『立派な魔法使いと歩き続ける悪魔』 第4話 『半悪魔 ハーフの少女を――』
その日の夜。管理人室は賑やかだった。
このか、のどか、夕映はネギとアーニャに魔法の基本的なことを学んでいた。途中からネカネも混じって教えている。アスナはそれを大人しく見学しており、ハルナはなにやらメモを取りながら興味深そうに見ている。
和也はというとソファーに横になっているだけ。顔を向けたりする時もあるが、動く気配は無かった。
と、いつの間にやらアスナとアーニャが言い争いを始めている。アスナがつぶやいたことに対し、アーニャが一言多く返したのが発端である。それをネギは止めようとするが、逆に2人の勢いに呑まれていた。それを微笑ましく見る面々。和也もやれやれといった表情で顔を向けている。
そんな様子を外から見守る者がいた。刹那である。彼女は怒りに満ちた表情だった。なぜなら、それは――
だが、刹那は気付いてなかった。そんな自分を和也が見ていることに……
和也が麻帆良に来て4日目の昼下がり――和也は缶コーヒー片手にベンチに座っており、その後ろにもベンチがあって、そこには1人の女性が座っていた。
英国圏と思われる優しく整った顔立ちに、背中まで真っ直ぐに伸びる絹糸のような光沢を放つ茶色がかった髪。ロングスカートにブラウスの上からでもわかる豊かな胸にスマートな体型。20前後と思われるその女性はメガネを掛け、文庫本に目を通していた。
『あなたのこと、早速嗅ぎ付けたみたいね。暴力団、マフィア、その他犯罪関係者の皆様は麻帆良の周辺から撤退してるわよ』
『根性の無いことで』
流暢な英語で話す女性。でも、視線は文庫本から動かしてはいない。和也も同じように流暢な英語で答えるが視線は空を向いている。
なぜこんなことをするのか? それは……
『あら、あなたに関わったらそれだけで数億から数十億の損失になるもの。彼らとしてはちょっかいを出すより大人しく過ぎ去るのを選んだみたいね。流石はヒューマノイドタイフーン、トルネードデビルよね。まぁ、それでも残ってる奴らはいるけど。馬鹿なんだか意地なんだか無鉄砲なんだかはわからないけど』
くすりと笑いながら女性は語る。裏の世界ではデビルウォーカーに関わるのはタブーとされている。なぜなら、和也に関わるとろくなことがないのだ。
先程、女性が言う損失がいい例である。和也は相手が真の悪党とわかれば容赦はしない。それこそ戦場の如く動き回る。そして、その被害は全て女性の言った連中が被ることになる。故に裏の世界でデビルウォーカーに積極的に関わろうとする者はまずいない。
ところでこの女性はなぜ和也の正体を知っているのか? もちろん、ちゃんと理由がある。それは――
『それと頼まれてた件、やっておいたわよ。関西呪術協会だったかしら? 今は経過待ちって所ね。信頼出来る人を置いたから、すぐにわかると思うわ』
『流石はジェスター。仕事が速い』
女性に答えてから和也は缶コーヒーを一飲みした。ジェスターというのは女性の名……といっても、通り名である。
彼女はいわゆる情報屋だ。星の数ほどの情報を持つ者『J』。だから、ジェイ=スター……それを略してジェスター。 男っぽい名前だが……実はこれには理由がある。それは……まぁ、いずれ本名と共に話すことになるだろう。
ジェスターは今、和也専属の情報屋をしている。そのため、和也の正体を知っており、同時に行動原理も理解していた。なぜなら、彼女は和也に大きな『借り』があり、それが元で和也と『契約』している。それで献身的とも言える仕事をしている。そのため、付き合いも長い。
『それにしても驚いたわ。あなたが一箇所の所に留まるなんて。そんなに面白そうなの?』
『ああ。特に魔法関係と悪魔が関わってる所なんてな。しばらくは退屈はしそうにない』
その問い掛けに和也は楽しそうに答える。その様子にジェスターはふむとうなずいていた。彼があの様子だと忙しくなる。長い付き合い故になんとなくそんな予感があった。ほぼ、確実になるであろう予感が……
『ほい、これ今回の仕事分な』
『ありがたく頂戴するわね』
ベンチの陰で何かが厚く詰まった封筒を和也から受け取るジェスター。中身は……まぁ、あえて言わなくてもいいだろう。
「それじゃあ、お仕事がんばってね」
流暢な日本語で話すとジェスターは立ち上がり、投げキッスをして去っていった。和也は……それを気にした風もなく、空になった缶コーヒーをゴミ箱に放り投げていたが……
「あ〜……ただでいいって言うんじゃなかったかな〜……どっかのマフィアにたかりに行くかね?」
空を仰ぐように和也はそんな後悔をちょっぴりしつつ、物騒なことを漏らす。その時だった。
携帯の着メロらしき音楽が鳴り響く。某特撮で駅のホームとかで聞こえてきそうな……それが聞こえてくると、和也は懐から携帯を取り出し、開いて耳に当てた。
「はい……なんだ、ばあさんか……は?」
その通話の相手の話に、和也は普段は見せないような表情……顔が引き攣っているのだが……を見せるのだった。
「なに? お前さんの知り合いが麻帆良に店を出すから、その許可をくれじゃと」
「ああ……そうなんだよ……あのババァは……」
学園長室……その中で話を聞いた学園長の言葉に和也はどこか困った様子でうなずいていた。まぁ聞いてわかるとおり、ババァと呼ばれる人物が麻帆良に店を出すことを決め、そのための許可を責任者からもらって欲しいと和也に頼んだのである。話を聞けばこれといった問題はなさそうに思えるが……
「唐突じゃのう……店はいつ出すと?」
「ばあさんのことだから来てすぐには開店してるな。ちなみに店つっても裏の方だから、表じゃ普通の住人を装うことになると思うぞ」
「本気で唐突じゃのう……しかし、なぜここに店を出そうと?」
「夕べ、電話があってな。その時にここにしばらくいるって話したんだが……その後にすでに荷造りしてたらしい。今日の電話ですでに出発した後だとさ。あのばあさん、行動力だけは無意味に高いから困るんだが……」
とまぁ、学園長の疑問に和也は答えていくのだが……その表情は珍しく沈痛な面持ちだった。あのクールな和也がここまで表情を崩すとは……どんな人物なのかと学園長は不安になる。
が、確かに聞く限りではとんでもない行動力である。話を聞いてから一晩で荷造りをし、次の日には出発してるというのは……
「どうやら、苦労させられてるようじゃの。その……名前はなんと言うか知らんが……」
「フリム……フリムーダ=アザゼス……まぁ、あのばあさんの行動力は俺以上の時があるからな。それが時たま困るんだが……」
学園長の疑問に答えつつ、和也はため息を吐く。その様子に学園長は更に不安になるのだが……聞きたくないが聞かねばならないことがある。
ちなみに和也はそう言うが、先日の不良グループ壊滅のことを考えると和也の行動力もとんでもないものがある。学園長がそのことを知っていれば、人のことは言えないという言うだろう。間違いなく。
「その……フリムさんとやらはどんな方なのじゃな?」
「魔導技工士。聞いたこと無いだろうから説明すると、魔法とか科学とかそういうの知識と技術を併せ持つ者……本人は錬金術に近いもんだって言ってたがね。まぁ、性格は行動力がありすぎるってこと以外はいたっていい人だから。下手なこと言わなけりゃ迷惑は掛けないな」
和也はそう答えるのだが……学園長はしわくちゃの魔法使いのばあさんが得体の知れない液体が満たされたツボをかき回してる所を想像してしまう。先程の話を聞いていてると、そういうのしか想像出来ないというのが本音なのだが……
「う、うむ……わかった。許可の方は会ってから……で、いいかの? 何時ごろに来るのじゃ?」
「確か、3時ごろに着くと言ってたな」
「本当に唐突じゃの〜」
和也の話にただただ圧倒されっぱなしの学園長。立場上、顔合わせしなければならず……フリムという人物を聞く限り怖い想像しかないため、本気で不安だった。話が終わり和也が去った後、学園長が高畑らに連絡したのは……まぁ、仕方の無いことなのかもしれない。
で、約束の時間。フリムという人物が住むことになっているアパートの前にバイクに腰かける和也と学園長、刀子、シャークティがいた。学園長は高畑にも声を掛けたのだが、仕事のため来ることは出来なかった。
「じいさんは当然として、あんたらは付き添いか?」
「ええ、学園長に頼まれましたので」
顔を向けてから刀子に顔を向ける和也。刀子はなんでもないといった様子で答えるが……実の所、興味からだった。学園長から聞いたあの和也が表情を崩すほどの人物とはどんな者なのか……そんな興味はシャークティもだったりする。
その時だった。甲高いエンジン音が聞こえてきたのは――
「来たな」
和也が呟いた時、遠くの方でこちらに走ってくるレースタイプのバイクが見えた。赤いフルフェイスヘルメットに同じ色のライダースーツ。
それを見た学園長が戸惑う。なぜなら、和也はばあさんと言っていた。だから、かなり歳を取った……自分と同じ歳のような老婆だと思っていた。だが、あの姿を見るととてもそうは見えない。だって、あのライダーは――
学園長がそんなことを考えている内にそのライダーは和也達の前に止まり、それを見ていた刀子らも戸惑った様子になる。ばあさんと呼ばれていたから老婆なのであろう……というのは学園長の話だが、話を聞く限りでは彼女らもそう思っていた。
でも、目の前のライダーはとてもそうは見えない。ライダースーツ越しに見えるラインから考えると女性としては長身の体はスマートなのだが、胸の方は大きかった。和也は会ったことは無いが、源しずかよりもありそうだ……と思ってしまったのは学園長である。ともかく、そう思っても差し支えないボリュームの胸を持っていたのだ、その老婆……いや、女性は。
その女性がヘルメットを脱ぐと、絹糸のような光沢を放つ黒髪がまっすぐに腰まで伸びるように現れ、その後に大和撫子という言葉が合いそうな美しく優しく整った和風の顔立ちが現れる。年の頃は20そこそこといったところだろうか。
「まったく、ばあさんもちったぁ〜静かに過ごそうとは思わねぇのかよ?」
「あら? 思い立ったが吉日って言うじゃないの?」
和也の呆れた声に女性は見た目どおりに綺麗で透き通った声で答えていた。
学園長らはそれを呆然と見ていた。女性の美しさではなく、聞いていたとはあまりにも違うギャップに……
「あ、あの……和也君? この方が……その……」
「フリム。フリムーダ=アザゼスです。あなたがここの責任者ですね?」
学園長の疑問に女性……フリムが笑顔で答える。だが、学園長は未だ戸惑ったままだった。違いすぎるのだ。聞いていたのとあまりにも……
「言っとくが若いのは見た目だけだぞ。元々はしわくちゃのばあさんだ。体が歳食いすぎて自由が利かなくなって言い出したと思ったら、あっさりとホムンクルス作ってそいつに自分の記憶と知識の全てを移しちまったしな」
呆れた様子の和也の話に、学園長は驚く。和也は簡単に言うのだが、今の魔法技術ではホムンクルスは不安定なものしか創れない。いや、倫理上禁忌とされているのだ。なので、お目にかかることはまず無い。
なのだが……フリムの体は普通の人間と変わりないように見える。それはある意味完成されたものであることを意味し……歳を取りすぎたというのはわからなくも無いが、だからといってあっさりとホムンクルスに移り変わるというのは――失敗すれば死ぬかもしれない。それでも実行してしまうフリムの行動力。それに学園長は納得したような様子だった。
「あら、いいじゃない。それにこの体はあなたの好みに合わせたのに」
「言っとくが俺はばあさんに好みを話した覚えなんざないぞ」
左腕に抱きつくフリムに和也は呆れた様子で返すが……それを刀子とシャークティは面白くなさそうに見ていた。和也の表情が無ければ、カップルに見えてもおかしくない光景。それが彼女らにはどこか羨ましくて……そう思ってしまう自分に気付いてはっとする。なんでそんなことを考えてしまうのかと戸惑うのだが……
「で、店の許可の方はどうなんだ?」
「お店の方は周りに迷惑を掛けないようにするのを約束いたしますので、お願い出来ないでしょうか?」
和也の問い掛けとフリムのお願いに学園長は悩む。行動力という点を除けば、彼女は悪い人ではないらしい。それはいいのだが……問題があるとすれば……
「ところでな。仕事場はどうするのかの?」
「ああ、それなら大丈夫です。この中にありますので」
学園長の問い掛けにフリムはバイクの後部に設置された左右のボックスの右の方を開くと、そこから洋風のドアを取り出す。某ネコ型ロボットがポケットから出すように。ちなみにだが、大きさや容量的に考えてボックスよりもドアの方が断然に大きい。当然なんだが……そんなのがどうやって入っていたのかと学園長らは疑問に思いながら見ていた。
「このドアを開けば、その向こう側が工房になっております。ドアを閉めれば外界とは完全にシャットアウトされて、防音はもちろんのこと例え事故が起きても外に被害が出ることはありません」
フリムは笑顔で話すのだが、学園長はと言えばどうしていいか困っていたりする。つまりは異空間をあのドアに創ってしまったのだろう。ボックスにドアを入れられたのも、ボックスがそのようになっているからだろう。
それをこともなげに見せるフリム。その技術力はとんでもないと学園長は判断した。こんな異空間を簡単に創ってしまう人物がただ者でないのは当然なんだが。
「ふ、ふむ……わかった。許可しよう。しばらくは監視とかが付くが良いかの?」
「いきなりやってきたのですから当然ですね。ええ、それは問題ありません」
戸惑い気味の学園長にフリムは笑顔で答える。監視が付くのを嫌がると思ったのだが……和也並に読めない人物に少々不安になっていた。
フリムはといえばドアをボックスにしまい、嬉しそうに和也に抱きついていた。それを刀子とシャークティは面白くなさそうに見ていたが……
「あ、そういえばミーナリアはどうしてるの?」
「着てるよ。たった今な」
今思い出したかのようなフリムの疑問に和也は答えるが、学園長は首をかしげる。多分、和也の知り合いなのだろうからそこは問題では無い。
ただ、『たった今』とはどういうことなのか? その答えは目の前で起きた。和也の背後から女性の腕と思われるものが現れたのである。それに身構える刀子とシャークティ。だが、その腕はそれを無視するかのように和也を抱きしめるかのように回されていく。
「和也、会いたかった〜」
「ほぼ、毎日のように会ってるだろうが」
女性の声に和也はそう返すが……それを見ていた学園長らは呆然としていた。和也の背後に1人の女性が抱きついていた。和也と同じくらいの背の高さで、脂肪と無縁と思えるほどまったく無駄の無いスマートな体。だが、胸のボリュームはフリム並かそれ以上にありそうで、銀糸のような輝きを放つ髪は地に付きそうなくらいに長く……その顔はまるで彫刻のように創られたかのような美しく整ったものだった。
が、学園長らが呆然としてるのはなにもその女性の美しさではない。まったく別の所だった。
女性の服装はブーツと肘まである手袋、魔法使いが被るような二股に分かれた帽子はまだいい。問題は着ている物だった。
いや、それは着ているといっていいのだろうか……というのも、女性の体を包むのはベルトのような革製の帯を体に巻きつけてるだけ。かろうじて胸の頂点と女性の大事な所を隠しているだけであった。そしてもう1つ、問題がある。
それは女性の背中から直に生えているコウモリのような翼と、お尻から生える先端が鋭い爬虫類のような黒いしっぽだった。しかも、女性は寝そべるような形で浮いており、その状態で和也に抱き付いているのである。
「か……和也君……その女性はもしや……」
「ああ、ミーナリア。見ての通り――」
「悪魔で〜っす」
学園長の震える声に、和也の紹介の後に女性……ミーナリアが答えた。それに反応したのはシャークティで身構えるのだが……
「ああ、こいつはちょっかいを掛けなきゃ無害だから。だから、そんな怖い顔すんな。綺麗な顔が台無しだぞ、シスター?」
「え?」
和也の言葉に固まるシャークティ。驚いた顔は紅く染まっている。それを刀子は羨ましそうに見ていたが……
「ふむ、まさか本物の悪魔と知り合いじゃったとはな」
「ま、色々と知り合いがいてね。おい、いくら人払いしてるつっても後がうるさいから着替えろ」
「は〜い」
やや戸惑った様子の学園長に答える和也の言葉に、抱きついていたミーナリアは返事をしてから離れる。すると体が光に包まれた。その光は地面に降り立つと消え、代わりにミーナリアの服装は変わっていた。
素肌が見える程に薄く両足を包む黒のストッキングと底が平らな赤のパンプス。左右にスリットが入った白のミニスカートと半袖タイプの白の女性用スーツ。もっとも、胸元は大きく開いており、帽子は無くなっていたが。
「ほらほら、和也が好きなガーターベルト」
「見せんでいい。それに勝手に人の好みにするな」
ミニスカートをたくし上げ、黒のガーターベルトを見せるミーナリア。ちなみにわずかに見える下着の色も黒だった。
それに学園長は思わず目を向けてしまうが、刀子とシャークティの咳払いに思わず反応し、顔を向けてみる。そこには明らかに怒りの表情の2人がいた。明らかに和也とミーナリアを睨んでいる。それを見た学園長は思わず怯えていた。
「ミーナリア……さんでしたね。どうして、ここへ? それに結界はどうなさったのですか?」
「結界なんて誤魔化そうと思えば簡単よ。それにここに来たのは和也がいるからよ。和也がいる場所が私の居場所なの」
ややこめかみを引き攣らせる刀子の問いに、ミーナリアは和也に抱きつきながら事も無げに答えるが……それはシャークティと共に彼女を戸惑わせるものとなった。
ミーナリアはそれが当然かのように答える。それが彼女らには嘘、偽りが無いように思えて……だから、余計に戸惑う。悪魔であるはずの彼女が、なぜそのように接することが出来るのか? 今の2人にはわからなかった。
「ミーナリアさんじゃったか……これからどうするのかな?」
「当然、和也と一緒にいるわよ」
「やれやれ、嬢ちゃんにどう話すかね」
学園長の疑問にミーナリアは当然といった様子で答えるが、和也はため息混じりに頭を掻いている。
「問題は起こさぬようにして欲しいのじゃがな……」
「善処はしよう」
汗を浮かべ困った表情の学園長に、和也は静かに答えるのだった。
その後、学園長らは帰っていったのだが、刀子とシャークティはどこか元気が無かった。
「早速、手を出したんだ」
「人聞きの悪いことを言うな。ばあさん、銃のメンテ頼んだぞ。後、バイクを俺好みにいじってくれ」
「はいはい。それにしても、あなたも相変わらずよね。銃は見た所簡単なメンテで良さそうだから、後で住んでる所に持っていくわね」
ミーナリアに文句を言いつつ銃をフリムに渡す和也。受け取ったフリムはくすくすと笑っていたが。やれやれといった様子で帰っていく和也と付いていくミーナリア。フリムはそれを見送ってからバイクに設置したボックスを外し、アパートへと入っていった。
「ここって、にぎやかな所よね〜」
「にぎやかになってるのは、お前さんのせいだと思うがね」
辺りを見回すミーナリアに和也はそう返していたが、まさにその通りだった。ミーナリアの美しさと服装、体型は人の目を引く。主に男性の……その彼女と一緒に歩いてる和也には羨ましいと妬ましいとかそういう視線が向けられていたが。
「あ、そうだ。夕飯の材料買っていかない?」
「ふむ、そうだな。世話になってて、何もしないってわけにもいかないだろうし」
ミーナリアの提案に和也もうなずく。特に反対する理由も無かったのでそうしようとした時――
「あ……」
「おや」
見知った2人と顔があった。おととい、和也が助けた刹那と真名である。
「この間の可愛い嬢ちゃん達か」
「そっちは逢引きかい?」
和也の言葉に真名が聞き返す。その表情はどこか興味深そうだった。一方で刹那は和也を睨んでいたが。
「逢引きとは失礼ね〜。これでも公認の仲なんだよ」
「どこのだよ。ま、パートナーって奴でね。こいつもこっちにいることになったから、その買い物をな」
ミーナリアにツッコミを入れつつ、答える和也。それに真名の瞳が興味深そうに鋭くなっていた。魔法に関わる者にとって、パートナーというのは時には重要な意味を持つこともある。それ故に真名の興味を引いたわけだが。
「そうだ。買い物に付き合う気はないか? こっちに来たばかりで、どこになにがあるかがまだわからんし。お礼は夕食をおごるってことになるが」
和也の誘いに真名は悩んだ。というのも意図が読めない。和也の表情がまったく変わらないのだ。そのため、表情から相手の真意が読めない。もしかしたら下心があるかもしれないし、別の考えで……色々と考える真名であったが――
「ま、今日は仕事もないしね。別に構わないさ。刹那もいいだろ?」
「え? いや、私は――」
真名の話を聞いて戸惑う刹那。真名はどうするかで悩んでいたのはわかっていたが、多分断るだろうと思ったのだ。しかし、受け入れたことに刹那は戸惑った。が、真名も何も考え無しに受け入れたわけでもなかった。刹那を振り向かせ顔を近付け――
「学園長が雇ったとはいえ、探りを入れる必要はあるだろ?」
「そうか……わかった」
真名の小声に刹那がうなずく。学園長のことを信頼してないわけでもないが、和也は得体の知れない面が多い。そのため、和也のことを調べようと真名は考えたのである。刹那も話を聞いて納得し、うなずく。
もっとも、今の会話は和也に全て聞かれていたが。和也もハーフとはいえ悪魔。五感は普通の人間よりも優れている。例え小声で話してもそう離れてはいないので、和也にはちゃんと聞こえているのだ。
ついでに言うと和也にこれといった意図は無い。買い物と道案内は事実である。ただ、気になることがあるとすれば、刹那のこと。昨夜の外で監視していた理由を探ろうと考えていた。まぁ、上手くいけばいい程度にしかだが……
「刹那も問題無いそうだ」
「そうか。それじゃあ、案内頼むわ」
真名の返事に和也はそう返す。真名と刹那は和也の真意を探る為。和也は用事と運が良ければ刹那の真意を探る為。街へと繰り出すのだった。ミーナリアは状況がわかっててか、楽しそうに見ていたが。
買い物の方はいたって普通だった。買ったのはシャンプーなどの日曜雑貨と食料品。ただ、食料品の方は半端じゃない量であったが。
「これは流石に買いすぎじゃないのかな?」
「なに、居候させてもらってるんだから、これくらいはせんとな。それに――」
「その人の部屋に人がたくさん来るんでしょ? それならその人達にもご馳走してあげないと」
「だそうだ」
やや呆れた様子の真名に和也が答え、ミーナリアは楽しそうにしていた。まぁ、彼女が呆れているのもしょうがない。何しろ買い物した量が多すぎて、真名と刹那にも荷物持ちをさせているのである。もっとも、和也が両手でたくさんの袋を持ち、ミーナリアら女性達は1つの袋を抱きかかえながらだが。
そんな状態で女子寮へと向かう和也達。その間、和也とミーナリアは談笑しており、真名と刹那は後ろでその様子を見ていた。それを見てるといたって普通。もっとも、そう簡単に裏を見せるわけもないと彼女らは考えていたので気にはならないが――
「ねぇねぇ。今日は一緒に寝ていいでしょ?」
「俺としては勘弁して欲しいがね。お前の寝相の悪さは時たまシャレにならない時もあるし」
訂正。気になる部分もあった。どうシャレにならないのか激しく気になる。ていうか、一緒に寝てるのか? 一緒に寝て何かしてるのか? 思わずそんなことを考えてしまう真名と刹那。刹那の方は何を考えたのか紅くなっていたが……
そうこうしているうちに女子寮に到着し――
「和也だ。入るぞ」
「ああ、和也さん。お帰り――」
声を掛けながら管理人室に入る和也に、ネカネは笑顔で出迎え……その形で固まった。そのことに不思議そうな顔をする真名と刹那。
「どうしたの?」
「たぶん、お前が原因だろうな」
ミーナリアの疑問に和也がそう漏らす。そう、真名と刹那はネカネにとってあまり問題ではなかった。女子寮の管理人をしている以上、彼女らと顔を合わせる機会はあるし、挨拶をしたことだってある。
和也と一緒なのは途中でそうなったのだと考えることも可能だった。が、ミーナリアは違う。見知らぬ女性。しかも、和也と同じように買い物袋を持っている。何かある……と思ってもおかしくない状況なのは否定しようが無い。
「和也さん……その綺麗な女性はどなたなのですか?」
笑顔……一応だが……のネカネが問い掛ける。ただし、声の方は笑顔とは思えないほどに暗く重い感じがするのは気のせいではないだろう。その様子を感じ取ってか、管理人室の奥でハルナが様子を伺っており、遅れてネギ、アーニャ、アスナ、このか、のどか、夕映も顔を出している。
「俺の仕事のパートナーみたい奴だ。あんまり気にしてるとからかわれるから、気を付けろよ」
「へぇ、仕事のパートナーねぇ〜」
無表情に答える和也だが、ハルナは興味深そうに見ていた。一方でネカネの表情がどことなく暗くなる。魔法使い達の間ではパートナーとなる魔法使いの従者(ミニステル・マギ)は異性であることが多い。
というのも彼らの間では、パートナーに選ぶ=告白という意味合いが強い。ネカネもそういう考えだった為、落ち込んでいた。 そう、気付いていた。自分の気持ちは……だからこそ落ち込んでしまい――
「あらら、聞いてた通り大勢いるのね〜。1人じゃ大変だから、手伝ってね」
「え? あの――」
と、何かを感じ取ったのか、笑みを浮かべたミーナリアはネカネを強引に台所へと連れていってしまう。それを和也以外の皆は呆然と見送っていたが……
「あの、私はこれで失礼します」
立ち直った刹那が玄関に買い物袋を置き、立ち去ろうとするのだが――
「ま〜待て。飯はすぐに出来るから中で待とうや」
「あ、ちょっと! 何をするんですか!?」
和也に右腕をつかまれ、管理人室に連れ込まれる刹那。暴れるのだが力では和也に勝てず、そのまま引きずられていた。真名は困った顔をしながらも、続いて管理人室へと入っていくことにした。元々、和也に探りを入れるつもりだったので、好都合でもあったし。
「あの、和也さん。今からその――」
「なに、魔法のことなら2人とも知ってるから、心配はしなくていい」
「本当なん、せっちゃん?」
「え? あの、その……」
心配顔のネギに和也がそういうと、このかが問い掛けてきた。刹那は顔をそらし、なにやら言い訳をしようとしてるのだが――
「なんだ、知り合いか?」
「うん、うちとせっちゃんは幼馴染なんよ。クラスも一緒なんえ」
笑顔で答えるこのか。問い掛けた和也はなるほどといった様子で刹那を見ていたが……彼女はつらそうな顔をしていた。
「まぁ、なんだ。こういうのは家主が言うことなんだが、ゆっくりしていけ」
「いや、私は……って、何を縛っている!?」
断ろうとする刹那だが、いつの間にやら声を掛けていた和也に縛られていた。しかも、ご丁寧に両足まで。怒鳴りながら抜け出そうとするがきっちりと縛っていて、ごろごろと転がるだけであった。
「あの、なんでそこまでするのですか?」
「楽しそうだから。それとこうしないと逃げ出しそうだから」
夕映の疑問にあっさりと答える和也。それに刹那と真名以外の全員は納得したような顔をしていた。
「どういうことだい?」
「言葉通りよ。和也はね、楽しそうなこととかに首を突っ込みたがるのよ」
真名の疑問の声にハルナが楽しそうに答えるのだが……真名は複雑そうな顔をするだけだった。
買い物袋を運び終え、調理を始めるミーナリア。ネカネはその横で手伝うのだが……見た目でわかるくらいに落ち込んでいる。
知らなかった。和也にこんな綺麗なパートナーがいることを……それを知らずに喜んでいた自分が恥ずかしい。
「ふふ、そんな顔しないの。私は確かに和也が好きだけど、あなたが思っているような仲じゃないのよ」
「え?」
不意に話し出すミーナリアにネカネは思わず顔を向けていた。見るとミーナリアは笑顔を向けている。同姓のネカネでさえ、思わず見惚れてしまう笑顔を――
「ぶっちゃけるとやってることはやってるけど、私だけじゃないのよ。他に何人も抱いてるしね、和也は」
ミーナリアのその言葉に、ネカネは目を丸くしていた。それもそうだろう。自分が好きな人がそんな人だったとは……
ネカネはショックを受けていたが、ミーナリアはそれを見てくすくすと笑っていた。
「あ、勘違いしないでね。和也から手を出したってわけじゃないの。私達の方からお願いしたって言った方がいいわね」
「え? どういう……ことなんですか?」
ミーナリアのその言葉にネカネは戸惑っていた。つまり、ミーナリアや他の女性達は自ら和也に抱かれたということなのだ。なぜ、そんなことをしたのか? それがわからない。
「あ〜なんていうか……私達は和也に依存しちゃってるって言えばいいのかな……あいつと一緒にいるとね、色んなことが楽しくなるの。本当に楽しくて……だからいつまでも一緒にいたくて……だから、離れたくなくて……気が付いたらって感じかな?」
どこか嬉しそうにしながら、ミーナリアは語っていた。それを聞いたネカネは考えていた。自分はどうなのだろうと……
あの時……和也に助けられたあの日。ネカネは必死に和也のことをひた隠しにしていた。悪魔に助けられたという負い目が無いと言えば嘘になる。でも……同時に変わってしまったんだと、今になって気付いた。あの時、和也に見惚れていた時から……だから、和也のことを隠そうとした。でなければ、悪魔ということで和也がどんな目に遭うかわからなかったから……
「あなたはどうするの? 和也のこと好きみたいだけど?」
「私は……」
ミーナリアに問われ、ネカネは思う。いつの間にか迷いは無くなっていた。だって、自分は――
「私は……あの時、和也さんが助けてくれなければ、ここにはいません。ですから私は……和也さんがよろしければ……」
うつむきながらも顔を紅くしながら答えるネカネ。ふと、顔を上げてみると、そこには笑顔のミーナリアがいた。
「じゃ、仲間ね。私達」
「え、あ……はい」
ミーナリアの差し出した両手をネカネは最初は戸惑うのだが、笑顔で自分の両手を乗せるのだった。
さて、こちらではわきあいあいとした雰囲気とそうでない雰囲気の2つに分かれていた。
わきあいあいとした方はネギとアーニャがこのか、のどか、夕映に魔法を教えている。初めの頃は文句を言っていたアーニャだが、今ではしっかりと先生をしている。魔法に関してだが。
で、そうでない方はといえば……和也は相変わらずソファーに横になっている。その横にいた真名は呆れた様子で顔を向けていた。
「仕事の方はいいのかな?」
「何かありゃ、連絡があるだろ」
と、明らかにやる気の無い返事に真名はため息を吐いていた。先日、見惚れるような戦いをし、自分や刹那達を助けてくれた和也。一方で自分の裸を見たり胸やお尻を揉んでおきながら役得と言い切ったり、楽しそうに会話をしてるかと思えば腑抜けたようにやる気を無くしたり……
まるで1人の人間が何人もの人を演じているかのように見えてしまう。それらを見ていた真名は和也という人間性がつかめず複雑な心境であった。
一方、刹那は不機嫌だった。まぁ、ご丁寧にぐるぐる巻きに縛られたら、普通は誰だって不機嫌になるが……彼女の場合、別な理由も含まれている。刹那はこのかの護衛という任を帯びている。でも、付かず離れず……決してこのかの傍にいようとはしない。それはこのかの父親である近衛 詠春の願いからだった。
詠春は日本関西呪術協会の長を務めているが、このかにはそういったものに関わらせないようにしている。魔法や呪術……自分がそういったものに関わっていたからこそ知る、その世界の闇……せめて、自分の娘にはそういったものに関わらず普通の人として生きて欲しい。それが詠春の願いだった。故にそういった存在を隠していた。だから、護衛である刹那も必要以上にこのかに関わらないようにしていた。自分と一緒にいれば、彼女はいつかそういったものに関わってしまうかもしれないから……
なのに、和也はそれをぶち壊してしまった。きっかけはなんだったのかはわからないが、このかは魔法を覚えようとしている。今はまだいい。あんなに楽しそうなのだから……でも、いずれ彼女は闇を知ることになる。そうなったら彼女はどうなってしまうのか……それを考えると心苦しかった。
彼女が魔法を覚えようとしたきっかけを作ったのは和也であると刹那は確信していた。それゆえか、気付かずに和也を睨んでいる。この男がこのかを――
「そういや、夕べここを覗いてたよな? ありゃなんでだ?」
刹那がそんなことを考えていた時、和也が顔を向けてそんなことを聞いてくる。
「それは……私はお嬢様の護衛をしているからだ。学校の警備はその合間に行っている」
「お嬢様……そういや、嬢ちゃんはあのじいさんの孫なんだよな〜。未だにあれの血縁だってのは信じられんが」
睨みながら答える刹那に対し、本気で失礼極まりないことを言っている和也。それを聞いていた真名はふっと笑みを漏らしていたが。どうやら彼女も同じ考えだったらしい。
それはそれとして、和也の疑問はこれで消えはしなかった。なぜなら――
「なら、なんで一緒にいない? 護衛ならそばにいないとまずいんじゃないか?」
そんな疑問をぶつける。和也の疑問はもっともだった。SPと呼ばれる重要人物を護衛する者達は常に護衛対象のそばにいる。
理由は2つ。1つは襲撃などがあった際、即座に対処するためだ。護衛対象が襲われるということを前提にしているのだから当然といえる。2つ目はもしもの場合、自身を盾にするためである。SPとて万能ではない。隙を突かれ、護衛対象を凶刃に晒すこともありうる。それをさせないために、例え身代わりとなろうとも体を盾にして守る。それがSPの本分でもあるのだ。
だが、刹那の場合その両方を否定するかのようなものだった。それが和也にはどうにも疑問だったのだが――
「私は……私はお嬢様のそばにいる資格は無いから……」
どこか物寂しげな顔を見せながら、刹那は答える。それを聞いていた真名はやれやれといった表情をしていた。和也の言ったことはは真名も同じように考えたこともあるし、そうじゃないかと言ったことさえある。だが、刹那は今のように答えてしまうのだ。今回も同じ答えにまたかという心境だった。この時までは――
「もしかして、自分がハーフだっての気にしてんのか?」
「なぜそれを!?」
和也の疑問に刹那が驚きのあまり叫んでしまう。その叫びにネギ達がこちらを向いていたが。一方、刹那は気が気ではなかった。一部の者しか知らない自分の秘密。一緒に仕事をしている真名にさえ秘密にしていたというのに……それをあっさりと明かした和也を憎悪するかのように睨む刹那。
「気が付いたのはついさっきだがな。俺も一応ハーフだし、似た感じが嬢ちゃんからも感じられたんで気が付いたんだが」
だが、次に出た和也の言葉に刹那はえ? っという顔になる。真名も同じだった。ハーフ……普通の人がそれがどうしたのか? という風に思うだろうが、魔法に関わる者にとっては別な意味合いを持つ。
異種族との間の子……それは禁忌とされ、忌み嫌われる対象となっていた。刹那もそうであった。だから、そのことをひた隠しにしていた。
「あなたが……ハーフ……」
「そうやで。和也さん、悪魔のハーフなんやて。せっちゃん知らんかったん?」
戸惑いの色を浮かべる刹那の疑問に答えるかのようにこのかが漏らす。もっとも、それは真名と共に驚きの表情へと変わることになったが……
「悪魔……あなたが……」
「『Devil Walker』……なんて、物騒なものを名乗ってるかと思えば、本物の悪魔とはね」
「歩き続ける悪魔って意味で付けた。色々とあって、そういう身の上になっちまってな」
驚きの表情のまま見つめる刹那の横で真名は感心したように呟き、和也がソファーに座り直しながら答える。それに刹那は更に驚いていた。ハーフというだけでも忌み嫌われるのに彼は悪魔とのハーフであるとあっさり明かし、しかもそれを気にした様子も無い。
なぜ? なぜ、そうでいられる? 刹那にはわからなかった。自分は迫害され、それでこのかと一緒にいられなくなった。ハーフであると同時に悪魔でもある和也。ただ忌み嫌われるだけでない……迫害以上のことを受けてきた可能性があるのに……
「俺の場合は自分がハーフだって知ったのは10年くらい前でね。それまでは普通の人として生活してたけどな。ま、ハーフだってわかった時は大して驚くことも無かった。ああ、そうだったんだって感じだったし」
「でも……周りは? 他の人はどうなのですか? あのミーナリアという人は?」
「坊主と嬢ちゃん達は会った時に話したし、ミーナリアはああ見えて正真正銘の悪魔だぞ。まぁ、他の悪魔とかはうるさく言ってくるがね。でも、そいつらがうるさく言うだけで自分がどうこうなるわけでないしな。殺しに来た奴もいたが、片付ければいいだけのことだし」
その言葉に刹那は戸惑いながら問い掛けるが、話した和也といえば気にした風もなく答えている。言葉の中に若干物騒なのも混じってるが。
もっとも、ミーナリアが正真正銘の悪魔ということに真名の目が若干鋭くなったり、ネギ達がどこか感心してたり驚いたような表情をしていたが。
そんな中で刹那は戸惑いは大きくなる。和也はなぜそんなに平然としていられる? このかやネギ達はハーフだとしてなぜ普通に接していられる? わからない……わからないから戸惑う。だって、こんなのは変だ。今まではハーフだと知られたら、迫害されてきたのに……
「ま、坊主や嬢ちゃん達はそういう細かいことを知らないってのもあるが、元から気にするようなタイプじゃないってことさ。あっちの怒りっぽい嬢ちゃんは時々うるさく言ってくるがね」
「あんたがおかしなことばっかり言うからでしょ! ていうか。いい加減に名前で呼びなさい!」
答えながらからかう和也。からかわれたアーニャは怒り出すが、刹那から見てもそれは嫌悪とかそういうものが見られない。どちらかといえば、微笑ましい光景といってもいいだろう。それが刹那には信じられない。和也が悪魔とのハーフだと知っているはずなのに、なぜあのように接することが気出るのかと……
「まぁ、なんだ。人それぞれって奴だ。ハーフを良しとしない奴がいれば、嬢ちゃん達みたいに気にしないのもいる。だが、人がどう思おうが結局は自分のことだしな。何かをやろうが自分の勝手というわけだ」
てなことを言った後に和也は指を鳴らすと、刹那を縛っていた縄がひとりでにほどけていた。だが、それよりも気になることがある。それは和也の言葉。その意味が理解出来ず、刹那は戸惑う。
「何をしろと……」
「自分で告白しろってことさ。ま、返ってくる反応はどうであれ、言いふらすような奴らじゃないし、嫌われたら嫌われたでお前さんの勝手にすりゃいい」
和也は笑みを浮かべながら答えていた。それに問い掛けた刹那は戸惑いながらこのか達の方へと顔を向ける。このか達はといえば、不思議そうな顔をしていた。まぁ、話の内容がわからないというだけなのだが。
その様子に刹那は迷う。今、自分の秘密を明かせばこのかのそばにはいられない。そうなったら、誰が……いや――そこで気付く。今まで自分は遠くでこのかを見守っていた。例え、そばにいられなくなったとしても、それは変わらない。どんな風に思われたっていい。自分はただ、このかを守れれば良かったから……その思いに刹那の瞳に決意の色が浮かぶ。
「えと……なんやわからんけど……せっちゃん、なんか隠し事してるん? せやったら、うち気にせえへんよ? どんな秘密かわからへんけど」
不思議そうにしながらも、にこやかなこのか。それを見た刹那の決意が強くなる。例え、このかがそう言おうとも結果はわかってる。これを知ればきっとこのかは自分のことを軽蔑する。でも、それでいい。自分がすることは変わらないのだから……
ただ、このようなことになった原因である和也のことを恨めしく思いながら、刹那は立ち上がった。
「見てください……これが私の……本当の姿です……」
その言葉の後に、刹那の背中に翼が生える。鳥のように羽毛に包まれた真っ白な翼が――それを和也以外の皆は呆然と見ていた。和也はというとなにやら楽しそうにしていたが……
「どうですか、この姿……醜いでしょう……バケモノなんです……この体は……」
どこか寂しそうな面持ちで語る刹那。でも、誰もがまだ呆然と見つめてるだけ。ああ、やはりか……そう思った時に気付く。和也がなにやら笑いをこらえていることに。それにむっとする刹那だったが――
「きれい……」
「――――え?」
不意に聞こえてきた声に、刹那は顔を向ける。そこには目を輝かせながらこちらを見ているこのかの姿があった。
「綺麗やでせっちゃん。その羽もよう似合ってるで」
「え? 私が……綺麗?」
「はははは、確かにな。今の嬢ちゃんなら、ミスユニバース狙えるぞ。それに坊主を見てみろよ。これが醜いものを見てる顔か?」
自分のように喜んでるこのかに戸惑う刹那だが、和也は笑いながら親指を指している。その先にいたのはネギ。顔を紅くしながらぼ〜っと刹那を見つめていた。それに気付いたアーニャに睨まれていたが……
良く見ればアスナやのどか、夕映も美しいものを見るかのように少し赤らめた顔をしている。真名は感心したような顔をしていた。
「本当に醜いってのはな。姿だけじゃなく心もそうなちまった奴を言うのさ。俺から見れば、嬢ちゃんは可愛らしい女の子だよ」
「――え?」
和也のその言葉に刹那の顔が紅くなる。その後、アスナやアーニャ、のどかに夕映が興味深そうに集まり、それに戸惑う刹那の姿があった。一方、それを楽しそうに見ている和也。そんな彼を真名は顔を向けていた。
「もしかして、こうなるとわかっていたのかい?」
「俺のこと悪魔と知ってる嬢ちゃん達が、羽が生えてたくらいであの嬢ちゃんを嫌いになるわきゃないしな。まぁ、ここまではしゃぐとは思わなかったが。別に構わないだろ」
アスナ達に囲まれて戸惑いながらも笑顔が出始めた刹那を楽しそうに見ている和也。そんな彼を問い掛けた真名は興味深そうに見ていた。悪魔と名乗ってはいるが、とてもそうは見えない不思議な奴……それが真名が和也に抱いた今の感想である。
神業のような戦いをしたかと思えば、自分達の裸を見て楽しんでたり、今のように刹那とアスナ達を仲良くさせたり……本当に不思議な奴。そんなことを思いながら、真名は和也を見つめる。いつの間にか笑みを浮かべてると気付かずに――
その頃、夕食の準備を終えたミーナリアとネカネが台所から顔を出していた。
「何があったんでしょうか?」
「さぁ? でも、私達のお仲間は出来たみたいよ」
首をかしげるネカネに答えつつ、ミーナリアは真名と刹那を指差す。真名は相変わらず笑みを浮かべながら和也を見ており、刹那も顔を紅くしながら時折和也に顔を向けていた。
「いいな〜、せっちゃんの羽。ふわふわで気持ちええわ〜」
「お、お嬢様……そんないじっちゃダメですよ〜」
時折、羽に頬擦りをするこのかに慌てる場面もあったが……この時には刹那の中で、和也を恨む気持ちは消えていた。むしろ感謝してると言っていいかもしれない。このかに自分の秘密を打ち明け、昔のように仲良く出来るきっかけを与えてくれた彼に。
「まったく、和也って手が早いんだか、天然なんだか……」
「あら、フリム。来てたんだ」
いつの間にかいたフリムに声を掛けるミーナリア。ネカネはそのことに戸惑うが、フリムの言葉で気付く。彼女もまた、自分達のように和也のことを想っているのだと……
「ええ。頼まれてた銃のメンテが終わったからね。にしても賑やかよね〜」
「和也の周りじゃ、いつものことよ」
少々呆れた様子のフリムにミーナリアが笑顔で答える。その言葉に確かにそうだとネカネは思った。和也が来てから、その周りはいつも賑やかで笑顔があふれていた。彼がいるからこそ……そう思うと嬉しく思う。
――そんな賑やかな光景がしばらく続くのであった。
真夜中の麻帆良――その上空に1人の男性が浮かんでいた。
「おかしいですね? あいつはどこに行ったのですか? まさか、倒された……まったく、雑魚を使うべきではなかったかもしれませんね。しょうがありません。私自ら行きますか……」
男性はその言葉を残し、まるで空に溶けるように消えていく……そのことに気付いた者は、今はいなかった。
和也の武器 アンリ・マンユの牙
和也が持つ短剣であり、ネカネやネギの村人の石化を解いた物でもある。効果は呪い、魔法、呪術の類の解呪。
意思を持っており、自分以上の悪(災い)の存在を断固として拒否する性質を持つ。そのため呪いの類の存在を認めていない。
故にそれらを見つけると破戒という形で解呪してしまう。
ゾロアスター教で『絶対なる悪』とされる悪神の名を持つだけあって、例え魔王の呪いであろうと解呪するだけの力を持つ。
和也がある依頼で遺跡を調査した際、発見。和也が持つ性質を気に入り、以降は契約という形で和也が所有している。
和也のパートナー ミーナリア
魅惑のボディ(B110 W59 H108)と彫刻のような美貌を持つ女性。その正体は悪魔にして和也至上主義的な思考の持ち主。
以前はある魔王の元にいたが和也のことが気に入り、裏切るという形でそこから離れ、今は和也と契約してべったりな状態になっている。
実は和也がデビルウォーカーとなったきっかけとなった人物でもある。
今はまだ見せてはいないが持っている力は巨大であり、悪魔の中には彼女の名を聞いただけで逃げ出す者もいるほど。
その理由はいずれ明かされることとなる。
あとがき
というわけで第4話はいかがでしたか? え? オリジナルヒロイン出しすぎ?いいんです、別に!(おいおい)
今回は刹那と真名もヒロイン参加フラグを立ててみましたが……その部分が激しく微妙になってしまいました……
こういうのは反省しなきゃならないのですが……ん〜勉強不足だ……
さて、次回はまたまた戦闘ものになります。新しい武器も登場するのでお楽しみに〜
後、18禁的展開も近いうちに……後、出来ましたら感想をいただけると嬉しいです。それでは〜
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