い何かの制服のような上着の上に白のジャケットを羽織っている。胸元にはあのビー玉にブレードアンテナが付いたアクセサリーが飾られていた。特徴的なのが両手足に装着された物だ。2つのギアが組み込まれており、今にも回転しそうな感じをさせる。
アスナは騎士風の服装になっていた。鎧らしい物はあまり装着されていないが、感じとしてはそれがしっくりとくる。腰には鞘に収まった剣があり、左腕には渡されたアクセサリーと同じ形の小型の盾が装着されていた。
アーニャは魔法使いという言葉がしっくりくるような服装だった。白の丸い帽子に白のマント。膝までの白のスカートにピンクの上着。杖は金属製……というか、なにやら機械化されている。先端にはルビーのように赤く輝く球体があり、その中には五芒星が輝いていた。

「か、カズヤ……これって……なんなの?」

「シャーリー、説明よろしく。俺、そういうの得意じゃないからな」

「はいはい。まず、渡した物はデバイスと言います。あなた達風に言うなら魔法使いの杖って所かな? 魔法を発動させる為の物なんだけど、魔法使いの杖と違うのはAIによる制御がなされてるってのと、 登録が必要だけど詠唱無しで魔法が使えるようになるって所かな」

「嘘!? 詠唱無しで!?」

戸惑うネギの疑問をシャーリーにスルーする和也。シャーリーは嫌な顔せず説明し、それを聞いたアーニャは驚きを隠せずにいた。ネギ達魔法使いにも詠唱無しで魔法を使うことは可能である。ただし、詠唱有りよりも難易度が高い上に高度な物は使えないという欠点がある。デバイスはその欠点を克服してるというのだ。アーニャにしてみればそれは驚き以外の何者でもない。

「まぁ、制御とかは自分でしなきゃならないけどね。後、あなた達が装着した物はバリアジャケットという物よ。いわゆる魔力で出来た鎧。これによって、高い防御力を得ることが出来るの。あ、装着されてない所にも魔力の膜が張られてるから、安心してもいいわよ」

「えっと……私、魔法使えないんだけど……」

「その心配はいらないわ。アスナちゃんのはバリアジャケットと攻撃の一部に使うくらいだから、本格的な魔法を覚える必要は無いの。ただ、そのままだと飛行魔法は使えないから、そっちは覚えてもらう必要はあるけど」

「空飛べるの!」

説明を続けるシャーリーの話を聞いてかそんな疑問を漏らすもののフリムが笑顔で答え、それを聞いたアスナが驚いていた。まさか自分も魔法使いのように飛べるとは思わなかったのだ。

「ネギ君だったっけ? 君のデバイスって私とおそろいだね」 「ふむ、私の騎士甲冑とほとんど同じだな」 「わ〜、私とおそろいですね」

「あ〜……デザインとかめんどくさかったんで、あなた達のを参考にしたのよ。使ってる部品も流用しちゃったし」

ネギにスバルが、アスナにはシグナムが、アーニャにはキャロが近付き、それぞれ3人の姿を見ていた。それを聞いたフリムがそんなことを漏らしてたりするが。

「す、凄いよ……これなら戦えるよ!」 「うん、そうよね」 「これなら……」

自分の姿を見つつ、なにやら喜んでるネギ達。こんなものがあるならば、先日の悪魔とも戦える。そう思っていたのだが……

「ほう……戦える……ね。じゃあ、試してみようか? 相手は俺だが」
『え゛っ!?』

和也の言葉に3人が固まる。まぁ、和也の強さを知っているのだから当然とも言える反応である。

「あらら、墓穴掘っちゃったみたいね」
「あはは……ご愁傷様……」

と、ため息交じりのティアナと同情してる様子のスバルだったが――

「何を言ってるかデコボココンビ。3人が終わったら、次はお前達だぞ」
「なんで!?」 「もしかして、やぶへび!?」

和也にいきなり言われて驚く2人。そんな様子になのはやフェイトは苦笑するしていたが。

「ど、どうしよう……」

「どうしよって……どうするのよ……」

「和也のことだから手加減……してくれなさそうよね……」

戸惑うネギと同じように戸惑ってるアーニャ。そこにアスナの絶望的な一言に3人は思わず落ち込んでしまう。どうしようか……とあれこれ話し始めた時――

「じゃあ、始めようか?」
「いきなり!?」

和也の言葉にネギは驚き……数分後――

「相変わらず動きが直線的だぞ、直情娘!」

「そ、そんなこと言われたって〜。ティアナ、援護援護!?」 「そんな余裕ないわよ!?」

バリアジャケットを纏ったスバルとティアナが和也と模擬戦を繰り広げていた。ちなみに和也は武装は一切してない。すなわち素手だ。で、ネギ達はといえば……寝ていた。ボロボロになって……

「あうぅ……」
「あの悪魔……本気で手加減無しじゃないの……」
「私達が……何したって言うのよ……」


正確には和也にほぼ瞬殺されてボロボロになったのだが。ちなみにのどかと夕映が慌てた様子でネギの介抱をしており、他の面々は哀れみや同情の表情を向けていた。

「でも……」

ふと、アスナはあることを思い出す。それは和也に倒された直後に言われた言葉。

「新しい装備をもらったからといってはしゃいでると泣く羽目になるぞ」

確かに結果的にそうなったのだが……アスナには別な意味があるように思えた。

「ん? そういや、なのはとミーナリアはどこ行った?」

「ああ、用があるってどこかに行っちゃったよ」

スバルとティアナの相手をしつつそのことに気付いた和也にフェイトが答えた。それを聞いた和也は「ふぅ〜ん」と漏らし――

「あた!?」 「いた!?」

スバルとティアナの脳天にチョップを喰らわせる。

「コンビネーションは良くなったが、そろそろ単機での戦闘も覚えた方がいいぞ、お前ら」

「なんかダメ出しされた!?」 「うう……そっちの訓練もしてるのに……」

打たれた頭を両手で覆うスバルとティアナ。少しばかり涙目であったが。

「す……凄い……」 「ああ……私にはあそこまでは無理だな」

一方で刹那と真名が感心したように見ていた。古菲や楓、刀子にシャークティも似たようなものだった。なにしろあの和也を相手にあそこまで戦ったのだ。和也の実力を知ってるが故に感心してしまう。もっとも、彼女らは和也の本気を知らない。知っていたら、違う感想が出ていただろうが……

「やれやれ、なにしてんだかな」

頭を掻きつつ、そんなことを漏らす和也。しばらくして、復活したネギ達をはやてがスカウトするという光景が見られることとなる。和也によって待ったが掛けられるのだが……



場所は変わり、麻帆良の中にある公園。その中にあるベンチにネカネは座っていた。会わせたい人がいる、だからいわれた場所で待っていて欲しい。ミーナリアからそんな電話を受けのでここへと来たが……誰のことだろうと思いつつ、彼女が来るのを待った。

「ごめん、待たせちゃったね」

と、手を振りながら現れるミーナリア。その横にはなのはの姿があった。もっとも、なのはのことを知らないネカネは誰だろうという疑問が浮かんでいたが。

「この人があなたに会わせたかった人。名前は――」
「高町なのはです。ネカネさんですね? お話はミーナリアさんから聞いてます」

「え? あ、どうも……」

ミーナリアに紹介され笑顔で左手を差し出すなのは。ネカネは戸惑いながらも立ち上がって握手をした。

「さてと……私は一旦離れるわね。ここからの話は2人だけの方がいいでしょうし」

「え? あの……」

そう言ってどこかへと行ってしまうミーナリア。ネカネは戸惑うのだが、ミーナリアの姿はすでに公園から消えていた。

「座りませんか?」

「え? あ、はい……」

くすくすと笑うなのはに勧められるまま、先程まで座っていたベンチに座り直すネカネ。そのすぐ後になのはも隣に座る。

「お兄ちゃんのことで悩んでるそうですね?」

「えと……お兄ちゃんって、和也さんのことですか?」

「ええ……10年くらい前まではご近所さんでしたし……まぁ、私の方が一方的にそう呼んでるだけなんですけどね」

ネカネの疑問に話していたなのはが苦笑を漏らした。そして、遠い目をしながら話し始める。それは和也との関係のこと――10年前……自分は9歳の女の子で和也は高校生だった。当時の和也はとんでもなく無愛想だったらしい。理由は知らないのだが両親が行方知れずで実質1人暮らし。そのせいかもしれない……と、聞かされたネカネは信じられないといった表情をしていた。だって、今の和也からは想像が出来ないからだ。
そんな彼をなのはは慕っていた。ただなんとなく、和也と一緒にいるのが好きだった。が、ある日を境に和也は姿を見せなくなる日が多くなり……なのはも時空管理局に関わることになり……それが重なってしばらくの間、会うことが無くなる。ちなみに時空管理局のことを簡単にだが聞かされたネカネは少しばかり驚いていたりするのだが。
再会は8年前。なのはがヴィータと共に仕事である異世界へ向かった時のことだった。当時、なのはは自らに無茶な訓練を課していた。自分1人でも仲間を、大切な人を守れるようにと……だが、それは彼女の体を蝕んでいった。更に9歳の頃から無茶を続けていたのも重なり、ついに限界を超え……魔法の制御を失ったなのはは凶弾にさらされる。正史ならば、彼女はここで倒れていた。だが、イレギュラーがあった。轟く銃声。撃ち落される凶弾。制御を失い落下するなのはをお姫様抱っこで受け止める人物。

「よぉ、久しぶりだな。ところでここどこ?」
「ふえ?」


なんか、やたらと陽気な感じになったご近所さんこと和也との再会。それはなのはを色々と戸惑わせることとなったが。まぁ、和也がなのはを救ったことは間違いなく、ヴィータは泣きながら和也に感謝していた。 その後、アースラへと案内された和也は当時のメンバーから感謝されつつ、なぜあの場にいたのかを問われたのだが……

「いや、仕事でポカして機械を暴走させたんだよ。で、なんかぶっ飛ばされて、気が付いたらあそこにいてな。どこだろうと思ってたら、嬢ちゃんが襲われてるだろ? それでとりあえず助けたと」

なんか、あっさりとした感じで答えていた。異世界に飛ばされたというのに驚くどころか戸惑った様子も無い。そのことに関し、某執務官が問うのだが――

「別に気にするもんでもないし。まぁ、暇つぶしも出来たからある意味ラッキーだったけど」

と、逆に戸惑わせる返事が返ってきたりする。

「和也……さん、らしいですね」

そんな話を聞いて、ネカネにわずかにだが笑みが浮かぶ。だが、同時に疑問も感じる。どうして暇つぶしをしようとするのだろうか? 暇つぶし……彼は自分の仕事をそんな理由でしている。たったそれだけで、ネカネにしてみれば命の危険すらあることも笑いながらやってしまう。なぜそんなことを……そんな想いとは裏腹になのはの話は続いていた。
助けられたなのはだったが、無茶な訓練は続けていた。あの時は自分がふがいないせいで……そう思い込んで訓練に没頭する。そんなある日、訓練を始めようとするなのはの前に和也が現れた。ちなみになんでミッドチルダにいるかというと、和也の実力に惚れ込んだ某艦長がスカウトしようと足止めさせていたからである。
もっとも、和也は「退屈になりそうだから」という理由で断っていた。留まっている理由は「なんか、面白そうなことが起こりそうだし」と彼らしいものだが。 それはそれとして、なのはは戸惑っていた。なんで和也がここにいるのかと?

「お前さ、元から不器用なんだから1人でなんでもしようとしない方がいいぞ?」

そんなことを言われたなのはは怒り出した。彼女にしてみればひどい侮辱だった。必要だった。仲間を、大切な人を守る為にはどうしても――

「じゃあ、なにか? お前は1人になりたいってのか?」

最初、何を言われたのかわからなかった。だが――

「1人でなんでもやろうってのは1人になりたいってのと同じようなもんだぞ? そうやって友達や大切な人から離れて、本当に守れると思ってんのか?」

その言葉はなのはにとって衝撃だった。なぜなら今まで自分がしてきたことを否定されたようなものだった。だから、なのはは否定した。力一杯に。違う……自分がしなきゃならないことだから……と――

「そんじゃ、お前が1人でやらなきゃいけないほど、あの人達は信用出来ないのか?」

和也の言葉は、なのはの思いを打ち砕いた。信用出来ない? そんなはずは無い。だって、あの時もみんなと一緒に――

「あのさ、1人でやるよりみんなでやった方が楽だし、確実だろ? 効率だっていいし、多くの人を守れると思うけど?」

確かにそうだった。その方がいいに決まってる。では、なぜそうしなかったのか? それは――

「今まで何があったかは聞かないでおくけどさ、嬢ちゃんは1人で色々と抱え込みすぎるんだよ。しかも、余計なことまで抱え込んじまうしな。それで自分で出来る範囲を超えちまって……結局、無茶してるんだよ、お前さんは。まぁ、なんだ。なんでも仲間に頼れってわけじゃないんだし、話すくらいなら別にいいだろ? それともなにか? 無茶して仲間に心配させるつもりか?」

それは前にも友達に指摘されたことだった。でも、和也の言葉はなのはに気付かせた。自分の思い違いに。仲間を、大切な人守る為に、心配させないようにとしていたつもりが……あの時、友達に言われたのに……自分はまた間違えていたことに……
そのことに気付いたなのはは泣いた。和也の胸の中で思いっきり。今までの何かを吐き出すかのように……和也はそんな彼女を優しく抱きしめた。泣き疲れて眠ってしまうまで。
その後なのはは数日間眠り続け、目を覚ました時に見たものは自分を心配する仲間達の姿であった。それ以降、なのはは無茶な訓練をしなくなり、仲間達と一緒に過ごすようになる。だからだろう……この時は誰も気付かなかった。彼女を蝕んでいるものがまだ消えてはいないことに……あの時、彼女の不調は無茶な訓練による疲労のせいだと思い込んでしまったが故に……
しばらくは時空管理局の仕事をしながらも穏やかな日々が続いた。和也もなんだかんだで仕事を手伝ってくれる。まぁ、その時は和也の異常な能力にみんな驚いていたりするのだが……事件は唐突に起きた。
悪魔の襲来――時空管理局は混乱の渦に叩き込まれた。なにしろ、自分達にとっては未知なる相手。しかも、自分達の魔法がまったくといっていいほどに通じない。それでもなんとか善戦は出来た。理由はなのは達……特に和也の存在が大きかった。故に最初、時空管理局は和也を取り込もうとしたが……その戦いのさなか、和也がハーフデビルであることが明かされてしまう。
途端に敵意を向ける時空管理局。もっとも、和也は和也で気にすることなく戦っていたが。そんな彼をなのは達は心配そうに見ていた。彼がハーフデビルであることには驚いたものの、時空管理局が思うような存在ではないと思っていた。いや、思えなかった。彼によってなのはは救われ、自分達も助けられていたし、人柄を見ても悪意があるようには思えなかった。 そのことに関し、和也に話を聞くのだが――

「ん? いやな、なんかあいつらが来たのって俺がここへ飛ばされたのが原因らしいしな。そんなわけで知らんぷりっつ〜のもなんだしよ。とりあえず、片付けてからおさらばしようかとね。だから、あんま気にしなくていいぞ〜」

と、気にした風もなく。ていうか、明らかにのん気な発言であった。だからといって、なのは達の心配が消えるわけでもなく……それは起きてしまった。
それは爵位級の悪魔が襲来し、和也がその相手をしてる間のこと。なのは達は別の悪魔の群れと戦っていた。その時だった。なのはを蝕んでいたものが再発してしまい……なのはは悪魔の攻撃によって重傷を負ってしまう。すぐに和也が駆けつけたものの……手遅れに近い状態だった。体中に包帯を巻き、昏睡するなのは。このままでは命を落とすか……助かったとしても眠り続けるか……目を覚ましたとしても一生寝たきりとなるか……誰もが絶望的な状況を悲しんだ。
なのはは魔法に関わってから、いく度となく大変な目にあってきた。それでも負けなかった。諦めずに立ち向かって、解決していった。そんな彼女にこんな仕打ちは誰もがあんまりだと思わざるおえなかった。そんな中、眠り続けるなのはの夢の中に和也が現れ――

「さてと、嬢ちゃんには2つの道がある。このまま人として静かに余生を過ごすか……俺と契約して人間やめて、人ならざる道を歩んでいくか。さて、どっちにする?」

「―― 契約……ですか?」

「ええ……あなた方魔法使いに主従の契約があるように、悪魔にも似たような契約があるんです。ただし、悪魔の方は契約すれば完全な隷属となります。絶対服従……力を得る代わりに契約した悪魔に服従しなければならない。また、魔性化といって人では無くなり……契約した悪魔が滅びぬ限り、契約した者も滅びることはありません」

気になる言葉について問い掛けるネカネになのはは静かに答え……制服の上着のボタンを外し始める。なお、和也がなぜこのようなことを持ちかけたかと言えば、当時の彼は治療や再生といった方面の魔法や力が不得手だったからである。彼なりになのはを助ける方法がこれしかなかったのだ。なお、6年前のネギの村で見せたネカネの足の再生させた力はこの事件を機に覚えた。

「そして……私はお兄ちゃんと契約しました。これがその契約の証……みんなをほっとけなかったから……目を覚まして、すぐに戦って……みんなを驚かせて……訳を話したら、お兄ちゃんと一緒に怒られちゃいましたけどね」

微笑を浮かべながらなのはは胸元をさらす。そこには文字にも模様にも見える、どこか禍々しい文様があった。それは和也となのはの契約の証。これと同じものをミーナリア、フリム、ジェスター、そしてはやてやフェイト、リンディにレティも持っている。もっとも、刻まれる場所は個人個人で違うのだが。ちなみになぜはやてとフェイト、リンディにレティが持ってるかといえば、ある事情を知ったからである。
どんなのかは……まぁ、後ほど語るとして……事件は解決し、和也はミッドチルダを去っていった。といっても、時たま顔を出しては仕事を手伝ったり、裏でなにやら暗躍してたりするが……この暗躍が機動六課設立に貢献してたりする。
なお、JS事件はどうなったかといえば、正史とはかなり異なった結果になった。ていうか、某JS氏には哀れというほか無いものだったりする。ナンバーズは全員和也に敗れ(堕とされたともいう)、なおかつ本来死ぬ者も生きており――さらわれるはずだったギンガとヴィヴィオも無事であり、最後には全員に裏切られるというものだった。
それはそれとして、そんなこんなで和也と付き合って数年が経ち、なのはが14歳の時。彼女は疑問に感じていたことを聞いてみることにした。暇つぶし……和也はどんなに危険なこともそんな理由でやってしまう。なぜそんなことをするのか、それがわからなかった。でも、聞いていいかわからず……だが、気になるのも事実なので思い切って聞いてみたのだ。

「あ〜……色々とあってな、俺は永遠に生きなきゃならなくなったんだが……元々人として生きていたせいか、何やっていいかわからなくてな。それに年々人としての感覚が薄れていって、悪魔の感覚に慣れてくると普通のことじゃつまらなくなっていってね。それで無理矢理にでも楽しめるものを探して……結果が命懸けなことになったと。ま、その方が生きてるって実感もあるんでいいけどな」

「色々……とは?」

「それはいずれお兄ちゃんが話すと思います。その出来事のせいでお兄ちゃんは人じゃなくなって……人の感覚も少しづつ失っていって……」

ネカネに答えるなのはは苦笑を浮かべていた。悲しかった。和也は自分以上に苦しい道を歩んでいた。 なのにそれを苦と感じず……いや、苦と感じることが出来ないことに……なのはは泣いた。和也の胸の中で。
この時になのはは自分の想いに気付いた。和也が好きだと……ミーナリアやフリムにジェスター、他の女性達のことは知っている。それでも……和也と一緒にいたかったから……なのはは和也と唇を重ね……体を重ねた。
なお、このことがフェイト達に知られてしまい、彼女達も和也と契約するきっかけとなってしまったりするのは……まぁ、なにかしらの運命だろう。

「私がお兄ちゃんと体を重ねたのは、お兄ちゃんが哀れだったからじゃない。ただ本当に一緒にいたかったから……それをお兄ちゃんは拒みませんでした。たぶんですけど……お兄ちゃんは壊したくはなかったんだと思います。私達の想いや思い出や……そういうのを……だから、あなたもいてもいいんです。お兄ちゃんのそばに……そういうのを楽しみたいとも思っているでしょうし」

なのはの言葉をネカネはただ呆然と聞いていた。でも、それを聞いたことで思い出す。和也は魔法を教えたりする時、いつもソファーに寝転がっている。だが、からかうことはあっても邪険にすることはなかった。だから、その時間はいつも笑顔があった。和也も自分もみんなもそれを楽しんでいた。
刹那の時だってそうだ。彼にはわかっていたのだ。刹那の正体を知ったとしてもみんながどんな反応をするかを。彼はけっして人を傷付けるようなことはしない。するとすれば、それは彼にとって許せないことをした時。なぜなら彼は……優しいから――

「えっと……あの……その……」

そのことに気付いたネカネだが、なんと言えばわからず声に出せずにいた。でも、和也が好き。それは嘘偽り無い自分の本心。

――だから、私は……
「あの……ありがとうございます。私、その……それじゃあ!」

とりあえずお礼を言いながら頭を下げ、慌てた様子でネカネは去っていった。それを呆然と見送るなのは。その横にはいつの間にやらミーナリアの姿があった。実は去ったように見せかけて気付かれぬように公園に戻り、隠れて話を聞いていたのだ。

「ご苦労様。どうやら、彼女も気付いたようね。ただ――」
「ただ?」

ミーナリアの言葉に首をかしげるなのは。確かにネカネは元気になったように見える。それならば問題は無いと思ったのだが……

「もしかしたら、余計な勢いまで付けちゃったかもね」

苦笑交じりのミーナリア。もっともなのははわかっておらず、首をかしげるだけだったが。



その日の夜。魔法の授業も終わり、管理人室には和也とネカネだけになった。今日は見回りも無いので寝てしまおう。と、ソファーに座っていた和也が思った時だった。

「あのさ……なんで防音と人払いの結界張ってんの?」

そう、ネカネは和也が今言った結界を張ってるのである。なんか、念入りになまでに。なんとなく、これと似たことがあったような気がするな〜と考えてる和也の前にネカネがやってくる。パジャマの上だけを着ただけで……下着も付けずに。

「え〜と……何があったんだ?」
「私と……契約してください」

額に人差し指を当てつつ、なにやらデジャヴを感じてる和也。そんな和也にネカネは真剣な眼差しで答えた。

「理由を聞いてもいいか?」

「好きなんです……和也さんのことが……その証が欲しいから……」

真剣な眼差しを変えず……でも、頬を紅く染めながらネカネは答えた。それを聞いた和也はため息を漏らす。ミーナリアとなのはがいなかったから、あの2人と何かあったのだろう。今の彼女は元気が無かった頃とは違い、確かな決意を秘めた眼をしている。だが――

「聞いてるんだろ? 俺と契約したらどうなるかって?」

「はい……確かにそのことで後悔するかもしれません……でも、欲しいんです。和也さんが好きだっていう証が」

戸惑いを含みながらもネカネは答える。確かに人で無くなる事に抵抗が無いわけじゃない。でも、和也が好きというのは本心。だから彼のそばにいたかった。ずっと――

「やれやれ……ところでその格好は? 契約の時にそんな格好になる必要は無いんだけど?」

和也はそういうのだが、ネカネは無視するかのようにパジャマの上も脱いで一糸纏わぬ姿となった。スラリと伸びた四肢に膝まで伸びた黄金色に輝く髪。出る所は出て、くびれている所はくびれている、理想の1つと言っていいスタイル。それをネカネは顔を紅くしながらも和也にさらしていた。

「それは……欲しいからです……和也さんが好きだというもう1つの証が……」

語りながらネカネは和也の膝の上に座る。もう1つの証……それはなのはの話を聞いてから考えたこと。他の女性と体を重ねているのはミーナリアからも聞かされていた。でも、その中に自分がいないのがちょっと悔しかったから……

「ええと……いいのかな、これって?」

「いいんです……これは私が望んだことだから……」

和也に答えながら、ネカネは静かに唇を重ねた。初めてのキス……それを恥ずかしく感じながらもするのだが……

「ん! んん……んぅ……んぁ……」

不意に口内に和也の舌が入り込み、自分の舌に重ねてこようとする。そのことにネカネは驚く。さっきも言ったが彼女にとって、これは初めてのキス。なので、このような経験は無い。それを知ってか知らずか、和也は更に続けていく。舌を重ねたかと思うと今度は絡めあい、更にはネカネの唾液を舐め取ったかと思うと今度は自分の唾液を流し込んでくる。ネカネはそれを飲み込んでいた。ただ、されるがままに――

「ん……んむ……ん……んあ……は、はぁ〜……あ……」

やがて2人の唇が離れる。ネカネはどこか呆けたような心ここにあらずといったように和也を見つめ、和也はそんな彼女を笑みを浮かべながら見つめていた。そんな2人の唇を繋ぐかのように、煌く糸があった。

「キスは初めてだったかな?」

「だって……その……」

和也の言葉にネカネは恥ずかしそうにしていた。ネギの世話をしていたためか、彼女にはこういった経験も無ければ知識も無かった。すべてが初めての行為。故にされるがままになっていた。そのことを恥ずかしく思うネカネ。

「あの……ごめんなさい……」

「謝る必要は無いって。初めての子はやっぱ驚くだろうしな。で、続けるのかい?」

笑顔を浮かべる和也に謝っていたネカネは恥ずかしそうにしながらもうなずく。すでにその覚悟は決めている。そのために今こうしているのだから――

「それじゃ、初めての子には優しくしないとな」
「きゃ!」

言いながら入れ替わるようにしてネカネをソファーに座らせる。驚くネカネだが、それを無視するかのように彼女の両足を広げ――

「あ、それは……あ! んあ……あっ!」

親指でクリトリスを弄りながら、秘部のクレバスに舌をはわせる和也。それを受けるネカネは短い悲鳴を上げる。和也がしているからか不思議と嫌な感じは無い。むしろ――

「ふぁ、あ……あ……うあ……あ! あ、あぁ……は、あぁ〜……」

気持ち良くなっていく。それが現れるかのように声に艶やかなものが混じり始めていた。

「あ、や……指……あた、んん! ん、そん……ああ!」

と、クリトリスを弄る指を人差し指に変え、親指で秘部のクレバスを撫で回していた。それにネカネは体を振るわせる。クリトリスを弄り、秘部を撫でる和也の指が与える感触がどうしようもなくしびれるように気持ち良くなっていく。

「ふあ、あ……あ! あぁ……ああ! うぁ……かず……や、さん……も、わた……ひぁ……ああぁ!!」

秘部とクリトリスを弄られ、何かが昂ぶってくる。ネカネはそれに耐えようとするが――

「ひ、あ……ああ、あ〜!?」

耐え切れず、頭の中で何かがはじけるように軽くイってしまう。そのまま倒れるようにソファーに背を預けた。

「はぁ……あ、ん……かずや……さん……」

「イっちゃったか? でも、ここからが本番なんだけどな」

うつろな目でこちらを見るネカネを見つめつつ、和也はズボンを下ろす。下着も下ろすとそこにあったのはそそり立っている男根であった。

「お、大きい……」

それを見たネカネはふと漏らすのだが……知識が無い彼女だから知らないのはしょうがないのだが、和也の男根の大きさは平均を上回っている。ていうか、女性にこれ入るの? と言われそうなサイズであった。 そんな男根をマジマジと見つめるネカネに微笑を浮かべつつ、和也は彼女の下腹部に手を当てる。と、その手が淡い光を放ち、ネカネはどこか暖かいものを感じていた。

「あの、なにを……」

「初めてなんだろ? だからあまり痛くならないようにね」
「ん、んん……」

答えつつ、唇を重ねる。後、言わなかったのだがネカネが和也の男根を受け入れれるようにするためでもある。処女で和也のサイズをいきなり受け止めるのはキツすぎる……というのは和也の経験からだったりするが。

「いくよ」
「は、はい……」

唇を離し、ネカネの秘部に男根をあてがう。ネカネはそれをドキドキしながら見つめ――

「い、あ……う、んん! ん、はぁ! あ、あぐぅ!?」

ゆっくりと挿入されていくのと呼応するかのようにネカネの体が振るえ、軽い悲鳴を上げていく。痛みと圧迫感。確かにそれがあるのだが、同時に暖かさと気持ちよさもある。和也のおかげでネカネはそれを感じ、暴れることは無かった。

「ここからは一気にいくからな。力を抜いて」
「は、はいぃ……んぐ……ん……んぎぃ!?」

和也に言われて力を抜こうとするが、いきなり来た衝撃にネカネは更に大きな悲鳴を上げる。初めてのネカネはわからないのだが、実は和也の男根が彼女の子宮に挿入されているのである。むろん、和也の力がこれを可能にしてるのだが……初めての人に子宮姦って、あんたはどこの鬼畜ですか? 「大丈夫?」

「う、あ……あ、はい……痛くて……ちょっと苦しいけど……でも、なんか……気持ちも良くて……」

鬼畜なことをしておきながら平然と気遣う和也に、ネカネは息を荒げながらも笑顔を向ける。子宮に男根が挿入されたのを彼女は確かに感じていた。それを表すかのようにネカネの下腹部がわずかに盛り上がっている。と、2人が繋がっている所から、一筋の血が滴り落ちる。和也はそれを指でぬぐい、舐めとっていた。

「そっか……じゃあ、今度は動くから……いくよ?」
「は、は……ん……」

右の乳房をつかみつつ、ネカネが返事をする途中で再び唇を重ねる和也。

「んぐ!? んあ、あ! あぅ! うあ、は、ああ!」

唇を離すとゆっくりとした動きで腰を動かし始めるが、ネカネはそれに合わせるかのように声を漏らす。和也の男根が膣内を、子宮口を、子宮をこすりつけている。初めてのネカネにしてみればそれは痛みと苦しみを伴うもの。でも、和也のおかげでそれ以上に気持ち良さを感じ、それが声を荒げさせていた。

「ん、うぁ! あ! あ、ふぁ……ああ! ん、ぐっ……ふん! ん! ああ! あ!」

慣れてきたのかネカネの声に艶やかなものが混じり始める。それを表すかのように彼女の表情は淫らなものが見えている。

「あ、ん! んん……和也……さん……ん、ああ……」

求めるかのようにネカネは和也に抱きつく。和也もそれを受け入れるかのように優しく抱きしめた。

「かず、や……さ、ん! わた、し……も……ぉ……なんか、ハジ、んあ!」 「O.K」

イキそうなネカネに気付いたようで、和也の顔に笑みが浮かんでいる。そして、スパートをかけるかのように激しく何回も突き入れ――

「ひ! そ、あぐ! はげ、んぁ! あ! や、そん、あ! や、あ、ああ……ああぁ〜!!?」

その激しさにネカネは悲鳴を上げ、ついには盛大にイってしまった。頭の中が真っ白になるくらいに。

「ふぁ……あ、つい〜……あついのが……なかで……あ、あぁ……」

 同時に和也もネカネの膣内に……というか子宮の中に白濁とした液を勢い良く放っていた。それを和也に抱きつきながら、意識は朦朧としながらもネカネはしっかりと感じていた。そんな彼女の左の乳房。乳首の上辺りにあるものが現れる。なのはの胸元にあった同じ文様が……

「契約完了……今更だけど、本当に良かったのか?」

「はい……これが私の望みでしたから……」

「そっか……それはそれとして――」 「ん! あ、んぁ! はぁ……ふえ?」

和也の疑問に笑顔で答えるネカネだが、秘部から男根が抜かれたことに感じたかと思うとソファーに寝かされ、軽く驚いてしまう。

「和也……さん? ん……あ……」

何事かと思ってると胸を揉みまわされてしまい思わず声が漏れるのだが、揉んでいる和也は笑顔だった。

「あははは、久々なもんで俺の方はまだ治まりそうにないんだわ。だから、いいかな?」

なんてことを言ってるが、それが事実かのように和也の男根は未だにそそり立っている。それを見てしまうネカネだったが――

「ぷ……ふふふ……和也さんったら……いいですよ……私は和也さんのものですから……」

「ありがと」「ん……」

ネカネの言葉にお礼を言ってから、和也は唇を重ねる。やがて、部屋の中でネカネの淫靡な声が満ちるのだった。



次の日の朝――

「あ、お姉ちゃん。行ってきま……す……」 学校へ向かうネギがネカネを見かけて声を掛けるのだが、振り返った彼女を見て思わず立ち止まってしまう。そこにいたのは確かに姉だった。でも、いつもの姉とは違った気がした。昨日はあんなの落ち込んでいたのに今はそんな素振りすらない。それに……綺麗だった。なんと言えばいいのだろう……聖母……それがしっくり来るような笑み。そんな笑みをネカネは浮かべていた。

「あら、おはよう。って、どうしたの?」

「ふえ!? え、あの……」
「どうしたのよ、ネギ? なにかあった……の……」
「もう、なに立ち止まってんの? いくら時間に余裕があるからってのんびりしてたら遅刻……」
ネカネに声を掛けられ思わず直立してたりするネギ。そんなネギの元にアスナと若干不機嫌そうなアーニャもやってくるのだが……今のネカネを見て、ネギと同じように固まっていた。その後ろではこのかと刹那が驚いたような顔をしていたが。ただ、こちらの2人は何かを感じたのか複雑そうな顔を覗かせていたりするけど。

「どうしたの、みんな? 学校に遅れちゃうわよ?」

「え? あ、はい! 行ってきます〜!」
「あ、待ってよ!」
「待ちなさいよ、ネギ〜!」

ネカネに言われて慌てて立ち去るネギ。アスナとアーニャも慌てて追いかけるが、その一方でこのかと刹那はネカネに歩み寄り――

「ネカネさん。なんかいいことでもあったん?」

「そうね……和也さんのおかげで悩みが消えたのは間違いないかな?」

このかの問い掛けにネカネは笑顔で答える。誰もが見惚れそうな笑顔を……それを見て何かを感じたのだろう。見惚れている刹那の横でこのかは頬を膨らませ――

「いこ、せっちゃん」
「え? あの、お嬢様……あ、それでは」

若干不機嫌そうにその場を去っていくこのかの後を刹那は慌てて追いかける。それをネカネは笑みを浮かべたままで見送っていた。このかはまだ気付いていないのだろう。自分の気持ちに……だが、どこか感じるものがあり、それがネカネになにがあったのかを感じ取らせたのだろう。それに気付いたネカネは笑うのこらえながら、管理人室のドアに目を向け――

「それで和也さんはどうするんですか?」

「さて、どうしたもんかね?」

いつの間にやらそこにいた和也は、頭を掻きながらネカネに曖昧な返事を返すのだった。
なお、余談となるがしばらくの間、ネカネは和也を求めるようになる。あのセックスがかなりの刺激になってしまったらしい。和也もそれに応えるかのようにネカネを抱き、色々と開発してしまうことになるのだが……たぶん、いつか語られることとなるだろう。ていうか、あんたどこまで鬼畜なのさ?
それはそれとして、ネギ達は戦う力を得た。だが、それはネギ達が思うほど喜ばしいことではないことに……今はまだ、ネギ達は気付かない。

「いる……彼がここに……」

新たな試練が……迫ろうとしていた。



ネギ達のデバイス紹介

ベオウルフ
ネギ用のデバイス。AIには彼の英雄と同じ名を冠するに相応しい魂が使われている為、デバイス名ともなっている。仕様としては完全に格闘戦用なのだが、ネギが元々使っていた魔法の使用も可能。そのため魔法砲撃戦も出来る。
両腕と両足にはスバルのリボルバーナックルとノーヴェのジェットエッジを参考に造られたブラスターナックルとマッハエッジが装着されている。マッハエッジのローラー部分はスバルのマッハキャリバーに近いが戦闘の際の安定性を高める為、使用しない時はローラー部のみ外せるようになっている。 なお、ズボンはナンバーズ達のを。上着はエリオ。ジャケットはスバルのものを参考にされている。ていうか、ほぼそのまま使用しているけど。
ちなみに声が女性なのは、ベオウルフが女性だからである。ネギはそのことを知らないのだが……ベオウルフ自身長い年月を生き、様々なことを経験している為、色んな面で未熟なネギをサポートしていくこととなる。

エクシル
アスナ用のデバイス。分類としてはインテリジェンスデバイスとなる。剣での戦闘を視野に入れたためか、バリアジャケットのデザインはシグナムに似ている。というか、そのまま。左腕に装着されている小型の盾は『イージス』。剣は『フルンティング』と呼ばれるアームドデバイス。すなわち3つのデバイスを装備してることになるのだが、これはアスナの魔法無効化能力への対策のため。 エクシルのみではアスナの魔法無効化能力を制御しきれないため、エクシルにバリアジャケットと魔法無効化能力の制御を任せ、イージスとフルンティングに自身とそれぞれにあてがわれた制御を行っている。
イージスは大型の盾にもなり、アスナの魔法無効化能力も合わさって魔法に対してはほぼ完璧なまでの防御力を誇る。むろん物理的にも高い防御力を誇り、カートリッジを使用することで防御範囲を広げることが可能。ただし、アスナが未熟な為かそちらの方はまだ使えない。
フルンディングはカートリッジシステムを搭載してるもののレヴァンティンのような変形能力は無く、ほぼ純粋な剣として使用される。

エンバース
アーニャ用デバイス。こちらも分類としてはインテリジェンスデバイスとなる。バリアジャケットのデザインはキャロのものをそのまま使用。ただし、色のみワインレッドとなっているが。
基本的な魔法使いの装備とあまり変わらぬものだが、実を言えばアーニャのデバイスは未完成の状態でもある。これはアーニャが未だ戦闘形式が定まっていない為。なので、成長次第では現在杖の形をしているデバイスが別の形態に変わる可能性もある。また、アーティファクトの互換性をもたされているがこちらは試験的であり、未完成状態となっている。

和也の武器の紹介

ゲヘナ
槍の形状をした魔神具。とある事件で冥界の門に挟まれるように封印されていた魔神と戦い、勝利。その証として渡され、以降は和也の武器の1つとなる。
名の通り、地獄を切り取ってきたかのような禍々しい力を持ち、解放すれば周囲を地獄の空間のように歪ませることが出来る。そのため、ゴースト系には絶大な武器でもある。

バルバトス
巨大なハルバートの形状をしている魔神具。ある悪魔が所持していたが和也との戦いで渾身の一撃を受け止められた際、バルバトスがその力に惚れ込み、所持していた悪魔を見限って和也の武器となった。
ちなみにその渾身の一撃を受け止めた時、和也は素手だったりする。特殊能力こそないものの、その巨体がもたらす一撃はあらゆるものを粉砕する。そのあまりにも威力ゆえに和也の悪名『ヒューマノイドタイフーン』『トルネードデビル』と呼ばれる一旦ともなったりしてるが。



あとがき

というわけで、お待たせしました……のかな? 第6話はいかがでしたでしょうか? 今回は初のHシーン……は微妙すぎる;; お金もらって18禁書いてる癖にこの程度のものしか書けないとは……自分、ダメすぎますな……(DRTはアルバイトで依頼を受けて18禁書いてたりする)
それはそれとして、今回はなのは勢が登場です。最初、ネカネを励ます為になのはのみを登場させるつもりだったんですが……ネギ達にデバイス使わせたら面白くね? という安易な思いつきの元、なのは勢の登場となりました。ていうか、安直過ぎるよ私。しかも、なのは達もハーレム一員かい!?
と、1人ツッコミはここまでにしておきまして(おい)次回はネギに試練が訪れます。さて、どうなるやら……次回もお楽しみに〜


バック  ネクスト
書棚
風俗 デリヘル SMクラブ