立派な魔法使いマギステル・マギ歩き続ける悪魔デビル・ウォーカー』 第2話 『半悪魔 魔帆良に雇われる』



睨む高畑と2人の女性。和也はそれをただ無表情に見ているだけ。ただならぬ雰囲気を感じ、アスナ達は何も言えずそれを見ているしか出来なかった。
いつまでも続くかと思われた沈黙……

「待って、タカミチ! この人は悪い人じゃないんだ!」

だが、それはネギによって破られる。和也を庇うように前に出て。

「ネギ!」
「この人はぼく達を助けてくれた人なんだ。だから!」

その行動に驚くアーニャをよそに、ネギは必死になって説得しようとしていた。その行動に高畑は戸惑う。ネギや和也、ネカネ以外はそうなのだが彼が一番戸惑っていた。
巨大な魔力を感知して駆け付けた為、途中からではあるが一部始終のことは見ていた。それで和也がネギ達を助けたのも見ている。でも、同時に彼が悪魔と知ったはずなのになぜ庇うのか? それがわからず戸惑うのだが――

「私からもお願いします。彼は私達の村を救ってくれた恩人なのですから……」
「な!?」
「うそ!?」

ネカネの言葉に驚愕する高畑とアーニャ。2人の女性も同じだった。アスナ達には何のことかわからず、首をかしげていたが。
それを聞いた高畑は和也に顔を向ける。話は一応聞いている。剣と銃だけで生き残った悪魔を一瞬で倒し、ナイフ1本で石化された村人達を救った人物の話を。
ナイフの方は見ている者も多かったので信じるしかないが、剣と銃だけで悪魔を圧倒したというのはどうにも信じられなかった。その時はまだ幼かったネギがそう思ったんだろうと思ったのだが……和也の今の実力を見る限り、ありえない話ではない。
それにネカネも認めている。だからこそ、戸惑うのだが……

「彼女の話は……本当か?」

「行き掛かり上、そうなったってだけだ。どっかの馬鹿が俺に罪を擦り付けようとしてな。不愉快だったんで邪魔してやろうと思ってね。それでだ」

戸惑う高畑に身振りを付けながら和也は答える。しかしながら、それはとんでもない理由だった。罪を擦り付けられそうになったから邪魔をした。というのはまだわかるが……理由が不愉快だったからというのはなんなんだろうか?
底の知れない和也に高畑は戸惑いながらも視線は外さず……が、不意に顔をそらしてしまう。

「なんや? どないしたんやろ?」

「誰からかの念話だろ。ま、さっきから遠くで覗き見してる奴からだろうがね」

このかの疑問に和也が答えるように話す。どこかに顔を向けながら。

「念話か〜。ますます魔法っぽいわよね〜」
「あ……」
「あうう〜……」

その話を聞き逃していなかったハルナが興味津々といった様子にアーニャは思い出し、ネギは混乱したらしく慌てふためいていた。

「あんまり、そういうのは言いふらさん方がいいぞ。後で困ることになっても知らんからな」

「困るって何がよ?」

和也の言葉に疑問を感じたハルナが問い掛けるが――

「なに、魔法使いどものことだから記憶を消すだけで済ませるだろうが……失敗すれば記憶喪失の少女の出来上がり……ってことだよ」

「OK……このことは誰にも言わないわ」

意味ありげな笑みを浮かべる和也の言葉の意味を理解してか青くなるハルナ。実際はまずありえないのだが、そのことを知らない彼女には怖い話には違いない。そうはなりたくはないので大人しく下がったのである。

「学園長が会いたいそうだ。付いてきてくれるかな?」

「構わんよ。この後は暇だったしな」

「あの、ぼく達はどうしたら……」

高畑の問いにあっさりと従う和也。その横でネギが右手を上げて問い掛けていた。

「あ〜、君達もだそうだ。すまないね。ここの片付けはぼくらの方でするから」

高畑の返事にネギ達は顔をしばらく見合わせ、その後に全員頭を下げるのだった。



そんなわけであの場にいた全員が学園長室に向かうことになった。ちなみに今の和也は剣と銃は無く、紅いコートの代わりに黒いジャケットを纏っている。高畑の和也(名前はネギ達との会話で知ったが)に対する印象はわけがわからないというものだった。
まず、どう見ても悪魔には見えない。外見ではなくあり方が。悪魔はその個々の存在にもよるが、大抵は人の害たる存在だが……

「ところで和也さんは本当に悪魔なのですか?」

「まぁな。正確には人との間の子で、ハーフデビルなんだが。ま、あんまし変わりはしないか」

一見、無表情なので何にも無関心のように思えるが、夕映の疑問に答えるなどそうではないようだ。見た限りでは友好的であるとも言える。 後、高畑を悩ませているのが和也の……というか、『Devil Walker』(これもネギ達の話を聞いて知った)の評判である。裏では『Devil Walker』の名は恐怖の代名詞として恐れられている。というのも、やってることがとんでもない。
『犯罪・殺人以外の厄介ごと、お引き受けいたします』と言ってはいるが、やってることはほぼ犯罪みたいなもの。噂で聞く限りだが犯罪紛いのことをして依頼人に迷惑を掛けることが多々あり。時には単独で犯罪組織・軍隊をも潰したこともある……というのは流石に眉唾ものだろうと思っているが、先程の戦いを見るとそれも揺らいでくる。
まぁ、そんなことをしてる為、『ヒューマノイドタイフーン(人の姿をした台風)』とか、 『トルネードデビル(竜巻のような被害を出す悪魔)』など天災扱いされていたりするのだが。
そう呼ばれている人物がどんなものか気にはなっていたのだが……それが和也だというのはあの戦いを見ても疑問に感じられずにはいられない。納得出来ない部分もあれば、そうでもない部分もあるからだ。
それにネギとネカネの村を救ったというのにも驚かされる。石化された村人達を元に戻し、2人を生き残った悪魔から助けた人物……それが同族である悪魔だったというのは……心境的には複雑だった。なにか裏があるのではと勘繰ってしまうくらいに。
とまぁ色々と疑問があるし信じきれないので、それがわけがわからない理由になってるのだが…… 2人の女性……葛葉 刀子とシスターシャークティー……刀子の和也に対する印象は恐ろしい……というものだった。というのもあの戦い……特に大剣を使った戦闘は恐ろしいと感じてしまった。
多分、独学なのだろう。型や技などあったものではない動きや構え。だが、その動きはまるで踊るかのように優雅で――それを可能にしているのは前動作がまったくない体捌き。なんの前ふりも無く最適な場所に立っており――まるで周りが……全てが、未来が見えているのではないかという反応を見せ――剣の振りはその重さを感じさせないかのように速く、鋭く……時にはしなやかに――それらは悪魔という身体能力があったとしても、普通は出来ない業だ。
そう、あれは一種の完成された技……だから、美しいと思えて……だから、恐ろしい……刀を使うからこそわかってしまうこと……なのにそんな和也に魅せられていることに……刀子は今はまだ気付いてはいなかった。
シスターシャークティの和也に対する印象は嫌悪。シスター……神に仕える者として、悪魔は拒絶すべき存在なのだから当然とも言える。それに話を聞いてると、どうやらこのか達に依頼を受けて来たというのを知る。それは悪魔との取引と変わらない。どんな対価を求められるかわかりはしない――

「そういや、本当にただでいいの?」

「ああ。さっきも言ったが、それなりに楽しめたんでね。それに『Devil Walker』なんてのをやってるのは生きてる実感とか人生の楽しさとか、そういうのを感じたくてね。道楽みたいなもんさ」

ハルナの疑問に答える和也の言葉にシャクティは驚く。先程も言ったが悪魔との取引は対価が基本……というのはシャークティの偏見も混じっているが……なのに、対価を求めず…… それに生きている実感や人生の楽しさを感じるためという悪魔らしからぬ理由……そのやり方が『Devil Walker』というなんでも屋というのもどうかと思うが……シャークティから見てその悪魔らしからぬ行動論理に、戸惑いを感じられずにはいられなかった。
そんな思惑があるとも知らず、ネギは嬉しそうに和也の横を歩いていた。が、それを複雑そうな表情で見ている2人がいた。アスナとアーニャである。
アーニャの場合は睨みも入っているが……なんで複雑そうな表情で見てるかといえば、アスナは先程の戦闘を見て。アーニャは和也が悪魔であるということでだ。 先程の戦闘で見せた冷酷さ……何しろ、許しを請う悪魔を躊躇無く殺してしまったのだ。それをアスナは嫌悪していた。もっとも、あの異形が行ったことを考えるとそれほど強く嫌悪しているわけでもないのだが……
アーニャの場合、和也が悪魔であるというだけで嫌悪していた。見習いとはいえ魔法使いである彼女にしてみれば、それは常識とも言えるのだが……笑顔であれこれと和也と話すネギを見ていると不快感が強くなる。その理由を今はまだ気付かぬまま、アーニャはそんな気分になりながら2人を見ているのだった。

「しかし、和也さんが悪魔というのは……あの魔法を見ても未だに信じられませんね」

夕映の言葉にのどかがうなずく。彼女らの場合、読んでいる本の影響が強いのか悪魔はバケモノの姿という印象が強いようだった。

「俺は人との間の子のハーフデビルだから元からこうなんだが。まぁ、爵位を持ってる悪魔は大抵姿を変えれるし、元から人と変わらない姿の奴もいるな」

「へぇ、そうなんだ」

和也の話をハルナは興味深そうに聞いているのだが、ネカネとこのかはそれを面白くなさそうにふくれて見ていた。少し不機嫌なのに、なぜかそれが不快ではない。なぜそうなのかは……今はまだ気付かないままで……
だから、気付かなかった。和也がなぜか空のどこかに顔を向け、笑顔になっていたのに。



そんなこんなで全員は学園長室にやってきたわけなのだが――

「なぁ、あんたのその頭。誰かに呪いでも掛けられたか?」
「これは生れつきじゃわい」


出会ってすぐに失礼極まりない和也の疑問に、椅子に座る学園長室の主は気にした風も無く返していた。

「おほん。わしの名は近衛 近右衛門……この麻帆良学園の学園長をしておる。まずは学生を助けてくれたことを感謝させてもらうぞ」

「礼はいらん。結果的にそうなったってだけで、俺は依頼を受けただけだ」

近右衛門……学園長の感謝の言葉を和也はそっけなく返す。これには学園長も思わず眉が上がっていた。照れとか謙虚とかそういうのではない。結果的にそうなっただけと言うだけあって、無関心そのもの。何かしら反応を見せてもいいはずなのだが、それが無いことに学園長は興味を引いたのだ。

「ふむ……じゃが、事実は事実じゃしの。さて、和也君じゃったか……君の……というか、『Devil Walker』の噂は聞いておるよ。
じゃが、どうにも解せないことがある。君はこの学園に張られた結界をどうやって通ったのじゃ? 君ほどの力の持ち主なら反応が無いはずが無いのじゃがな」

片目だけを向け、問い掛ける学園長。学園に張られた結界のことを知らないアスナ、このか、夕映、のどか、ハルナは首をかしげていたが。
麻帆良にはほぼ全体を覆うように結界が張られている。これは侵入者の感知や魔物などの力を抑え込むことが出来るというものだ。 もっとも、和也のような実力を持つ者には抑え込むことが出来ないという場合もあるのだが……
侵入者の検知に関してはいかに和也がそれなりの力があるといっても、反応が無いはずがない。なのに、和也のことはあの戦闘があるまで誰も気付かなかったのだ。

「そうだな。誤魔化すなら方法はいくらでもある。お前さん達は結界に引っ掛かったからといって、犬や猫まで調べるのか?」

和也の話に学園長や高畑らも首をかしげる。確かに結界に反応があっても犬や猫などの小動物なら調べることはまずない。人の場合は時と場合によるものの不審な行動が見受けられれば監視はするし、何より相手が存在を隠そうともそれに気付かなかったことは無い。この麻帆良には感知に長けた者がいるからなのだが。

「つまりだ。結界にわざとそう反応させたのさ。気付かれないようにするのは難しいが、誤魔化すなら手はいくらでもある」

和也の話の意味を学園長は理解した。麻帆良に張られた結界は監視カメラのように姿が見えるものではなく、大きさや形、それが持つ力を感覚で伝えるもの。和也はそれを利用し、結界を通る際に自分が小動物に思われるようにしたのである。確かに気付かれないようにするのよりは簡単だが、それでも難しいことには変わりない。でも、出来てしまえば学園長らにとっては盲点を突かれたようなものだった。

「なるほどな。あの魔物もそうやってここへ来たのかな?」

「いや、あの手の奴は縄張りとか餌とか、そういうのしか興味が無いからな。誰かの手引きだろうよ」

「そういえば……あいつ、ネギを狙ってたような……」

学園長の疑問に和也が答えると、アスナが思い出したかのように呟く。確かにあの異形の行動はネギを狙っていたようにも見えたため、あの戦いを見ていた者達は動揺したように体を震わせていた。

「ふむ……では、聞くが……あの魔物を送った者がいたとしよう。それはまたこの麻帆良を……もしくはネギ君を再び狙ってくる可能性はあるかな?」

「最初からそれが目的なら十分ありえるな。理由はなんにせよ、あの手の奴らは一度やると決めたらとことんやる奴らだし」

学園長の疑問に和也が答えると周りがわずかに騒ぎ出す。ネギ達にしてみれば、あんなのがまたあんなことが起きると言われ、戸惑っているからだった。それにアスナとこのか、夕映にのどかとしてはもう二度とあって欲しくはないというのが本音だ。一般人である彼女らにしてみれば、普通の反応とも言える。
ネギはといえば、杖を握り締めていた。悔しかった。あんなことがまた起きるかもしれないのに、自分は何も出来ないことに……あの時、自分は恐怖で何も出来なかった。このままじゃ、この後も何も出来ない。その苛立ちがこのような形で表に出ていた。
そんなネギをアーニャとアスナは心配そうに見つめていた。アーニャの方は若干顔が赤い。 ネギに異形から助けられたことを思い出し、やがて抱き締められたことを思い出して真っ赤になっていたが……

「ふむ……ところで『Devil Walker』はどんな仕事でも引き受けてくれるのかの?」

「学園長?」

学園長の急な話題転換に訝しげに声を掛ける高畑。ネギも不思議そうにその様子を見ていた。

「犯罪と殺人以外なら、基本的にな。ま、俺が気に入るかどうかってのもあるが」

「ふむ……では、この麻帆良の警備員……という仕事も引き受けてくれるのかの?」

「学園長! 何を――」

和也の返事を聞き、そんなことを聞いてくる学園長の言葉にシャークティが慌てる。彼女にしてみれば、悪魔を雇うという行為が信じられなかったのだ。そんな彼女を無視し、学園長は立ち上がると窓の外へと顔を向けていた。

「この麻帆良は色々なものから狙われておる。貴重な魔法の書を狙った者や魔法使いに恨みを抱く者……などにな」

「そんな……おじいちゃん、本当なん?」

学園長の話にこのかは驚いていた。魔法使いに恨みを抱く……彼らは何か恨まれるようなことをしたのだろうかと思ってしまったのだ。

「お前の知らないところで戦いがあって……それが元で恨んでおる者達がいる……ということじゃよ」

「そういや、西と東が昔戦争起こしたって話を聞いたことがあるが……ま、俺としてはあんたと嬢ちゃんが血縁者ってのが驚きだがね」

真剣に話す学園長に和也は本気で失礼極まりないことを言っているが……アーニャとハルナは同意したらしく、うなづいている。アスナとネギ、ネカネに高畑は困った顔をし、のどかと高畑にシャークティは思わず冷や汗を流す。夕映と刀子だけは無反応だった。

「意見の違いが起きた悲しい出来事じゃよ。わしと西の長はそれを反省し、手を取り合いたいと思っておるのじゃが……」

「どこにでもバカな奴はいるか」

先程の失礼な発言を無視し……切れてないが。額にかすかにだが汗が浮かんでいるし……学園長の話に和也がそう判断する。
大抵はそういうものだが、組織というものは一枚岩ではない。様々な考えの者が集まって組織というものが成り立っている。故に組織の意向とはまったく別の……それに反抗するような者達が現れ、勝手な行動をする者が出ても、それは不思議ではない。

「それに加えて先程の魔物の件……あれが今後も続くとなれば問題じゃ。この麻帆良には戦闘が出来る者はそう多くはない。しばらくはなんとかなるじゃろうが……このままでは疲弊し、いずれ……増員という手もあるが、魔法の隠匿という関係上それもままならん」

「まったく、魔法使いってのは面倒だな。いっそのこと魔法のことバラしちまえばいいのに」 学園長の話に和也はそんなことを言うもんだからシャークティが睨んでいた。そんなことをすればどうなるかわかっているのか? という怒りから……
それはそれとして、実際の所学園長の話したことはかなり重大である。基本的に魔法使いは戦闘には向いてはいない。確かに攻撃魔法というのは存在しているが……しているだけであって、戦闘に向かないというのは事実なのだ。
どういうことか? 魔法使いは基本的に呪文を唱え切らなければ魔法を使うことは出来ない。それに強力な魔法ほど、その呪文の詠唱は長くなる。一部には呪文を唱えなくとも魔法を使うことが出来る者もいるが……ともかく、その呪文詠唱の時を狙われれば、魔法使いはひとたまりもない。
それを防ぐ意味で魔法使いの従者(ミニステル・マギ)という魔法使いを守護する存在がいるが……それも万能というわけではない。本当の意味で戦闘が出来る魔法使いは多くはないのだ。

「早い話、猫の手も借りたいってわけか……条件がある。俺の好きにやらせろ」

「あなた! いい気になるのも――」

「勘違いするな。警備の中での話しだよ。それになかなかに楽しめそうだからな。引き受けてもいいぞ」

話を聞いて思わず刀を抜きそうになる刀子。シャークティも仕掛けそうになったが、和也の言葉に立ち止まる。学園長は気になる言葉に目を細めていたが……

「楽しめる……か?」

「ああ。『Devil Walker』は道楽で始めたようなもんだ。人生楽しくて生きてるって実感さえあれば、俺はそれでいいんだよ」

和也の言葉に問い掛けた学園長はふむとうなずくが……内心は驚いていた。悪魔なのに悪魔らしからぬ言葉に。

「変なことを言う悪魔じゃの」

「なに、悪魔ってのはそういう感覚が希薄でね。俺としてはそういうのを味わいたくてやってるのさ」

素っ気無く返す和也だが、問い掛けた学園長は逆に興味を引かれる。会ったことの無いタイプ故に。

「それでは引き受けてもらえると思っていいのかの?」

「ああ。少なくとも退屈はしなくて済みそうだしな」

学園長の言葉に和也は意味ありげな笑みを浮かべる。シャークティはそれを不快そうに見ていたが……

「では、君を麻帆良の警備員として雇おう。条件も呑もう。期間はネギ君が立派な魔法使い(マギステル・マギ)としての修行を終えるまでじゃ」

「修行って、何やってんの?」

「あの……その……女子校……先生を……」

「魔法使いってのは本気で何考えてるかわからん時があるな」

学園長の言葉に高畑とシャークティは戸惑う。まさか、本当に警備員として……しかも、自由にやらせろという条件まで認めてしまったことに。
そんな中、顔を赤くしながら答えるネギに、問い掛けた和也は呆れていたが……アスナや夕映も同じだった。10歳の子供に学校の先生をさせる修行って……と、思わず考えてしまったのである。

「さてと、このか達のことじゃが……どうしたもんかの?」

「そっちは俺に任せてくれ。何、魔法のことをバラさないようにしなけりゃいいんだろ? ああ、手荒な真似はしないから安心してくれ。手荒な真似は……な」

このか、ハルナ、のどか、夕映を見る学園長に和也は意味ありげな笑みを浮かべ、このか以外の彼女らはそれに思わず身震いしてしまう。もし、バラそうとしたらどうなるか……非常に怖くて実行する気が起きなかった。先程の戦いを見てればなおさらに……

「ふむ……それじゃあ、住む所じゃが……どうしようかの?」

「おいおい、泊り込みでやれってか?」

「最初からそのつもりじゃったのだが?」

さも当然そうに答える学園長の顔を見て、文句を言っていた和也は思わずため息が出た。警備員を引き受けるのはいいが、泊り込みになるとは思ってなかったのである。もっとも、彼の場合ほぼ宿無しみたいなものなので問題があるわけではないのだが。

「あの……それでしたら、私の部屋はどうでしょう? 女子寮の管理人室ですけど、1人くらいなら問題ありませんし……」

「ちょっと、本気なの!?」

右手を軽く挙げ、そんなことを言い出すネカネにアーニャが驚いていた。悪魔を泊めるという行為自体が信じられなかったのだ。 「ふむ……いいかの?」

「嬢ちゃんがいいって言うのなら俺は別に構わんよ」

 学園長の問い掛けに和也は素っ気無く返すが、ネカネはどこか嬉しそうだった。ネギも内心喜んでいたが……反面、アーニャは信じられないようなものを見ているような顔になっている。学園長が認めるとは思わなかったのだ。
それは高畑やシャークティ、刀子にアスナも同じで戸惑いが表情になって現れている。女子寮に男を泊めるというのだから戸惑うのは当然だろう。
ハルナはどこか興味深そうに見ていて、のどかはおろおろと状況を見ていて、夕映は一見無表情に見えるが汗が滲んでいるのが見える。このかは……なぜか笑顔だった。笑顔なのだが……なぜか怖い。だが、幸いなのか誰もそのことには気付かずにいた。

「それでは決まりじゃの。『Devil Walker』……和也君、頼んだぞ」

「ああ。楽しませてもらうよ。たっぷりとな」

学園長の言葉に、和也は意味ありげな笑みを浮かべるのだった。



その後、詳しいことは明日にでもということになって和也達は去り、学園長室には学園長と高畑、刀子にシャークティが残っていた。

「学園長! なぜ、あのような悪魔を警備員に雇ったのです!」

で、早速怒り出したのだがシャークティ。でも、彼女の叫びは高畑と刀子の疑問でもあったため、止めようとはしない。それに対し、学園長は椅子に座ったまま、窓へと体を向けていた。

「そうじゃの……高畑君は和也君をどう思ったかの?」

「え? それはその……正直言えば、本当に悪魔なのかって疑いそうになりますね。ハーフと言ってましたが、それでも彼は私の知っている悪魔とは……そう人とも違うと感じました」

学園長の問いに高畑は迷ったように答えていた。そう、あれはどれとも違う。悪魔とも人とも……悪魔のはずなのに人のように見えて……人のように見えて悪魔に見える……その時々で見える姿が変わる故に、高畑は戸惑いを感じる。
そして、それは学園長も同じであり、同意するようにうなずいていた。

「確かにの。あれは何とも違い、何かと同じ……そんな不思議な者じゃった。だからこそ、興味がわいたのだがの」

学園長の言葉にその場にいた者達が複雑そうな顔をしていた。高畑は学園長の言う意味が理解出来るからこそ。
シャークティも高畑と同じだった。特に悪魔らしくないあの発言……『生きてる実感とか人生の楽しさとか、そういうのを感じたくて』という言葉が惑わせる。
刀子は悪魔がどうこうよりも、あの剣のことを考えていた。和也が見せた剣……あれは自分には出来ないもの。だからこそ、和也という人物に興味を持ち始める。あの恐ろしい剣さばきを魅せる者に……

「ですけど……あれは悪魔なのですよ。何をしでかすかわかりません」

「わからんわけでもないが……だからこそなのじゃよ。アレだけのことを言われる人物じゃ。 あちこちに動き回られるよりも目が届く所にいてもらった方が気が楽じゃしな。もっとも、心配しなくてよさそうじゃが……」

「なぜですか?」

答える学園長だが、疑問の消えないシャークティが更に問い掛ける。学園長の言葉はどこか和也を信用してるようなものだった。そのことにシャークティは疑問を感じられずにはいられない。

「なんとなくなんじゃがな。和也君はわしらを襲うような仕事はしない気がするんじゃよ」

学園長の言葉に、誰もが顔を見合わせてしまう。なぜ、そんなことを言うのだろうか? あれは悪魔で、もしかしたら……なのに、そう言い切ってしまう学園長の言葉に、皆は戸惑うのだった。



ここに麻帆良の外れにある森の中にログハウス風の家が立っている。その中に2人の女の姿があった。
1人は幼女と言ってもいいような小さな少女。床に付きそうなくらいに長い金色の髪を持つ……なのに、その瞳は刃物のように鋭い。もう1人は長身の女性……腰まであるエメラルドグリーンに輝く髪を持ち……綺麗な顔立ちは無表情だった。

「く、じじいもとんでもない奴を雇ったな」

「はい」

金色の髪を持つ少女に、長身の女性がどこか機械的にうなずく。金色の髪の少女の名はエヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェル……闇の福音と恐れられし、真祖の吸血鬼――もっとも、今はわけあってその力を封印された挙句、麻帆良の警備員をしてたりするのだが……
長身の女性の名は絡繰 茶々丸。ガイノイド……わかりやすく言えば女性型アンドロイドなのだが……科学と魔法の融合によって生まれし者――今はエヴァンジェリン……エヴァに仕え、様々な面でサポートをしている。

『Devil Walker』……噂は聞いてはいたが……まさか、本当に悪魔だったとはな」

親指の爪を噛みつつ、悔しがるようにエヴァはぼやいていた。彼女はかけられた封印を解くべく、様々な方面から情報を集めていた。
登校地獄……学校に通い続けなければならないという、聞けばなんでそんな呪いがあるんだとツッコミたくなるようなものだが……彼女はこの呪いによって15年間も通い続けさせられていた。
しかもこの呪いによって、麻帆良から外に出ることも叶わない。自分はしなければならないことがあるのに……そのため、呪いを解くべくあらゆる方法を探し、試し……探す為に情報を集めていたのだが、『Devil Walker』の噂はその時に聞いた。評判や天災扱いされているなどあったが、気になったのが名の方だ。
『Devil Walker』……訳すと歩く悪魔となるのだろうが、なぜそんな風に名乗るかが不思議だった。それは本人が悪魔であることがわかっても謎のままだったが……
それはともかくとして、エヴァが問題視しているのは和也の実力だった。高畑達は気付いていないだろうが、和也の持つ実力は計り知れない。爵位級の力を持つと思われる以外は、エヴァでも判断が付かずにいたし……しかし、なぜ爵位級の力を持つと判断したのか?
それは和也が持つ大剣にある。正体まではわからなかったが、魔剣であるとエヴァは確信している。
魔剣……普通に聞けば特別な力を持つ剣と思われるが、そんな生易しいものではない。魔に属する剣と言われるだけあって、並の者では扱えないのだ。それは悪魔であろうとも。なぜなら、魔剣はその例に漏れず呪いのようなものを持つ。その呪いは例え悪魔であろうとも蝕んでいくのだ。
故に魔剣を使える者は多くはない。その魔剣を使う和也の実力はあの戦いを合わせると爵位級の力があると判断出来るのだった。

「あの力もそうだが……奴は私達に気付いていたな」

どこか悔しそうにエヴァはぼやく。和也が戦っている時と学園長室に向かっている時、彼女は上空からその様子を伺っていた。その時だった。学園町室に向かう和也がこちらに顔を向けたのは。見間違えではない。こちらに顔を向けた際、笑顔を見せていたのだ。
もしかしたら、戦いの時から見ていたことに気付いていたのでは……そんな風にエヴァは勘繰ってしまう。

「それでどうなさいますか?」

「そうだな。しばらくは様子を見る。下手にちょっかいを出して邪魔されては元も子もない」

茶々丸の問いにエヴァは悔しそうに答えていた。今の自分では和也に敵わないとわかっていたのだ。今は奴に関わらないようにしよう……エヴァはそう考える。しばらくして、自分が大きな運命の渦に巻き込まれるとも知らないままで……



その頃、和也達は女子寮への道を歩いていたのだが――

「あの、和也さん。私に魔法を教えてもらえないでしょうか?」

「え?」

と、夕映が突然そんなことを言い出すので、のどかが驚いていた。まぁ、アスナやネギも表情を見る限り驚いているようだが。

「悪いがそういうのはあっちに言ってくれ」

そう言って和也はネギ、アーニャ、ネカネに親指を向けていた。いきなり指を向けられ、あたふたと慌てるネギがいるが。

「なぜですか?」

「俺のは魔法じゃない。悪魔が使う力みたいなもんでね。普通の人にゃ無理なのさ。だから、魔法を覚えたきゃそっちの現役に言ってくれ」

夕映の疑問に和也はそっぽ向きながら答えていた。確かに和也の使う力は厳密に言えば魔法とは違うものとなる。
和也の場合、どんな力を使うのかを思考によって構成し、それを具現化させる。そういう意味では魔法とは違うのだが……ただこの力は――

「え? でも、ぼく達が魔法を教えていいんでしょうか?」

「別に難しいのを教える必要も無いしな。それなら坊主と嬢ちゃん達でも出来るだろ?」

「なに教えるのが決定になってるのよ! ていうか、私は嬢ちゃんじゃなくアーニャ!」

戸惑うネギに和也はそう言うが、アーニャは不満のようで文句を言ってくる。それに和也は顔を向け――

「嬢ちゃんは嬢ちゃんだろ? 違うかい?」
「うきぃ〜!?」
「アーニャ、落ち着いて〜!」

と言うもんだから、アーニャは暴れ出してしまう。それを必死に止めようとするネギ。その光景に笑いが起きる。そのことにアスナは変な奴という感想を和也に持つようになり、アーニャは強い嫌悪感を抱くことが無くなる。
いつの間にやら訪れた和やかな雰囲気。そんな中でネカネとこのかは微笑ましそうに和也を見ていた。



和也の戦闘スタイル

和也は大剣と2丁銃を用いたスタイリッシュな戦闘方法……と思われがちだが、実は臨機応変タイプ。
その時々において最適な方法を用いてくることもあり、意外と思われそうだが姑息な手段を好んで使う時もある。また、他にも武器を持ち、それで戦うこともある。時には魔力を用いる時もあるのだが――

魔剣バスタード

和也が持つ大剣の名称。元々は和也の父が持っていた剣であり、父の名がそのまま剣の名となっている。なぜ、和也が持っているかは本人とある事件の当事者以外、知る者はいない。
なお、飾り気の無いのは元々ただの剣だったものが、和也の父の魔力によって魔剣へと成長した為である。
魔剣としての姿を持っているが、その姿は悪魔達に畏怖と憎悪の象徴となっている。昔、和也の父はあることをしたためなのだが――



あとがき

というわけで、第2話はいかがだったでしょうか?
何気に和也とのヒロイン候補が出てたりするお話だったりします。次回は更にヒロイン候補が登場。ついでに戦闘もありますよ。
後、今回登場予定だった2−Aメンバー(中にはヒロイン候補がいたりもする)は次回持ち越しに……いや、出そうとは思ってたのですが……無意味に長くなっちゃうので……
というわけで、次回をお楽しみに〜


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